Intersteno2018オンライン大会:レポート(2018.4.23-5.9)



Interstenoとは
筆者の結果
プロローグ
戦略
戦術
各言語の対策(主要なもののみ)
日本語の係数について
モチベーション維持策
感想(というよりも反省)
来年に向けて
参考文献・謝辞
各種資料


●Interstenoとは

Intersteno(国際情報処理連盟)とは、1887年に設立された、速記者やタイピストを中心とする団体である。オフラインの速記およびタイピングの大会を2年に1回(2007年以降)、オンラインのタイピング大会を1年に1回(2003年以降)実施している。以下の記述は、2018年4〜5月に開催されたオンライン大会に関するものである。

公式ランキングはこちら

日本人ランキングはこちら

オンライン大会には、17言語で参加可能である。練習サイトであるTakiソフトウェアの順番に並べると、イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、トルコ語、ポルトガル語、ルーマニア語、日本語、フィンランド語、クロアチア語、チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語、ポーランド語である。

各言語で初見の課題を10分間打ち、「総打鍵数−ミス数×50」を得点とする。この得点の合計値で競う。従って、速度を上げることも重要だが、それ以上に正確性を上げることが非常に重要である。但し、毎日パソコン入力コンクール(以下「毎パソ」)とはミスの定義が違う。例えば、1単語内の入れ替えミス(例:that→taht)や、1行すっ飛ばしは、1ミスとカウントされる

筆者は、昨年に続いて全17言語に参戦した。


●筆者の結果

【表1:本番の結果】

言語得点速度(文字/分)ミス数順位参加者数
英語5549(-295)579.9(-19.5)5(+2)10(-5)345(+10)
スペイン語5480(+351)548.0(+30.1)0(-1)4(-3)126(-3)
イタリア語5337(+334)538.7(+28.4)1(-1)4(+1)255(+38)
オランダ語5315(+189)536.5(+18.9)1(-)2(-)180(+8)
フランス語5234(+19)528.4(-3.1)1(-1)4(-3)145(-18)
ドイツ語5135(-1)513.5(-0.1)0(-)3(+1)209(+19)
ポルトガル語5075(-172)517.5(-12.2)2(+1)4(-3)78(-13)
クロアチア語4870(-116)497.0(-11.6)2(-)4(-2)214(+36)
フィンランド語4822(-226)492.2(-12.6)2(+2)1(-)118(+7)
トルコ語4773(+302)497.3(+30.2)4(-)21(-6)480(+72)
スロバキア語4661(+218)471.1(+11.8)1(-2)3(-1)257(+29)
ルーマニア語4461(-421)461.1(-32.1)3(+2)1(-)59(-4)
チェコ語4446(+189)459.6(+23.9)3(+1)4(+8)229(-88)
ポーランド語4443(+85)449.3(+3.5)1(-1)5(-1)72(+4)
ハンガリー語4410(+85)446.0(+3.5)1(-1)2(+1)94(-6)
ロシア語4249(-25)439.9(+7.5)3(+2)6(+4)34(+1)
日本語3978(-435)422.8(-23.5)5(+4)2(+1)27(-1)
合計82238(+81) 35(+7)1(-)1246(+49)

※()内は昨年比。
※得点、速度、順位、参加者数は上がった時に+表示。ミス数は増えた時に+表示。
※オランダ語とフランス語にはベルギー方言、ドイツ語にはスイス方言で参加した。
※順位は5/10昼時点のもの。また、方言(例:ドイツ語とスイスドイツ語)はまとめて集計した。

【表2:10分間練習の結果】

言語最高記録平均得点平均速度平均ミス数
英語6285(-29)5791(+70)589.6(+5.9)2.10(-0.20)
スペイン語5594(+273)5194(+130)531.5(+11.3)2.43(-0.35)
イタリア語5502(+55)5257(+228)535.7(+19.6)2.00(-0.63)
オランダ語5497(+220)5084(+121)520.2(+9.3)2.36(-0.57)
フランス語5536(+116)5345(+254)543.4(+19.6)1.78(-1.15)
ドイツ語5135(-1)4939(+164)510.6(+22.4)3.33(+1.21)
ポルトガル語5098(-149)4887(+18)507.7(+7.6)3.80(+1.16)
クロアチア語5135(+149)4873(+146)498.9(+13.8)2.33(-0.17)
フィンランド語5111(+63)4827(+11)494.6(+3.0)2.38(+0.38)
トルコ語5504(+859)5028(+639)516.8(+57.4)2.81(-1.30)
スロバキア語4970(+456)4526(+209)460.5(+17.5)1.57(-0.68)
ルーマニア語5228(+26)4827(+52)497.3(+8.1)2.93(+0.59)
チェコ語4731(+325)4412(+234)456.2(+20.9)3.00(-0.50)
ポーランド語4661(+221)4456(+183)455.2(+14.4)1.92(-0.78)
ハンガリー語4571(+134)4402(+143)452.9(+13.6)2.56(-0.14)
ロシア語4274(-5)4067(+195)416.8(+15.1)2.02(-0.88)
日本語5013(+180)4454(+48)467.1(+14.9)4.33(+2.03)
合計87845(+2893)82369(+2842)  

※()内は昨年比。
※上記の数字には本番も含む。
※Takiソフトウェアのバグによるミスと、それによる減点も含む。


●プロローグ

2018年オンライン大会には、ディフェンディングチャンピオンとして臨むこととなった。とはいえ、2017年大会での世界第一位は、2016年の覇者であるparaphrohnさんの不在によるところが大きい。それに、かつて15〜16言語で8万点を超えたSean、Danielといった偉大なタイピストたちも不在だった。昨年と同等の実力で彼らとガチ勝負をした場合、敗北する可能性は高いと考えた。このため、2018年の目標は昨年の記録を更新して連覇と決定した。

筆者は2017年5〜11月に各種フランス語・イタリア語・トルコ語に残された10分間課題の全文収集と入力を実施し、完了した。さらに10月の第9回タイピングサミット終了後、Weather Typingによるベース速度強化を実施した。たのんさんが毎週主催する多言語TypeRacer対戦会にも10月から参加した。たのんさんの実力は昨年からさらにパワーアップしており、充分な準備をせずに臨んだ高速言語の対戦会では毎週のように叩きのめされ続けた。

本格的なIntersteno対策を再開したのは12月だった。対戦会が難関言語に突入したのに加えて、そろそろトルコ語の重点強化を開始しないと間に合わなくなるという焦りもあったためだ。以後の対戦会ではたのんさんとほぼ互角に渡り合った。トップスピードでは及ばなかったものの、正確性と安定性を維持することを心掛けた。

その後4カ月にわたり概ね順調に練習を重ね、日本語を除く16言語で80000点という新たな数値目標を掲げるに至った。


●戦略

基本的に、2016年大会である程度確立したアプローチを踏襲した。同様の戦略でもう少し伸ばす余地があると考えていたためだ。但し、必要に応じて修正を加えた。

(1) 各言語の配列の再検討 〜頻出特殊文字の1打鍵化〜

昨年と同様。

(2) 各言語の配列の再検討 〜デッドキーの活用〜

昨年とほぼ同様。変更点は表3の通り。

【表3:配列の変更点】

言語特殊文字打鍵方法備考
ルーマニア語ã半角/全角→aShift+半角/全角→aよりも楽 
トルコ語(Non-breaking space):→b不要だった
(Tab文字):→tこちらは必要
チェコ語、
スロバキア語
:→3['š]と表示されるバグを修正
:→6['ť]と表示されるバグを修正
:→7['ý]と表示されるバグを修正
ŤShift+6デッドキー削除により、Space打鍵が不要に
ポルトガル語§:→s右Alt+Sよりも楽
スペイン語¿:→/右Alt+/よりも楽
¡:→!右Alt+1よりも楽

※トルコ語のNon-braking spaceとTab文字は、当初どちらが正解か不明だったため、両方を対応可能にした。
※スペイン語の¡はInterstenoには出現しない。だがTypeRacerには出現する。
※本番直前に、フィンランド語の練習課題にenダッシュが出現することを確認した。だが、配列に仕込まないまま本番を迎えた。

(3) 難関言語の底上げ 〜トルコ語の重点強化〜

トルコ語は、2017年大会で前年よりも記録が低下した。ロシア語の重点強化の陰に隠れて練習が疎かになったことが原因と考えられる。

まず、トルコ語で速度が出ない根本原因を調査・考察した。その結果、特殊文字や頻出単語、シーケンスに脳と目が慣れていないことによる失速が主な原因であり、練習量の増加による慣れが極めて有効と判断した。そこで、重点強化言語としてトルコ語を指定し、12/4に始動した。但し10分間課題が100個以上も用意されているため、昨年のロシア語と違って初期から10分間練習を打ち込んだ。また、10分間課題の全文再入力も並行して進めた。トルコ語を含めた練習計画は表4の通り。

【表4:トルコ語の底上げのスケジュール】

期間継続1継続2対戦会予備
2017/12/4-トルコ語英語クロアチア語ルーマニア語
2017/12/11-トルコ語ルーマニア語、ハンガリー語
2017/12/18-ルーマニア語ハンガリー語
2018/1/8-ハンガリー語ポーランド語
2018/1/15-ポーランド語スロバキア語
2018/1/22-スロバキア語チェコ語
2018/1/29-チェコ語ロシア語
2018/2/5-ロシア語チェコ語
2018/2/12--オランダ語、ドイツ語
2018/2/19-トルコ語イタリア語、フランス語
2018/2/26-ルーマニア語クロアチア語
2018/3/5-ハンガリー語スペイン語
2018/3/12-ポーランド語フィンランド語
2018/3/19-スロバキア語ポルトガル語
2018/3/26-チェコ語ロシア語
2018/4/2-ロシア語チェコ語、日本語
2018/4/9--ロシア語、スロバキア語、日本語
2018/4/16--ロシア語、ポーランド語、日本語

※継続1 :重点的に強化(弱点の底上げ)
※継続2 :重点的に強化(ベース速度および持久力の強化)
※対戦会:その週の多言語対戦会の対象言語
※予備:対戦会もしくは本番に備えた基礎練習、配列検討

トルコ語は10分間練習の全文入力および再入力を継続してきた成果が現れ、重点強化当初から昨年とは明らかに違うスコアが出た。最初の週末には10分間練習で5000を超えた。さらに練習を続けると、100wpmはほぼ安定した。最終的に、10分間練習で5500を超えた。本番で崩されながらも4700台後半で踏みとどまったのは、この地道な練習によるポテンシャルの蓄積があったためと考えている。

また、年末年始の対戦会のスケジュールに合わせて、ルーマニア語とハンガリー語を5週間続けて集中的に打ち込んだ。両言語とも2017年大会では伸び悩みを感じていたため、底上げのために大変良い機会だった。さらに、本番直前の1カ月を利用して、昨年の重点強化の反動が懸念されたロシア語を集中的に打ち込んだ。

(4) 難関言語の底上げ 〜13言語で1分間練習550、16言語で10分間練習4500超え〜

2017年大会終了時点で、9言語で1分間練習の550超えを達成していた。2018年大会に向けては、表5の通り、残る8言語で1分間練習550超えを目標とした。重点強化言語に指定したトルコ語は12/7にこの目標を達成した。ルーマニア語、ハンガリー語に関しても、対戦会の予定に合わせて順次達成した。スロバキア語は、本番直前にミス爆死覚悟でぶっ飛ばして強引に達成した。残る4言語に関しては、残念ながら550に届かなかったが、昨年の記録はすべて更新した。

【表5:各言語の1分間練習の550突破日】

言語550突破日
オランダ語2015/11/24
スペイン語2015/12/10
英語2015/12/19
ドイツ語2016/1/19
イタリア語2016/2/23
ポルトガル語2016/3/5
フランス語2017/1/11
クロアチア語2017/2/4
フィンランド語2017/3/31

言語550突破日
ルーマニア語2017/12/6
トルコ語2017/12/7
ハンガリー語2018/1/7
スロバキア語2018/4/14
ポーランド語(515→539)
チェコ語(500→519)
ロシア語(504→521)
日本語(527→529)

10分間練習に関しては、13言語で4500超えを達成済みだった。2018年大会に向けて、表6の通り新たに3言語で4500を突破した。唯一残ったロシア語は昨年の重点強化の反動で4274と伸び悩み、昨年の記録すら上回れなかった。

【表6:各言語の10分間練習の4500突破日】

言語4500突破日
英語2015/4/2
オランダ語2015/4/13
フランス語2015/6/10
スペイン語2015/12/11
ドイツ語2016/1/24
クロアチア語2016/1/30
ルーマニア語2016/1/30
イタリア語2016/2/27
ポルトガル語2016/3/5

言語4500突破日
日本語2016/4/2
トルコ語2016/4/10
フィンランド語2017/3/12
スロバキア語2017/3/26
ハンガリー語2018/1/3
ポーランド語2018/1/21
チェコ語2018/2/11
ロシア語(4279を上回れず)

(5) 高速言語のさらなる高速化

苦手言語の底上げは、実際には2016〜2017年にも実施している。従って、特に重点強化の対象であったハンガリー語やロシア語をさらに500上げるのは相当厳しい。さらに言えば、難関言語を底上げするだけでは今回の目標である16言語8万点に届かない

英語はベース速度および持久力の強化を目的として、10分間練習をほぼ毎日打っていた。他の言語でも、10分間練習での高速化をメインとした。その結果、表7の通り新たに4言語で5500を突破した。他にオランダ語、ポルトガル語、ルーマニア語でも5500を狙ったが、残念ながら届かなかった。

【表7:高速言語の10分間練習の基準点突破日】

言語5000突破日5500突破日
英語2015/10/192015/4/16
イタリア語2016/2/282018/2/25
フランス語2016/2/282018/2/25
スペイン語2016/4/272018/3/11
トルコ語2017/12/92018/4/9
オランダ語2016/3/12(5277→5497)
ドイツ語2016/3/27(5136を上回れず)
ポルトガル語2016/5/2(5247を上回れず)
ルーマニア語2017/2/24(5202→5228)
フィンランド語2017/4/29(5048→5111)
クロアチア語2018/3/4(4986→5135)
日本語2018/5/1(4833→5013)

(6) その他練習の工夫

トータルの練習量は2016年を上回り、過去最高となった。その上で、昨年に続いて練習方法を工夫した。例えば配列が共通あるいは似通っているイタリア語とフランス語、チェコ語とスロバキア語は相乗効果を狙って同じ週に練習した。

さらに、同一言語を2週以上続けて練習した。1週目に1分間練習で配列や頻出単語を思い出すとともに、必要に応じて配列を再検討する。そして2週目には本番を想定した10分間練習で持久力と実戦力を鍛えるという意図であった。但し、2/12以降は一時的に方針を転換し、練習が不足していた高速言語の復習を開始した。このため、低速言語の練習量が不足した。2週連続で練習した時のようなスコアには届かないことが判明した。

言語によっては10分間練習の数が限られており、初見文章の練習にならない。このため、フィンランド語、ポーランド語、スロバキア語、ハンガリー語の10分間練習は基本的に土日と祝日にのみ実施した。その際、課題文章に番号を付けて管理し、ローテーション的に打鍵した。例えばハンガリー語では、「土曜日に課題1、日曜日に課題2、翌週の土曜日に課題3、日曜日に課題4」というローテーションを繰り返した。これは、同じ課題を続けて打たないようにするという意図である。

また、トルコ語の底上げが進行するに伴い、事前に指慣らしをする必要性を感じ始めた。そこで、4/2以降は日本語を指慣らし種目として追加した。同時に、本番に向けた最終調整を開始した。10分間練習を基本としつつ、正確性重視の打鍵を継続して本番に備えた。本番に向けたスケジュールは後述する。

2015年〜2018年大会に向けた練習量の比較は表8の通り。2018年は、特にトルコ語の練習量が大きく増加した。一方、昨年の重点強化言語だったロシア語の練習量は大きく減少した。必要最小限の練習に絞り込んだという見方もできるが。

【表8:10分間練習の打鍵回数の比較】

言語2015年2016年2017年2018年
英語11245(+234)86(-159)151(+65)
スペイン語1214(+2)9(-5)14(+5)
イタリア語611(+5)16(+5)11(-5)
オランダ語1612(-4)16(+4)11(-5)
フランス語744(+37)14(-30)9(-5)
ドイツ語1620(+4)16(-4)9(-7)
ポルトガル語621(+15)14(-7)15(+1)
クロアチア語725(+18)16(-9)15(-1)
フィンランド語178(-9)6(-2)8(+2)
トルコ語617(+11)9(-8)155(+146)
スロバキア語128(-4)12(+4)14(+2)
ルーマニア語811(+2)18(+7)40(+22)
チェコ語1213(+1)16(+3)35(+19)
ポーランド語911(+2)10(-1)13(+3)
ハンガリー語633(+27)13(-20)18(+5)
ロシア語035(+35)94(+59)44(-50)
日本語924(+15)10(-14)36(+26)
合計160552(+392)375(-177)598(+223)

※上記の数字には本番および仕様調査を含む。
※各年の打鍵回数には、前年オンライン大会終了翌日から当年オンライン大会終了当日までのすべての10分間練習を含む。

(7) 本番実施の順序

当然ながら、全17言語の本番を1〜2日で実施するのは非効率である。本番実施を繰り返すことで、肉体的にも精神的にも著しく疲労するためだ。さらに、練習の質・量が甘いと各言語の特殊文字や頻出シーケンスを混同するリスクがある。

今回も昨年と同様、公式の大会期間と実際の本番実施期間は異なると予測していた。今回の大会実施期間は4/23〜5/9であり、17日間に短縮された。しかも昨年までの例から、本番参加用のIDを入手できるのは早くて4/28昼と想定した(実際には何と4/23朝に入手)。もちろん平日は仕事があるため、本番実施は土日や祝日がメインとなる。以上を踏まえて、筆者は本番に向けたスケジュールを表9のように決定した。

【表9:2018年大会の本番に向けたスケジュール】

期間指慣らし低速言語中速言語高速言語
2018/4/23-28日本語ロシア語、ハンガリー語トルコ語英語
2018/4/29-5/1ドイツ語ポーランド語フィンランド語オランダ語
2018/5/2-4ポルトガル語チェコ語、スロバキア語 スペイン語
2018/5/5-9フランス語 クロアチア語、ルーマニア語イタリア語

※トルコ語と英語を最初に片付けて、重点強化を終了する。
※ハンガリー語とトルコ語の配列は親和性が高い(öüをwqに配置)。
※ドイツ語とオランダ語は言語として親和性が高い(ゲルマン語派)。
※ドイツ語とフィンランド語の配列は共通。
※スロバキア語とチェコ語の配列は親和性が高い(特殊文字を34567に配置)。
※スペイン語とスロバキア語、チェコ語の配列は親和性が高い(áéíを@[]に配置)。
※フランス語とイタリア語の配列は共通。

基本的に、2016年以来のスケジュールを踏襲した。高速に打てる言語(英語、オランダ語、スペイン語、イタリア語)と速度の出ない言語(ロシア語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語)を可能な限り分散させた。これは、高速に打つ感覚を維持するとともに、低速言語を底上げするためだ。

また、親和性の高い言語や、共通の配列を使う言語は、同じ週に打つのが効率的だ。逆に、混同する可能性の高い言語(例:フランス語とスペイン語、ハンガリー語とドイツ語)を同じ週に打たないように注意した。なお、チェコ語とスロバキア語にも混同しやすい部分がある。だが、配列の親和性による相乗効果の方が上回ると判断し、同じ週に実行することとした。

……

今年も、比較的余裕のある1週目に日本語を含め5言語の本番を終えるつもりだった。後ろが詰まりすぎているためだ。だが、かな入力オンリーで挑む決断を下した日本語が伸び悩んでいたため、結局日本語の本番を終えたのは5/1のことだった。その分の負担が、同時に練習していた他の言語に降りかかった。今年の目標が「日本語を除く16言語で8万点」だったこともあり、また海外の参加者が事実上日本語に参戦できないこともあり、競技条件を揃えるべく日本語を受験しないことも一時は真剣に検討した。

4/27に休暇を取得し、多少無理しつつも4言語の本番を撃破。これで1日前倒しで残り13言語を練習できることとなったのが非常に大きかった。最終的な本番実施スケジュールは表10の通りである。

【表10:2018年大会の本番実施スケジュール】

日付・時間帯言語累計得点コメント
4/27(金)午前トルコ語47735200を出すつもりがまさかの惨敗
4/27(金)午前英語10322まさかの連敗。午前中は指が冷えている
4/27(金)夜ロシア語14571指は動いたが後半に3ミスが集中
4/27(金)夜ハンガリー語18981ミスを抑えて最低限の結果を出した
4/29(日)夜ドイツ語24116幾多のトラップを見切り、2年連続ノーミス
4/29(日)夜ポーランド語28559ミスを誘発する単語が多いため、精密射撃を心掛けた
4/30(月)夜オランダ語33874精密射撃しつつも攻め、いい感じに速度が乗った!
4/30(月)夜フィンランド語38696改行位置がずれまくり、大きくロス
5/1(火)夕方日本語42674筆者のかな入力では初見文章に歯が立たず
5/2(水)夕方スペイン語48154正確に「読む」ことをまず心掛けた
5/2(水)夜スロバキア語52815いい感じに速度が乗った!
5/3(木)夕方チェコ語57261ミスタッチ多数。BSで辛抱強く修正
5/3(木)夜ポルトガル語62336不調ながらも耐え、落ち込みを最小限に抑えた
5/5(土)午後一フランス語67570心拍数180状態を耐え抜いて1ミスに抑えきった
5/5(土)夕方ルーマニア語72031難関文章。正確性重視のつもりが、まさかの3ミス
5/5(土)夜イタリア語77368正確性重視で耐えつつ隙を見て速度も出す
5/6(日)午後一クロアチア語82238伸び悩んだ上に2ミスしたのは無念


●戦術

(1) 練習課題文の収集と入力、再入力

InterstenoのTakiソフトウェアに出現する1分間練習および10分間練習の課題文を収集した。目的は、文字の出現頻度の調査の他に、ミスの原因把握と傾向調査である。2015年大会に向けた練習ではここができていなかったため、打鍵終了後に表示される結果画面からミスの原因を推測するしかなかった。ミスした単語をGoogle翻訳やGoogle検索に入力すると、正解らしき単語を見出せることもある。だが、すべてのケースでうまくいくわけではない。これでは練習効率が悪すぎる。

そこで、1分間練習の課題文を計1187個、10分間練習の課題文を計495個収集した。特に10分間練習は昨年から180個以上上積みし、全言語を完了した(本番直前に追加された新規文章を除く)。さらに、収集したすべての練習課題を実際に入力してExcelシートに整理し、ミスの原因を正確に把握できるようにした。具体的な方法は表11の通りである。

【表11:Takiソフトウェアの練習課題の収集・分析方法】

・課題全文をキャプチャする。
 →事前に、長い単語を辞書に登録しておく。
  例えばWin7,Win10のIMEなら全角60文字分まで登録できるため、
  「p」に「あいうえお……だぢづで」を単語登録する。
  日本語全角文字を登録するのは、半角文字の倍速で打てるため。
 →Takiソフトウェアの画面で文章を表示させた直後にキャプチャする。
 →ローマ字入力で「p→Space」を繰り返し、上記登録単語を入力する。
  7回繰り返した後にEnterを2回押下し、文字列を確定させる。
 →すると画面上部に表示される課題が約1ページ分スクロールされる。
  ここで再びキャプチャする。
 →課題のスクロールが止まるまで以上の作業を繰り返す。

・キャプチャした画像をmspaint等で連結して1つの画像にする。
 →1分間課題は概ね3枚、10分間課題は概ね25枚の画像を連結すれば完了。
 →余分な部分は削除する。

・この画像を見ながら、メモ帳に課題文章を入力する。
 →フォントはCourier New(日本語はMSゴシック)、サイズは12ptに設定する。
 →メモ帳の横幅を調整し、改行位置をTakiソフトウェアの画面と合わせる。
 →特殊文字を保存するため、文字コードを「Unicode」に設定する。

・入力結果をExcelに貼り付ける。
 →そのまま貼り付けると1行おきになってしまうため、後で余分な行を削除する。

・ExcelからGoogle翻訳の画面に貼り付ける。
 →約15行毎に実施する。
 →翻訳結果がおかしい場合は大抵ミスが原因なので、画像と比較して修正する。
 →難関言語は再入力し、以前の入力結果とEXACT関数で比較してミスを検出する。

・1〜3行目を順次Google検索し、出典が見つかればメモする。
 →各行を" "で囲んで検索する。
 →出典が明確ならミスの発見に役立つし、本番課題の予想にも使える。

・ExcelからWordに貼り付けた後、文字カウントで文字数を数える。
・Excelの置換機能を用いて特殊文字やqwvx等の出現頻度を調査する。
 →マクロを使っても良いし、司@dvorakさん推奨のWebサイトもある。

この作業の結果、出現するすべての文字を把握できた。例えば引用符として"の他に“”等が存在することを確認できたし、2015年に「アポストロフィバグ」と呼称していた'と’の違いも明らかになった。さらに、ハンガリー語ではőűの代わりにõûが、クロアチア語ではđćčの代わりにðæèが、ルーマニア語ではăの代わりにãもしくはǎが用いられるケースもあることが判明した。日本語の「いえ→ゐゑ」のような扱いなのだろうか。英語等では、日本人が普段まず打つことのない€(ユーロ)や£(ポンド)が稀に出現することも判明した。

また、英語等で頻出するTakiソフトウェアの問題点の報告も効果的に実施できるようになった。どの文章のどの文字がバグであるか、ピンポイントで指摘できるためだ。実際、2015年12月から2016年3月にかけて、英語・ハンガリー語・イタリア語・ドイツ語・フランス語・ルーマニア語・クロアチア語・ポルトガル語の問題点をInterstenoのTaki担当者にまとめて報告し、練習課題の精度向上に貢献した

さらに、全文入力自体が各言語の打鍵のトレーニングになった面も見逃せない。スコアを測定する練習は1言語・1日につき「1分間練習×10」もしくは「10分間練習×2」程度が精一杯であった。だが、これでは練習量が絶対的に不足する。確かに全文入力ではスコアを目的としないため、ともすれば緊張感の無い打鍵になりがちだ。とはいえ、絶対的に不足している練習量を補う効果は間違いなくあった。さらに、英語では20分前後、ロシア語では30分以上かけて10分間課題の全文(約1万文字)を入力し続けることで、脳・目・指の持久力が強化され、10分間の打鍵を長いとは感じなくなった。

(2) Takiソフトウェアの問題点への対応

Takiソフトウェアの練習課題には、表12に示す問題点が存在する。発見次第Interstenoの担当者に報告し、その総数は約200件に上った。これは、今年のみならず来年以降の練習課題の精度を上げるためだ。

【表12:Takiソフトウェアの問題点一覧】

No.内容言語
110分間練習用の課題が2〜5種類しか無いため、
初見課題の対策にならない
フィンランド語、ポーランド語、スロバキア語、
ハンガリー語、オランダ語、スペイン語
2スペルミス英語(competitition、artisric等)
3その言語では使用しないはずの特殊文字が
出現する
英語(éçàèìò)、ハンガリー語(äõû)、トルコ語(îûþ)、
クロアチア語(ðæè)、ルーマニア語(ãǎ)、
イタリア語(î)、ポルトガル語(ïö)
4画面上部に何も表示されないことがある英語、クロアチア語、イタリア語、
本家フランス語、ベルギーフランス語
5麻雀牌に似た記号(Win7/Vista)、
もしくは空白の長方形(Win10)が出現する
各種ドイツ語、イタリア語、各種フランス語、
英語、ベルギーオランダ語
6黒ダイヤ内に白い?を含む記号が出現するベルギーフランス語、イタリア語
7アポストロフィがミス判定となる文章がある英語、フランス語、スイスフランス語、
イタリア語、トルコ語、ルーマニア語、スロバキア語
8ハイフンがミス判定となる文章がある日本語、英語、ハンガリー語、クロアチア語、
ルーマニア語、フランス語、イタリア語、
ロシア語、スロバキア語
9その他、特殊な記号が出現する表13参照
10短すぎて1分未満で終了する1分間課題があるトルコ語等
11短すぎて10分未満で終了する10分間課題がある各種フランス語、トルコ語
12結果表示画面でうまく改行されておらず、
ミスの詳細が隠れて表示されない
英語、イタリア語、ポーランド語、トルコ語、
フィンランド語
1310分経過時点で仮確定文字列が残っていると、
ミス判定になる。
日本語
141分間課題に異なる言語の課題が混在しているイタリア語、ルーマニア語
15開幕で半角/全角キーが勝手に入力されることがある英語、ハンガリー語、チェコ語、
オランダ語、スロバキア語
16打鍵中、左Altキー等に誤って触れることで、
フォーカスが外れることがある
共通

No.7に関して、日本語配列の「Shift+7」やUSインターナショナル配列の「:→Space」を打鍵すると'(アポストロフィ)が表示される。ところが、一部の文章では’(シングルクォート)が使用されている。後者にはやや角度がついているため、辛うじて判別可能である。

No.8に関して、日本語配列やUSインターナショナル配列の-(ハイフン/マイナス)を入力するとミス判定になることがある。一部の文章では–(enダッシュ)が用いられている。日本語では―(全角ダッシュ)が用いられている。これらはTakiソフトウェアの画面上でCourier Newフォントで表示されると判別不可能だ。なお、ロシア語でのみ—(emダッシュ)も出現する。こちらはやや長いため、辛うじて判別できる。

No.9に関して、特殊文字や記号は表13に示す通り、かり〜配列で概ね対応可能だ。前記の独自配列でももちろん対応させた。とはいえ、これらの特殊文字や記号は、基本的に本番には出ない(例外:2016年の各種フランス語には、以下に含まれない初見の引用符が2箇所出現した。2018年のトルコ語には、¬が出現した)。従って、練習時に理不尽な減点をされても、本番で出ないと割り切れば良いという考え方もある。

No.15に関して、英語では2017年の本番でも発生した。無意識のうちに日本語全角文字からの切り替えを意図して[Alt+半角/全角]を叩き込んだのが認識され、例えば[半角/全角→E]で[È]が入力されたものと思われる。筆者の配列はUSインターナショナル配列がベースなので、母音はグレイヴ付きになるし、子音は直前に[`]が入る。対策としては、入力結果を確認してから進むしかない。

No.16に関してもWin10機に変更してから悩まされている。左Altキー以外にもこのバグを誘発するショートカットキーがあると思われるが、未確認。本番では発生しなかった。

【表13:Takiソフトウェアに出現する特殊文字・記号一覧】

特殊文字/記号かり〜配列dq配列出現範囲
Shift + : → 1: → 1トルコ語、英語、ポルトガル語、
スロバキア語、ロシア語
Shift + : → 2: → 2上記+ルーマニア語、フィンランド語、ハンガリー語
(未対応): → 3ハンガリー語、ルーマニア語
£右Alt + $: → 4英語
右Alt + 5: → 5英語、イタリア語、フィンランド語
右Alt + 9: → 6英語、スロバキア語
右Alt + 0: → 7上記+トルコ語、イタリア語、フランス語、
ベルギーフランス語、ルーマニア語
«右Alt + @: → 8各種フランス語、クロアチア語、ロシア語
»右Alt + [: → 9同上
º右Alt + +: → 0イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語
ª(未対応): → -スペイン語、ポルトガル語
ǎ(未対応): → aルーマニア語
左Alt+
テンキー0151
: → mロシア語
左Alt+
テンキー0150
: → n英語、ハンガリー語、クロアチア語、フランス語、
ルーマニア語、イタリア語、ロシア語、スロバキア語、
フィンランド語
þ右Alt + t: → pトルコ語
§右Alt + S: → sポルトガル語
(Tab文字)(未対応): → tトルコ語
œ右Alt + x: → x各種フランス語
æ右Alt + z: → zクロアチア語
¿右Alt + /: → /スペイン語
°(未対応)半角/全角 → 0ポルトガル語
(未対応)半角/全角 → .英語、ベルギーフランス語、イタリア語、ルーマニア語
¬右Alt + ]半角/全角 → ]英語、トルコ語
½右Alt + 7同左ルーマニア語

※かり〜配列は、2015年5月時点のもの。USインターナショナル配列がベースとなっている。
※dq配列では、英語のみデッドキーに:でなく半角/全角を使用。

(3) 方言の選択

ドイツ語、フランス語、オランダ語の方言選択の検討にも、上記の練習課題の収集結果資料が役立った。具体的には、バグや特殊文字の少ない方言を選択することで、練習の効率アップと本番の得点アップを狙った。

ドイツ語には本家ドイツ語の他にスイス方言が存在する。今回は特殊文字の少ない後者を採用した。両者の主な違いは、後者には原則としてß(エスツェット)が存在せず、ssで置き換えられることである。つまり特殊文字が1種類減るため、短期間での攻略が容易になる。但し、長い目で見れば、ssという連打に耐え続けるよりもßの位置を覚えて打つ方が負担が少ないという考え方もある。いずれにせよ出現頻度は低いため、実際には大差無い。なお、2016年と2018年のスイスドイツ語の本番では、ßが複数回出現した。このような場合に備え、ßを含む配列を準備し、かつ位置を把握しておく必要はある。

フランス語には本家フランス語の他にスイス方言、ベルギー方言が存在する。今回はバグが最も少ないベルギー方言を採用した。但し、本質的な違いは調査しても分からなかった。その後、Taki担当者とのやり取りの中で、本家フランス語やスイス方言では記号(;:!?)の直前にスペースが入る一方、ベルギー方言では入らないとの情報を頂いた。普段打ち慣れた仕様であるベルギー方言を選択して正解だった。

オランダ語には本家オランダ語の他にベルギー方言が存在する。2018年は本番期間開始後しばらくの間はベルギー方言が表示されていなかったため、本家を採用した。本質的な違いは調査しても分からなかった。一字一句違わない課題文章を両者で使い回している事例も複数存在した。なお、一部の特殊文字は方言により得点が違うことがある。実際には出現率の問題で、微々たる違いだが。

(4) キーボードの選択

2017年大会以降、全17言語を東プレRealforce106(All30g)で打鍵している。日本語かな入力を除いて、東プレRealforce106でもミスを抑えつつ高速化できるという確信を得たためだ。実際、ここ3年の総ミス数の推移は47→28→35、1言語あたりの平均値は2.76→1.65→2.06であり、2016年と比較して有意に減少している。

東プレRealforce106(All30g)適用の実験を開始したのは2016/12/19だった。2003年時点の筆者はこのキーボードを使いこなせなかった。打鍵時に隣のキーに指が軽く触れただけで認識され、ミス判定となる「かすりミス」が目立ったためだ。だが、東プレRealforce89U(45g/30g)で10年以上も正確性重視の鍛錬を継続してきたため、All30gでも次第にミスを抑えて打てるようになった。それならば、速度を出せるAll30gの方が良い。折しも、45g/30gのキーボードのSpaceキーのレスポンスが長年の使用の影響で悪化し、高速打鍵に悪影響を及ぼすようになってきたため、All30gを久々に採用した。

(5) その他環境整備

以下の事項を網羅した本番準備・実施手順書を作成した。もはやこの辺は仕事と同じだ。人為ミスをシステム的に根絶していかないと、本番で思わぬところで足元をすくわれる。

TakiソフトウェアをFirefoxで使用する場合、「Ctrl+z」でそれまでの入力結果がすべて消えるというバグが存在する。従って、このショートカットキーを無効化するか、他のブラウザを用いるという対策が不可欠である。筆者はGoogle Chromeを導入した。ちなみに、Google Chrome上で「Ctrl+z」が発動した場合は、直前に打鍵した1文字が消えるだけで済む。また、Firefoxを使用する場合は、ChangeKeyKeySwapを用いて左右のCtrlキーを一時的に無効化するのが良いと思う。

また、言語ごとに異なる配列を使用する場合は、配列変更のショートカットキー「Shift+左Alt」の無効化が必須だ(Windows VistaかつFirefoxの場合)。さもないと、Shift文字の打鍵ミス等が原因で、意図しないタイミングで入力言語が切り替わって即死する。参考サイトはこちら

さらに、www.intersteno.itでは「Ctrl+;」で文字サイズを拡大できる。特殊文字の多い言語、特にi, í, ì, ıのうち2種類以上が同時に出現する言語(伊西葡洪土捷斯)を打鍵する時には必須と言って良い機能だ。だが、www.intersteno.orgでこの操作を実施すると、"This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーが表示される。なお、本番ではwww.intersteno.orgで上記のエラーが発生しない一方で、画面内の本番エリアのサイズが小さいため、開始直後にマウスで調整する必要がある。www.intersteno.itではこのような調整が不要なので、開幕の数秒を無駄にしないためにもこちらを採用すべきだ。

本番や練習の実施前には、使用しないアプリケーションやブラウザ画面を必ず終了させる。筆者のケースでは、Outlookの定期的なメール受信により、練習中にブラウザがフリーズしたことがあった。また、Firefoxのプラグインの暴走により、日本語の変換結果の表示に逐一10秒以上かかる状況に陥ったこともあった。このような事態が本番で発生してはたまらない。フリーズの場合も再受験等の救済措置は無い。その時点で打ち終えていた分までで判定されるか、もしくは失格(0点)となる。WindowsUpdateやLiveUpdate、JavaUpdate、セキュリティソフトの定時スキャン等に関しても、10分間打鍵の実施中にバックグラウンドで動作させないような対策を講じておきたい。

最後に、Takiソフトウェアで本番を実施する場合、直前に必ず画面をリロードする。一定の時間が経過するとタイムアウトし、練習用のTakiソフトウェアに切り替わるためだ。

……

Google Chromeを使用する場合であっても、Ctrlキーを無効化すべきである。理由は、表14に示す有害なショートカットの存在だ。特に致命的なのがCtrl+W(画面を閉じる)、Ctrl+R(画面リフレッシュ)だ。例えば大文字打鍵時に左手小指がShiftから一瞬でも下に滑るとCtrl誤爆が発生する。

【表14:Google Chromeの有害なCtrlショートカット一覧】

ショートカット効果
Ctrl+W画面を閉じる(即死)
Ctrl+R画面リフレッシュ(即死)
Ctrl+T新タブを開く
Ctrl+U別タブでソース表示
Ctrl+Oファイルを開く
Ctrl+P印刷画面を開く
Ctrl+S保存ウィンドウを開く
Ctrl+Dブックマークを追加
Ctrl+F/G検索画面を開く
Ctrl+H履歴を開く
Ctrl+Jダウンロード検索
Ctrl+E/K/L検索ウィンドウに移動
Ctrl+;文字を大きくする
Ctrl+N新窓を開く

(6) 本番の実施

ベストの体調で、ベストの時間帯に実施するのは言うまでもない。今年の筆者の場合、休日の夕方と、夕食後21時までの時間が最善だった。仕事・育児・家事と重ならず、かつ身体が覚醒しているためだ。また、平日帰宅後や登山直後のように疲労している場合や、リハビリが不充分な場合、眼精疲労や脳・腕・指の疲労が蓄積している場合も、本番実施を避けるべきだろう。

また、1日あたりの本番実施数は2言語に抑えたい。但し、充分な練習を積んだ状態で、体調が良く、指の調子も好調を持続している場合に限り、1日に3〜4言語の本番を実施することもあった。

さらに、本番の直前に10分間練習を実施する。これは、本番で使用する配列に確実にセットすると同時に、他の言語との混同を避けるためだ。また、言語ごとに頻出する単語やシーケンスが存在するため、本番の直前に目と指を充分に慣らしておく必要がある。但し英語や日本語など、ガチで10分間打つと疲労する高速言語についてはほどほどにしておく。5分で止めても良いし、1分間練習×5で代用しても良いだろう。2018年は「前半は速度重視、後半は速度を落として正確性重視」「前半で体が覚醒しなかった場合は後半も速度重視」のように、その日の調子に合わせて使い分けた。要は、本番にピークを持っていくため、本番を想定してある程度本気を出しつつも、準備と割り切って力を抜くということだ。


●各言語の対策(主要なもののみ)

(1) ハンガリー語

2016年大会に向けて重点強化言語に指定し、約半年の間ほぼ毎日打鍵した。詳細なスケジュールは2016年の
戦略の「(3) 難関言語の底上げ」で述べた通り。ここでは、配列の進化の過程を表15に記す。青太字で示した部分が、主要なブレイクスルーである。

【表15:ハンガリー語配列のバージョンアップの履歴】

日付Version変更内容
2015/10/18汎用öüを「無変換+py」で打つことで2打鍵化(これは筆者に合わなかった)
2015/10/20汎用かり〜配列を改造
ウムラウトをデッドキー[;に配置し、試行錯誤
2015/10/21汎用かり〜配列を改造
ウムラウトとñをデッドキー;に、サーカムフレックスをデッドキー[に配置
2015/10/223専用配列を新規作成。őűを[]に配置し、1打鍵で打てるようにした
2015/10/234áöüを@[]に配置
2015/10/246áéを@[に配置(特殊文字の出現調査の結果を基に変更)
öüをデッドキー;に、őűをデッドキー]に配置
2015/10/277or8öüőをwqxに、qwxを半角/全角および^]に配置
2015/11/49?
2015/11/1010„を[:→3]に配置
デッドキー;に仕込んだöüを削除(;の1打鍵化
ハンガリー語に出現しないćĺńŕśýźも削除
2015/11/2712űを]に、xを[右Alt+v]に配置
2015/11/2713íóを]^に配置
űqwxを[:→ysdv]に配置(この時点では「:→qwx」に配置する方法が不明)
2015/11/2714űqwxを[:→jfgv]に配置
2016/2/315qwxを[:→qwx]に配置
2016/3/2816emダッシュを[:→m]に配置(これは結局不要だった)
2016/4/1118enダッシュを[:→n]に配置
2017/3/219õûを[半角/全角→ou]に配置

(2) 英語

筆者にとって英語は馴染み深い言語であり、タイピングの練習もそこそこ積んできている。ところが、2015年大会ではこの油断が落とし穴となり、4897点(539.7文字/分、ミス10)という屈辱的な惨敗を喫した。速度も正確性も到底納得できない結果だった。英語の練習も怠ってはいけない。貴重な稼ぎどころなのだから。

2016年オンライン大会に向けて練習を重ねる段階で、多言語対策を重視すると英語が打てなくなることを痛感した。単純に練習時間が減少するし、英語より遅い言語を打つことで英語も遅くなるためだ。そこで、1月以降は英語の10分間練習をほぼ毎日継続した。こうして、英文の打鍵感覚を落とさないようにした。

さらに、英語の配列もカスタマイズした。2015年大会では旧来の習慣から脱せず、日本語配列で打っていた。だが、表16に示す通りUSインターナショナル配列をベースとしている他言語の配列とは一部の記号の位置が異なるため、混同する恐れがある。そこで、英語もUSインターナショナル配列をベースとした。但し、当初:およびShift+:に割り当てていたデッドキーを削除し、;および'を1打鍵で打てるようにした。また、練習問題で稀に出現する一部の特殊文字(’éç)を1打鍵で打てるようにした。

【表16:記号の打鍵方法の違い】

記号USインターナショナル配列日本語配列
:Shift + ;:
':Shift + 7
"Shift + :Shift + 2
@Shift + 2@
&Shift + 7Shift + 6
(Shift + 9Shift + 8
)Shift + 0Shift + 9
=^Shift + -
_Shift + -Shift + \

※他にも日本語配列と打鍵方法の異なる記号は存在する。だが、Interstenoでは出現しない。

さらに、運指の最適化も少しずつ進めた。但し、採用したのは正確性100%を保ちつつ速度を増せるものに限る。具体的には表17の通り。

【表17:英語の運指の最適化】

シーケンス内容適用範囲
un, nu, hu正確性強化fundamental, under, tunnel, nuclear等
number(やや無理がある)
po, op正確性強化/
適用範囲拡大
opportunity, power, potential, polluting, support, possible, policy等
例外:development, developingは薬小。shoppingのoppは全部薬
lo新規allow, follow, lower
例外:ecological(適用しにくい)

(3) ロシア語

paraphrohnさんが作成したインテルステノ用paraph配列集のロシア語配列を参考に、USインターナショナル配列をベースとして新規作成した。但し、細部は筆者にとって打ちやすいようカスタマイズした。例えば、右Altを押しながら何らかのキーを打つという方法は(たとえ右Altを他のキーにスワップしても)性に合わなかった。理由は、かな入力におけるShiftが減速要因になるのと同じである。このため、デッドキー:を押してから当該キーを打つように変更した。また、キーの割り当ても微妙に変更している。

キリル文字に慣れ、зとэ、лとпとиとц、ъとьとы、БとВの認識ミスが減ってきた段階で、配列の最適化に着手した。まず、デッドキーを用いて入力していた文字のうち、ьчйщの出現頻度が比較的高いため、1打鍵で入力できるようにした。一方、ъの出現頻度は低いため、デッドキーを用いて入力するように変更した。

この配列には問題点が二つある。第一に、ьчйщの次に出現頻度の高いэが2打鍵のままであること。これについては、半角/全角キーへの割り当てを検討した。だが、ホームポジションから大きく外れるため、ロスが大きい。かえって:→sの2打鍵で入力した方が安定すると判断した。第二に、пを@に配置しており、проが連続して出現した時に例外無く苦戦することだ。だが、出現頻度の高いпをどのキーに移動するかについては容易に結論が出なかった。同様の問題が発生しているフィンランド語とともに、2019年以降に検討を持ち越すこととした。

2017年大会に向けて重点強化言語に指定し、約4カ月の間ほぼ毎日打鍵した。詳細なスケジュールは昨年の戦略(3) 難関言語の底上げで述べた通り。

(4) 日本語

2015年大会終了後に練習課題が刷新されるとのことだったため、対策はその後に実施する予定だった。ところが、2018年大会の本番実施直前になっても刷新されなかった。このため、2015年と同じ課題を用いて対策を実施した。

また、2017年以前はローマ字入力一本で臨むことを早い段階で決めていた。理由は、東プレRealforce89U/106における初見かな入力が安定しないためだ。確かにローマ字入力では望み得ない速度を得られるのだが、ミスが減らない。特に濁点打鍵時に右手薬指が「わ」に触れたのが認識されてミスになるパターンが根絶できなかった(例:「自動車」が「じわどわうしゃ」になる)。毎パソの和文部門の予選のように同じ文章を300回練習できるならこのミスは根絶できる。だが、初見課題でこのミスを根絶することは不可能というのが、2017年時点での結論だった。

2016年以前との違いは、八号機(Windows10機)調達に伴うIMEのバージョンアップだ。これにより、練習課題に頻出する固有名詞「安倍晋三」が一発で変換できるようになった。一方、他の単語の変換回数が微妙に異なるという弊害も発生した。基本的には練習を重ねて慣れるしかない。

2018年には、All30gで再度かな入力を練習して5000を目指した。その結果、確かに練習を重ねればスコアが伸び、ローマ字入力では望み得ない5000にも届いた。だが、これは同じ文章を何度も打つ過程でミス誘発箇所と対処を暗記していくためだ。実際、初見に近い状態では「わ」だけでなく付近のキー全般へのカスリという問題を解決できなかった。その結果、速度も正確性もローマ字入力を上回れず、本番でも惨敗した。

(5) チェコ語、スロバキア語

両言語の一般的な配列を参考にしつつ、日本語のJISかな配列をイメージして配列を作成した。即ち、右手小指や最上段まで駆使して、頻出特殊文字の1打鍵化を徹底した。この配列のデメリットとして、頻度が低いとはいえwx34567等が連続して出現した時に速度が低下する。だが、頻出文字を1打鍵化するメリットの方が上回ると判断した。

MSKLCを用いた配列の改良回数は、ハンガリー語や英語にこそ及ばないものの、両言語とも10回を超えた。まずは頻出するアキュートを中心に1打鍵化し、次にwxに特殊文字を割り当て、最後に最上段への割り当てを解禁した。合間に、シングルクォートやenダッシュ等、極稀に出現する記号にも対応した。これらの進化は一度にできたことではない。他の言語の練習から得た知見も駆使しつつ、断続的に半年の時間をかけてじっくりと練り上げ、脳と指に適応させていった。

(6) フィンランド語

この言語の対策の難しさは、「Takiの10分間課題の数の少なさ」にある。何と、わずか2種類しか用意されていないのだ。従って、10分間課題を打ちまくって対策すると、そのうち頻出単語や間違いやすい箇所を中心に文章を脳や指が暗記してしまう。これでは初見文章の対策にならない。

そこで、22種類用意されている1分間課題を中心に初見文章への対策を進めた。もちろん1分間(約500文字)打って終わりではない。一つ一つの課題は約1000文字用意されているのだから、全文を再入力し、初見文章への耐性を培った。さらに、以前の入力結果とEXACT関数で比較することにより、従来気付かなかったミスを機械的に検出し、入力結果の精度も向上させた。

(7) フランス語

ベルギー方言だけで1分間課題271個、10分間課題98個を収集し、全文を入力した。本家フランス語とスイス方言も合わせると、総打鍵数は120万を超える。これは約240回分の10分間練習に相当する(1回につき5000打鍵と仮定)。この豊富な練習量に基づく習熟度の向上が、2017年大会以降におけるスコアアップに大きく寄与した。

また、英語に似たスペルの単語が多いという特性を充分に活用して高速化を図るとともに、英語と異なる(かつ間違えやすい)スペルの単語をリストアップし、辛抱強くミスを減らしていった。一例を挙げれば表18の通り。

【表18:英語と混同しやすいフランス語】

フランス語英語
histoirehistory
territoireterritory
mémoirememory
respiratoiresrespiratory
nécessairenecessary
militairesmilitary
environnementenvironment
gouvernementgovernment
mouvementsmovements

フランス語英語
rythmerhythm
algorithmealgorithm
humainehumane
organisationorganization
particulierparticular
conflitsconflicts
membresmembers
européenneEuropean
recommandationsrecommendations
jugementjudgment
comparaisoncomparison

(8) トルコ語

2018年大会に向けて重点強化言語に指定し、約5カ月の間ほぼ毎日打鍵した。詳細なスケジュールは戦略の「(3) 難関言語の底上げ」で述べた通り。正確性を重視しつつ、次第に高速化していった。

1分間課題97個、10分間課題108個を収集し、全文を入力した。総打鍵数は120万を超える。これは2017年のフランス語とほぼ同等の量であり、約240回分の10分間練習に相当する(1回につき5000打鍵と仮定)。この豊富な練習量に基づく習熟度の向上が、スコアアップに大きく寄与した。

配列に関しては、İを^に配置して1打鍵化した。ホームポジションから離れるが、出現頻度が少ないため問題無い。iとıの混同の問題は、単語内で同じ母音が繰り返し使用されるという現象を念頭に置いてある程度解決した。

さらに、頻出単語を暗記した。[çeşitli](諸)等、打ち辛いものも含めてだ。なお、トルコ語の練習課題の特徴として、一つの文章の中には似たような単語が繰り返し出現する傾向がある。これに慣れれば後半はいい感じに加速できる。

(9) イタリア語

2017年大会に向けては、高速化が道半ばという状況で本番を迎えた。但し、フランス語と共通の配列であることから、フランス語の陰で重点強化していたようなものである。さらに、2017年6〜7月、2018年2月に10分間課題55個を全部収集し、入力した。1分間練習と合わせると、総打鍵数は84万を超える。これは約170回分の10分間練習に相当する(1回につき5000打鍵と仮定)。この豊富な練習量に基づく習熟度の向上が、スコアアップに大きく寄与した。特に、頻出する[-zione], [-zza]等に習熟することができた。


●日本語の係数について

2015年大会では、日本人参加者から、日本語の係数「2.2607」は不利との声が多数挙がった。確かに、大半の参加者のスコアが「英語>日本語」となった現状を鑑みれば、そういう感想を持つことも理解できる。実際、日本人のうち英語と日本語の両方で合格条件を満たした41人中、32人(78.0%)のスコアが「英語>日本語」であった。母国語である日本語よりも外国語である英語の方が平均的にスコアが高いというのでは、違和感を覚えるのもある意味当然だろう。

2016年大会では、課題文章の大幅な易化により、上記の感想はほとんど目にしなかった。むしろ、得点が伸びたことで「係数が上がったのでは?」という感想を持つ人が多かった。実際、日本人のうち英語と日本語の両方で合格条件を満たした37人中、「英語>日本語」となったのは19人(51.4%)であり、昨年よりも大幅に低下した。

2017年大会では、課題文章の難易度は2015年と2016年の中間程度だった。日本人のうち英語と日本語の両方で合格条件を満たした18人中、「英語>日本語」となったのは11人(61.1%)であり、昨年よりもやや増加した。

2018年大会では、課題文章が難化した。日本人のうち英語と日本語の両方で合格条件を満たした14人全員が「英語>日本語」となった。

筆者の日本語の記録は422.8文字/分(ミス5)で3978点であり、全17言語中最下位だった。そしてこの例は筆者だけに当てはまるわけではない。今回の日本人参加者29人について、各言語の合格者平均点のランキングは表19の通りとなる。何と、日本語が初めて最下位に転落した。だが、個人的には、今年の結果を根拠に日本語の係数を上げる必要は無いと考えている。なぜなら、2016年のように課題文章が易化した場合、日本語のスコアの過大なインフレが発生するためだ。その結果、日本語に事実上参戦できていない海外勢から、日本人だけズルいという声が上がるだろう。加えて、仮に日本語の係数をさらに上げるのであれば、特殊文字の多い他の言語にも係数を設定すべきだろう。

【表19:各言語の合格者平均点と合格者数】

言語合格者平均点合格者数
スペイン語4034(+761)8(-2)
英語3993(+304)19(-4)
フランス語3980(+225)7(-)
ポルトガル語3885(+58)7(-)
オランダ語3815(+609)10(-3)
クロアチア語3736(-60)8(+1)
ポーランド語3543(+207)6(-)
スロバキア語3516(+216)6(-)
イタリア語3510(+336)11(-2)
ドイツ語3480(-134)10(+2)
フィンランド語3476(+228)8(-1)
ハンガリー語3348(+334)6(-)
ルーマニア語3279(-256)8(+1)
チェコ語3222(+275)6(-)
トルコ語3193(-112)7(+1)
ロシア語2967(-155)6(+2)
日本語2878(-447)23(-)

※()内は昨年比。
※方言はまとめて集計した。

但し、ミスのペナルティに関しては他の言語と比較して大きめと感じた。特に合格ラインギリギリの文字数しか打てない場合、ミス率の制限に引っ掛かりやすくなる。Interstenoの仕様では、日本語に単語という概念が無いため、「抗議」を「講義」と打つと2ミスになる。これに対し、他の言語では1単語の中のミスは最大1なので、例えば英語のcomeをcmoeと打っても1ミスである。


●モチベーション維持策

2016年以降、長期に渡ってモチベーションを維持できているのは、「自分を成長させる」ことを第一の目的としたためだ。Interstenoへの参戦は今回で終わりではない。今後数年かけて多言語タイピングの実力を培うという戦略で臨んでいた。強化を継続すれば、17言語で85000点に届くという見通しを持っている。その先には17言語9万点、20言語10万点も見えてくるかもしれない。

自分を成長させるには、自ら戦略と戦術を考案し、練習の過程でPDCAを回して練り上げていくのは当然のことだ。ここまでは本気で勝ちたければ誰でも実行するだろう。加えて、実力が同程度、もしくは上の人間はライバルであると同時に、自分を成長させてくれるありがたい存在だ。今回はこの発想が根底にあったため、かつての毎パソにおけるたにごん戦のように、姑息な手段を使ってでも勝ちに行くという考えは全く無かった。むしろ、毎週のTypeRacer対戦会で叩きのめされることを感謝しつつ、最大限に利用させて頂いた。

今回も対人戦を行う意思が極めて希薄であり、特定の相手に向けた宣戦布告はしなかった。4月の本番期間が始まる少し前にそれまでの自己ベストおよび平均スコアをTwitter上で公開し、「目標は日本語を除く16言語で80000点」と公言したのが最初で最後である。昨年と同様、大会に向けて自分を、そして日本人参加者を鼓舞する目的の方が大きかった。


●感想(というよりも反省)

限られた本番実施期間で、複数の難関言語を含む17言語に参戦した。その結果、昨年の歴代最高スコアを更新して連覇を達成した。また、日本語を除く16言語では78260点となり、目標としていた8万点には届かなかったものの、昨年のスコアを516点上回った。

だが、来年もこの得点で同じ順位を獲得できると楽観はしていない。2015年以来の日本人の奮闘ぶりを見た諸国のタイピストたちが、このまま座視しているとも思えない。特に、本気モードのSeanとの死闘が予想される。正確性重視で速度を抑えてばかりでは絶対に勝てない。さらに、新たな強力なライバルたちが続々と出現してくる可能性もある。さらなる境地を目指すためにも、まずは今年の失敗と成功を分析する。

(1) 失敗から学べ!

最大の失敗は、トルコ語と英語の本番を打った際に指が冷えていたことだ。スケジュールの都合上、4/27に4言語の本番を集中させざるを得なかった。となると、最もやり込んでいてスコアも期待できるこの2言語を午前中に片付けるのは必然である。しかし実際には脳が覚醒していなかった。指のウォーミングアップも不充分だった。惨敗を喫したのはある意味当然だ。以後は本番実施を夕方以降に集中させた。

一部の言語では、本番でびびりすぎた。特に、本番で高スコアを狙った言語で緊張感が増加する傾向があった。但し、一概にびびりすぎが悪いとは言えない。適度な緊張感がミス低減に寄与した言語も複数ある。必要十分な練習を積み重ねて不安を消し、緊張感をうまくコントロールしたい。

本番の消耗は予想外に激しかった。幾つかの言語ではびびりまくり、心拍数180状態で10分間耐えることを強いられた。そこまでいかなくても、ミスを防ぐべく脳と目の機能をフル活用して、指先の感覚に細心の注意を払って10分間しのぎ続けるため、相当消耗する。本来、普段の練習のレベルもここまで上げなくてはならないのだ。でなければ本番を想定した練習とは言えない。この辺に甘えが無かったか。もちろん普段の練習でもミスを抑えて10分間打つ訓練を積み重ねている。だが、特に疲労時には、単に10分間打つというノルマをこなすだけの練習になっていなかったか。加えて、消耗を少しずつ減らしていく鍛錬を積むべきだ。消耗が減ると、その分の余裕を速度向上に充てることもでき、プラスのサイクルが回っていく。

体調管理も昨年よりはだいぶ改善されたとはいえ、完璧ではなかった。4/22の股関節負傷により、以後ランニングがろくにできなくなり、運動不足に陥った。5/4にはGW前半に妻子から持ち込まれた風邪による頭痛も発生した。だが、睡眠と休養を充分に取ることにより、練習への影響を最小限に抑えた。このため、昨年のようにドライアイや目の霞みで困ることは無かった。強いて言えば、GW後半に脳が疲弊し、キーボードの上中下段のキーのズレに違和感を覚える症状が発生したことか。この時も即座に練習を切り上げて休養、回復させた。

(2) 重点強化の結果

極めて皮肉なことに、重点強化した言語では狙っていた結果を出せなかった。特にトルコ語は昨年比302アップとはいえ、目標の5200には遠く届かず惨敗した。10分間練習を154回実行し、5500を超えるスコアを叩き出し、最低5000は叩き出せる見通しを持っていただけに、この惨敗は堪えた。

英語も、昨年比295ダウンという惨敗を喫した。こちらも、トルコ語に比肩する150回の10分間練習を積み重ね、最低限5750は叩き出せる見通しを持っていた。だが、本番ではトルコ語の失点を補うべく、無駄な力が入った。また、英語の10分間課題は33個しかないため、日本語ほど顕著ではないものの出現単語や要注意箇所を次第に頭と指が暗記してくる。結果として、初見文章への対策が甘かったのではないか。

40回前後の練習を積み重ねたロシア語、ルーマニア語、日本語は明暗が分かれた。ロシア語は、2017年の重点強化の反動によるスコア低下が懸念された。そこで、4月に入ってからはほぼ毎日10分間練習を打ち込んだ。本番実施時には昨年の力を取り戻しており、昨年比5ダウンに抑えた。一方、ルーマニア語は本番文章の難易度が高く、昨年比421ダウンという惨敗を喫した。日本語はかな入力で初見の文章に挑んだこともあり、やはり昨年比435ダウンと惨敗だった。両言語に共通するのは、直前の練習で自己ベストを出していたことだ。だが、練習では同じ文章を何度も打つのだから、記録を更新できるのは当然だ。初見文章への対策が甘かったという事実は、肝に銘じるべきだ。

10分間課題の収集と全文入力を大量にこなしたフランス語とイタリア語も明暗が分かれた。フランス語は本番で5500を狙った結果、びびりすぎて速度が低下し、昨年比19アップに留まった。イタリア語は最低5200というプレッシャーはあったものの、フランス語ほどの緊張に襲われることもなく、昨年比334アップという結果をもぎ取った。この両言語に共通するのは、大量の打鍵経験により、そう簡単には崩れないという確固たる自信を持っていたことだ。しかも、配列が共通であるため、相乗効果も発揮された。

……

一方で、重点強化対象でなかったはずのスペイン語で351アップ、スロバキア語で218アップ、チェコ語とオランダ語で189アップという結果を得た。これらに関しては、運による部分が大きい。スペイン語は運良くノーミスを達成できた。スロバキア語とチェコ語は本番直前の4月に突然覚醒し、4500を超えるスコアを連発できるようになった。似通った配列なので、相乗効果が発揮されたのだろう。オランダ語は、本番文章が打ちやすかった。大会の性質上、運に左右される要素はどうしても出てくる。幸運が毎回訪れるとは限らない以上、ベースとなる実力(速度、正確性、言語習熟度、配列習熟度)を地道に向上させる必要がある。

練習量が結果に比例するとは限らない。しかし、練習は裏切らない。不調な時や苦しい時に崩壊を防ぐのも、好調な時に思い切った加速を可能にするのも、積み重ねた練習に裏打ちされた実力である。逆に、過去の実績にあぐらをかいて練習を怠れば、失敗の確率は確実に増加する。

(3) ミスの抑制

ミスは昨年よりも合計7増加した。幾つかの言語で積極的に攻めたためだ。来年以降の死闘を見据えると、昨年の速度で満足しているわけにはいかなかった。そして、7ミス増加して350点減った分を速度アップで431点増やして補った。むしろ、速度を上げてもミスを平均2.0そこそこに抑えた点は評価して良いだろう。

ノーミスの言語はドイツ語とスペイン語のみだった。練習時には、英語での29回を筆頭に、全17言語で計76回出していたのにもかかわらずだ。全598回の10分間練習(本番含む)中、1ミスは122回、2ミスは130回、3ミスは116回、4ミスは70回だった。昨年と比較すると、4ミス以内の確率が約82.1%から約86.2%に増えた。2ミス以内は約57.1%から約54.8%に減った。ノーミスは約10.9%から約12.7%に増えた。合格ラインであるミス率0.50%以内(4000文字につき20ミス以内)を気にする段階から、2ミス以内を積極的に狙い、得点を最大化する段階に進んだと言えるだろう。

(4) 他の成功要因

まずは地力の地道な向上だ。今年はトルコ語、英語、日本語、ルーマニア語と惨敗を重ねた。さらに、フィンランド語とポルトガル語でも昨年のスコアを大きく下回った。だが、難関言語を含む他の言語で確実に稼ぎ、スペイン語、イタリア語、オランダ語では爆発スコアも出し、絶望の淵から不死鳥のように蘇り続けた。本番の基本戦術として、精密射撃を心掛けつつも、隙を見て攻めることを心掛けた。この戦術を可能にした源泉は、600回に迫る練習と、各言語の課題の収集・全文入力・再入力・解析にある。実際、練習の質と量が充実していたため、本番で自己ベストを叩き出した言語は一つも無かった。唯一ドイツ語は今季自己ベストを記録したが、昨年の記録に及ばなかった。

日本語は結果的に爆死したが、かな入力を本気モードで試すことができた。これは来年以降に向けた布石となる。今年は、かな入力オンリーで初見文章に挑むのは無謀であることが分かった。昨年は、ローマ字入力では10分間も腕が持たないし、腱鞘炎のリスクも高まるという教訓を得た。だが、両者のいいとこ取りをしてKR混在入力とすれば、活路が開けるのではないか。なお、理論上はJISかなよりも速いと言われている親指シフトを採用する気にはまだなれない。JISかなでさえも、Shiftは大いなる減速要因になるのだ。いわんや親指シフトをや。

戦略面では、Intersteno本番実施10連休の確保が実に大きい。しかも5/2夕方から5/6夕方までは妻子が実家に帰省したため、完全にInterstenoに没入できる貴重な四日間が生まれた。

最後に、多言語部門でのSeanとの激闘が挙げられる。英語でチョモランマ級(8000台)、スペイン語でアコンカグア級(約7000)、他の幾つかの西欧言語でキリマンジャロ級(約6000)のビッグスコアを連発し、筆者が抜いても数時間後には確実に抜き返してきた。絶対王者のプライドを感じ、戦慄せずにはいられなかった。だが、珍しくミスが多く、全盛期の強さは無いと見切ったため、冷静に各言語で稼いで追いかけることができた。むしろ、Seanのスコアがちょうど良いペースメーカーとなった。


●来年に向けて

昨年目標に掲げた「昨年の記録を更新して連覇」は、辛うじて達成した。一方、「日本語を除く16言語で80000点」という目標には1740点も届かなかった。従って、来年に向けて日本語を除く16言語で80000点、全17言語で85000点という目標を引き続き設定する。その先には、日本語を除く16言語でSean、Danielの過去の記録を上回るという目標も考えられる。

筆者の今後数年を見据えた戦略がいつ実を結ぶかはまだ分からない。筆者が85000点以上を狙うには、もはや低速言語の底上げだけでは不充分だ。高速言語では6000点を目指して鍛錬を積み重ねる必要がある。

しかし幸いなことに、戦略と戦術の進化により、総得点を伸ばす余地は残されている。限界はかつて考えていた地点よりも遥かに先にある。カギは、攻めることだ。もちろんミス爆死を前提とした無理攻めではない。ミスを抑えて打てるギリギリの速度に、まだまだ伸ばす余地がある。それでは、来年に向けてさらに伸ばすには具体的にどうするか。

(1) 各言語の習得

究極的には、極めて有効と考えられる。実際、英語では言語習熟度がタイピングに好影響を及ぼしている。タイプウェル英単語やTypeRacer、10FastFingers等の短距離種目では日本人タイピストの中でも決して速くない筆者が、Interstenoや毎パソ等の中長距離種目で上位に居座っていられるのはこのためだ。また、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語に関しても、英語に似たスペルの単語が多数出現するため、英語習熟度がある程度影響を及ぼしている。

さらに、第二外国語としてある程度習得したドイツ語に関しては、長い単語を見た時にどこで区切るかが概ね分かるというメリットを体感できた。同じゲルマン語派のオランダ語に関しても、習得はしていないものの、同様のメリットを享受した。

一方、第三外国語として選択しつつも習熟が甘かったフランス語では、タイピングに好影響を及ぼす段階に至っていない。2017年以降のフランス語のスコアアップの要因は、特殊文字や一部の単語に慣れたことであって、フランス語の習熟とは無関係である。まして、第四外国語以降を新規に習得するとなると、タイピングに好影響を及ぼすレベルまで引き上げるには数年かかりそうだ。長期的視野で取り組むべき課題と言えるだろう。

(2) 各言語の頻出単語・頻出シーケンスの習得

短期的にできる対策は、これに尽きる。これだけなら、10分間練習を100回繰り返せばある程度の成果を期待できるだろう。例えばハンガリー語に関しては、2016年大会に向けて重点強化する過程で幾つかの頻出単語を覚えたことで、明らかに高速化された。azonban(しかし)、napjainkban(今日)といった打ちやすい単語はもちろん、egészség(健康)のような打ち辛い単語も高速化できたのは収穫だ。

2017年大会に向けて重点強化したロシア語でも、本格的な高速化には至らなかったものの、頻出単語は幾つか覚えることができた。Takiの練習課題では、жизни(生活)、подход(アプローチ)、Москве(モスクワ)、экономических(経済の)、воспроизводство(再生)、распределения(配布)、производство(生産)といった単語が頻出する。今年は昨年に続いて4300の壁を破れなかった。だが、さらに練習を積めば4500に到達できると確信している。キリル文字、頻出単語、頻出シーケンスにはまだまだ慣れる余地がある。

他の難関言語も例外ではない。スロバキア語で4970まで伸ばしたのは、大いに自信になった。昨年最下位だったチェコ語も、本番直前になって覚醒した。筆者の配列では左手殺しとなるポーランド語、右手殺しとなるハンガリー語でも、練習では4500を超えている。ここに安住せず、5000を目指すべきだ。

そして高速言語。スペイン語、フランス語、トルコ語、イタリア語、オランダ語で5500前後まで伸ばしてきた。当然、ここが限界ではない。英語では6000台を連発しているのだ。確かに英語以外の言語ではダイアクリティカルマークで減速を強いられる。だが、特殊文字の出現頻度を考慮すると、これだけで1割以上も遅くなることはないはずだ。言語に、単語に、シーケンスに、慣れていないだけだ。特殊文字の多いフランス語で他の高速言語とほぼ互角のスコアが出ているのは、英語に似たスペルの単語が多く、脳と指が慣れているからだ。トルコ語も、本番では惨敗に終わったとはいえ、練習では(難関言語としか思えなかった)昨年までとは明らかに違うスコアを叩き出した。

(3) 来年の重点強化言語

表20に示す通り、全17言語にまだ伸ばす余地がある。但し、課題収集と全文入力はほぼ終了したため、今年までのような顕著な伸びはもはや期待できない。地道な練習により少しずつ実力を積み上げていくしかない。日本語については、KR混在入力を試行錯誤したい。この他、本番で自己ベストに近い得点を叩き出した言語についても、さらに伸ばす余地がある。

一方、練習量が低下した場合は伸びが鈍ることも考えられる。重点強化言語の陰に隠れて練習が疎かになった今年のクロアチア語が好例だ。どの言語を重点的に伸ばすか、そして実力の低下を最小限に抑えるにはどの程度の練習をこなすべきか、全体最適の視点から戦略的に練習を進めていきたい

【表20:各言語の成長余地という観点での分類】

カテゴリ言語
びびりすぎトルコ語、英語、フランス語
その他、本番での失敗※フィンランド語、ルーマニア語
高速化未完成スペイン語、イタリア語、オランダ語
配列検討不足日本語、ポルトガル語
成長途上スロバキア語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語
本番自己ベスト-
本番自己ベスト付近ロシア語、ドイツ語
練習不足クロアチア語

※フィンランド語は、改行位置ずれが発生し、以後速度を落として対処したため100文字はロスした。
※ルーマニア語は、本番の文章の難易度が高かった。

(4) Interstenoへの働きかけ

これは個人として総得点を伸ばすというよりも、将来を見据えて公平かつ公正な競争環境を維持し、裾野を広げるのが目的だ。

まず各言語の練習問題に残る問題点について。筆者が指摘済みだがまだ修正されていないものもあるし、その後新たに見出したバグも存在する。ある程度まとまった段階で、再び粘り強くInterstenoのTaki担当者に働きかけて、修正を促していく。同時に、€や£等、欧米人には常識であっても日本人には馴染みが薄い記号については、打鍵方法を啓蒙するという手段もある。

次に日本語の仕様について。日本人以外の参戦が著しく困難な現状はどうかと思う。今年は結果的に日本語を除く16言語でも筆者が総合1位を占めた。だが、3位のたのんさん、7位のジュニアさんに関しては日本語の有無で順位が変動する状況となった。さらに来年以降、Seanをはじめとする強豪の伸びによっては筆者も「16言語で勝てないのに17言語で勝ちました」となる可能性がある。「方言の一つとしてローマ字入力種目を設定する」「現状の中国語部門と同様、別枠での開催とする」等、既に幾つか案はあるものの、デメリットも多い。前記の日本語の係数の問題と合わせて、試行錯誤が必要だ。現在の不平等感が少しでも解消されるよう提言していきたい。ここでの試行錯誤は、将来の韓国語等への展開の際にも役立つことだろう。


●参考文献・謝辞

Pocariさん:Interstenoオンライン大会への日本語部門追加を先頭に立って推進し、実現にこぎつけたのみならず、2015年の日本人参加者120名もの参加費までご負担頂きました。2016年以降の日本語部門継続にあたっても紆余曲折があり、各国代表との交渉に奔走されたと聞いております。この方の尽力なくしては、筆者はInterstenoの存在すら知らず、まして参戦など考えもしなかったことでしょう。ありがとうございました。

ジュニアさん:最難関のロシア語を含む全17言語への参戦を目指し、最も早い段階で練習に着手していました。その過程では、各言語の専用配列を習得し、特殊文字や記号の入力方法を一から調査・導入されるなど、先行者として並々ならぬ苦労があったことと推察します。

かり〜さん:2015年から多言語タイピングWikiで積極的に情報発信し、筆者を含む多くの初心者に多言語参戦への道筋を示して下さいました。さらに2017年大会に向けた新たな取組みとして、初心者向け多言語対戦会や10FastFingers大会を開催されています。

たのんさん:2017年・2018年大会に向けて、TypeRacer多言語対戦会の開催および毎週参戦により、積極的に引っ張って下さいました。2017年10月以降のパワーアップには大いに刺激を受けました。

paraphrohnさん:2016年大会に向けて、早い段階で「総合8万点で世界一」という高い目標を掲げ、それを有言実行することで日本人参加者全体を引っ張って下さいました。また、インテルステノ用paraph配列集の作成・配布に加えて、TypeRacer多言語対戦会を毎週開催して頂いたお陰で、筆者を含め参加者のレベルは前年とは比較にならないほど向上したと言えるでしょう。

やださん:Takiソフトウェアで出現した "This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーに対して、画面サイズを拡大するか文字サイズを小さくすることで解決できるという情報を頂きました。

どりすとさん:上記の問題につき、www.intersteno.itで打てば問題無いという情報を頂きました。筆者は2016年大会以降、練習も本番もこちらのサイトのみで打っています。

司@dvorakさん:文章内の文字の出現頻度調査に役立つWebサイトをご紹介いただきました。筆者は主にロシア語の文章で活用させていただきました。

愛する家族:ゴールデンウィーク全部という、本来は育児・家事・家族サービスに充てるべき貴重な時間の大半をInterstenoの多言語参戦に投入できたのは、間違いなく家族のおかげです。ありがとう! ……というよりも、我ながらろくでもない夫・父親だと思う。来年以降もオンライン大会に参加するなら、ゴールデンウィークの全部または一部を毎年潰すことになるというジレンマがある。


●各種資料

Intersteno2018関連の資料を以下に公開します。必要に応じ、自己責任でご利用下さい。また、著作権等で問題が発生した場合は即削除します。

Intersteno拡張dq配列
→Interstenoで使用した配列。インストーラとともにMSKLC用のファイルもあります。

注1:言語によっては慣れるまでに相応の時間が必要であり、短期決戦には不向きです。
注2:このMSKLCファイルはWindows10環境でBuildできません(エラー対処を実施していないため)。必要ならばWindows7, Vista, XPのいずれかでBuildしてコピーして下さい。

Intersteno拡張dq配列:仕様書
→上記配列の仕様書。

Interstenoの各言語ランキングと統計資料
→eighさんの統計資料を参考にしつつ、自分用にVBAで作成していた資料です。本レポートにはこのデータを一部使用しています。ソースコードは非公開(効率が悪く、エラー処理も甘く、プログラマとして恥ずかしいレベルなので)。

Interstenoランキング:仕様書
→上記資料の仕様書。

Intersteno課題文の解析資料
→各言語の練習課題(1分間課題計1187個、10分間課題計495個)を自力で収集・入力した資料です。配列作成の際に、特殊文字や記号、qvwxyz等の文字の出現頻度を解析するために使用しました。また、InterstenoのTaki担当者への問題点の報告は、この資料をベースに実施しています。練習時の最高記録も掲載してあります。

注1:元のExcelシートには本番の情報(課題文のうち筆者が入力した部分)も一部含みますが、公開資料では念のため除外してあります。
注2:入力時の正確性は99%以上あると自負しています。また、一部の難関言語では再入力によりミスを検出して正確性を高めています。しかし、筆者も人間である以上100%でないことはご了承下さい。

Intersteno練習の各種統計
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015年160回、2016年552回、2017年375回、2018年598回。本番含む)の各種統計として、「言語毎の最高記録、平均得点、平均速度、平均ミス数」「本番の記録との比較」「練習回数」「ミス数別の試行回数」をまとめたものです。特に昨年からの伸びが非常に励みになりました。

Intersteno練習記録
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015年144回、2016年535回、2017年358回、2018年581回。本番除く)の詳細をデータベース化したものです。上記の統計資料はすべてこのデータから作成しています。なお、元のExcelシートには本番の情報(課題文の冒頭部等)も含みますが、公開資料では念のため除外してあります。

本番準備・実施手順書
→「トルコ語配列のまま英語を打つ」「省電力モードが発動して画面が暗くなる」等の間抜けな事故を防ぐために作成した手順書です。


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