キナバル山登山



●概要

・Timpohon Gate発着のルート
・6人パーティ(ぽかたん、ゆぞ、どらぐ、むな、れえる、筆者)
・最高点であるLow's Peak(4095m)に登頂
・Pendant Hutに宿泊し、Via Ferrataを楽しむ
・下山後はFlyfishやシュノーケリングを楽しむ
・以上を、17日深夜〜20日深夜(実質、21日未明)という強行軍で敢行

●動機、戦略、準備、感想

キナバル山登山の動機
キナバル山登山の戦略
キナバル山登山の準備
キナバル山登山の感想

●登山日記:目次

日付概要
2011.6.17(Fri)東京出発、深夜直行便に搭乗
2011.6.18(Sat)キナバル登山 〜Pendant Hut(3289m)まで〜
2011.6.19(Sun)キナバル登頂 〜Via Ferrata、下山まで〜
2011.6.20(Mon)Flyfish、シュノーケリング、帰国


キナバル登山の動機

キナバル山は、マレーシア最高峰かつ東南アジア第三位の高峰であり、標高は富士山(3776m)を上回る。筆者にとって4000mを超える山に登るのは
キリマンジャロ以来約1年ぶりである。登頂の技術的な難易度は(一般的な登山道を進めば)高くない。だが、4000m峰であることと、Via Ferrataの存在により、一度は登ってみたい山だった。

筆者は2008年、2009年と続けて富士山に登頂した。その過程で次の目標として挙がってきたのは「日本国内のさらなる難山に登る」「日本百名山に登る」「海外の高山に登る」の三点であった。ここで日本国内のさらなる難山とは槍ヶ岳(3180m)、剱岳(2999m)、奥穂高岳(3190m)等を、海外の高山とは玉山(台湾最高峰、3952m)やキナバル山、ウィルヘルム山(パプアニューギニア最高峰、4508m)等を意図していた。

今回はキナバル山を選定した。背景には、羽田−コタキナバル直行便の存在により短期間で登頂可能なことがある。余った1日を有効に使って、Flyfishやシュノーケリングといったアクティビティを楽しむこともできた。


キナバル登山の戦略

今回もキリマンジャロ登頂時と同様、100%に近い確率でLow's Peakまで登頂することを第一目的とした。即ち、登山に必要な物は徹底して採用する一方で、登山に不要な物は徹底して省くということだ。例えば、現地でのリスクを事前に可能な限り軽減するべく、登山に関しては現地ツアーを利用した。キナバル山には勝手に登ることができず、現地でガイドを雇う必要がある。これを当日行き当たりばったりでやるのではなく、現地ツアーを予約してスムーズに登山に臨めるようにした。

また、キナバル山に登るには山小屋の予約が事実上必須である。日帰りでの登頂はトレイルランナーでもない限り難しいし、勝手にテント泊することも禁じられている。ところがその山小屋の予約も、個人では困難である。旅行会社が事前に大量に枠を確保しているためだ。現地ツアーを利用すれば、この問題も解決できる。

現地ツアーはAmazing Borneo Toursを利用した。というよりも、Google検索した限りでは、ここ以外に信頼に足るツアー会社を見出せなかった。この会社は登山だけでなくボルネオ島のさまざまなツアーを扱っている。また、英語で意思疎通できることも決め手であった。他には日本の旅行社のツアーも検討した。だが、概して料金が高額だったため、早い段階で選択肢から除外された。現地ツアーとの差額の大半は日本語対応によるものと考えられる。しかし、我々のパーティは英語で問題なく意思疎通できるため、敢えてその差額を負担する理由は全く無かった。

また、Amazing Borneo Toursではベーシックな1泊2日の登山ツアーの他に、岩下りを含む難易度の高そうなコースもあった。1人あたり1万円弱の費用増でこのような面白そうな体験ができるなら是非やりたいと考え、このツアーに申し込んだ。問題点は、予約時に前金として50%の支払が必要な上、キャンセル料も高いということだった。実際、Jinさんのキャンセルに際し、85%+αものキャンセル料をふんだくられた。不明点はE-mailで質問しまくった。この質問により、サイトには明記されていなかった「コタキナバル到着直後の送迎」が実現した。

航空券(羽田−コタキナバル直行便)とホテルの手配はてるみくらぶを利用した。こちらは料金が日本国内では一番安かったためである。航空券に関しては、経由便を数ヶ月前に確保できればさらに安くなる。だが、その時点では参加者の都合が確定していなかったことと、経由便ではタイムロスが大きく、休暇を余分に確保しなくてはならないことを考慮し、直行便で行くこととした。ホテルに関しては、3人部屋×2の確保や、現地での送迎など、今回の旅行には必要十分な手配をすることができた。ただ、東南アジア担当になかなか電話がつながらないという難点があった。代表電話にかけてつないでもらう方が速いことを、後でどらぐに教えてもらった。

登山用の装備に関しては、夏の富士山に登った時のものに加えて、キリマンジャロで使用したダウン上下および毛糸帽子を持参した。富士山では山頂で御来光待ちをしている約2時間で猛烈に冷えたため、今回はその教訓を活かすこととした。そしてこの選択は正しかった。キナバル山頂付近では富士山頂付近と違って、温かい飲み物の自動販売機があったり山小屋で味噌スープやラーメンが販売されていたりはしない。防寒対策は自前でやらなくてはならない。

登山に限らず、旅行の際には荷物を最小限にするのが筆者の方針だ。今回は26Lザックに登山装備を、PC用鞄にその他の荷物(海パン、変換プラグセット、ズック靴、最小限の着替え等)をパッキングした。帰宅時の土産も結局この2つの荷物の中に収納できた。

防蚊対策に関しては不十分だった。結果的に蚊に刺されることはなかった。だが、マラリア等のリスクを考慮すると、蚊取り線香も虫除けスプレーも持参しなかったのは無用心だった。日焼け対策に関しては、キリマンジャロで使用したものを持参した。結果的に登山中には直射日光に素肌を晒すことがほとんどなく、この日焼け止めは使用しなかった。一方、シュノーケリング中にはこの日焼け止めが海水で流れ落ちてしまい、ほとんど効果が無かった。

海外旅行用の保険に関しては、検討したが結局加入しなかった。もっとも、一番クリティカルな登山中の保険は登山ツアーに含まれているため問題ない。今回最も痛かったのは航空機遅延により発生した羽田から自宅までの深夜タクシー代だ。これを何らかの保険でカバーできるならば次回は加入を検討しても良いかもしれない。


キナバル登山の準備

キナバル登山が現実味を帯びてきたのは2010年10月。ぽかたんの元に、前述の
てるみくらぶから羽田発着コタキナバル直行便ツアーの案内メールが届いた時だった。金曜深夜出発、月曜深夜帰国の強行日程、つまり休暇を1日確保するだけで行けるというのは新鮮な驚きだった。当時は、11月に早速行ってしまおうかという話もあったくらいだ。実際には調査・企画と数度の日程調整を経て、6月中旬に行くこととなった。

上記の強行日程を採用すると、登山は土曜朝〜日曜夕方の日程で行うしかない。日曜朝の出発では、翌日の下山後に夕方の飛行機に間に合わない可能性が高いからだ。土曜朝に出発する場合、コタキナバル到着後すぐに登山口に向かい、登山を開始することとなる。だが、強行日程を採用する以上やむを得ない。むしろ、タイムロスを最小限に抑えることができるとプラスに考えた。また、この日程では月曜午前が空くため、サピ島シュノーケリングツアーに行くこととした。

実際には休暇を1〜2日しか取得できないきびきび組(ぽかたん、れえる、筆者)と、3日以上確保できるゆとり組(どらぐ、むな、ゆぞ)で別々の日程を組み、登山とシュノーケリングの日程を合わせるという方法を採用した。ゆとり組はきびきび組が帰国した後も火曜日に先住民族の村とポーリン温泉観光ツアーに参加し、ラフレシアを見たりキャノピーウォークを楽しんだりしていた。


2011.6.17(Fri)

東京出発、深夜直行便に搭乗

まずは定時ダッシュ! スーツ姿で登山に行くわけにも、登山スタイルで職場に行くわけにもいかない以上、当然の選択だ。一旦帰宅し、食事、シャワー、着替え、パッキングを済ませてから羽田空港に向かう。羽田−コタキナバル直行便の存在はやはり大きい。経由便だと金曜日にも休暇を取得しなければならないところだ。羽田空港で全員と合流し、とっとと出国手続を済ませて出発ロビーへ。マレーシア航空の出発は時間通りで、幸先の良い滑り出しだ。ここで帰国時のようなことにならなくて本当に良かった

機内では深夜2時過ぎにもかかわらず食事が提供された。こんな時間に喰えと言われてもねえ。と思いつつもパンと水だけ残して悠々完食〜

出発前に空港にて(撮影:ぽかたん)充実の機内食


2011.6.18(Sat)

キナバル登山 〜Pendant Hut(3289m)まで〜

●Timpohon Gateまで

飛行機は定刻通り6:20にコタキナバル国際空港に到着した。預けた荷物を回収して外に出てみると既に現地ガイドの方が待機していた。ここで1万円をマレーシアリンギットへ両替。結局日本円との両替ではここが一番マシなレート(1RM=29円)だったような。ちなみに成田空港では確か1RM=31円であり、両替する気にもなれなかった。また、Jinさんのキャンセル料を現地通貨で現地で受け取ることになっていたため、両替を急ぐ必要も無かった。

VIP用のPREMIER LANEで入国審査中のれえる公園入口。ここで登山手続き

その後、登山に使わない荷物を宿泊先行きのドライバーに預け、登山装備のみになったところでいよいよキナバル山に向けて出発した。余談だが、この預けた荷物に関して後で行き違いが発生することとなった。

キナバル山へは空港から車で2時間程度かかる。この間は主に睡眠に充てた。なお、この区間では雨が降っていた。事前の天気予報では確かに17日以降ずっと雨で、降水確率は、45%(18日)、75%(19日)、80%(20日)、70%(21日)、90%(22日)、95%(23日)と記載されていた。しかし実際にはこの予報が見事に外れ、登山中も下山後も雨に降られることはなかった。

公園入口では登山ガイドのFreendyとポーターが待っていた。Freendyの指示に従い、各自パスポートを提示して入山登録。また、パーティ全体で預ける荷物が最小限になるよう工夫した結果、ポーターに関しては1人を雇用するだけで済んだ。ちなみに筆者は何も預けていない。

それにしても、キリマンジャロといい、キナバルといい、入山者の数を限定することで自然破壊を最小限に食い止め、かつ混雑を緩和していると思う。富士山の山小屋の惨状を改善する策の一つとしてこのような入山制限は大変有効だと考えられる。一方で、山小屋にとっては宿泊料+物販でボロ儲けしている事実もあるわけで。

その後ランチボックスをもらい、いよいよ登山を開始した。

Timpohon Gateにて(撮影:ぽかたん)登山路全体図

●Pendant Hutまで:予定と実績

予定実績高度場所
10:009:341866mPondok Timpohon
10:031982mPondok Kandis
10:222081mPondok Ubah
10:522267mPondok Lowii
11:382516mPondok Mempening
12:0012:152702mPondok Layang Layang
13:482961mPondok Villosa
14:153081mPondok Paka
15:0015:053289mPendant Hut

※出発、昼食、到着以外の細かい予定は敢えて立てず。
※Pendant Hutには15時までに到着する必要があった。これはVia Ferrata説明会参加のため。

●Pendant Hutまで

スタート直後は下りが続く。植生が豊富で、途中に滝の鑑賞ポイントがあるなど、まったりとした雰囲気だ。しかしすぐに急登に変わり、以後はこれが延々と続いてガチでキツい。今までの登山の中でも屈指のキツさだと感じた。もっとも、これは筆者が8カ月もの長期にわたり登山をサボってきた報いかもしれない。一応、2週間前に予行練習と称して雲取山に登っておいたのだが。

登山路には要所に休憩ポイントが設けられており、トイレに加えてゴミ箱まで完備されている。空になったペットボトルや弁当箱等を捨てて荷物を軽くできるのは大変ありがたい。だが、ゴミを運び下ろす人の存在を考えると心中複雑である。たとえ入山料という形で対価を払っていてもだ。とはいえ、ゴミを運び下ろすことで生計を立てている人も少なからず存在するのだろう。このあたり、自然保護と雇用確保をうまく両立させていると思う。

最初の休憩所、PONDOK KANDISこんな急登がひたすら続く

高度2100mあたりで、視界が開ける場所がある。登山をしていて楽しいのはこういう風景を見た瞬間だ。この風景を体感するために、ジャングルの中の急登もこなすのだ。

ウツボカズラ良い眺め

Freendyは英語を話す。登山中に限らず、マレーシアでは英語がよく通じた。意思疎通が問題なくできるのは大変ありがたい。ウツボカズラに関しては英単語が分からなかったが、なんと日本語で教えてくれた。

鮮やかな色の花まだまだ続く登り

12時過ぎに、Layang Layang休憩所に到着した。予定通りここで昼食とした。ここで標高約2700mであり、下界と比較して約16度下がる。風もあり、既に相当寒く感じられる。太陽光のありがたみを痛感した。昼食は登山口で渡されたランチボックスで、内容はサンドイッチ、ゆで卵、りんご。この頃はまだ食欲があったため、完食した。

Layang Layang休憩所が見えた!すぐ上には雲がかかっている

Layang Layang休憩所を過ぎると見晴らしの良い場所が増え、爽快な登山を楽しめる。昼食中に見えた雲もいつの間にか消え、青空がのぞいている。雲に入ったら寒いだろうと予測し、Layang Layang休憩所で雨具を装備しておいた。だが、登っている間はかなり暑かった。

さっきまでの雲が嘘のように晴れたキナバルの威容が!

Pondok Villosa(2961m)手前で、いよいよキナバルの威容が姿を現した。ところどころに雪が残る絶壁であり、クライマーはこのような場所に挑むのだろう。一般登山路もこの威容に向かって爽快な登りが続く。見通しが良いのが素晴らしい。もっとも、風雨に叩かれると悲惨なことになるのだろう。

絶景の中、爽快な登り登りは相変わらず急

宿泊地のPendant Hutまでは意外と遠かった。Laban Rataの看板が見えた時に、これが今日のゴールだと勘違いしたのが痛すぎた。実際、Laban Rataには15時少し前に到着してほっとしていた。ところが、目的地がさらに上にあり、かつ15時に間に合わないと判明した。この時の絶望は、筆舌に尽くし難いものだった。Pendant Hutに辿り着くにはそこからさらに急な階段を登らなくてはならず、ここで一気に消耗した。今回の登山で一番キツかったのは高低差わずか17mのここの登りだった。

Laban Rataが見えてからが遠いPendant Hutの部屋

そしてPendant Hutで、案の定高山病が勃発した。常に頭痛があり、食欲も不振。さらに吐き気や下痢の兆候も見られた。このような状況では、16:00頃から行われた翌日のVia Ferrataなる高山岩下りの説明(英語)もろくに聞けるはずがない。カラビナの装着訓練もテキトウにこなした。予想していたほど難しいものではなく、これで本当に滑落対策になるのか不安になったくらいだ。

カラビナ装着訓練Via Ferrataの誓約書

Via Ferrata説明の後、誓約書にサインしなくてはならなかった。表面には細かい文字で英文がびっしり書いてあり、頭痛も激しかったため読む気が失せた。簡単に言うと、この岩下りで怪我しようが死のうが荷物を落とそうが一切補償は求めないよ、という内容だ。裏面には既往症のチェックがある。意味不明な病名もちらほらと。Bronchitis(気管支炎)、Tuberculosis(肺結核)、psychiatric illnesses(精神病)は米国留学を機に覚えた単語だ。Diabetes(糖尿病)は昔覚えたのに忘れていて、何をトチ狂ったかObesity(肥満)と勘違いした。Thalassaemia(サラセミア、遺伝性の貧血)は仕事で調べる機会があったため何となく覚えていた。Coronary Problems(急性期の冠動脈疾患)、Epilepsy(てんかん)、Migraine(偏頭痛)、Arthritis(関節炎)はそもそも分からなかった。高山病の頭痛は対象外なのだろうか。ちなみに、Are you pregnant?(妊娠していますか?)に対してYesにチェックさせようとするという悪戯をゆぞがやっていた。結局全員が罠を回避したが ^^;

その後は早々に部屋に引き上げて休憩した。夕食前にぽかたんに頭痛薬をもらって飲み、夕食として温かいスープを飲んだらやや回復した。夕食の料理はヴァイキング形式であり、普段なら食欲をそそる内容だった。実際、特にゆぞは旺盛な食欲を誇っていた。だが、高山病の出ていたむなと筆者はほとんど食欲が無かった。特に筆者は甘いタピオカスープとコンソメ風味の野菜スープを計4杯程度と、焼きそば少々、それにデザートを食べただけだった。惜しいことをした。

Pendant Hutは快適すぎた。特にトイレ! 綺麗な水が流れて紙も完備されている水洗トイレなんて、日本の山小屋でも滅多に無いだろう。他には温水の出るらしいシャワーも存在した。だが、頭痛のため動く意欲が減退しており、それどころではなかった。なお、我々6人は個室を確保できた。室内には二段ベッドが3つあり、裏地つきの寝袋で熟睡できた。屋外では強風が吹き荒れていた。だが、山小屋の中は快適そのものだった。

充実の夕食。だが、食欲無し(撮影:ぽかたん)快適すぎるトイレ

なお、むながヘッドライトを持参し忘れるというハプニングもあった。だが、Laban Rataレストハウスで有料で借りることができた。他にも杖や防寒服など、山頂アタックに必要な装備は一通り借りることができたと思う。


2011.6.19(Sun)

キナバル登頂 〜Via Ferrata、下山まで〜

●Low's Peakまで:予定と実績

予定実績高度場所
2:002:403289mPendant Hut
3:263426m6.5km Point
4:063653m7.0km Point
4:123658mPondok Sayat Sayat
4:353800m7.5km Point
4:573929m8.0km Point
5:274008m8.5km Point
5:305:434095mLow's Peak

●Low's Peakまで

2:00頃起床。高山病はこの頃にはほぼ回復していた。だが、相変わらず食欲は無かったため、砂糖入りホットティーを飲んだだけだった。2:30には山頂に向けて出発した。しばらくの間は相変わらずガチでキツイ登りが続いた。今までの登山の中でも屈指のキツさだった。おかげで常に深呼吸することができ、うざったい頭痛から解放された。

いざ出撃!(撮影:ぽかたん)こんな所を登ります(撮影は下山時)

森林限界を越えると岩登り開始! ロープを掴んで登っていく。斜面はかなり急であり、高所恐怖症の人にとっては相当怖いと思われる。そして、このペースでは御来光に間に合わないという情報を得るや否や、ゆぞが待ちかねたようにダッシュを開始した。結局他5人よりも1時間早く登頂することになる。他5名は一団となってFreendyについていった。

Sayat Sayat小屋が最後の山小屋で、ここで登山口でもらったIDカードを提示しないと先に進めない。仮に登山口をうまくすり抜けることができたとしても、このチェックポイントを突破できなければ山頂には到達できない。経験豊富なクライマーであれば断崖絶壁を直登して、山頂に到達できるかもしれないが ^^;

要所に高度と通算距離の表示が。(撮影は下山時)森林限界突破。登りは緩やかだが、寒い(撮影:ぽかたん)

3800mを過ぎたあたりで登りが緩やかに。登山道はロープで示されており、一枚岩のように見えるルートをひたすら登っていく。しかし酸素が薄い! マラソン式呼吸で酸素を大量に吸ってしのぐ。途中から鼻水に悩まされたのはキリマンジャロと同じだ。この辺で、一旦降りてきたゆぞと合流した。なんと、他5人よりも1時間早く登頂したとのこと! ちなみにゆぞはこの後再び登頂を果たす。

そして異様に寒い! 富士山装備に加えてダウン上下を着用しても、休憩すると凍える。雨や雪に降られなかったのは幸いだった。雨や雪が降ったら下山の可能性もあったと思う。

頂上までのラスト100mは槍ヶ岳を彷彿とさせる岩登りだった。しかしFreendyにひっついて登っていけばそんなに難しくない。三点確保が必要なところもあまりなかったような。そして5:43、ついに山頂に到着した。曇天だったため御来光は雲の中だった。

山頂に到着〜(撮影:Freendy)エクストリームタイピングに挑むぽかたん

山頂の看板にはこう書いてある。マレー語っぽいのでKINABALU以外は分からないが。

ID KAHANDAMMAN DI
GUNTING B.LAGADAN
HUGUAN MANANANUC
ID NULUHON KINABALU
1888-1966
TAMAN
KINABALU
LOW'S PEAK
(4095.2M)

記念撮影後、ぽかたんは待ち兼ねたようにPCを起動し、エクストリームタイピングを開始した。むなとゆぞはモンハンで対戦対戦対戦。筆者は酸素不足と寒さの影響もあり、テキトウに写真を撮影しつつボーッとしていた。

●Via Ferrataまでの予定と実績

予定実績高度場所
5:456:044095mLow's Peak
7:006:553658mPondok Sayat Sayat
7:483520mVia Ferrata開始地点
9:009:563289mPendant Hut

●Via Ferrata

20分後、下山を開始した。山頂付近の岩場下りを終えた後しばらくの間は、非常に楽で快適な下山だった。登りの時には夜明け前で暗くて寒く、かつ肉体的・精神的な余裕が無かったために写真撮影すらできなかった。だが、この下りの間には太陽のありがたみを痛感しつつ、次第に濃くなっていく気がする酸素を吸いまくりつつ、登りの間の鬱憤を晴らすかのように写真を撮りまくった。Sayat Sayat小屋まであっという間に到着した。

山頂付近の岩山群快適な下山!

Via Ferrata(高山での岩下り)に参加する場合、この小屋で少し休憩後にスタート地点に向かう。今回は初心者向けコースであり、スタート地点(最高点)の標高は3520m。つまり、Sayat Sayat小屋から一般登山道を下山して森林限界よりも下まで一旦降り、途中で脇道に入る。ところが、ロープが到着せずスタート地点で30分以上待たされた。既にハーネスとカラビナを装着済みだったため、ザック内に収納したダウンを出すのも面倒で、吹きさらしの寒風に凍えながら待つこととなった。ぽかたんや、オーストラリア人の女性はその場で寝ていた。山で凍死する時はこんな感じなんだろうな〜〜などと考えているうちにマジで命の危険を感じたため、途中から起き上がって足踏み足踏み。

Via Ferrata開始!(撮影:ぽかたん)下を見ると……

ようやく始まった岩下り。筆者はリーダーとして、先頭に立って降りていく。初心者向けコースなのでそんなに難しい箇所はない。だが、下を見下ろすと結構怖いところもちらほらと。しかも、たまにある足場も完全というわけではない。足場が無ければ岩にへばりつくしかない。ワイヤーやロープに頼るのではなく、三点確保が基本だと思う。もっとも、岩は全体的に平べったいところが多く、十分なホールドが存在しないところも多い。

足場は当てにならないこの辺は山を向かないと厳しい

面白かったのは、手の高さと足の高さにワイヤーが平行に張られていて、それを10mほど渡る所だ。落下したら明らかにヤバそうだ。だが、ワイヤーが予想よりも揺れなかったこともあり、さほど恐怖を感じることもなくあっさりと渡り終えた。なお、ぽかたんはこの「橋」を渡ってからしばらく行ったところでまたしてもエクストリームタイピングを敢行していた。

ワイヤーの橋(撮影:ぽかたん)エクストリームタイピング再び

●下山の予定と実績

予定実績高度場所
11:0011:173289mPendant Hut発
11:403080mPondok Paka
11:542961mPondok Villosa
13:0012:262702mPondok Layang Layang
12:502516mPondok Mempening
13:142267mPondok Lowii
14:022081mPondok Ubah
14:111982mPondok Kandis
16:0014:341866mTimpohon Gate

※出発、昼食、到着以外の細かい予定は敢えて立てず。
※昼食はLayang Layangでとる予定だった。結局、Pondok Lowiiに変更した。

●その後の下山

Via Ferrata終了後は昨日宿泊したペンダントハットに戻って遅めの朝食と休憩。高山病から回復したのが大きく、食欲は極めて旺盛だった。

その後はひたすら下山する。ゆぞとれえるが猛然と駆け下りていき、あっという間に見えなくなった。途中、物凄い速度で我々を抜き去ったトレイルランナーがいたので、彼についていったのかもしれない。どらぐと筆者が二番手グループ。ぽかたんとむながまったり組で。Freendyはここにつくので安心だ。

登りがガチでキツいということは、下りもガチでキツい。ガンガン降りると丹沢の時のように膝を痛めるので、膝のバネとクッションを使い、歩幅と段差を少なくして最小限の負担で降りていく。どらぐの方が若くてスポーツ経験もある分、筆者よりも少し速い。ついでに、筆者はいい景色を見ると写真を撮っていたため、なおさら遅くなる。だが、少し離れるとどらぐが空気を読んでスピードを落としてくれたため、最後まで一緒に下山した。

まだまだ余裕!延々と続く下り階段

昼食は登りの時と同じLayang Layang職員宿舎付近で食べる予定だった。だが、11時前に遅めの朝食を食べたばかりであり、腹は減っていなかった。また、登りのパーティが集中して混雑していたこともあり、結局2つ先の休憩所であるPondok Lowiiで食べた。ここまで降りてくると寒さも和らぎ、心地良い疲労感もあったためおいしく完食できた。なお、食事中にリスを少なくとも3匹見かけた。1匹はゴミ箱の中に入って残飯を漁っていた。他の2匹は残念ながら我々のところまで寄ってこなかった。

Layang Layangは大混雑リス発見

最後の休憩ポイント(Pondok Kandis)で現地の人と少し会話した。野生の象を見るツアーを主催しているらしい。次は夫婦で、あるいは子供と一緒に来てくれとのことだった。

ラスト100m程度は登りだった。下山で破壊されまくった筋肉にとっては、むしろ登りの方がありがたかった。昨年9月の地獄谷に似ているな〜と感慨にふけりつつ、14:34にはTimpohon Gateに到着した。ペンダントハットを出発してから約1400mを3時間17分で下山したことになる。昼食休憩を33分入れたことを考えると、下山が苦手な筆者にとってはかなり速いペースだった。ちなみにゆぞとれえるはこれよりも1時間速かったとか(!)

終点付近の滝Timpohon Gateに帰還

最後にFreendyも入れてキナバル山を背景に記念撮影。チップに関しては、ガイドが10RM×6人=60RM(約1800円)、ポーターが重量により85RM(約2500円)が相場とのことだった。今回は、全員登頂無事下山のボーナスとして二人ともに100RM(約3000円)を渡すこととした。また、ここで登山証明書を受け取った。登頂に成功するとカラー版、失敗するとモノクロ版になるらしい。我々はもちろん全員がカラー版だ。

下山後の記念撮影(撮影:ぽかたん)登山証明書(撮影は帰宅後)

公園入口の土産物屋で、キナバルTシャツを購入した。キリマンジャロで帽子、キナバルでTシャツ。次に海外で登山をする時にはまた衣類を購入してみるのも良いだろう。ちなみに、どらぐが同じ柄で黒地のTシャツを購入しており、期せずしてペアルックに(笑

●ホテルでの騒動と夕食

その後は登山ツアーの送迎車で2時間かけてホテルへ。18日朝、空港で現地ガイドに「ホテルまで運んでおいてくれ」と言って渡しておいた余分な(=登山には使わない)荷物が届いていない! とりあえず旅行ツアーの現地連絡先に電話し、英語で懸命に説明する。ところが、どうも様子がおかしい。……間違えて「現在宿泊しているホテル」にかけていた。気を取り直して再び電話。今度は日本人が出た。その電話の時点では「2時間以内に連絡する」ということだったが……長期戦を覚悟しつつシャワーを浴びている間に電話がかかってきて、結局10分くらいで解決! 実は、荷物はホテルに届いていた。ところが、フロントのおばちゃんが把握していなかったのが問題だった。なめんな(笑

シャワーは快適すぎた。登山後の温泉はこの上なく甘美な魅力を持つ。熱帯気候のマレーシアでは、シャワーだけでも十二分に快適だ。また、シャワー後にキナバルTシャツを早速装備した。

夕食はホテル付近の繁華街に行ってシーフードか中華の予定だった。ところが……予定していた店が見つからず、しばらく探し回る。とにかくクソ暑い! 蒸し暑い! 日本の梅雨の湿気と真夏の暑さが混ざったような気候には閉口した。そんな中では屋台で喰う気にもなれず。っとここで別の中華屋のおばちゃんが日本語で呼び込み開始。何となく店を見るとAIR COND(空調あり)なる文字が。問答無用でここ(SRIMUTIARA)に決定! 海老とか麻婆豆腐とかココナッツプリンとか、快適な中華でした!

快適な中華ココナッツプリン

ホテルに戻り、次に行くべき山の会議と、次のタイピングオフ(!)の会議。次に行くべき山に関しては極めて具体的かつ有意義な話ができた。しかーしタイピングオフの話の途中で力尽きて意識を失う。


2011.6.20(Mon)

Flyfish、シュノーケリング、帰国

●Flyfish

翌朝はホテルで朝食。普通にうまかった。オムレツやデザートを含め、3皿くらい平らげたような。

その後、サピ島に向かう。目的は人生初となるシュノーケリングだ。その前に時間があったため、Flyfishなるアトラクションへ。現地ガイドに紹介されたアトラクションは9種類あった。パラセーリングやバナナ型ボート乗りよりも圧倒的にヤバそうだという理由でFlyfishを選択した。

要するに、ゴムボートらしきものにつかまってモーターボートから引っ張ってもらうアトラクションだ。両手で取っ手を握り、片足をゴムボートの壁、もう片方の足をゴムボートの外側に回して踏ん張る。モーターボートが直進している時は風を切り波しぶきを浴びる快感を満喫できるが……モーターボートが旋回すると面白いように振り落とされる。というかゴムボート自体が転覆したり、下手すると一回転する。転覆したら海水に足を持っていかれるため、両腕だけではとても支えきれない。結局全員が少なくとも1回ずつ振り落とされた。そしてライフジャケットの浮力が強力すぎ! どんなカナヅチでも大丈夫だろう。

注意点として、眼鏡、時計、その他の装身具は事前に外しておくべきだ。さもないと海中に転落した時に外れ、海底に沈むことになる。海パンのゴムが緩いのもヤバい。

Flyfish(撮影:ぽかたん)ゴムボートが転覆!(撮影:ぽかたん)

筆者はどらぐと一緒に計3回挑戦した。1回目は二人とも生存。2回目はどらぐが振り落とされた。3回目は二人とも振り落とされ、残念ながらここで終了。二人同時に脱落するとGAME OVERらしく、ゆぞ&れえる組は4回粘っていた。あと10回くらい叩き落とされれば感覚を掴めるのだろうか。それとも単純に腕力の問題なのだろうか。将来再び挑戦してみたい。

●シュノーケリング

そもそも水着を着用したのが20年ぶり、海で泳いだのは多分25年ぶり以上という状況だった。だが、ライフジャケットの偉大な浮力のおかげでシュノーケリングを満喫することができた。

まずはぽかたんにシュノーケリングマスクの着用方法を教えてもらいつつ、ライフジャケット無しで海岸近くをテキトウに歩き回る。だが、人間は浮くはずなのに体がどうしても浮かない。命の危険を感じ、速攻でライフジャケットを装備した。その後はそれなりに深いところまで進んだ。水深は5mくらいあったかな。ぽかたんとゆぞ、どらぐは面白いように潜っていた。だが、筆者はそこまでは踏み切れず。マスクの空気が届く水深30cmあたりまで顔を沈め、海中を見るのがやっとだった。だが、魚はにゃんにゃん泳いでいたのでなかなか楽しめた。そして露出していた両腕やふくらはぎが物凄い勢いで日焼けした。

人生初のシュノーケリング!(撮影:ゆぞ)水中写真(撮影:ゆぞ)

●なめんなマレーシア航空

シュノーケリング終了後に島で昼食を食べ、慌しく島→ホテル→空港と移動した。空港ではぽかたん、れえると土産を共同購入(5個分の値段で6個買えた)後、余ったマレーシアリンギットを速やかに両替しておく。空港内の銀行では日本円へのレートが異様に悪かった(BUY0.032、SELL0.0385)ため、米ドル(BUY2.94、SELL3.11)に替えた。今回念のため持参した米ドルは結局使わなかった。だが、将来出張や旅行等で使う機会はあるだろう。

そしてマレーシア航空! 機体整備とやらで出発が4時間遅れ! ざけんな! なめんな! 「夕食」と称してフライドポテトとホットティー1杯が無料で提供された。機内では海パンや登山用靴下を乾燥させつつ主に睡眠に充てた。

●タクシー速すぎ

羽田到着は2:15頃だった。愛する妻に無事帰国した旨のメールを入れた。当然寝ていたが。荷物受け取りを済ませてロビーに出た時点で2:35。電車(定期券区間があるため400円で済む)もリムジンバス(1000円で最寄駅まで行ける)も運行しているわけがない。

結局、タクシーと始発待ちの二択から前者を選択した。今日休暇を取得している筆者はともかく、ぽかたんとれえるは今日から仕事なので帰らざるを得なかったためだ。深夜タクシーはガラ空きの高速を150km/hでぶっ飛ばし、にゃんと3:00には帰宅! ……タクシー代は11,650円也。なんてこった。

●言語

マレー語は「テリマカシ」(ありがとう)だけかろうじて覚えていた。TODタイパーでこれをHNにしていた人がいたためだ。現地の人に何かしてもらったら必ず言うようにしていた。確かに英語も通じる。だが、やはりマレー語で言った方が反応が違う。他には「スラマパギ」(おはよう)、「サマサマ」(どういたしまして)をゆぞに教えてもらった。最低限これだけ知っていれば困らない。そういえば、キリマンジャロ登山の時のスワヒリ語も似たような効果を発揮した。

上記以外の意思疎通はほぼ英語で。が! リスニング力がまだまだ甘い! 他のメンバー(特にゆぞ、ぽかたん)が普通に聞き取れるのに筆者が聞き取れないこともかなりあった。話す方は中学英語を並べまくって何とかした。

そういえば中華の店で「フーヤーン!」「マイダーン」を使えば良かった(笑


キナバル登山の感想

最後に今回の収穫と反省をまとめて記しておく。

●今回の収穫

久々に4000m峰を制覇した。今回も参加者全員が登頂して無事帰還できたのは最大の収穫だ。またVia Ferrataに関しては、高所での岩下りを満喫できた。但し、初心者向けコースということもあって難易度は高くなかった。次回は上級者向けの本格コースに挑んでみたい。

また、キリマンジャロの下山で散々悩まされた膝の痛みに関しては、今回は登山では全く出ず、下山でも僅かに違和感を覚えたのみだった。念のため持参した杖は、全く使わなかった。結局、下山当日〜2日後に太もも・すねの筋肉痛が出ただけで済んだ。毎日欠かさず継続した膝トレーニングの効果が出ていると言えるだろう。なお、その後の海遊びで発生した日焼けの方が余程痛かった。

次に食料について。今回は現地ツアーを活用したこともあり、携帯食料のみを持参した。その中でも特に、ウィダーインゼリーが非常に役立った。筆者は高山病が出ると食欲が失せるため、固形物を受け付けなくなる。このため、ウィダーを計3個持参した。これはミネラル補給としても極めて有効だった。なお、持参した粉末Pocariは、結局投与しなかった。500mlペットボトルに全部投入するには多く、しかも余ったものを入れておくための清潔なビニール袋を持参し忘れたためだ。単純なミスであり、次回は改善すべきだろう。

●今回の反省

危険度が高いものから挙げていく。

今回も高山病にやられた。キナバル山は富士山よりも高い山であるため、この事態は事前に充分に予測できた。従って、対策としてダイアモックスを投与した。それでも、Pendant Hut到着後は食欲を減退させる頭痛に悩まされた。今回は食事前に投与した頭痛薬を併用することで回復した。今後も、3000〜4000m級の登山を継続するにあたり、頭痛薬やダイアモックスの常備が欠かせないことを再認識した。

計画に余裕が無かったのもいつものことだ。深夜便でコタ・キナバル入りし、到着直後に送迎バスに乗り、高度順応する余裕も無くガンガン登山という強行軍では、高山病になるのも必然だ。日程に余裕があれば2泊3日プランに参加し、高度順応した上で先に進むという選択肢も取れた。だが、そう簡単に仕事を休めない以上、薬に頼りつつ強行するしかない。

また、今回は登山ガイドを雇うという制約付きだったため、自分で地図と山を見て判断するという訓練には全くならなかった。登山道はよく整備されており、迷う余地は全く無かった。だが、自力で頂上を踏んだというよりは連れてきてもらったという印象を拭えない。もっとも、これに関しては日本国内の山で別途訓練すべきだろう。

●総括と今後

次に再びキナバルに登るとしたら、マシラウルートを使い、上級者向けVia Ferrata(最高点3776m)をも楽しみたい。Timpohon Gate付近の登山路マップを見ながらそう考えた。


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