Mt. Purgatory登山



●概要

・縦走:Japas登山口→Mt. Mangagew→Mt. Pack→Mt. Purgatory→(Mt. Tangbaw→)Mt. Komkompol→Ekip登山口
・現地ツアーに参加
・最高点(Mt. Komkompol; 2,329m)に登頂
・登山自体は1泊2日、ツアー全体は車中泊含め3泊4日

●動機、準備、感想

Mt. Purgatory登山の動機
Mt. Purgatory登山の準備
Makati→Cubao
Cubao→Baguio→Mt. Pack→Mt. Purgatory
Mt. Purgatory登頂後、帰還
Mt. Purgatory登山の感想


Mt. Purgatory登山の動機

フィリピンでは、6月12日がIndependence Day(独立記念日)であり、これに伴い3連休が生成される。そこで、先週に引き続き登山の予定を入れておいた。ルソン島北部には、Mt. Pulag以外にも2,000m級の山が多く、楽しめそうだ。
Trail Adventoursの登山ツアーから、日数がかかり難易度の高そうなものを選択した。

ところが、最初に選択したBakun Trio(難易度の異なる3つの2,000m峰に3日で登る)は最少挙行人数に届かず中止された。そこで選択したのが今回のMt. Purgatoryだ。こちらは2,000m級の5峰を2日かけて縦走する。難易度は先週のMt. Pulagよりも高く、ガチな登山を楽しめそうだと考えた。

なお、Mt. Pulagほど高度は無いため、医師の証明書は不要とのことだった。その代わり、持ち物リストに寝袋、マット、タッパー、食器等、先週とは異なるものが記載されていた。この時点では山をナメてかかっており、特に必要性を感じなかった。付近の登山用具店は約4km離れた場所にあり、行くのも面倒だった。


Mt. Purgatory登山の準備

Trail Adventoursのサイトによれば、2日で25kmをトレッキングするとある。難易度も先週のMt. Pulagより二段階高い。だが、筆者はよりガチな登山を何度も経験済みであり、かつ毎朝のランニングで鍛えている。従って、登山としてはそんなにキツくないと考えた。むしろ、登山口に到達するまでの方が危険と判断した。そこで、7日に滞在先付近で開催された事前説明会に参加するなどして、情報収集に努めた。

それによると、まず登山自体は先週よりも骨がありそうだ。Elevation Gain(累積標高)は2,118mであり、先週の約4倍だ。とはいえ、ツアーなので基本的に一番遅い人に合わせて登る。

日本の登山との最大の違いは、地形図どころかまともな地図すら無いことだ。これに関しては、登山口にある概要図を撮影しておけば良いとのことだった。万一ガイドとはぐれた場合はこれに頼るしかない。但し後日になって、Google mapではMt. Komkompolのみ反応することを確認した。等高線も表示される。また、Mt. Pulagを表示させた後、西に約6km、南に約10kmの路上に終着点のBokod Municipal Hallが確認できる。これらを基に、概要図や実際に歩いた感覚を組み合わせて、Google map上でルートをある程度再現することが可能である。

登山の準備としては日本の夏山、但し2,000m級(男体山等)を想定した。気温は5度以下に下がることは無いとの予測の元、防寒着は持たなかった。速乾性Tシャツ計4枚、ランニングタイツ上下、雨具上下を組み合わせて対処することとした。

さらに、荷物を最小限とすることにも気を配った。下山時の膝へのダメージを可能な限り軽減するためだ。但し、海外の山を登るにあたり、パスポートと地球の歩き方は携帯せざるを得なかった。このくらいの重量増加は止むを得ない。

むしろ、登山口に辿り着くまでのスリ・引ったくり対策に気を配った。基本的に、余分な物(特に高価そうに見える物)は持たない。現金もほとんど持たない。かつ、財布とそれ以外に分散させて持つ。

最後に、登山関連の概算費用は以下の通り。キリマンジャロと比較すればだいぶ安上がりだ。

項目金額コメント
航空券-出張のため会社負担
宿-同上
登山ツアー3690ペソ交通費、食費、ガイド費用、入山登録料を含む
Bakun Trio中止により、10%割引となった
レンタル300ペソ寝袋、マット
交通費20ペソ集合場所への往路は電車使用。復路は徒歩
-宿泊先が毎日500ml×4本補充してくれる
食糧計100ペソ大バナナ3本、Balut
ディナー720ペソBaguioで
その他5ペソMt. Komkompol手前の荷物デポ
合計4835ペソ 

※1ペソ≒2.25円。


2017.6.9(Fri)

Makati→Cubao

●Cubao到着まで

まずは集合場所に指定されたCubaoのVictory Linerバス乗り場まで到達しなくてはならない。滞在先のホテルはMakati市にあり、10km超の道のりだ。徒歩はもはやあり得ないし、タクシーも時間が読めない。金曜夜の凄まじい大渋滞を考慮すると使用する気になれない。そこで、今回はMRT(電車)を使用することとした。会社からは「危険なので乗るな」との通達が下っているが、バレなければ良いし、他に手段が無い。

20:40ホテル発。最寄り駅まで約1kmを12分程度で歩く。但し商業施設には入らない。入口で荷物チェックがあるため、いちいちザックを開けるのは極めて面倒だ。前回迷ったところは既に覚えていたため、特に問題なくクリア。

駅では窓口に並んで行き先を告げ、切符を買う。切符と言っても磁気カードだ。日本で言うSuicaのようなプリペイドカードもあるが、この先そんなに電車に乗る機会は無いため、逐一切符を買えば十分だろう。ホームに入る前に恒例の荷物チェックがあった。ザックの中に棒を突っ込まれ、目視確認される。

電車では日本のようにのほほんと乗っていてはいけない。うたた寝などもってのほかだ。ザックは必ず前に抱える(周囲のフィリピン人たちもそうしていた)。混んできたら足元に下ろすが、目と手を離してはいけない。あと、入り口近くに立つのもNGだ。降りるついでに体当たりしつつスられることがあるためだ。そもそも、ポケットに余分な物は入れない。この時点で、腕時計も財布もスマホもザック内に格納し、切符を握りしめつつザックを両手で持っていた。結婚指輪も盗難(というか強奪)の対象となるため、ホテルに置いてきた。警戒感MAXで15分近く乗り、Cubao駅に到着した。

駅からバス停までも5分程度歩く必要がある。先週のAyala→Pasayほどではないが、なかなかエクストリームな雰囲気だ。露店が並び、怪しげなお姉さんやおっさんが怪しげな店に勧誘してくる。ここまでの道のりはできれば撮影したかったが、怖くてできず。

Victory Linerのバス停に到着。先週、誤って降りてしまったあの場所だ。そして混雑しているのも相変わらずだ。空いている椅子に座ったら、警備員が来て「ここには座るな」という。どうやら、次のバスに乗る人のための椅子らしい。では次の次のバスに乗る人はどこで待てば良いのかと尋ねたら、警備席のすぐそばに椅子を持ってきて、ここに座れという。集合時間になるまでは警備員と話しつつ待つ。どこから来たのかとか、山登りに行くのかいとか。

この夜行バスでBaguioまで移動

集合時間になったため、ガイドのKimに連絡を取る。先週と同様、現地の携帯が無ければここで詰むだろう。先週と違ったのは、Cubaoから乗るメンバーを数名紹介されたことだ。最初に紹介されたVictorとは20分近く話し込んだ。プエルトリコ出身の米国人で、ガンダムにやたらと詳しい。筆者の知識(ガキの頃にちらった見たレベル)では全くついていけなかった。そしてフィリピンにも詳しい。バタンガス(マニラから南に車で3時間ほど)に家を持ち、フィリピン女性と結婚し、子供もいるとのこと! 続いて紹介されたのはJonnan。「Where are you from?」と尋ねたところ、「ここから来た」との回答。どうやら、本当にCubaoの人らしい。彼も日本に詳しく、7月には富士山、北岳〜間ノ岳、高尾山〜陣馬山にまとめて登るとのこと。世界遺産に登録されている富士山や高尾山はともかく、「キタダケ」「アイノダケ」「ジンバヤマ」という外国人にとってはマイナーなはずの地名がすらすらと出てきたのには驚いた。

Victorは他のメンバーを評して「いい体つきをしたメンバーが揃っている。今週は楽しめそうだ」とのこと。先週登ったMt. Batulaoでは、山自体の難易度が低いこともあり、ガチなメンバーには恵まれなかったらしい。今回の参加者に関しては、筆者も同様の感想を抱いた。皆ガタイが良いし、ザックも筆者のものより二回りほど大きい。ちなみに、Victorは米軍出身者であることが後で判明する。

他にはミコ、Ros(いずれもフィリピン人)にも紹介されたが、彼らとはあまり長い間話せず。

バスの中は相変わらず壮絶に寒い。今回はザックを下の荷物置き場に格納してもらい、必要最小限の手荷物だけ持って乗る。もちろん、上半身にはランニングタイツ含め3枚装備しておく。マスクと水も忘れずに。

なお、フィリピンスマホはこの時点で電池残量が100%近くあることを確認し、目覚まし機能をすべてOFFにした上で電源を切断した。前回は登山中にザックの中で目覚まし時計が鳴り続けて、対処のしようも無く困ったためだ。ひょっとすると先週電池が尽きたのはこのためかもしれない。


2017.6.10(Sat)

Cubao→Baguio→Mt. Pack→Mt. Purgatory

●登山口到着まで

4:00頃、Baguio着。さくっとトイレに行き、大を済ませておくのを忘れずに。この先、ろくなトイレが無いのは先週経験済みだ。また、Kimからレンタル品のマットと寝袋を渡された。宿泊地はBakian小学校とのことで、ある程度立派な建物を想像しており、そんなに冷えるとは思えなかった。土間や板の間にそのまま寝れば良いかとも考えたが、ここで第六感が働いた。料金は計300ペソ。重量と大きさを事前に確認した上で、念のためレンタルしておいた。この選択が正解であった、というよりもそもそも致命的な選択であったことは、後で思い知ることになる。

先週と同様、モンスタージプニーに乗り換える。今回は人数が少ないため、荷物も車内に持ち込んだ。また、朝食は後で取れると分かっていたため、バナナは温存しておく。

朝食に立ち寄ったのは、何と先週と同じ食事処だった。Mt. Pulagに行く道と、途中まで同じらしい。但し、今回は昼食(Pack lunch)もここで調達する。汁物もあるのにどうやってpackするのかと思ったら、何とPlastic bag(日本のスーパーで、魚や氷を入れる際に使う透明の小さなビニール袋)にそのまま詰めた! その発想は無かった!

朝食!今回もモンスタージプニーが大活躍

実際には、タッパーや食器が持ち物リストに指定されていた。だが、日本から持ってきていないし、近所のスーパー等で探すのも怠っていた。食器が無いと手づかみで喰うことになる。今回は食事処に用意されていたスプーンを1個拝借した。

8:00頃、登山口に到着した。ここで簡単なオリエンテーションがある。と言ってもタガログ語! Kimが通訳(タガログ語→英語)してくれる情報を必死に聴き取る。この時点ではよく晴れていたため、露出している部分(首の後ろ、耳の後ろ、顔、手)に日焼け止めを塗るのを忘れずに。これとランニングタイツ上下で、日焼け対策は万全のはずだ。その後、準備運動や記念撮影を済ませて、8:30頃には出発した。

登山口の標識トレイルの概要図。左下→右下→右上→左上と巡る

●登り:予定と実績

予定実績高度場所備考
9:008:301540m登山口発 
-9:301780mMt. Mangagew写真撮影など
-10:301700m休憩所昼食
14:0013:252290mMt. Pack写真撮影など
16:0015:212080mMt. Purgatory写真撮影など
18:0016:40 Bakian 

※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。
※高度はGoogle map目視による概算。

●昼食まで

開幕からなかなかの急登が続く。筆者は様子見と準備運動を兼ねて、全体の中ほどの位置を保っていた。最初から飛ばしすぎて後でへばっても無意味だ。それに、Kimは「初日はcomfortableなペースで、トレッキングを楽しむ」と言っていた。一方、Victorは先頭グループ、しかも現地ガイドの直後につけていた。

開幕からなかなかの急登写真を撮りつつ、まったり登る

9:10、最初の休憩ポイントに到着した。周囲はルソン島北部の山岳地帯の名物、棚畑だ。Kimに「調子はどう?」と聞かれたので、「Your pace is very comfortable!」と答えておく。そうしたら、「速く歩きたければVictorについていけ」という。良い機会なので、次からはVictorを含む先頭グループに入ってみる。

棚畑最初の休憩ポイント

9:45、最初のピークらしいMt. Mangagewに到着した。と言っても地元民の暮らす集落のど真ん中にある。付近には小学校もあった。手作り感満載のバレーコートとバスケゴールもある。土曜日なので子供たちの姿は見えなかったが。なお、この辺で雲行きが怪しくなってきた

Mt. Mangagewに到着Bulo小学校

しばらく進むと小さな店があった。Victorは水が不足とのことで、ここで購入しようとしていた。他にはお菓子の類があっただろうか。なお、しばらく先に見える急登の途中に、ショベルカーが登ろうとして立ち往生しているのが見えた。付近の登山者が協力して押しているようにも見えた。

時々ショートカットする(分岐に立つのはガイドのKim)雲が刻一刻と接近中

休憩中に雲が接近してきて、霧雨が降り始めた。筆者はザックカバーだけかけて先に進む。気温はそれなりにあるため、当面は速乾性ウェアで充分だ。一方、後方グループはここで雨具を着用したらしく、差が一気に拡大した。

昼食休憩はこの建物の下の部分で天候は悪化するばかり

10:40、昼食休憩。と言っても集落の一部で、納屋で食べる。霧雨が小雨に変わったため、ここで雨具を装備した。食事も、屋根のある場所でないと厳しい。何しろ、ビニール袋の中にスプーンを突っ込んで食べるためだ。また、他に食器も無いため、肉野菜料理を完食してから飯を完食という流れにした。

●Mt. PackとMt. Purgatoryに登頂

Victorが先頭グループから遅れ始めた。現地ガイド(小柄な女性)、筆者、フィリピン人(屈強な男性)の3名で先頭グループを形成する。しばらくの間は、車も通れる道を徐々に登っていく。登山道らしい脇道に入ってショートカットすることもある。

登山道らしくなってきたと思ったらバイクも通れる一般道へ

12:40、Mt. Packまであと648mという看板と、その先の登山道を示す看板が見えた。後方グループが追いつくまでしばらく休憩を入れる。少し先にまた看板があったため、全員で集合写真を撮影したり。さらに進むといよいよ険しい登山道に入る。だが、少しだけ急登をこなすとあっさり山頂に到着した。

Mt. Packまであと648mの看板Mt. Pack(そしてMt. Purgatory)への登山道

13:25、Mt. Packに登頂。

最後は急登を一気にこなす今日の最高点、Mt. Packに登頂

一緒に登り終えた2人と改めて自己紹介。現地ガイドはミヤと名乗った。荷物を持たず、登山をするとも思えない軽装(ジーンズに運動靴!)で、軽快に登っていく。登山ガイドをするというよりも、普段の生活の一部としてこういうスタイルなのだろう。フィリピン人男性はRos。昨晩、Cubaoからバスに乗る前に軽く自己紹介しただけなので、「Sorry, can I have your name again?」と言って改めて名前を教えてもらう。もっとも、彼も筆者の名前を覚えていなかったのでお互い様か。

ミヤと話し、このMt. Packが今日の最高点であることを確認する。ルート全体の最高点はMt. Komkompol(2329m)で、明日登る。

看板と一緒に写真撮影。そうこうしているうちに、他のメンバー、他のグループも登頂してきた。「Congratulations! Today's highest point!」などと言いつつ出迎える。

ミヤからは「日本語でI love you.は何と言うのか」と聞かれたため、「あ・い・し・て・る」と教えておく。良い機会なので、タガログ語で何と言うのか聞いてみると、「ま・は・き・た」とのこと。居合わせた他のフィリピン人にはタガログ語の「どういたしまして」が「わらん・あのまん」であることを教えてもらった。わざわざ「らはrでなくてlだよ」と指摘されたのは、筆者のrとlの聴き取り能力が全然ダメで、rで発音していたためか。この時点で30分後には忘れそうだと直感したため、メモを取り、何度か発音してみて修得を図る。「わらん・あのまん」はともかく、「まはきた! まはきた!」と繰り返していたら、「誰にでも言うんじゃないよ!」と。ま、そりゃそうだ。

Mt. Purgatoryまであと2.93km苔むした森を進む

この後は基本的に下りが続く。と言ってもアップダウンがあり、雨も降り続いているため、そんなに楽な道のりではない。ミヤ、Rosと先頭グループを形成してひたすら進む。Mt. PackからMr. Purgatoryまで2.93kmとあった。距離的には、日本で言えば、蛭ヶ岳から丹沢山に下山するイメージだろうか。

15:21、Mt. Purgatoryに登頂。地元の言葉ではMt. Mangisiと言うらしい。ピークというよりは展望台という趣だった。晴れていれば先週登ったMt. Pulagが見えるそうだが、小雨が降っている状況では何も見えず。

雨中行軍の末、Mt. Purgatoryに登頂晴れていればMt. Pulagも見えるそうだが……

ラスト1時間、宿泊地のBakianまでの道のりは結構キツかった。小雨は相変わらず降り続いており、休憩すると結構冷える。さらに、約7時間ザックを背負い続けたことにより、肩に痛みを感じ始めた。しかし脚は問題無かったため、それなりの速度で歩き続けていたらいつの間にか集落が見えた。

宿泊地まであと20分宿泊地に到着

●凍える夜

寝る場所は日本で言えば避難小屋のようなところだ。高床式住居になっており、板の間にカーペットが敷かれているが、布団や毛布は無い。そして行動を止めた瞬間、寒くて震える。防寒着を日本から持参しなかったことを心底後悔した。雨具上下を装備解除した後、速攻でマットと寝袋を出し、速乾性ウェア2枚を追加して計5枚重ね着した上で寝袋に潜り込む。ランニングタイツ上の肘から先の部分、それに首回りが濡れていて寒い。しかしこれを装備解除すると残り4枚は半袖orタンクトップなので、着干しに頼るしかない。

夕食時には雨具上下を装備したが、今度は雨具が濡れていたため余分に冷える。しかし雨具が無いとさらに冷えるため、止むを得ない。ガタガタと全身に震えが来た。低体温症の前兆である。夕食はフィリピン山岳地帯の伝統料理らしい。だが、寒くて喉を通らない。まずは温かい豚肉スープを流し込み、内部から温めようと試みる。少し落ち着いたところで飯と野菜炒めを腹に入れ、さらに豚肉スープ。この頃には料理も既に冷え始めていた。恐るべき寒さ!

夕食後はさくっとトイレに行き、小用を済ませておく。ヘッドランプは先週電池切れとなった(替え電池も本体も調達する暇無し)ため、ホテルに置いてきた。これでは日が暮れてからトイレに行けない。

暗くてやることもない。メモも書けない。相変わらず寒いため、雨具上下を室内に干しつつ速攻で寝袋に潜り込む。18:40には睡眠を開始した。と言っても、実際には寒さとの闘いだ。全身を寝袋に入れ、呼気を外に逃さないようにするとそこそこ温かい。但し、マットは上半身の分しかなく、下半身を伸ばすと明らかに熱が逃げていく。ついでに、マットを使っていても上半身が痛い。板の間に薄いマット1枚を敷いただけでは、同じ姿勢で寝ていると結構痛む。よって頻繁に目覚めることとなり、眠りは浅い。

それでも、徐々に着干しが効いてきて、寒さが和らいでいった。速乾性であるランニングタイツ上がまず乾いた。そして、速乾性でない靴下も夜半過ぎには乾いた。これで、足を伸ばしても何とか眠れるようになった。


2017.6.11(Sun)

Mt. Komkompol登頂後、帰還

●登り:予定と実績

予定実績高度場所備考
7:307:40 Bakian発 
-8:40 麓の集落荷物デポ
9:009:232329mMt. Komkompol写真撮影など

※Mt. Tangbawには気付かなかった。
※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。
※高度はGoogle map目視による概算。

●Mt. Komkompolまで

明け方、鶏が盛んに鳴いていた。これで自然に目覚めるのは
キリマンジャロ以来だな。しかしヘッドランプが無いため、日が昇って明るくなるまで待ち。結局起き上がったのは周囲の人が起き始めた5:45のことだった。着干しに成功し、寝袋から出てもさほど寒さを感じない。さくっと大を済ませ、ミネラルウォーターで口をゆすいでおく。

宿泊した山小屋朝飯がうますぎる!

そして朝食がうますぎる! 昨日の夕食をほとんど喰えなかったこともあり、ここぞとばかり喰いまくる。なお、昼食のpack lunch用のジャガイモ+豚肉スープは朝食で食べても良いとのことだったため、ここでたらふく食べておく。温かいうちに喰った方がうまいに決まっている。それに、今度はpackするためのビニール袋が無い。よって昼食は持参したバナナで済ませることにする。他には飯、フルーツ和え、ソーセージ、野菜炒めだったかな。

7:40頃に出発。Bakian集落で記念撮影しつつ。村人に感想を聞かれたため、「いい山だ、但し次は晴れている時期に訪れたい」と回答しておく。「それならば夏(1〜3月)が良い」とのことだった。同じ北半球なのに、雨季・乾季の存在により、日本とは夏と冬が入れ替わる。

出発少し前。右の建物は売店他パーティも含め、それなりの人数に

朝方は止んでいた小雨が再び降ってきたため、雨具上下を着用して出発。なお、この日はRosが先頭グループについてこなかった。「疲れたので今日はゆっくり歩く」とのこと。代わりにミヤ、Jonnanと先頭グループを形成する。Victorも最初のうちは先頭グループに入っていたが、やがて遅れ始めた。

車も通れる道をしばらく歩き、8:40にはMt. Komkompol麓の集落に到着した。ここを拠点に、Mt. Komkompolを目指す。5ペソ(約11円)払えば店内に荷物をデポすることができる。筆者はその必要性を感じなかったが、高々5ペソだし、流れで荷物を置いていった。もちろん、デジカメと水は持っていく。

しばらく急登をこなした後、平地で休憩+記念撮影。今回のツアーでは先週と違って要所で全員で集合写真を撮影する。前回は登山中は真っ暗で、下山は小グループに分かれてしまったため、全員で集合写真を撮影したのは下山後の1回だけだった。

その後は草原地帯を進む。草の丈が高く、紛らわしい分岐もあり、地元民のガイドが無いとまず間違いなく迷うだろう。時々写真撮影をしながらも、ミヤから離れずに歩く。ザックが無いこともあり、足取りは軽い。

草の背丈があり、迷いやすい(撮影は下山中)最高点、Mt. Komkompolに登頂

さらに樹林帯を30分ほど突き進み、9:23にMt. Komkompolに到着した。2,329m、今回のルートの最高点だ。さくさくっと記念撮影。JonnanのTシャツにMARATHON 2015とあったため、マラソンを走ったことがあるのかと聞いてみる。走ったのはハーフで、タイムは2時間数分とのことだった。「今走れば3時間かかる」などと言っていたため、「いや1時間半行けるっしょ!」と答えておく。

●下り:予定と実績

予定実績高度場所備考
10:009:302329mMt. Komkompol発 
-10:30 麓の集落昼食
13:0014:15 Brgy. Ekip Exit point15分休憩
14:30- Municipal Hallジプニーで通過

※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。
※高度はGoogle map目視による概算。

●下山

さくさくっと麓の店まで下山。ミヤは分岐に来ると、正解でない方の道に木の枝を数本置いていた。後方グループへの目印だ。

登山道は整備されている苔むした森

晴れてきて視界も開けた麓の集落まで戻ってきた

下山後は早めの昼食とのことだったため、バナナを食しておく。Jonnan、Victorが付近で遊んでいた子供たちに話しかけていた。我が息子(5歳)と大して変わらない体格の男の子が何と9歳。Jonnanによると、この山岳地帯では混血が進んでいないため、昔ながらの部族の(そんなに大きくない)体格を保っているらしい。そういえばミヤも19歳とのことだったが、体格は中学生くらいに見える。

11:15、出発。バイクが通れる道を徐々に下っていく。雨がほぼ止んだ(霧雨)ため、雨具上を装備解除した。そのうちまた装備するかもしれないため、ザックの背中の部分に挟んでおく。ザックカバーはまだつけておく。

この先の下山は楽勝舗装された道もある

12:00、次の集落に到着したところで休憩。一時的によく晴れてきたため、雨具下とランニングタイツ上も装備解除し、雨具上とともに乾かす。日焼け止めを塗るのも忘れずに。

晴れたら乾燥のチャンス!鶏は各集落でよく見かけた

ここからの下山でも先頭グループを維持した。ミヤの足取りはますます軽く、飛ぶように駆け下りていく。筆者はとてもついていけず。これでも他のメンバーに比較すると速く、JonnanもVictorも遥か後方に遠ざかったのだが。ちなみに、後方グループとの差はさらに拡大した。必然的に、休憩所での休憩時間が長くなった。これは体が冷えることにもつながる。都度、準備運動は心掛けていたが、次第にそれが疎かになっていった。そして。

ショートカット用の簡易階段棚畑が見えるところまで下ってきた

二番目の休憩所に入ってしばらくして本降りの雨となった。しばらく雨宿りし、小降りになってから出発した。ところがすぐに滑って転倒し、左腕に擦り傷を負った。中途半端に舗装された道が特に危険だ。滑り止めらしき刻みもついているが、摩耗していて滑りやすい。ついでに登山靴も9年3カ月使っているため、摩耗している。ちなみに、「滑りやすい」という意味で筆者はslippyと発音したが、JonnanやVictorはslipperyと言っていた。後で調べたところ、確かにslipperyが正しい。

休憩所。この後、本降りの雨が!こういう舗装道がかえって滑りやすい

この転倒後、特に滑りやすい石の道ではやや速度を落とした。ミヤも滑りやすい道を避けて、遠回りでも舗装されていない道を選択してくれるようになった。

次の休憩所で応急処置。ミネラルウォーターで洗浄、乾燥させた上で、絆創膏2枚を貼っておく。

ここから先は傾斜が緩くなり、集落の中を徐々に下山していった。幸いなことに再び滑ることもなく、終着点に到着した。

下山道の終着点この車道をしばらく進んで終了

終着点はBokod Municipal Hallと聞いていたため、それなりに立派な建物を想像していた。だが、実際にはその遥か手前の民家にジプニーが迎えに来ていた。恐らく、後方グループの進軍が遅いため、ショートカットするという判断がなされたのだろう。

そして、事前説明会の資料に記載されていたWash upとは単なる水浴びの場だった。ここで全身を洗うとまた冷えると直観したため、顔と手足を洗うだけにしておく。だが、その後裸足でしばらく歩いたのと、靴が泥だらけになっていたのとで、手足は再び汚れることに。なお、水浴び場の使用料が10ペソ(約23円)だった。筆者は50ペソ札未満の持ち合わせが無かったためしばらく探していたら、Victorがさくっと立替。「俺は金持ちなんだ、気にするな」と。カッコイイ。

水浴び用の建物

Trail Adventoursのガイド(Kimとは別の人。名前を伺わなかった。失態!)に傷の手当てをしてもらう。消毒を兼ねた塗り薬を塗り、ガーゼで覆う。なお、このガーゼは翌日には傷と一体化し、翌々日まではがせず苦労した。

マットと寝袋をここで返却し、支払いもここで済ませる。もっとも、Bakun Trioの催行中止に伴う差額の返金の方が大きかったため、差し引きプラスになった。

●帰還

ミヤに別れを告げないまま、モンスタージプニーで村を後にした。食事処に寄ったタイミングで先週と同様Balutを食す。フィリピン人たちが興味津々で見守る中、先週教わった通りに完食した。いや、普通にゆで卵の味なんですが。なお、雛がある程度育っていると羽が生えていることもあるらしい。筆者が食べた2回とも、その前の段階だったようで、おいしくいただきました。昨日拝借したスプーンも返却完了。

Baguio到着が18:40頃だった。バスは21:40発で、先週のように早い時間帯のバスへの振り替えもできないとのことだったため、Jonnan、Victorとディナー。付近のタパスの店(Te Quiero Tapas Bar and Restaurant)で、フィリピン料理を食す。昼食がバナナ1本だったこともあり、喰いまくった。Victorの食欲にはかなわなかったが!

ディナー!ディナー2!

トイレを済ませ、バスの時刻表を確認。21:30 Pasay行きとある。つまり、先週と同様、Ayala駅で下車させてもらえば良さそうだ。Kimにも事前にAyalaで降りたいと伝えておいたところ、車掌にその旨確認してくれた。何しろ、未明3時にCubaoで下ろされても困る。10km歩くのもタルいし、タクシーを使うのも危険だ。かと言って、MRTの始発を2時間ほど待つのもタルい。Ayala駅で下ろしてもらうのが最適解だ。

バスにはザックを持ち込む。未明に、半分寝ている状況でAyalaで降りる以上、荷物を預けておくとうっかり取り忘れることになりかねない。そして壮絶に冷える。冷房を最小限に抑え、かつ直撃しないように向きを変えておいてもだ。

12日3:00頃、Ayala着。先週とは微妙に違う位置で降ろされたが、何となく付近の風景を覚えていたため、特に問題なくホテルまで帰還した。こんな狂った時間でも、入り口の警備員ペアは仕事をしていた。今週はMt. Purgatoryに登ってきたんだと言いつつ、荷物検査をいつも通り受けつつ、無事に入館完了。

さくさくっと洗濯機を回し、シャワーを浴びて仮眠!


Mt. Purgatory登山の感想

最後に今回の収穫と反省をまとめて記しておく。

●今回の収穫

結果的に、無事に登頂し、下山した。帰国後、ルソン島の山々に登るチャンスはなかなか来ないと思うので、今回モノにできて本当に良かった。

Manilaの宿泊先と職場を往復しているだけでは決して味わえない体験を積み重ねたのも収穫だった。特に印象に残ったのは、この2,000m級の山岳地帯を生活拠点としてたくましく生きている人々の存在だ。今回のパーティメンバーと知り合えたのも収穫だ。数名とはFacebookでもつながりを持つことができた。

登山としては先週のMt. Pulagよりはキツかったものの、特に2日目は楽勝だった。ツアーなのでペースがゆっくりで、むしろハイキングという趣だった。ほぼ全行程で雨に降られ続けたのには閉口したが、適度な難易度アップになって良かったという見方もできる。

筋肉痛は無し。1日目のラスト1時間だけ肩に痛みを感じたが、2日目には回復し、二度と痛むことは無かった。古傷の右膝の痛みも再発しなかった。全体的に負荷が低かったためだろう。また、毎日実行している膝トレーニングの効果であろう。但し、次回に向けて一層の膝トレーニングを積むとともに、登山・下山自体のトレーニングを継続する必要があるだろう。

日焼けとそれによる消耗は、日焼け止めでほぼ完全に防ぎ通した。そもそも雨に降られている時間が長く、直射日光を浴びたのはわずかな時間だった。

●今回の反省

まずは防寒対策の不備。フィリピンが常夏の国であるという先入観があり、油断しすぎた。山岳地帯、しかも2,000m級となると、10〜15度まではすぐに下がる。天候が良ければまだ何とかなるが、風雨が加わると今回のように凍えることになる。

次に怪我。原因の一つは、登山靴の摩耗だ。靴底は明らかに擦り減り、しかもかかとの部分がはがれつつある。そろそろ登山靴を買い替えるべきか。

他には、ヘッドランプの不備。今回は日没前に宿泊地に到着し、翌日の行動も日が昇った後だったため、特に困ることは無かった。だが、何らかの原因で行動が遅れた場合や、夜間にトイレに行きたくなった場合等は、ヘッドランプが無いと詰む。フィリピンにいる間は購入するのも面倒なので(最寄りの登山用具店まで約4km)、次回はレンタルを活用しよう。そして帰国後に買い直すことにしよう。

そして今回もガイド付きのツアー登山であり、自分でルートファインディングして登りきるという体験はできなかった。もっとも、フィリピンのほとんどの山では自然保護等を理由としてガイド雇用と登山者登録を必須としており、この制約は常について回る。とはいえ、後日になってGoogle mapで地形図の表示も可能なことが判明したのだから、次回は地図を用意し、事前に読み込む。

●総括と今後

筆者にとって、海外の登山はこれで六度目だ。せっかくフィリピンに長期滞在しているのだから、戒厳令下のミンダナオ島は避けるとしても、他のルソン島の山にもどんどん登りたい。


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