漢拏山は、韓国最高峰(1950m)である。韓国人にとっては、韓国に生まれたからには一度は登ってみたい神の山とのことだ。日本人にとっての富士山と同じ感じなのだろう。筆者もせっかく韓国を訪れたからには是非とも登ってみたかった。幸いなことに韓国の友人の協力も得て、片言の韓国語を操りつつ登頂に成功した。
漢拏山登山の動機
筆者は2009.5.15(Fri)〜5.17(Sun)にかけて、済州島に行ってきた。主目的は、この島の中心にある韓国最高峰、漢拏(ハルラ)山に登ることだ。
漢拏山登山の準備
●情報収集
4月上旬に、まずはぐぐりまくって基本情報を収集した。日本人にとって一番ネックになると思われたのがハングルが読めないことだったため、準備は可能な限り入念に。【基本情報】
・韓国の最高峰(1950m)。但し自然保護のため最高点には登れない
・登山道は「城板岳コース」(9.6km、4.5時間、標高差1200m)もしくは「観音寺コース」(8.7km、5時間、標高差1300m)
・入山料1600ウォン(約130円)→観音寺コースでは払わずに済んだ
・5月中旬なら雪は無く、冬山用装備は不要
・但し往復20km近いコースなので、丹沢に登る程度の装備は必要【参考サイト】
済州島ハンラ山登山紀行
漢拏山国立公園の地図
プチ・遠征 韓国・済州島 漢拏山(ハンラ山)
韓国・済州島 漢拏山(ハンラ山)
漢拏山(ハンラ山)
韓国の山・ハンラ山(漢拏山)
●当日に向けた準備
2009.4.29(Tue)の丹沢登山時の装備をそのまま韓国に持ち込んだ。靴や杖は重かったり飛行機に手荷物として持ち込めなかったりするため、スーツケースに入れて預けておいた。前回の丹沢登山の時に忘れたデジカメは、済州島に行く前にフル充電して持参した。水、POCARI、チョコレートは当日朝に宿泊先付近のコンビニで購入した。
2009.5.16(Sat)漢拏山登山の日記
登山口までは、韓国の友人にレンタカーで送ってもらった。彼がいなかったらタクシーを使うしかなかったところだ。感謝感謝。
『登山路』の看板 | 電光掲示板もハングル。 読むのに一苦労で、読めても語彙不足だと意味不明 |
場所 | 実績 |
---|---|
観音寺コース登山口 | 8:12 |
標識『5-10』 | 9:03 |
トイレ1 | 9:15 |
標識『5-15』 | 9:35 |
標識『5-20』 | 10:15 |
避難小屋(工事中) | 10:35 |
標識『5-25』 | 10:54 |
トイレ2 | 11:05 |
標識『5-30』(標高1700m地点) | 11:43 |
標高1800m地点 | 12:02 |
漢拏山頂 | 12:30 |
4時間18分かかったが、そのうち30分程度は友人を待っていた時間だ。しかしそのおかげでオーバーペースに陥らずに済み、膝の痛みも出なかった。
木製の階段や通路が整備されている | 沢を渡る。ロープが張られており、迷うことはない |
友人は登山経験者(しかもホノルルマラソン完走経験あり)だったため、筆者が置いていかれる可能性もあると思っていた。最初は筆者が先頭に立ったが、なるべくゆっくり登る。4時間コースなので、最初から飛ばすつもりは毛頭ない。後でへばって遅れるのが一番みっともないし、危険でもある。
登山用の標識や看板は英語も併記してあり読みやすい | 至れり尽くせりの登山道 |
しかし意外なことに、1時間経過したあたりで友人が遅れ始めた。ここ数カ月の運動不足がたたってふくらはぎ痛を起こしたとのこと。それならば先に行ってもらって筆者は後からゆっくりついていこうと思ったが、なぜか聞き入れてくれない。結局、以後はお互いのペースで登り、要所要所で待ち合わせることで合意した。お互いハングルが読めないのに加えて、携帯電話等の連絡手段も持っていないため、大きく離れてしまうと何か事故があった時に危険と判断したためだ。
最初の1.5km程度を過ぎると、沢から離れ、樹林も少しずつ薄くなっていく。すると当然雨に当たるため、ザックカバーを装着した。本降りではないため、雨具はまだ出さない。登山道にも少しずつ岩が増えてきた。
樹林が少しずつ薄くなる | 木製の階段が整備されている |
10:35に避難小屋(標高約1400m)に到着した。ここで前半戦終了だ。この小屋は工事中であり、中には入れなかった。また、この辺になると稜線に出るため、寒風の直撃を受けて猛烈に冷える。ここでフリースを装着した。雨が降った場合はさらに雨具を装備するつもりだった。万一雨具を忘れていたら、命にかかわるのでこの時点で下山確定だ。幸いなことに、今回はここから先で雨が止んでくれた。
避難小屋。ここで前半戦終了 | 稜線からの景色を満喫できるが、寒い |
漢拏山(観音寺コース)の面白いのはここからだ。イメージとしては、中央の高峰の周囲に低山がいくつかあるというものだ。今まで登っていた低山からさらに奥地に分け入るのだ。韓国人にとっては、神の領域に入るという感じだろうか。低山の尾根付近を進むのだが、景色がどんどん変わっていく。天候も目まぐるしく変わる。晴れている状態から、5分で霧に巻かれ、雲の中に入る。晴れる時も同様だ。
岩製の階段 | 岩場も出てくる |
ラストの2kmはかなりキツかった。傾斜が一気に増してくる上、空気が薄くなっている気がする。標高1900m程度なので高山病ということはないはずだが、なぜか呼吸が苦しくなった。太ももやふくらはぎの筋肉も結構やばい。階段を10段くらい登っては休み、疲労がある程度取れたら再び登るという繰り返しだ。なんかこれでは2008.4.26の初丹沢と同じ状況だ。どこでオーバーペースに陥ったのか。ちなみに友人はここで両足のふくらはぎがつったそうだ。それでも山頂まで何とか到達してしまうあたりはさすが経験者。
山頂付近。ガスが出てきた |
一方で、気温もガンガン下がってきたため、この辺で軍手を装着した。標高1800mを超えてからは霧も激しくなってきた。最後は10m先も見えない霧の中、気付いてみたら山頂らしき地点に到達していた。
han ra san dung nung jong sang
韓国の友人に後で確認したところ、確かに『漢拏山登山道の頂上』の意味だそうだ。韓国語翻訳サイトでチェックしてみると次のようになっており、nungだけ分からなかった。恐らく助詞か何かなのだろう。
han ra san = 漢拏山 dung = 登 nung = ? jong sang = 頂上 |
山頂を示すハングルが記された柱 | 山頂にあるはずの火口湖は霧で全く見えず |
10分ほど遅れて友人も到着した。お互い記念撮影後、霧が少しでも晴れるタイミングを待ってみたが、30分程度経過しても天候が改善されなかったのでこれ以上の滞在は諦めた。下山時刻の問題もあるし、それ以前に猛烈に寒かったためだ。あれ。そういえば雨具をここで装備すれば良かったのか。また、当初はここで昼食の予定だっが、あまりにも寒すぎたため、固形物を食べる気には全くなれなかった。
場所 | 実績 |
---|---|
漢拏山頂 | 12:55 |
標高1800m地点 | 13:09 |
標識『5-30』(標高1700m地点) | 13:23 |
トイレ2 | 14:00 |
標識『5-25』 | 14:22 |
避難小屋(工事中) | 14:24 |
標識『5-20』 | 15:00 |
標識『5-15』 | 15:37 |
トイレ1 | 15:52 |
標識『5-10』 | 16:?? |
標識『5-5』 | 17:02 |
観音寺コース登山口 | 17:30 |
下りに4時間35分。登りよりも時間がかかった。うち1時間程度は友人を待っていた時間だ。おかげで筆者にとってはまったりペースとなり、膝の痛みはもちろん筋肉痛さえもほとんど出なかった。
そういえば! 山でキュウリを食べるのが韓国流らしい。車で送ってくれた韓国の友人が差し入れてくれたのだが、結構立派なキュウリだ。日本のスーパーマーケットで売られているものよりも約1.5倍は太い。
漢拏山本体から周辺の山を望む | 別の地点から |
1時間程度でトイレ2まで下山完了した。ここまで来れば、もう難所はほとんどない。気温も少しずつ上がってきた。神の領域から人の領域に戻ってきた気分だ。なお、このトイレ休憩の際に日本人団体(壮年〜老年の女性中心)に遭遇した。広島から船で来るツアーがあるそうだ。山岳ガイドの方は日本語が通じる韓国人だった。
登山道が整備されているので下山も楽 | ゴールまでもう少し |
その後もペースを落とし、要所要所で待ち合わせつつまったり下山した。先月の丹沢でもそうだったが、一定以上減速すると膝の痛みも出ないようだ。あるいは、今回も密かに装備していた膝サポーターのおかげかもしれない。
友人はかなり消耗したとのことで、車内では爆睡していた。結果的に、もう少しペースダウンした方が良かったかもしれない。タクシーの料金支払は『オルマエヨ?』(いくらですか)と尋ねつつ紙とペンを出し、数字を書いてもらった。日本で言う白タクみたいな感じで、料金メーターが無い。しかーし1時間弱乗って35000ウォン(約3000円)だったため、さほどひどいボッタクリではなかったようだ。
そういえばこの登山中の補給は『水+POCARI+チョコレート+キュウリ』だけだった。夕食は他の友人達と合流して黒豚焼肉祭りだったが、日頃と比較して食欲が旺盛だったのは事実だ。
登山口より撮影。漢拏山本体は見えない | 夕食は黒豚焼肉祭り |
まずは標識の存在。『5-1』〜『5-34』まで数字で表示された標識が、登山口付近から山頂まであった。丹沢と同様、これは緊急時の連絡用なのだが、ハングルでなく数字で表示してあるので問題なく読める。これに沿って登山・下山すれば迷うことはない。また、要所要所に全行程と現在地のkm表示が存在する。しかもハングルと英語が併記されている(日本語はない)ため、英語が読めれば全く問題なし。
次に、整備の行き届いた登山道。木製の頑丈な階段が山頂付近まで断続的にあった。山頂付近は霧が多くて滑りやすいため、ゴム製の滑り止め加工がなされていた。木製の階段の配置が困難な場所には岩製の階段があった。丹沢と遜色無い、大変歩きやすい登山道だった。
ちなみに他の登山者との会話は、万能語である『アニョハセヨ〜』(こんにちは)と『コマスニダ〜』(ありがとう)を8:2くらいの割合で使い分けて何とかした。他は全く分からないし、日本語も英語もほとんど通じないが、意思は伝わる。山頂で写真を撮って下さいと頼まれた(らしい)時は、『One, two, three, キムチ〜』と言っていた。日本で言う『はい、チーズ』みたいなものだ。
これを機に海外の山にも興味が沸いてきた。まずは比較的手軽にアクセスできるアジアの山々に登ってみたい。例えば玉山(台湾最高峰、3952m)やキナバル山(マレーシア最高峰、4095m)を考えている。
漢拏山登山の感想
今回は初の海外の登山であった。ハングルが読めないと非常に困るという先入観があったが、実際には全くそんなことはなかった。というのも、標識と登山道が整備されていて大変分かりやすいためだ。まるで丹沢を登っているかのような感覚だった。
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