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オンライン大会には、16言語で参加可能である。練習サイトであるTakiソフトウェアの順番に並べると、イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、トルコ語、ポルトガル語、ルーマニア語、フィンランド語、クロアチア語、チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語、ポーランド語である。なお、今年は日本語の本番開催が中止となった(練習サイトには存在する)。
各言語で初見の課題を10分間打ち、「総打鍵数−ミス数×50」を得点とする。この得点の合計値で競う。従って、速度を上げることも重要だが、それ以上に正確性を上げることが非常に重要である。但し、毎日パソコン入力コンクール(以下「毎パソ」)とはミスの定義が違う。例えば、1単語内の入れ替えミス(例:that→taht)や、1行すっ飛ばしは、1ミスとカウントされる。
言語 | 得点 | 速度(文字/分) | ミス数 | 順位 | 参加者数 |
---|---|---|---|---|---|
英語 | 6131(+281) | 618.1(+13.1) | 1(-3) | 3(-) | 620(+237) |
フランス語 | 5766(+317) | 596.6(+46.7) | 4(+3) | 5(-1) | 143(+2) |
イタリア語 | 5629(+65) | 582.9(+21.5) | 4(+3) | 4(-) | 242(-30) |
スペイン語 | 5353(-129) | 545.3(-12.9) | 2(-) | 3(+1) | 168(+14) |
オランダ語 | 5351(+86) | 550.1(+18.6) | 3(+2) | 2(-1) | 201(+2) |
ポルトガル語 | 5339(-81) | 543.9(-8.1) | 2(-) | 3(-) | 94(+7) |
クロアチア語 | 5249(-53) | 534.9(+4.7) | 2(+2) | 4(-3) | 224(+10) |
ドイツ語 | 5225(+622) | 537.5(+52.2) | 3(-2) | 4(+3) | 265(-1) |
トルコ語 | 5154(-121) | 530.4(-7.1) | 3(+1) | 15(-6) | 213(-220) |
ルーマニア語 | 5143(-263) | 519.3(-21.3) | 1(+1) | 1(-) | 70(+14) |
フィンランド語 | 5002(-89) | 515.2(+1.1) | 3(+2) | 2(-1) | 133(+7) |
ポーランド語 | 4807(+28) | 495.7(+12.8) | 3(+2) | 4(-1) | 104(+34) |
チェコ語 | 4780(+127) | 483.0(-2.3) | 1(-3) | 2(+2) | 655(+424) |
スロバキア語 | 4766(+184) | 486.6(+18.4) | 2(-) | 2(+1) | 387(+123) |
ハンガリー語 | 4380(-299) | 463.0(-4.9) | 5(+5) | 3(-1) | 111(+15) |
ロシア語 | 4276(+50) | 442.6(+5.0) | 3(-) | 15(-7) | 49(+15) |
合計 | 82351(+725) | 42(+13) | 2(-1) | 1516(+273) |
※()内は昨年比。
※合計欄の昨年比は、日本語を除く16言語で算出した。
※得点、速度、順位、参加者数は上がった時に+表示。ミス数は増えた時に+表示。
※オランダ語とフランス語にはベルギー方言、ドイツ語には本家で参加した。
※順位は6/5夕方時点のもの。また、方言(例:本家ドイツ語とスイスドイツ語)はまとめて集計した。
言語 | 最高記録 | 平均得点 | 平均速度 | 平均ミス数 |
---|---|---|---|---|
英語 | 6399(+181) | 5915(-11) | 603.9(-1.5) | 2.49(-0.08) |
フランス語 | 5908(+293) | 5643(+197) | 572.0(+24.2) | 1.56(+0.89) |
イタリア語 | 5734(+170) | 5506(+83) | 560.6(+13.2) | 2.00(+1.00) |
スペイン語 | 5575(-111) | 5348(+27) | 545.2(+2.1) | 2.08(-0.12) |
オランダ語 | 5550(+259) | 5303(+105) | 539.0(+7.5) | 1.73(-0.61) |
ポルトガル語 | 5471(+51) | 5286(+33) | 541.7(+6.3) | 2.62(+0.62) |
クロアチア語 | 5292(-10) | 5056(+105) | 518.6(+9.3) | 2.60(-0.23) |
ドイツ語 | 5331(+191) | 5134(+189) | 527.2(+13.6) | 2.78(-1.06) |
トルコ語 | 5656(+129) | 5219(-41) | 534.8(+1.3) | 2.58(+1.08) |
ルーマニア語 | 5335(-71) | 5084(+19) | 518.9(+3.9) | 2.11(+0.40) |
フィンランド語 | 5205(+45) | 5084(+63) | 515.4(+7.3) | 1.40(+0.20) |
ポーランド語 | 4807(+28) | 4598(+98) | 474.1(+16.6) | 2.86(+1.36) |
チェコ語 | 4781(+28) | 4546(+3) | 468.6(+0.7) | 2.80(+0.07) |
スロバキア語 | 4903(+6) | 4668(+10) | 483.5(+3.7) | 3.33(+0.53) |
ハンガリー語 | 5039(+327) | 4607(+66) | 475.7(+9.9) | 3.00(+0.67) |
ロシア語 | 4581(+280) | 4182(+145) | 432.4(+13.3) | 2.84(-0.24) |
日本語 | 4905(+181) | 4549(+166) | 469.9(+20.5) | 3.00(+0.78) |
合計 | 90472(+1977) | 85727(+1256) |
※()内は昨年比。
※上記の数字には本番も含む。
※Takiソフトウェアのバグによるミスと、それによる減点も含む。
※日本語は、本番は開催されなかったが練習は実施した。
ところが、練習に必要なモチベーションが上がらなかった。タイプウェル国語Rでまよまよを抜くという目標に注力するあまり、
対策は二つある。一つは、日本語対策だ。漢字かな交じり文を打鍵する旧来の日本語種目では、係数2.2607の存在を考慮しても明らかに不利になる。何しろ、昨年の筆者の実績を見ると、キリル文字を打ち続けるロシア語や、特殊文字の多いチェコ語のスコアでさえも、日本語のスコアを上回っているのだ。それに、終了時に未確定文字列が残っていると全部エラー判定となる仕様も致命的だ。そこで、筆者も日本語(transliterated)に挑戦し、1000点以上の上乗せを狙う。幸いなことに、タイプウェル国語Rの漢字でローマ字読みの訓練を継続していたため、ローマ字読みへの耐性はそれなりにある。従って、英語並みとはいかないまでも、フランス語やイタリア語と同等以上の速度を期待できる。
もう一つは、日本語以外の16言語の速度アップだ。昨年のレポートの「来年に向けて」に記載した通り、積極的に攻めることによる速度アップを狙う。正確性を保ったまま高速化するのが望ましい。だが、大前提として速度を上げないことにはスコアも頭打ちになる。これに関しては、基本的に、2016年大会である程度確立した戦略を踏襲した。同様のアプローチでもう少し伸ばす余地があると考えていたためだ。但し、必要に応じて修正を加えた。
なお、ポルトガル語の10分間課題に[ñ]の出現を新たに確認した。だが、配列に反映させる前に本番を終えたため、来年以降更新する。
●プロローグ
2020年オンライン大会にも、ディフェンディングチャンピオンとして臨むこととなった。とはいえ、2017〜2019年大会での世界第一位は、2016年の覇者であるparaphrohnさんの不在によるところが大きい。それに、かつて15〜16言語で8万点を超えたSean、Danielといった偉大なタイピストたちも本来の実力を発揮していないか、もしくは不在だった。昨年と同等の実力で彼らとガチ勝負をした場合、敗北する可能性は高いと考えた。このため、2020年の目標は昨年の記録を更新して四連覇と決定した。萌え燃え尽き症候群に陥ったためだ。結局、タイピングに注力できるのは休日のみとなった。ところが、休日に打つのはInterstenoでなくタイプウェル国語Rという状況が2月末まで続いた。その結果、タイプウェル国語Rの記録は12年前と比較して7000ポイント以上伸びた。だが、12/31に基本常用語で29.184秒を出して以来、伸びがほぼ止まった。まずは総合レベルZJに到達すべく、もう少し伸ばしておこうと悪あがきを続けるうちに、2月も終わろうとしていた。
●戦略
2020年のテーマは、日本語を含む17言語で世界のタイピストたちとガチ勝負とした。背景として、日本人以外の参加者が日本語に公平に参戦できるようにするため、日本語(transliterated)、即ちローマ字読みで日本語を入力できる種目が新設されるという情報があった(大会公式ルールにも掲載された)。これに伴い、昨年まで日本語に参戦できなかった海外のタイピストたちの大半が日本語(transliterated)を打ってくると予測した。(1) 各言語の配列の再検討 〜頻出特殊文字の1打鍵化〜
2017年と同様。(2) 各言語の配列の再検討 〜デッドキーの活用〜
2017年と同様。
Takiの練習課題の全文再入力とミスの検出も、平日の日課として進めていた。その結果、新たに約250万文字の課題に対して約600ものミスを検出し、精度を向上させた。詳細は後述する。
一方、10月から始まったTypeRacer対戦会では苦戦を強いられた。たのんさんの実力は昨年からさらにパワーアップしており、特にトップスピードでは勝ち目が無かった。そこで、苦手言語や練習不足の言語に限り、TypeRacerでの事前練習を解禁した。だが、その程度では太刀打ちできなかった。さらに、今年新たに参戦してきたAndreaのベース速度はさらに凄まじく、高速言語では毎回のように叩きのめされた。
期間 | 言語 |
---|---|
2020/3/2-8 | チェコ語、スロバキア語、ポルトガル語、スペイン語 |
2020/3/9-15 | ロシア語、ハンガリー語、トルコ語、英語 |
2020/3/16-22 | クロアチア語、ルーマニア語、イタリア語、フランス語 |
2020/3/23-29 | ポーランド語、フィンランド語、ドイツ語、オランダ語 |
2020/3/30-4/5 | チェコ語、スロバキア語、ポルトガル語、スペイン語 |
2020/4/6-12 | ロシア語、ハンガリー語、トルコ語、英語 |
平日帰宅後は眠すぎるため、1分間練習によるリハビリを中心とした。疲労が蓄積している金曜日は原則として休養日に充てた。単に10分間打つというノルマをこなすだけの無益な練習を徹底して排除した。そして、本番を想定した10分間練習のほとんどは休日に実施した。10分間練習の平均得点が2019年以降向上しているのは、このためでもある。但しスペイン語とロシア語の1分間練習の課題数は限られており、課題を覚えてしまうリスクがあった。このため、平日帰宅後に10分間練習を打つこともあった。
2015年〜2020年大会に向けた練習量の比較は表5の通り。2020年の練習量は2019年こそ上回ったものの、2018年以前と比較するとなお少ない。また、本番用IDが到着すると想定してから実際に到着するまでの約3週間を英語、トルコ語、ハンガリー語、ロシア語の練習に充てたため、その分を除けば昨年と大差無い。大半の言語では必要十分な調整を実施できた一方で、練習不足のまま本番を打たざるを得ない言語も幾つか存在した。
言語 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|---|---|
英語 | 11 | 245(+234) | 86(-159) | 151(+65) | 7(-144) | 51(+44) |
フランス語 | 7 | 44(+37) | 14(-30) | 9(-5) | 3(-6) | 9(+6) |
イタリア語 | 6 | 11(+5) | 16(+5) | 11(-5) | 5(-6) | 10(+5) |
スペイン語 | 12 | 14(+2) | 9(-5) | 14(+5) | 20(+6) | 13(-7) |
オランダ語 | 16 | 12(-4) | 16(+4) | 11(-5) | 6(-5) | 11(+5) |
ポルトガル語 | 6 | 21(+15) | 14(-7) | 15(+1) | 14(-1) | 13(-1) |
クロアチア語 | 7 | 25(+18) | 16(-9) | 15(-1) | 12(-3) | 15(+3) |
ドイツ語 | 16 | 20(+4) | 16(-4) | 9(-7) | 6(-3) | 9(+3) |
トルコ語 | 6 | 17(+11) | 9(-8) | 155(+146) | 6(-149) | 57(+51) |
ルーマニア語 | 8 | 11(+2) | 18(+7) | 40(+22) | 7(-33) | 9(+2) |
フィンランド語 | 17 | 8(-9) | 6(-2) | 8(+2) | 5(-3) | 5(-) |
ポーランド語 | 9 | 11(+2) | 10(-1) | 13(+3) | 6(-7) | 7(+1) |
チェコ語 | 12 | 13(+1) | 16(+3) | 35(+19) | 11(-24) | 10(-1) |
スロバキア語 | 12 | 8(-4) | 12(+4) | 14(+2) | 10(-4) | 6(-4) |
ハンガリー語 | 6 | 33(+27) | 13(-20) | 18(+5) | 6(-12) | 26(+20) |
ロシア語 | 0 | 35(+35) | 94(+59) | 44(-50) | 14(-30) | 67(+53) |
日本語 | 9 | 24(+15) | 10(-14) | 36(+26) | 9(-27) | 5(-4) |
合計 | 160 | 552(+392) | 375(-177) | 598(+223) | 147(-451) | 323(+176) |
※上記の数字には本番および仕様調査を含む。
※各年の打鍵回数には、前年オンライン大会終了翌日から当年オンライン大会終了当日までのすべての10分間練習を含む。
今回も一昨年と同様、公式の大会期間と実際の本番実施期間は異なると予測していた。一方、新型コロナウィルスの影響により、今回の大会実施期間は4/14〜6/1であり、49日間に拡大された。2017年までの例から、本番参加用のIDを入手できるのは早くて4/19朝と想定した。ところが、日本語の方言導入によるテストの遅れにより、実際には何と5/11未明にずれ込んだ。このため、特にロシア語・ハンガリー語・トルコ語・英語に関しては、昨年よりも練習期間が増えた。その代わり、例年と違ってGWを本番に投入することができず、17言語の本番実施戦略の再構築が必要となった。表6に示す通り昨年までと比較しても休日の少ない、余裕の無いスケジュールを組む必要に迫られた。
期間 | 低速言語 | 中速言語 | 高速言語 |
---|---|---|---|
2020/4/8-5/17 | ロシア語、ハンガリー語 | トルコ語 | 英語 |
2020/5/16-17 | フランス語、イタリア語 | ||
2020/5/18-24 | チェコ語、スロバキア語 | ポルトガル語 | スペイン語 |
2020/5/24-25 | ルーマニア語 | ||
2020/5/25-30 | ポーランド語 | フィンランド語、ドイツ語 | オランダ語 |
2020/5/29-31 | クロアチア語 | 日本語 |
※1カ月前から練習を継続していた4言語を最初に実施する。
※ハンガリー語とトルコ語の配列は親和性が高い(öüをwqに配置)。
※フランス語とイタリア語の配列は共通。また、経験値が高い。
※チェコ語とスロバキア語の配列は親和性が高い(特殊文字を34567に配置)。
※スペイン語とチェコ語、スロバキア語、ハンガリー語の配列は親和性が高い(áéíを@[]に配置)。
※ドイツ語とオランダ語は言語として親和性が高い(ゲルマン語派)。
※ドイツ語とフィンランド語の配列は共通。
※ポーランド語とクロアチア語は言語として親和性が高い(スラヴ語派)。
基本的に、2016年以来のスケジュールを踏襲した。高速に打てる言語(英語、オランダ語、スペイン語、イタリア語)と速度の出ない言語(ロシア語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語)を可能な限り分散させた。これは、高速に打つ感覚を維持するとともに、低速言語を底上げするためだ。
また、親和性の高い言語や、共通の配列を使う言語は、同じ週に打つのが効率的だ。逆に、混同する可能性の高い言語(例:フランス語とスペイン語、ハンガリー語とドイツ語、ポーランド語とチェコ語)を同じ週に打たないように注意した。なお、チェコ語とスロバキア語にも混同しやすい部分がある。だが、配列の親和性による相乗効果の方が上回ると判断し、同じ週に実行することとした。
……
最終的な本番実施スケジュールは表7の通りである。平日は仕事があるため、本番実施は土日や祝日がメインとなる。
日付・時間帯 | 言語 | 累計得点 | コメント |
---|---|---|---|
5/16(土)夕方 | ロシア語 | 4276 | びびりすぎ。序盤改行位置がずれて探索と修正で5秒ロス |
5/16(土)夕方 | 英語 | 10407 | 闘志を前面に出し、速度重視で立て直し続けた |
5/16(土)夜 | トルコ語 | 15561 | 文章の難易度が高い上、直前の練習にピークが合ってしまった |
5/17(日)夕方 | ハンガリー語 | 19941 | 初見文章に苦戦。4つしかない10分間課題に慣れすぎた |
5/17(日)夕方 | フランス語 | 25707 | 闘志を前面に出して攻めまくった。速度は自己ベストだが4ミス |
5/17(日)夜 | イタリア語 | 31336 | 同上 |
5/23(土)夕方 | スペイン語 | 36689 | 初見文章に苦戦。脳も覚醒せず、ピーク合わせに失敗 |
5/23(土)夜 | チェコ語 | 41469 | 直前の練習が絶不調。良い意味で開き直り、思う存分加速 |
5/23(土)夜 | スロバキア語 | 46235 | 20時を過ぎ、眠気・疲労との闘い。2ミスでよく耐えた |
5/24(日)夕方 | ポルトガル語 | 51574 | びびり過ぎ。速度を上げる練習が不足。単語への習熟も不足 |
5/24(日)夜 | ルーマニア語 | 56717 | 付け焼刃の1日勝負で昨年の爆発スコアを上回るのは困難すぎた |
5/29(金)夕方 | フィンランド語 | 61719 | びびりすぎ。要所で硬直とミス⇔BSを連発し、大きく出遅れた |
5/29(金)夕方 | ドイツ語 | 66944 | 昨年の反省を踏まえ、入念に準備 |
5/30(土)夕方 | オランダ語 | 72295 | 左が動かず苦戦。1行飛ばし未遂が無かった分だけ伸びた |
5/30(土)夜 | ポーランド語 | 77102 | 打ちやすい文章を速度重視で攻めまくり、本番で自己ベスト! |
5/31(日)夕方 | クロアチア語 | 82351 | 頻出ワードに早めに慣れ、終盤は速度重視で速攻 |
※5/28,29には休暇を取得。
●戦術
(1) 練習課題文の収集と入力、再入力
InterstenoのTakiソフトウェアに出現する1分間練習および10分間練習の課題文を収集した。結果はこちら。目的は、文字の出現頻度の調査の他に、ミスの原因把握と傾向調査である。2015年大会に向けた練習ではここができていなかったため、打鍵終了後に表示される結果画面からミスの原因を推測するしかなかった。ミスした単語をGoogle翻訳やGoogle検索に入力すると、正解らしき単語を見出せることもある。だが、すべてのケースでうまくいくわけではない。これでは練習効率が悪すぎる。
そこで、1分間練習の課題文を計1387個、10分間練習の課題文を計513個収集した(昨年以降の追加分は1分間課題114個)。さらに、収集したすべての練習課題を実際に入力してExcelシートに整理し、ミスの原因を正確に把握できるようにした。具体的な方法は2018年と同様である。
さらに、難関言語に限らず全文再入力を実施した。1分間練習の課題文のうち1295個、10分間練習の課題文のうち426個、合計で約550万文字を再入力した(昨年以降の追加分は1分間課題544個、10分間課題201個、合計で約250万文字)。その結果を過去の入力結果とEXACT関数で比較し、計2000箇所に迫るミスを検出した(昨年からの増加分は約600箇所)。この作業の結果、残存ミス率は約0.05%から0.001%未満に減少したと推測される。
ドイツ語には本家ドイツ語の他にスイス方言が存在する。2019年以降は前者を採用している。両者の主な違いは、後者には原則としてß(エスツェット)が存在せず、ssで置き換えられることである。つまり特殊文字が1種類減るため、短期間での攻略が容易になる。但し、長い目で見れば、ssという連打に耐え続けるよりもßの位置を覚えて打つ方が負担が少ない。いずれにせよ出現頻度は低いため、実際には大差無い。なお、2016年と2018年のスイスドイツ語の本番では、ßが複数回出現した。このような場合に備え、ßを含む配列を準備し、かつ位置を把握しておく必要はある。
フランス語には本家フランス語の他にスイス方言、ベルギー方言が存在する。2016年以降、バグが最も少ないベルギー方言を採用している。但し、本質的な違いは調査しても分からなかった。その後、Taki担当者とのやり取りの中で、本家フランス語やスイス方言では記号(;:!?)の直前にスペースが入る一方、ベルギー方言では入らないとの情報を頂いた。普段打ち慣れた仕様であるベルギー方言を選択して正解だった。
オランダ語には本家オランダ語の他にベルギー方言が存在する。本質的な違いは調査しても分からなかった。一字一句違わない課題文章を両者で使い回している事例も複数存在した。但し、一部の特殊文字は方言により得点が違うことがある。特にオランダ語ではベルギー方言の.が2点なので、スコアにして約1%有利になる。この仕様に気付いた2019年以降、ベルギー方言を採用している。
All30g適用の実験を開始したのは2016/12/19だった。2003年時点の筆者はこのキーボードを使いこなせなかった。打鍵時に隣のキーに指が軽く触れただけで認識され、ミス判定となる「かすりミス」が目立ったためだ。だが、東プレRealforce89U(45g/30g)で10年以上も正確性重視の鍛錬を継続してきたため、All30gでも次第にミスを抑えて打てるようになった。それならば、速度を出せるAll30gの方が良い。折しも、45g/30gのキーボードのSpaceキーのレスポンスが長年の酷使の影響で悪化し、高速打鍵に悪影響を及ぼすようになってきたため、All30gを久々に採用した。
但し、2019年は日本語のみ45g/30gに戻した。All30gが長年の酷使の末、5/3に至ってついに故障したためだ。
2019年10月、消費税増税前に新たに東プレRealforce(R2TLSA-JP3-IV)を調達した。All30g、かつテンキー無しという基準で選択した。このキーボードはタイプウェル国語Rの更新には役立ったが、カスリが激増するというデメリットがあった。従ってIntersteno向けには使えないのではないかという危惧を抱いた。だが、APC設定を「よく使うキー2.2mm、使わないキー3.0mm」としたことで、カスリを防ぎ、Interstenoの実戦に投入する目途が立った。
(3) 方言の選択
ドイツ語、フランス語、オランダ語の方言選択にも、上記の練習課題の収集結果資料が役立った。具体的には、バグや特殊文字の少ない方言を選択することで、練習の効率アップと本番の得点アップを狙った。(4) キーボードの選択
2017〜2019年大会では、東プレRealforce106(All30g)を主に使用した。日本語かな入力を除いて、All30gでもミスを抑えつつ高速化できるという確信を得たためだ。実際、2016〜2019年の総ミス数の推移は47→28→35→34、1言語あたりの平均値は2.76→1.65→2.06→2.00であり、2016年と比較して有意に減少している。(5) その他環境整備
2018年とほぼ同様。本番準備・実施手順書を作成し、遵守することで、人為ミスをシステム的に根絶することを目指した。但し2019年は、Windows10機で打鍵中にフォーカスが勝手に外れる事故に悩まされた。フィンランド語と日本語の本番でも発生した。当初は左Altもしくは左Ctrlへの誤爆による何らかのショートカット発動が原因と考えていた。だが、他にも原因がありそうだ。原因究明のためMy Window Loggerを導入したが、まだ原因を見出せず、対策もできていない。なお、2020年の本番では幸いなことにフォーカス外れが発生しなかった(練習では頻発した)。
4/7、自宅の電気契約を30Aから40Aに上げた。打鍵中にブレーカーが落ちてもPCはバッテリーで動くため問題無い。だが、ルータの電源も落ちるためネット接続が一時的に遮断される。これが危険すぎる。
また、1日あたりの本番実施数は2言語に抑えたい。但し、充分な練習を積んだ状態で、体調が良く、指の調子も好調を持続している場合に限り、1日に3言語の本番を実施することもあった。
さらに、本番の直前に10分間練習を実施する。これは、本番で使用する配列に確実にセットすると同時に、他の言語との混同を避けるためだ。また、言語ごとに頻出する単語やシーケンスが存在するため、本番の直前に目と指を充分に慣らしておく必要がある。但し英語や日本語など、ガチで10分間打つと疲労する高速言語についてはほどほどにしておく。5分で止めても良いし、1分間練習×5で代用しても良いだろう。2018〜2020年は「前半は速度重視、後半は速度を落として正確性重視」「前半で体が覚醒しなかった場合は後半も速度重視」のように、その日の調子に合わせて使い分けた。要は、本番にピークを持っていくため、本番を想定してある程度本気を出しつつも、準備と割り切って力を抜くということだ。
●各言語の対策(主要なもののみ)
※2018年・2019年とほぼ同様。
カテゴリ | 言語 |
---|---|
びびりすぎ | ロシア語、トルコ語、ルーマニア語 |
高速化未完成 | 英語、フランス語、ポルトガル語、オランダ語 |
初見対策不足 | ハンガリー語、スペイン語、フィンランド語 |
配列検討不足 | 日本語 |
本番自己ベスト | ポーランド語 |
本番自己ベスト付近 | イタリア語、チェコ語、ドイツ語、クロアチア語 |
まず各言語の練習問題に残る問題点について。筆者が指摘済みだがまだ修正されていないものもあるし、その後新たに見出したバグも存在する。ある程度まとまった段階で、再び粘り強くInterstenoのTaki担当者に働きかけて、修正を促していく。同時に、€や£等、欧米人には常識であっても日本人には馴染みが薄い記号については、打鍵方法を啓蒙するという手段もある。
次に日本語の仕様について。日本人以外の参戦が著しく困難な現状はどうかと思う。今年は日本語を除く16言語でSeanに敗れ、仮に日本語(漢字かな交じり文)を打てば「16言語で勝てないのに17言語で勝ちました」となる可能性があった。来年以降も同様の状況が発生し得る。一方、今年は「方言の一つとしてローマ字入力種目(transliterated)を設定する」案がテストされ、本番適用まであと少しとのことだった。結局採用は来年以降に見送られたものの、日本語の係数の問題と合わせて、試行錯誤が必要だ。現在の不平等感が少しでも解消されるよう提言していきたい。ここでの試行錯誤は、将来の韓国語等への展開の際にも役立つことだろう。
ジュニアさん:最難関のロシア語を含む全17言語への参戦を目指し、最も早い段階で練習に着手していました。その過程では、各言語の専用配列を習得し、特殊文字や記号の入力方法を一から調査・導入されるなど、先行者として並々ならぬ苦労があったことと推察します。
かり〜さん:2015年から多言語タイピングWikiで積極的に情報発信し、筆者を含む多くの初心者に多言語参戦への道筋を示して下さいました。さらに2017年大会に向けた新たな取組みとして、初心者向け多言語対戦会や10FastFingers大会を開催されています。
たのんさん:2017〜2020年大会に向けて、TypeRacer多言語対戦会の開催および毎週参戦により、積極的に引っ張って下さいました。2017年10月以降のパワーアップには大いに刺激を受けました。
paraphrohnさん:2016年大会に向けて、早い段階で「総合8万点で世界一」という高い目標を掲げ、それを有言実行することで日本人参加者全体を引っ張って下さいました。また、インテルステノ用paraph配列集の作成・配布に加えて、TypeRacer多言語対戦会を毎週開催して頂いたお陰で、筆者を含め参加者のレベルは前年とは比較にならないほど向上したと言えるでしょう。
やださん:Takiソフトウェアで出現した "This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーに対して、画面サイズを拡大するか文字サイズを小さくすることで解決できるという情報を頂きました。
どりすとさん:上記の問題につき、www.intersteno.itで打てば問題無いという情報を頂きました。筆者は2016年大会以降、練習も本番もこちらのサイトのみで打っています。
司@dvorakさん:文章内の文字の出現頻度調査に役立つWebサイトをご紹介いただきました。筆者は主にロシア語の文章で活用させていただきました。
愛する家族:4〜5月の土日およびゴールデンウィークの一部という、本来は育児・家事・家族サービスに充てるべき貴重な時間の大半をInterstenoの多言語参戦に投入できたのは、間違いなく家族のおかげです。ありがとう! ……というよりも、我ながらろくでもない夫・父親だと思う。来年以降もオンライン大会に参加するなら、ゴールデンウィークの全部または一部を毎年潰すことになるというジレンマがある。
・Intersteno拡張dq配列
注1:言語によっては慣れるまでに相応の時間が必要であり、短期決戦には不向きです。
・Intersteno拡張dq配列:仕様書
・Interstenoの各言語ランキングと統計資料
・Interstenoランキング:仕様書
・Intersteno課題文の解析資料
注:入力時の正確性は99%以上あると自負しています。また、イタリア語・各種フランス語以外の言語では再入力によりミスを検出して正確性を高めています。しかし、筆者も人間である以上100%でないことはご了承下さい。
・Intersteno練習の各種統計
・Intersteno練習記録
・本番準備・実施手順書
●参考文献・謝辞
Pocariさん:Interstenoオンライン大会への日本語部門追加を先頭に立って推進し、実現にこぎつけたのみならず、2015年の日本人参加者120名もの参加費までご負担頂きました。2016年以降の日本語部門継続にあたっても紆余曲折があり、各国代表との交渉に奔走されたと聞いております。この方の尽力なくしては、筆者はInterstenoの存在すら知らず、まして参戦など考えもしなかったことでしょう。ありがとうございました。
●各種資料
Intersteno2020関連の資料を以下に公開します。必要に応じ、自己責任でご利用下さい。また、著作権等で問題が発生した場合は即削除します。
→InterstenoおよびTypeRacerで使用した配列。インストーラとともにMSKLC用のファイルもあります。
注2:このMSKLCファイルはWindows10環境でBuildできません(エラー対処を実施していないため)。必要ならばWindows7, Vista, XPのいずれかでBuildしてコピーして下さい。
→上記配列の仕様書。
→eighさんの統計資料を参考にしつつ、自分用にVBAで作成していた資料です。本レポートにはこのデータを一部使用しています。ソースコードは非公開。
→上記資料の仕様書。
→各言語の練習課題(1分間課題計1387個、10分間課題計513個)を自力で収集・入力した資料です。配列作成の際に、特殊文字や記号、qvwxyz等の文字の出現頻度を解析するために使用しました。また、InterstenoのTaki担当者への問題点の報告は、この資料をベースに実施しています。練習時の最高記録も掲載してあります。
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015年160回、2016年552回、2017年375回、2018年598回、2019年147回、2020年323回。本番含む)の各種統計として、「言語毎の最高記録、平均得点、平均速度、平均ミス数」「本番の記録との比較」「練習回数」「ミス数別の試行回数」をまとめたものです。特に昨年からの伸びが非常に励みになりました。
→Intersteno対策として実施した10分間練習の詳細をデータベース化したものです。上記の統計資料はすべてこのデータから作成しています。
→「トルコ語配列のまま英語を打つ」「省電力モードが発動して画面が暗くなる」等の間抜けな事故を防ぐために作成した手順書です。
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