まずはWorst条項の更新を目指した。得意分野の更新よりも苦手分野の底上げを重視する、筆者らしい攻略法である。4月中旬は、唯一XCにとどまっていた54-1のXB到達を狙いつつ、630〜640台の条項を駆逐した。23日には650未満の条項が54-1と69条の2個まで減った。だが、この2条項にこだわっても総合ポイントの伸びは見込めないという段階に達したので、その後はXBの条項を駆逐し始めた。一方、通し練習は比較的短い章を先行逃げ切りで更新する程度で、条項別練習の延長のようなものだった。
2002.4.24には攻略法を変えた。通し練習と条項別練習をセットにして章ごとに攻略するというものだ。この段階では、引き続きXB条項の駆逐を目指した。また、3章や4章は1〜2回打って更新できるほど甘くないので、数日間練習を続けて更新を狙った。その甲斐あって、2002.5.1には3章を600.098(XC、ミス4.5%)に更新。また、14日には最難関の4章で610.735(XC、ミス3.6%)を叩き出した。この打ちづらい章を16ポイント近く更新したのは、物理的にも精神的にも大きかった。さらに、最難関条項であった54-1も668.581(XA、ミス2.5%)に更新し、Worst条項が650台になった。
2002.5.17には総合ポイントが1095006に達し、ようやくMachineへの折り返し点を越えた。その後も1日に200程度という地道なペースながら比較的順調に更新を続けた。だが、「通し練習を行いつつその章の条項を集中的に打つ」方法で11章まで打っても1098000程度までしか伸びないという見通しが出てきた。Machine到達にはさらに壁を破る必要があった。
2002.5.25、ついに待ち望んだ「タイプウェル憲法ランキング」がスタートした。早速自宅PCの記録を登録したところ、かなとR&K統合で暫定トップを獲得した。28日には会社PCの記録も登録し、英語で2位、ローマ字で1位を獲得した。この時点ではR&K統合ランキングで1・2位を独占した。その後すぐにたにごんさんにかな(そしてR&K統合)のトップを奪われ、英語ではなせさんにあっさり抜かれたが、6月中は「英語3位、ローマ字1位、かな2位、R&K統合2位・3位」をキープしていた。もっとも、かり〜さんの総合レベルXSという結果(しかも2001年12月時点)を知っていたし、他の上位メンバーが本気を出せばすぐに抜かれると思っていた。
6月に入り、今度は1〜3章に残った甘い条項を潰したが、すぐに総合ポイントの伸びが鈍ってきた。かみ合って更新しても、総合ポイントは20弱しか増えなかった。6日には総合ポイントが1098000付近に達したが、もはや実力だけでポイントを稼ぐのは不可能に近かった。
そこで2002.6.10、怒涛の通し練習を実行する決断を下した。条項別の方がじりじりと総合ポイントを伸ばせるのでつい短期決戦を狙い、自分の中に甘えすら生じていた。だが、本来タイプウェル憲法は長文攻略が醍醐味であるはずだ。また、限界を超えるには限界以上の負荷を与えるしかない。筋肉痛そして腱鞘炎を招く恐れもあるので諸刃の剣だが、当時の実力でMachineを達成できる可能性が極めて低い以上、やるしかなかった。1章から始め、昼休みだけで3回打ち切るという地獄の訓練を開始した。
効果は早速その日の夕方に現れた。この日4回目となる1章を打ち始めたところ身体がトランス状態になり、一時的に瞑想に似た凄まじい集中力が備わった。これは筆者のタイピング歴では初めてのことである。周囲のものの感覚がなくなり、見えるのは憲法R画面だけ、聞こえるのは呼吸音とタイプ音だけ、感じられるのは咆哮している指だけ。呼吸すらも鬱陶しくなったが、2分以上無呼吸では死ぬという意識が働き、少しずつ深く鼻呼吸を行っていた。これは「全力タイピング中に無呼吸状態」という境地に近いのだろうか。そして……最初の数条は700ペースという常軌を逸した飛び出しを行い、中盤を過ぎても660ペースを保ち、終盤も攻めに攻めて一気に649.783(XB、ミス4.7%)に更新! 実に25ポイントアップという大爆発!
11日以降は3章でのトランスを狙ったが、そう簡単に発動できれば苦労はしない。1日1回は3章を全力で打つという凄まじい死闘が延々と続いた。まさにこの頃は腕と指を殺すつもりで打っていた。最初からぶっ飛ばし、ミスを怒涛の如く連打しても気にせずに打鍵数を増やす。合言葉は「ミスしたら乱打するトップスピードで打ち直す」。当然ながら後半から終盤にかけてどっと疲れが出て、腕がしびれ始めるが、そこで鬼のスパートをぶちかますのだ。
日付 | スコア | ミス | 状況 |
---|---|---|---|
6.11 | ─ | ─ | 5000文字を超えた頃にミス上限を超えて死。これを機に、ミス上限を25%に設定。 |
6.12 | 547.646 | 17.8% | 赤ゲージが埋まり、ミス数は1000を超えた。 35-2が371.975(SE、ミス65.6%)、39条が386.463(SD、ミス53.8%)と惨敗。 |
6.13 | 576.190 | 8.4% | 右腕が痛かったので、打鍵力とミスを少し抑えた。赤ゲージ3個で終了。 |
6.14 | 576.892 | 8.1% | なるべく腕の力を抜いて正確に。だが、簡単にこれができれば苦労はしない。 中盤までは黄ゲージ3〜4個で粘ったが、後半赤2個まで崩れた。 |
6.14 | 587.415 | 6.4% | 序盤で青ゲージ5個のリードしか奪えず、29-1で黄ゲージに転落。 その後は黄ゲージがたまる一方(最終的に7個)。 |
6.17 | 595.359 | 5.8% | 序盤で青ゲージ5個のリードしか奪えず、34条と35-1の猛攻の前に力尽きて 黄ゲージに転落し、結局黄3個。ミスが原因のロスが多すぎる。 |
6.18 | 607.040 | 5.1% | 最初からぶっ飛ばして青ゲージ約15個のリードを奪う。 25条で意図的に姿勢を変えて集中力を保ち、難関の34と35-1も580台で撃破して この時点でもまだ青10個リード。 その後は腕と指が動かなくなり、視界もぼやけてきてミス&硬直を連発し、 37-3、38-3、39条でXFを叩いたが、結局青7個でゴール。 |
この死闘の結果、18日についに更新! これで総合ポイントは1099287まで伸び、ここまできたら何としてもMachineを達成してやる! という意地と執念が芽生えた。
その後は前文の更新を狙ったが、スコアは570〜590台に低迷し、更新できる気がしなかった。一方、条項別は6章→9〜11章→4章→5章と手を広げ、少しでも更新の余地があると見た条項は昼休みと夕方の2回打つことで更新した。腕と指が疲れないうちに集中して打つのがポイントだ。実際、甘い条項はまだまだ残っていたし、もう更新できないと思っていた条項でもかみ合ってXXやZJを出した。
26日、Machine達成に向けて最後の決断を下した。「憲法Rの練習時間をさらに増やし、7月中旬までに達成する」というものだ。そして、4章後半のXA条項や5章のXS条項を打ちまくる一方、通し練習も後半の短い章を狙い撃ちして更新した。26日には10章を655.589(XB、ミス3.8%)に更新。条項別の訓練は決して無駄ではなく、以前詰まった箇所もなぜか打ち抜けたりする。スピードを抑えて正確に打つように心がけたのも的中した。さらに、2002.7.1には8章で682.265(XA、ミス3.4%)と大爆発! 「地方公共団体」に注意しつつ正確に打てる範囲で飛ばしまくり、一気に30ポイント更新して自己初の通し練習XAを記録した。
そして2002.7.2。5章の条項を集中的に打ち、じりじりとMachineに迫る。だが、総合ポイントが1099974まで伸びたところで打てなくなった。「国会議員の中から」が凶悪すぎる。しかーし、最後は意地と執念が上回った。ターゲットを6〜7章に変え、更新できそうな条項を探す。そして見つけた! 89条! 「若しくは」「又は」に苦戦して670そこそこにとどまっていたが、これはもはや「甘すぎる」以外の何物でもない。そして数度目の挑戦で1ミス撃破して696.575(ミス0.5%)に更新! これで総合ポイントは1100007(レベルXA)に伸び、ついにMachine達成!
通し練習 | strokes/m | level | miss | date |
---|---|---|---|---|
前文 | 630.618 | XC | 2.4% | 02.04.24 |
第1章 | 649.783 | XB | 4.7% | 02.06.10 |
第2章 | 664.596 | XB | 4.0% | 02.06.07 |
第3章 | 607.040 | XC | 5.1% | 02.06.18 |
第4章 | 610.735 | XC | 3.6% | 02.05.14 |
第5章 | 630.064 | XC | 4.5% | 02.05.28 |
第6章 | 634.787 | XB | 3.0% | 02.05.23 |
第7章 | 647.544 | XB | 4.0% | 02.05.29 |
第8章 | 682.265 | XA | 3.4% | 02.07.01 |
第9章 | 658.541 | XB | 3.2% | 02.03.07 |
第10章 | 655.589 | XB | 3.8% | 02.06.26 |
第11章 | 649.629 | XB | 4.2% | 02.06.06 |
環境 | 練習日数 | 総練習時間 | 総消失時間 | 総中断回数 |
---|---|---|---|---|
会社PC | 71日 | 05:56:41 | 11:24:15 | 12077 |
自宅PC | 5日 | 01:00:31 | 00:31:45 | 323 |
TOTAL | 76日 | 06:57:12 | 11:56:00 | 12400 |
Esc回数はついに5桁に達した。1分あたり約17.3回、言い換えれば約3.5秒に1回のペースで叩いた。また、練習時間は英語やかなに比べて圧倒的に長い。英語やかなに比べてMachine達成がいかに苦しかったかがよく分かる。
Date | Monday | Tuesday | Wednesday | Thursday | Friday |
---|---|---|---|---|---|
4.8-4.12 | 1090018 | 1090303 | 1090304 | 1090503 | 1090746 |
4.15-4.19 | ─ | ─ | ─ | 1091016 | 1091435 |
4.22-4.26 | 1091618 | 1091822 | 1092121 | 1092156 | ─ |
4.29-5.3 | ─ | 1092484 | 1092794 | ─ | ─ |
5.6-5.10 | ─ | 1093120 | ─ | 1093325 | 1093432 |
5.13-5.17 | 1093704 | 1094409 | 1094614 | 1094818 | 1095006 |
5.20-5.24 | 1095310 | 1095509 | 1095709 | 1096100 | 1096302 |
5.27-5.31 | ─ | 1096718 | 1097005 | 1097077 | 1097301 |
6.3-6.7 | 1097505 | 1097808 | ─ | 1098015 | 1098143 |
6.10-6.14 | 1098485 | 1098604 | 1098666 | 1098735 | 1098832 |
6.17-6.21 | 1098893 | 1099287 | 1099357 | 1099416 | 1099486 |
6.24-6.28 | 1099541 | 1099592 | 1099666 | 1099731 | ─ |
7.1-7.5 | 1099947 | 1100007 | ─ | ─ | ─ |
憲法Rについては、会社PCでMachineを目指した。昼休みや夕方などに時間を確保し、休日や業務割り込みが入った時以外はほぼ毎日のように打ちまくった。
なお、Machine達成時点でXC以下の条項はすべて駆逐済みである。XBが7個、XAが55個、XSが61個、XXが45個、ZJが9個、ZIが3個、ZHが2個だ。Bestの方の条項はかなに及ばないが、Worstの方はローマ字の方が高く、平均値も明らかにローマ字の方が高い。これは、通し練習でかなに及ばないので条項別練習を狂ったように底上げしてきたためだろう。一方、それにもかかわらず、次の7条項は最後までXBのまま生き残った。ここに特記してその栄誉を称える。
条項 | スコア |
---|---|
第2段落 | 653.073 |
34条 | 653.570 |
16条 | 655.187 |
35-1 | 660.110 |
44条 | 664.946 |
50条 | 664.978 |
96-1 | 665.359 |
また、Best条項は息抜き程度に更新していた。まず2002.5.16には65条で神が降臨して893.372(ZI、ノーミス)を記録すると、17日には7-7で928.793(ZH、ノーミス)を叩き出した。2002.6.24には65条でかみ合いまくって937.028(ZH、ミス6.5%)を記録。この他、2002.7.1には73-2を901.288まで伸ばし、3個目の900台に。Best争いはこの3条項に絞られたと見て良いだろう。
それにしても、もはや短文に関しては、フライングに近いスタートを行い、即トップスピードに乗せてそのまま打ち切るのが必須である。これはタイピングというよりもむしろ、AtoZの世界だ。
種目 | 達成日 | 更新種目 | 当時のタイピング日記より |
---|---|---|---|
国語K | 2001.5.22 | 基本常用語 | タイピングの神降臨! 33.942秒(レベルXS、ミス10)に更新! |
英単語 | 2001.7.3 | 拡張Q-Z | そして結果が出た! 40.5秒(ミス11)に更新! |
オリジナル | 2001.8.22 | すべてのキー | 数度のEscの後ついに44.5秒(XA、ミス9)に更新! |
国語R | 2001.10.12 | 漢字 | その後のトライアルで36.2秒(ミス7)に更新! |
憲法E | 2002.3.5 | 73-5 | 一気に686.298(XX、ノーミス)に更新してMachine達成! |
憲法K | 2002.5.5 | 14-3 | 467.297(XS、ノーミス)に更新し、これで総合ポイントは…… |
憲法R | 2002.7.2 | 89条 | 数度目の挑戦で1ミス撃破して696.575(ミス0.5%)に更新! |
思えば2001.4.1の「タイプウェルの殿堂」設立以来、Machineというステータスにこだわるようになった。ローマ字以外のMachineは「困難だが不可能ではない」というレベルだったため、格好の目標になったと思う。そしてかな・英語・ランダムでMachineを達成していくうちに、当初は無理だと思っていたローマ字のMachineもいつしか視界に入ってきた。
それにしてもローマ字のMachineへの道のりは長く厳しかった。国語Rについては、殿堂設立から6ヶ月、総合レベルXBに到達してから3ヶ月。憲法Rについては、試し打ちを始めてから7ヶ月、総合レベルXBに到達してから3ヶ月。だが、仮にも長文派を自任する筆者にとって、タイプウェル憲法Rを打っている時間はこの上なく楽しかった。また、よどみなく打ち切って更新できた時の快感は他のタイプウェルシリーズと比べても格別のものだった。だからこそ、Machine到達まで継続的に打ち続けることができたのだろう。
また、タイプウェルシリーズはスピード練習の中心と位置付けていたため、時には正確さを無視して乱打することもあった。だが、最終的には正確さと安定感が物を言った。一方、TODや補完計画などでは正確さを重視していた。だが、目標を達成していく上で強力な基盤となったのはタイプウェルで鍛えたスピードだった。今のところは速度と正確さの両方を狙い通りに伸ばしていると言えるだろう。そして今後どこまで伸びるかは分からないが、タイプウェルシリーズが練習の中核を占め続けることは間違いない。
難語 | 攻略法 |
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衆議院 | syuu + giin と分けて打つとリズミカルに打てる |
衆議院議員 | こちらは syuu + giin + giin |
何人も、 | nan + pitomo, と分ける(pは薬指で打つ) |
この憲法 | pou を「薬→中→人」と最適化 |
un | 「中→人」と最適化 |
hu / yu | 「人→中」と最適化 |
huku | 「幸福」など。「人→中→薬→中」と最適化 |