筆者の美佳テキスト遍歴:その1(2001.3.25)


●執筆の契機

美佳タイプやタイプウェルの英単語練習を行う目的は、単に英単語を高速に打てるようになるだけにとどまらず、英文を高速に打てるようになることであろう。英文を抵抗なく入力できるようになるメリットは計り知れない。例えば海外版TODでは、最初のうちは単語が打てれば問題ないが、クリアするには英文の攻略が必須である。

英文練習用のタイピングソフトとしては、周知の通り「美佳テキスト」が存在する。だが、美佳テキストでは(そして英文一般では)単語系練習と違って、ミス時にはその分だけBackSpaceキーで戻らないとならないし、大文字や記号が頻出する。さらに、1分または400文字で終わる単語系練習と違って、一つ一つの文章がかなり長い。このあたりが、美佳テキストが上級の練習と称されるゆえんである。英単語系練習と比べてスコアが伸びず、時間がかかって疲れるという理由からあまり力を入れていない人が多いのもうなずける。

筆者の英文入力歴は、美佳タイプのランダム練習や単語練習に比べれば短い。だが、Typing Attackに出会って以来、最初のうちはランキングでトップを目指すために、ある程度スコアが伸びてからは英単語系練習のスコアを伸ばすために、継続的に打ってきた。その結果、スコアは2001.3.25になってようやく総合3000ポイント(=平均500文字/分、平均100wpm)を突破した。ここでは今までの苦闘の過程を振り返ってみたい。


●英文入力との出会い

筆者が英文入力に出会ったのは、1997年、大学4年の秋だったと思う。当時、筆者は「生協学生委員会」で「数字」を除いて美佳タイプのトップスコアラーとなっていた。そんなある日、前トップスコアラーであり英単語系の最大のライバルでもあった某先輩から、キャンパス内で一部のタイプマニアの間に流行していたtrrというソフトを紹介された。

これはUNIXシステムのemacs上で動作する英文練習ソフトで、合衆国憲法など数種類の英文が用意され、キャンパス内のランキングも存在していた。また、デフォルト設定の「中級」では「入力速度−ミス数×5」というスコア計算式が採用されていた。それまでミスのペナルティが特にない美佳タイプしか知らなかった筆者にとって、ミスによる減点というのは画期的でもあり、苦悩の始まりでもあった。なお、「上級」のスコア計算式は「入力速度−ミス数×50」というとんでもない代物であり、筆者は屈辱の「スコア0」を記録してしまった。

当時美佳タイプの英単語で500文字/分程度、MSDOSコマンドで680文字/分程度のハイスコアを持っていた筆者であったが、trrでは散々だった。まず記号や大文字に阻まれて入力速度が400文字/分程度まで落ち、さらにミスにより減点され、スコアは300台前半がやっとだった。キャンパス内のランキングでは30位程度だったと思う。

だが、美佳タイプで速度を、trrで正確さを磨くうちに少しずつスコアが上昇し、先輩の記録「412」をわずかに上回る「421」を叩き出すことができた。ランキングでは5位まで上昇したが、その辺が限界と感じたため、以後trrをプレイすることはほとんどなかった。なお、将来「Typing Attack」で出会うことになるなせさんは、学科は違うが筆者の1年先輩であり、trrで既に500を超えるスコアを出してランキングのトップに君臨しておられた(当時はまだ存じ上げていなかったが)。美佳タイプですら500程度の筆者が追いつけるはずがないと思っていた。

……そして約2年が過ぎた。


●美佳テキストとの出会い

1999年12月末、何気なくYahoo!で検索をかけていた時に、偶然「美佳のタイプトレーナ」と打ち込んでみると……昔懐かしい美佳タイプがWeb上にあるではないか。軽い気持ちで行ってみると、どうやらWindows版が出ているらしい。また、英文入力版すなわち美佳テキストとはこの時出会った。早速ダウンロード。直後にTyping Attackの存在を知った。ここでは美佳タイプ17種目に加えて美佳テキスト6種目のランキングも行われており、当時から最もハイレベルかつ洗練されたサイトだった。以来継続的に英文を練習できているのは、ひとえにこのサイトのおかげである。

美佳テキストへの初回挑戦では、英文に慣れる程度にゆっくり打ったり、がむしゃらに早打ちしたりといろいろ試した。スコアは最高が「オズの魔法使い」の385.0、最低が「若草物語」の327.9で、Typing Attackにすべての英文のスコアを登録した時点では総合ポイント2141.6で3位だった。スコアも低いがミスタッチが66〜114(平均93.3)と多く、trrなら大幅に減点されるところである。

2〜3巡目では、Typing Attackの英文総合トップ獲得を目標とした。但し初回挑戦の失敗を踏まえて、ただ闇雲に早打ちするのではなくミスを抑えるように心がけた。その結果、各文章に少しずつ慣れてきたこともあって、スコアは飛躍的に伸びた。3巡目終了時点のスコアは最高が「不思議の国のアリス」の421.5、最低が「若草物語」の368.7で、英文総合ポイントは2380.0(1位)まで上昇した。ミスも54〜84(平均64.8)まで減り、当時の筆者としてはそこそこ満足できる結果であった。


●ライバル出現

2000年3月に入ると、「Typing Attack」は質・量ともに大きく膨張を始めた。ほぼすべての種目でトップを独占していた筆者にとっても、強力なライバルが次々と現れた。英文ではCXさんの追い上げをしのいで何とかトップに居座っていたが、CCS-ありすさんにはあっさりと抜かれてしまった。だが、トップスコアラーとしてそう簡単には抜かれたくないという意地もあるし、英文はまだ5回ずつも打っていないので更新の余地は多いにある。そこで、以後2週間ほど英文を集中的に攻略し、トップ奪回に成功した。

だがその後再び抜かれ、4月前半はDC版TODばかりプレイしていたこともあって、かなり差が広がった。一方、美佳タイプのランダム部門ではたけひささん、ローマ字部門ではALLGREENさん(現:かふぇおれさん)が恐ろしい記録でトップに立ち、抜き返すのは難しくなった。

そこで、英単語系でトップを死守しつつ、最もトップを奪回しやすいと思われた英文をもう少し練習することにした。そして、「鏡の国のアリス」「不思議の国のアリス」で450近い記録を叩き出すなどして、2000.5.14には辛うじて全種目でトップを奪回した。総合ポイントは2600を超えた。ちなみに、当時の感想は次の通り。

「結構エナジーを消耗し、疲れた。次に美佳テキストをやるのはまた誰かに抜かれた時か、90Words/minを狙うぞーというやる気が生じた時だろう。」


●一気に転落

2000年7月以降、英文部門にも強豪が続々と参戦してきた。特になせさん参戦時は衝撃的であり、平均500文字/分という圧倒的な記録(当時)の前に、追撃する意欲すら失ってしまった。その後もごとーさん、Pocariさん、yasmさん、たにごんさんに次々と抜かれ、気付いてみたら英文部門で総合6位まで転落していた。

英文で勝てない相手に英単語系練習で勝つのは難しい。こうしてすべての種目でトップから転落した筆者は、9月以降Typing Attackの総合ポイントでもあっという間に抜き去られていった。

一方、7月以降英文を打つ気にはなかなかなれなかったので、英単語系では「タイプウェル英単語」を主に打っていた。美佳タイプの英単語練習に出現する約900語にはある程度慣れていたが、他の単語となると心もとなく、これが美佳テキスト不振の原因の一つとなっていた。「タイプウェル英単語」の出現単語は6000種類に達するので、練習を積むことで美佳テキストの停滞打破を狙った。


●90wpm達成

そして2000.9.17、約4ヶ月ぶりに美佳テキストを再開した。まずは「オズの魔法使い」で、以前からの目標であった90wpm(450文字/分)を突破した。だが、その後の英文更新への道は決して平坦ではなかった。1週間後に「幸福な王子」の更新を狙ったところ、次の弱点が浮き彫りになった。

・ミス時の体力的ダメージが大きい。Backspaceキーまで右手を伸ばすのは腕への負担が大きい。約5分間もこんなことを続けると、腕が張って動かなくなる。
・ミス時の心理的ダメージも大きい。500文字/分近いスピードが出ていても、ミスが2〜3回重なると戦意喪失してEscを叩く。
・大文字や記号があるため、Shiftキーを押したり離したりするタイミングが悪くてミスを犯す(例:CouncillorsをCOuncillorsと打つ)。
・Shiftが必要な大文字や記号が断続的に襲ってくる部分が、特に難しい。(例:"Yes, sir," "No, sir,")
・2000字程度の英文をミスを抑えて最後まで打ち切るための持久力がない。

当時の美佳タイプ英単語練習のハイスコアは592.5であり、500文字/分はほぼ確実に超えることができた。また、コンマ・ピリオド・セミコロンへの対処はある程度身につけていた。ところが、英文では上記の弱点により、高々450文字/分程度しか出せない。美佳タイプ英単語練習だけで鍛えてきたそれまでの方針が甘かったことを思い知らされた。

また、英文ごとに苦手な箇所が存在し、記録が伸びない一因となっていた。

種目名苦手な箇所
足長おじさん 冒頭の The first Wednesday が打ちづらい。
例えばTHe first WE というミスが頻発する。
また、美佳テキストの6文章中最も長いため、持久力も必要。
若草物語 冒頭の "Christmas won't be Christmas without any presents," が凶悪。
その後も延々と続く会話文(正確には記号と大文字)に体力を削られる。
不思議の国のアリス "Oh dear! Oh dear! I shall be too late!"(when(15〜16行目)と
"ORANGE MARMALADE"(最後から4行目)が鬼門。

だが、2000.9.27に「鏡の国のアリス」で468.2(ミス54)を記録し、少しずつ英文タイプの力がついてきているという感触をつかんだ。その後、苦労しつつも2000.10.9に「若草物語」434.5、2000.10.15に「不思議の国のアリス」461.9、2000.10.21に「オズの魔法使い」473.7と順調にスコアを伸ばし、6文章の平均が90wpmに達した。

一方、美佳タイプ英単語系種目でも2000.9.25にMSDOSコマンド678.9、2000.9.26にパスカル680.6、2000.10.12にフォートラン682.3、2000.11.1にMSDOSコマンド748.1を叩き出し、力が一段上がったと実感できた。


●100wpmに向けて

英文やタイプウェルでたにごんさんに次ぐ強豪であるなせさんは、Typing Attack総合ポイントで筆者を抜いた時(2000年11月頃)に「英文練習するとミスをしない癖がついていいですよ。」というメッセージをT.A.のコメント欄にしばらくの間残して下さった。筆者は、当時この言葉を最も重く受け止めた1人であると言って良いだろう。美佳タイプでは既に実力と運がかみ合った限界に近いスコアを出し尽くしており、更新は絶望的な状況になっていた。そんな中でスコアを伸ばせるのは英文をおいて他に存在しなかったし、英文を突破口として英単語系を伸ばせるのではないかと思い始めた。

11月前半は今一つ記録が伸び悩んでいた。だが、2000.11.18に「鏡の国のアリス」を先行逃げ切り狙いで打っていたところ恐ろしく指が動き、最初の1分で520、2分経過でもまだ500ペース。後半、一時は490台前半まで落ちたが、終盤で少し持ち直して496.0を記録した。この時点では「オズの魔法使い」の473.7が自己ベストで、100wpmなどまだまだ先の話だと思っていた。だが、思いがけず手に届くところまできた。さらに、ミスタイプも38に抑えた。これは筆者の美佳テキストプレイ史上最も少ない数字である。

一方、2000.12.3には「幸福な王子」に惨敗。ミスを抑えつつ短期決戦を狙う方針で更新を目指したが、悪い点ばかりが目立った。

・ミスが多すぎる。抑えようとしても指が勝手に動いてミスを犯す。
・スペースを打つタイミングがずれる。次の単語の最初の文字を先に打つ。
・相変わらず記号や大文字が打てない。
・1回のミス、1回の指硬直が原因で簡単に崩されてミスと指硬直が連鎖する。
・同じ場所で同じミスを繰り返す。

しかし2000.12.10には同じ「幸福な王子」でスピードを抑え気味にして正確さを上げるように心掛け、471.2を叩き出してリベンジに成功した。また、この頃から3分経過以降はスコアを見ないようにした。スコアを見ると単語の先読みができなくなるし、下手に高いスコアだと心拍数上昇の原因になるためだ。

2000.12.26には美佳タイプ英単語練習で625.3(ミス5)を記録した。別に更新を狙ったわけではなく、ミスを抑えて打つよう心がけたところ、思わぬ結果が出た。落ちる一方だったTyping Attackの総合順位を久々に1つ上げて4位とし、同時に今後のレベルアップの可能性がわずかながら見えてきた瞬間であった。

2001年に入ってからも、寒さに耐えつつ英文攻略を続けた。まずは2001.1.20に最難関の「若草物語」を集中的に練習し、会話文以外で効率的にスパートすることで460.2まで更新。翌日には得意種目筆頭の「鏡の国のアリス」で511.2まで伸ばし、ついに100wpm達成! BGMで怒りを鎮めたのと、英文練習を重ねて指がなじんできたのが功を奏したのだろう。


●そしてトータル3000ポイント達成

その後は、各英文のより効率的な攻略法を見出し(あるいは意識改革を行い)、飛躍的にスコアを伸ばしていった。一例を挙げれば次のようになる。

種目名攻略法/意識改革
オズの魔法使い 打てない単語は(頭の中で)2つに分ける。
(例:DorothyはD+orothy、cupboardはcup+board)
不思議の国のアリス 最後から4行目の屈指の難所である"ORANGE MARMALADE"を
事前にShift+Caps Lockキーを押してしのぐ。これにより、
左シフト一本で耐える方法に比べて10ポイント近くスコアが上昇。
足長おじさん 文章が長いため体力を消耗するが、少しでもミスを抑えることで
ペースダウンを防ぐ。もちろん、打てるところでは積極的に打ち進む。
幸福な王子 Typing Attackでは平均スコアが低めだが、「若草物語」ほど記号が
あるわけでもなく、しかも全文章中2番目に短い。
よって、そんなに打ちづらい文章ではない。

2001.2.12には「オズの魔法使い」を513.8に更新した。「鏡の国のアリス」に続いて100wpmに到達するとともに、美佳テキストの総合ポイントが2900を突破した。総合3000を意識し始めたのはこの頃である。

英文トータル3000を狙うには、得意な文章を520程度まで伸ばすとともに、苦手な文章でも480以上打つことが必要だ。そこで、まずは2001.2.18に「鏡の国のアリス」を攻略し、518.0を叩き出した。

さらに、2001.3.4には最難関の「若草物語」に挑み、一気に480近くまで伸ばして勢いに乗った。この打ちづらい文章でこれだけ打てるのであれば、他の文章ももっと打てるはずだ。実際、「幸福な王子」490.7、「足長おじさん」489.1という結果を出した。これで英文総合ポイントは2972.2に伸び、目標まで27.8と迫った。

2001.3.20には「不思議の国のアリス」で500.0、2001.3.25には「幸福な王子」で503.1と相次いで100wpmを突破した。この辺になると何が何でも3000を突破してやるという意地と執念が芽生え、たとえ記録を更新しても納得の行かない時には2回、3回と再挑戦した。この2つの文章で100wpmというのは、現時点の実力では限界に近い数字だと思う。ともあれ、これで英文総合ポイントは3001.9まで伸び、ついに総合3000を突破した。

そして2001.3.25時点ではTyping Attackの英文部門総合第5位である。


●Windows版美佳テキスト:ここ1年3ヶ月の記録の伸び

種目名初回登録時
1999.12.30
初回トップ獲得時
2000.1.10
トップ奪回時
2000.5.14
3000達成時
2001.3.25
オズの魔法使い 385.0401.5436.2513.8
不思議の国のアリス 384.3400.9447.1500.0
鏡の国のアリス 359.1394.1446.8518.0
若草物語 327.9368.7422.7477.9
足長おじさん 336.1385.9424.6489.1
幸福な王子 349.2380.6433.4503.1
総合ポイント 2141.62331.72610.83001.9
TA英文部門順位 3位1位1位5位

※初回登録時:すべて1巡目
※初回トップ獲得時:上3つが2巡目、下3つが3巡目
※トップ奪回時:7巡目;オズのみ6巡目
※3000達成時:いずれも12〜17巡目

筆者の2001年3月現在の力では、スコアは520程度が限界のようだ。そこで、得意な英文をこの数値に近づける一方、苦手な英文をある程度克服することで、トータル3000を達成した。なお、初回トップ獲得時のスコアと比較すると、すべての英文のスコアがバランス良く100前後ずつ伸びている。


●今後の展望

かなり苦労してたどり着いた英文総合3000であるが、実際のところは通過点に過ぎない。今後は総合3300(つまり平均110wpm、550文字/分)を目標としたい。正直言っていつ達成できるか分からないが、ある程度高い目標を持つことは必要であろう。また、英文とタイプウェル英単語で鍛えた成果をそろそろ美佳タイプ英単語系練習でも発揮したい。当面の目標は英単語660、そしてTyping Attack総合ポイント1700である。タイプウェル英単語でもまだまだレベルアップの余地がある。

そのためには、英文練習を継続することでさらなるスピードアップを図ると同時に、ミスを減らしていく必要がある。入力速度と正確さはなかなか両立し得ない要素であるが、それを練習する格好の材料が英文練習だと思う。

さらに、弱点となっている大文字や記号をより抵抗なく打てるようにしなくてはならない。今までにもある程度克服してきたとはいえ、総合3300を狙うにはまだ力不足だ。そのためには、「タイプウェルオリジナル」を練習することで大文字や記号への苦手意識を払拭し、ある程度時間を置いてから英文にもそれを適用していこうと思う。


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