余市岳



●概要

・常盤バス停から赤井川ルート往復
・単独
・余市岳(1488m)に登頂
・日帰り

●動機、準備、感想

余市岳登山の動機
余市岳登山の準備
余市岳
余市岳登山の感想


余市岳登山の動機

8月最終週、夏休みの混雑もほぼ終わった時期を狙って、札幌周辺に家族旅行することとなった。だが、せっかく5年ぶりに札幌に行くというのに、子供の遊びに付き合うだけというのは実にもったいない。そこで当初は旭岳(北海道最高峰)に登ろうと考えた。だが、検討を進めたところ、「ロープウェイ不使用」「公共交通期間のみ使用」「札幌周辺から日帰り」という条件下で往復するのは事実上不可能であることが判明した。

次に、札幌から近い山を探した。最も手軽そうなのは手稲山(1023m)だった。ところが、少し調べたところ山頂は鉄塔ばかりであり、魅力を感じなかった。次に候補となったのは札幌岳(1293m)だ。こちらは、冷水コースは初心者向け、豊滝コースは登山口へのアプローチに車が必須、空沼岳からの縦走は藪漕ぎ必須、ということで、検討段階で候補から外れた。

余市岳は、札幌市最高峰ということもあり、早い段階で候補に浮上していた。だが、車が無い場合は1日に2便しかない路線バスに頼らざるを得ない。しかも最寄バス停から車道4.4km、林道3.9kmを経てようやく登山口にたどり着く。つまり往復16.6kmもの精神修行、というよりも無駄な消耗を余儀なくされる。従ってあまり気は進まず、消去法で選択した。


余市岳登山の準備

登山自体の難易度は、3週間前に登頂した
利尻山より高いとは思えなかった。それよりも、往復16.6kmものアスファルト+砂利道への対策が必要と判断した。登山靴で歩くのは、脚の消耗、靴の消耗の両面からあり得ない。そこで、ランニングシューズを持参して途中で履き替えることにした。走行距離1100kmを超え、現役を引退して普段履き用にしている靴があったため、それを持参した。

また、当初は28日(水)に登る予定だった。だが、天気予報を確認したところ、28日は降水確率90%となっていた。ただでさえ精神修行が辛いのに、雨天はあり得ない。それに、登山道序盤にあるらしい渡渉への影響も懸念された。27日(火)は曇りとなっていたため、予定を入れ替えて27日に登ることとした。

登山計画は、chrome_taka様の山行記録(2018.8.5)を参考にした。登山道だけならともかく、常盤バス停からのアプローチも含めた標準コースタイムはGoogle検索しても見当たらなかったためだ。この方の歩くペースは標準コースタイムの0.6〜0.7倍とのことで、筆者よりもやや速い。従って、頑張って歩けば良い指標になると判断した。

水や電解質は多めにした。即ち、水2.5リットル、ウィダー類3個である。一方、荷物を最小限とすることにも気を配った。下山時の膝へのダメージを可能な限り軽減するためだ。また、ランニングタイツ下を着用し、膝サポーターの代わりとした。

費用は以下の通り。家族旅行の分は含めていない。なお、前日夜から当日夜まで家族と別行動とし、小樽に移動して宿泊した。交通の利便性、朝食のコスパを考慮した結果だ。

費目費用備考
航空券31040往路JAL、復路AIRDO
その他交通費6340路線バス、電車
食糧、水約600水2.5L、ウィダー3個
宿泊5500ドーミーイン小樽(朝食バイキング含む)
合計43480


2019.8.27(Tue)

余市岳

〜余市岳に登頂し、無事下山。序盤の車道4.4km、中盤の林道3.9kmがマジ精神修行。もちろん下山時も。

●最寄バス停到着まで

前日のうちに小樽に移動し、駅前の
天然温泉 灯の湯 ドーミーインPREMIUM 小樽に宿泊した。カプセルに素泊まりなら何と破格の3000円で済む。今回はバイキング朝食付きで5500円のプランを選択した。周辺に朝食を食べる場所がほとんど無いと想定したためだ。1kmほど歩いて市場まで行けば別だが、登山前の消耗は可能な限り回避したかった。また、いくら食べ放題を含む「海鮮丼&海鮮炙焼」というのも魅力的だった。

結論から言うとカプセルホテル最強。睡眠環境も、風呂も、朝食も、すべてが快適すぎた。家族が宿泊している札幌のホテルは費用が3倍なのに、満足度はこちらの方が遥かに高い。

一応、余市駅ないし常盤バス停周辺の宿も検討した。だが、ネットで検索した限りではコスパの良いところを見出せなかった。というよりも、宿自体が極めて少なかった。また、札幌駅周辺にもカプセルホテルはあるが、当日朝の移動に時間がかかるのに加えて、朝食のコスパを考慮すると小樽の方が数段良い。

カプセルホテル快適すぎいくら食べ放題! 充実の朝食

4:50起床。速攻でトイレを済ませた後、朝風呂! 何という贅沢な時間だ。しばらく日記を書いた後、待望のいくら食べ放題! ご飯二杯余裕! 食後のデザートにコーヒー、緑茶まで満喫する。もっとも、喰いすぎて登山中に苦しくなる事態は避けたかったため、ほどほどのところで止めざるを得なかった。朝食(差額)2500円分の元が取れたかどうかは怪しい

宿に居てもやることがないため、7:30には出発した。ここまで出発時間を遅くできるのは小樽泊とした効果だ。逆に、出発を速めても余市駅前で路線バスを延々と待つことになる。

小樽から電車に乗り、余市駅へ。そういえば、8年前の後方羊蹄山の時はこのルートを逆に辿ったのだった。

余市駅では路線バスへの乗り継ぎの時間がわずか6分しかない。しかも電車が3分遅れて到着したため、焦りつつ改札に向かう。何と自動改札が存在せず、現金で精算となってさらにタイムロス。バス停を探すのに手間取ったらここで詰んでいた。幸いなことに駅前はそんなに広くなく、目指すバスをすぐに発見できた。

バス旅を延々と48分。トンネルを抜けて赤井川集落に入り、そこも走り抜けて余市岳方面に接近していく。乗客は筆者の他に1人だけで、後半は貸し切り状態となった。この利用率では1日に2本しかなくなるわな。むしろバス路線が維持されていることに感謝だ。仮にこのバスが無かったら、余市方面からアクセスするにはレンタカーが必須となる。あるいは、定山渓方面からの藪漕ぎルートを余儀なくされる。

余市への電車は1両のみ最寄バス停「常盤」

9:23頃、ようやく終点の「常盤」に到着した。200mほど離れたところにKIROROの大看板が見えた。そして長い長い精神修行が始まった。

●登り:予定と実績

予定実績高度場所備考
9:239:26380m常盤バス停 
10:0710:07560m一般車道終了休憩1分
10:5310:51850m登山口休憩3分
11:4011:481290mゴンドラコース分岐通過。少し先で休憩2分
12:2412:291488m余市岳休憩8分。写真撮影、昼食

※実績時間は腕時計で計測。デジカメのファイル作成時間も参考とした。
※高度は現地の標識によるもの。無い場合は国土地理院の地図の目視による概算。

●登り

腕や顔、首、耳の後ろ等に日焼け止めを塗り、さくさくっと出発。当面は平地なので、準備運動も不要だ。天候は快晴なので、上は速乾性Tシャツ1枚のみである。下はランニングタイツ+短パンとした。また、目は雪山用サングラス(通常の眼鏡の上に装着するタイプ)、頭はランニングキャップで防御する。

序盤の車道4.4kmがマジで精神修行。緩い登り坂が延々と続く。筆者は一体何のためにこんな単調な道を日に焼かれながら少しずつ登っているのだろう、という考えがまず浮かんだ。途中からはそういう思考すらエナジーの無駄としか思えなかったため、無になってひたすら歩く。なお、途中からは歩道が整備されている。車道の方が凹凸が少なく、歩きやすい。だが、大半の車は制限速度など完全に無視して高速道路並みにぶっ飛ばしているため、歩道を歩いた方が安全だ。登りでは、インコースを取るために車道を斜め横断する気力すら無かった。

精神修行の始まり日に焼かれながらひたすら歩く

歩き始めて23分、前方に余市岳らしき山が見えた。一方で、18日前と14日前にヒグマが目撃されたとの張り紙も。単独行動なのに加えて、5年前にトムラウシ山に登る前に購入した熊鈴はうっかり忘れてきたため、対策はとっとと登って下りることだけだ。いや、本当にヒグマに出くわしたらその時点で撤退するしかないか。

余市岳らしい山が見えたヒグマかよ!

その後は、キロロリゾートの建物が次第に大きく見えてくる。とはいえ、見えてからが遠い。それに、4.4kmの道のりなのだから、どんなに速く歩いても40分はかかる。下手に希望など持たず、ゴールはまだまだ先にあると想定し、かつ残りの道のりを冷静に計算しながら一歩一歩進んでいくのが精神衛生上良い。

キロロリゾートが見えてからも遠いこれは何の精神修行だ

歩き続けること41分、ついに一般車道終了! 良いタイミングなので休憩を入れる。但しランニングシューズはまだ装備解除しない。これから中盤戦、林道3.9kmだ。車も走れる林道なら、ランニングシューズで充分だ。登山靴よりも圧倒的に歩きやすいし、登山靴の消耗を抑えることもできる。

まだまだ続く精神修行。曇ってきたのが救いここまで41分。無になって歩き通した

少し進んだところにあるゲートには、ゲートから登山口まで3.9km、登山口から山頂まで4.7kmと表記されていた。標準コースタイムはそれぞれ75分、120分らしい。これだけ時間をかけて歩くと、山頂到達が13時過ぎとなる。すると17:10常盤発のバスに間に合わせて下山するのが困難であり、山頂を目前にして撤退せざるを得なくなる。一方、chrome_taka様はそれぞれ46分、91分でクリアしている。筆者の実力でこのタイムは難しいかもしれないが、目標にすることで帰りのバスに間に合う確率も上がるだろう。

ここから中盤戦。標準コースタイム3時間15分ゴンドラ脇の道をひたすら歩く

さて中盤戦開始。まずはゴンドラを横目に見つつ、キロロリゾートの端の舗装道を登っていく。序盤の一般車道よりもやや傾斜が上がり、ペースを落とさざるを得ない。少し歩いたところで振り返ると、キロロリゾートがだいぶ遠くに見えていた。このペースを維持できれば良いのだが。

しばらく歩くと砂利道に変わる。とはいえ、登山靴が必要になるほどの凹凸はまだ無い。また、後半の一部の折り返し部分(傾斜のキツい場所)のみ舗装されている。

途中に工事車両用と思われる分岐が二箇所あった。二箇所目は林道の終わりの方にあり、その先はなだらかな下りに変わった。ここで初めて下山してくる人に遭遇した。ゴンドラでショートカットできるのにわざわざ精神修行する人はそれだけ少ないということだ。

振り返ればキロロリゾート砂利道をひたすら歩く

林道の終点付近に、トイレと表示された建物があった。朝食後のコーヒー+緑茶の影響か、やや小便意があった。だが、施錠されていて入れず、そのまま進む。登山口を見出すのに少し手間取った。登山道入口の看板自体は遠目には極めて分かり辛い。その少し手前、熊出没注意の看板が目印となった。常盤バス停から85分であり、ここまでは順調だ。

登山口で登山靴に履き替え、ランニングシューズをザックに格納する。この辺にデポしておいても良かったかもしれない。が、登山靴よりもランニングシューズの方が軽いし、水とウィダーがやや減ったため、ザックの重量は明らかに軽くなった。

登山口の先には、なだらかな土の道が待っていた。アスファルトや砂利とはようやくオサラバだ。一方、少し進むと凹凸が激しくなり、ゴツゴツした岩も現れた。ランニングシューズのまま進むのは厳しいと思う。

登山口の看板が分かり辛い(撮影は下山時)こういう道を待っていた!

登山道をしばらく進むと、渡渉ポイントが現れた。沢の水量はそこそこ多く、滑ったら靴と靴下が水没するのは確実だ。特に二箇所目の渡渉では安全なルートを見出せなかった。しばらく上流に進むと、より確実な渡渉ポイントを見出せないまま行き止まりになった。下流は淵のようになっており、こちらも渡れない。また、渡った先に登山道らしい道も見える。つまり、水没覚悟で特攻するしかない。岩の上を歩くことにこだわらず、水の中でも滑りにくそうな平らな場所を選んで少しずつ進む。途中からは水没覚悟で特攻したところ、極めて幸運なことにノーダメージで渡ることができた。仮にここで水没なり転倒なりしたら、登頂断念もあり得た。また、天気予報を見て日程を今日に繰り上げたのも正解だった。雨天で沢が増水していたら、今の装備と技術で渡るのは不可能だ。

渡渉その1。滑らないように慎重に渡渉その2。水没覚悟で特攻

渡渉を終えた後、しばらくの間はまったりと進む。地図上でも、高度1020m地点まではなだらかな登りとなっている。但しその先には急登も幾つか現れる。

滑りやすそうな道。登りはまだ楽初の急登キタ!

急登を幾つかこなし、高度1180mを超えたあたりから再びなだらかな登りに。但し、地面には笹が堆積していて滑りやすい。何度か足を取られたり、一歩進んで四分の一歩戻ったりした。

また、登山道の両側には背の高い笹が群生していて、見通しが利かない。それでも、ゴンドラ口からの登山道と合流する少し前になって、ようやく余市岳の山頂部がその姿を現した。

余市岳が見えた!急登を終え、まったりした道。笹で滑る

11:48、ゴンドラコースとの合流点に到達した。渡渉に手間取った割には健闘し、12:30までの登頂も見えてきた。合流点から60m下る途中で、余市岳の山頂部分がようやくはっきり見えるようになった。但し、山頂一帯は雲に覆われており、天候の悪化が懸念された。

ゴンドラコースとの合流点余市岳山頂が雲に覆われてきた

さらに進むと、山頂へ至る道がはっきりと見え始めた。1239mのコルから約250m登るとはいえ、見た目はなだらかな道であり、テンションが上がる。実際、最後の登りに入ってからもしばらくの間は楽勝だった。

見た目は楽勝っぽい道ガレ場の始まり

ところが、しばらく進むと筆者の苦手とするところのガレ場となった。しかも、途中からは水の流れ下る道となり、大変滑りやすい。一歩ずつ慎重にクリアしていく。途中、小動物の気配を何度も感じた。また、岩の上にあった動物のフンと思われる物体を回避できず、まともに踏みつけたこともあった。熊出没注意の立て札があったことを今さら思い出す。フンの形状は球に近く、後で検索したヒグマのモノとは違っていた。が、知識が無ければヒグマを想定せざるを得ない。速攻で登頂して下山するのが唯一の対策だ。

濡れた岩で滑る。平らな岩を選んで進む今度は泥濘

ガレ場を突破すると、今度はハイマツ帯となった。傾斜はだいぶ緩くなり、ゴールは間近と思われた。

ようやく見通しが開けてきたハイマツの間を進む。ゴールは近い

さらに進むと、ようやく山頂と思われる場所に出た。が、そこには「山頂はここからあと300m先」という文字列が。もう、ここが山頂でいいよ!

山頂だと思ったら心を折る看板がほぼ平地。距離だけが長い

ラスト300mはそこまで急な登りではなかった。淡々と進み、12:29に登頂を果たした。常盤バス停から3時間03分。悪くないペースだが、3時間を切れなかったのが残念だ。渡渉と終盤のガレ場でのタイムロスが響いた。

余市岳山頂に到着!三角点にデジカメを置いてタイマー撮影

●下り:予定と実績

予定実績高度場所備考
12:4112:371488m余市岳発 
14:0013:131290mゴンドラコース分岐休憩1分
14:3314:03850m登山口休憩3分。少し先で靴履き替え2分
15:1114:49560m一般車道開始休憩2分
16:0315:31380m常盤バス停通過
16:2915:54310m農場前バス停2分後に山中牧場着

※実績時間は腕時計で計測。デジカメのファイル作成時間も参考とした。
※高度は現地の標識によるもの。無い場合は国土地理院の地図の目視による概算。

●下り

相変わらずガスっているため、速攻で下山にかかる。長居は無用だ。この時点では体力的に余裕があったため、高山植物を見つけて写真を撮影してみたり。

ところが、気合が抜けていたためか、下方向への注意が一瞬途切れたためか、左膝の下をハイマツの枝でざっくり切った。ランニングタイツ下を装備していたためダメージは軽減されたが、ひりひりと痛む状態が30分ほど続いた。宿に帰還後にタイツを装備解除したら、約4cmにわたり切れて出血に至っていた。

ガスっていて何も見えず。速攻で下山へ何やら可憐な高山植物

続いて、登りで消耗したガレ場を慎重に下る。水に濡れて滑りやすいため、登りよりも時間をかけるイメージで一歩一歩慎重に。

山頂周辺から脱出すると雲が途切れた。その後しばらくの間は、登りでは余裕が無くて見えなかった景色がよく見えた。特にゴンドラ駅方面の山々や登山道、建物は常にはっきりと見えていた。

ようやくガスが少し途切れたゴンドラ駅方面の山は常に綺麗に見えていた

ガレ場を終えたら1239mコルまでまったりとした下りだ。コル部から約60m登り返し、ゴンドラコースとの分岐を左折する。しばらくの間は、まったりとした下りだ。登りでは気付かなかったが、まだ8月だというのに既に紅葉&黄葉が始まっていた。北海道の山では既に晩秋だ。

ガレ場終了。しばらくはまったりと進む8月で既に紅葉&黄葉が!

ゴンドラ駅とほぼ同じ高度まで下ってきたあたりから、急な下りが始まる。さほど難しいところは無い。滑らないように注意しつつ、サクサク下っていく。

急な下りの始まりこんな道を下ります(下から撮影)

そして最大の難所である渡渉ポイントを迎えた。相変わらず、安全なルートを見出せない。岩の上を歩くと確実に滑りそうだ。そして登りの時のような悪運にも恵まれなかった。見事に滑り、両膝から下が登山靴を含め水没した。転倒しなかっただけまだマシか。一歩間違えば滑って転倒し、下流に流されてより重大な怪我を招いたと思う。この渡渉ポイントは筆者にとってそれだけ危険な場所だった。

渡渉地点。ルートが見えないどーやって渡るんだ?

一方、それまでの道のりで泥濘に特攻しまくって泥だらけになった靴がある程度綺麗になった。靴と靴下が水を吸って重くなったが、林道区間をしばらく歩けば徐々に乾燥するだろうと前向きに考える。そこから先にも泥濘が存在したが、可能な限り靴を汚さないルートを選択し続けた。

渡渉ポイントの少し先で、登りでは気付かなかった鮮やかな色のキノコを見かけた。これが噂に聞くベニテングダケとかいうやつか。見た目にも毒々しい。とても喰らう気にはなれない。いや触る気にすらなれない。

この後、両膝から下が水没ベニテングタケ? 毒キノコっぽい

下山開始から86分、登山口に戻ってきた。登りではこの登山口の場所が分かり辛かった。下りでは、林道の方向が分かり辛い。ゴンドラコース等から登ってきて下りのみ林道を選択する場合は、ここで迷うと思う。左右に分かれているように見えるためだ。しかも、右に行くとなだらかな登りが続くため、地図を見ていないと疑心暗鬼に陥ることだろう。筆者は林道を登ってきたため、右が正解とすぐ分かった。

最初のアスファルトに到達するまでは、登山靴のまま進む。渡渉で水没した靴を可能な限り乾かしたかったためだ。しばらくの間は緩い登りとなっていてペースが落ちるため、ちょうど良い。なお、この辺で巨大なフキの群生を見かけた。

林道を進む。登山靴を乾かしながら巨大なフキの群生地

最初のアスファルトでランニングシューズに履き替えた。登山靴はある程度乾いたとはいえ、水を吸って重くなっていた。ここまでで水を0.7リットル、ウィダーを2個消費したため、ザックが軽くなっていたのが幸いした。

ランニングシューズの効果は素晴らしい。脚が明らかに楽になり、砂利道を軽快に下っていく。登りと違って心肺が消耗することもない。にもかかわらず、林道終点まで46分を要した。何と、登りより2分余分にかかっている。脚はそれなりに消耗していたということか。

キロロリゾートが見え始めてからはさらにペースアップ。登りでは苦しかった区間だが、下りでは目標物がどんどん近づいてくるため元気が出る。

途中からランニングシューズに履き替えキロロリゾートまで下ってきた

その後は再び精神修行の始まりだ。下りでは、インコースを攻めるために積極的に車道を斜め横断していく。もちろん、高速道路並みにぶっ飛ばしている車の気配が無くなったのを充分に確認してからだ。歩道の脇や、中央分離帯には、ところどころに花が植えられている。精神修行の負担を少しでも軽減するためだろうか。

精神修行の再開道端の花畑は綺麗だが

とはいえ、花が植えられている区間はそれほど多くない。車道が延々と続く区間は、登りと同様、精神修行としか思えない。

精神修行は続くよどこまでも〜延々と4.4km続きます

花畑は精神修行の支えのためか三色花畑

常盤バス停に戻ってきたのは15:31のことだった。一般車道に出てから42分で、何とこの区間でも登りより1分余分にかかった。下りの方が明らかに楽なはずなのに。

●下山後

余市駅に戻るバスは17:10まで無い。ここで1時間39分も待つのはあり得ない。そこで、引き続き1つ前のバス停「農場前」を目指す。このバス停の付近にソフトクリームの看板があったのを、往路のバス内から確認済みだ。そして追加分の2.5kmの精神修行が再開された。

常盤バス停。17:10までバスは無いよって精神修行を2.5km続行

この車道は国道393号であり、キロロリゾート内と比較しても車の通行量が多い。相変わらず、制限速度を守っている車などほとんど無い。また、歩道がある区間はごく一部のみで、場所によっては路肩すら無い。大半の車は歩行者を見ても徐行する気配など皆無で、ハンドル操作で対向車線にはみ出して回避していく。よって、徒歩の危険は明らかに増す。それでも、車の気配が無いのを確認しながら、インコースを攻めていく

これは何の精神修行だ心を無にしてひたすら歩く

さらに歩き続けること23分、ようやく農場前バス停に到着した。バスの時刻表を見ると、17:13発となっている。つまり、バスに乗れば常盤から3分ということだ。

次のバス停「農場前」バスだと2.5kmを3分らしい

さらに2分歩いて、目的地の山中牧場を見出した。目当てはソフトクリーム! うめええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!! 写真を撮影しつつ、かれこれ30分ほど滞在した。

山中牧場!うめええええええええええええ!!!!!!!!!

残りの時間は外に出て、バス停の見える場所でこの日記の元となるメモを書きつつ待ち。防災放送か何かで、「ヒグマが出没したので警戒して下さい」云々と大音量で流れていた。今日ヒグマに遭遇することなく余市岳に無事登って下山できたのは、運が良かったということか。

最後の10分はバス停で待ち。万一乗り損なったら詰みだからだ。一応、国道393号を26kmほど逆に歩いて小樽に出るという最終手段はあるものの、絶対にやりたくねえ! 幸いなことにバスは定刻通りに到着した。ちなみに、農場前から乗ると運賃が50円ほど安くなる。

余市駅。周辺には何も無い札幌に移動。夕食はスープカレー

バスはこの復路でもほぼ貸し切り状態だった。後半で1人乗ってきただけだ。

18時頃、余市駅まで戻ってきた。まずは速攻でトイレを済ませる。ここで約30分と微妙な待ち時間がある。特にやることもないので、駅に置いてあった各種パンフレットを読み漁りつつ待ち。駅付近で夕飯を食べられれば良いのだが、それらしき店は見出せなかった。検索したところ、徒歩10分ほどの場所に店は存在した。だが、オーダー+食事の時間が10分しかないのでは危険すぎる。また、電車を1本遅らせるという選択肢も無い。札幌帰還が1時間以上遅くなる。

駅に併設されている物産売り場は、間の悪いことに18:00にちょうど閉店となった。それどころか、切符売り場も窓口も既に閉まっていた。Suicaを使える自動改札も無い。ではどうするのかというと、乗車時に整理券を取り、降りる時に精算する。整理券には駅名が記載されている。

小樽駅で改札にダッシュ。速攻で精算し、即Suicaで入り直す。JRの運賃体系のマジックで、この行動で交通費が70円浮く(1070円→360円+640円)。代償として、エアポート快速で32分立ちっぱなしになりやがったが!

札幌到着後、地下に潜りエスタへ。ここまでは2分程度だったが、そこからフードコートを見つけるまでに5分迷う。フロア内の目立つところに地図が無いため、ローラー作戦で全部歩いて最後にやっと見つけた。妻子と合流し、札幌名物らしいスープカレーを貪り喰らう。ついでに、妻子がデザートにしていた各種ソフトクリームもつまみ喰い。うめええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!


余市岳登山の感想

最後に今回の収穫と反省をまとめて記しておく。

●今回の収穫

主目的の余市岳に無事登頂し、下山した。今後登るチャンスはなかなかないと思う。今回一発で登頂できて本当に良かった。

また、ほぼ想定通りの時間で登って下りてきた。登り3時間03分、山頂8分、下り3時間17分、計6時間28分だった(休憩時間含む)。常盤までの下りは2時間54分であり、登りと大差無かった。やはり下りはまだまだ苦手であるようだ。登山道区間に限れば、登り1時間38分、下り1時間26分だった。chrome_taka様のタイムが大変良い目標となった。改めて感謝申し上げたい。

背景として、登山中の天候と気温が比較的良かったことが挙げられる。極端に暑くも寒くもなく、雨も降らなかった。山頂付近は雲に覆われていたが、少し離れた場所からの景色は大変良かった。

登山靴の他にランニングシューズを持参し、道に応じて履き替えたのは大正解だった。登山靴の消耗と、体力の消耗を同時に防ぐことができた。確かにザックは多少重くなるが、それ以上に速度アップと疲労抑制の効果が高い。多少の悪路で壊れても構わないと割り切った。実際には翌日と翌々日の朝ラン、そして観光でも使用した。左足の親指の爪が当たる部分に穴が開きつつあったが、今回は辛うじて耐えた。

ランニング鍛錬とランニングタイツ下のお陰で登りには余裕があった。古傷の右膝の痛みも再発しなかったし、足の親指の爪の内出血も無かった。

水分と電解質の補給に関しては、余裕を持って実行できた。水0.9リットル、ウィダー類2個を消費した。結果的に、水1.6リットルを残しての下山だった。林道+車道対策として多めに持参したが、もう少し少なくても良かったと思う。

日焼けは、ランニングキャップ、サングラス、日焼け止めで完全に防御した。曇っていた区間、樹林帯が比較的多かったのも幸いした。

●今回の反省

筋肉痛は主に太ももに来た。しかも、超回復する前に連日の朝ランで痛めつけたため、2日後がピークで、5日後まで続いた。但し、3週間前に利尻山+礼文岳で下りの訓練をしたお陰で、痛みは軽減された。

また、熊対策が皆無だったのは反省すべきだ。北海道の山を登るにあたり、せめて熊鈴は忘れずに携帯しておきたい。

●総括と今後

登山は爽快であることを再認識した。特に北海道の山に夏に登るのは極めて快適だ。今後も将来のより困難な山行に向けた訓練を継続する。ついでに、関東近辺の百名山を潰しておくのも良いだろう。


登山ページに戻る
トップページに戻る