Intersteno2019オンライン大会:レポート(2019.4.1-5.6)



Interstenoとは
筆者の結果
プロローグ
戦略
戦術
各言語の対策(主要なもののみ)
感想(というよりも反省)
来年に向けて
参考文献・謝辞
各種資料


●Interstenoとは

Intersteno(国際情報処理連盟)とは、1887年に設立された、速記者やタイピストを中心とする団体である。オフラインの速記およびタイピングの大会を2年に1回(2007年以降)、オンラインのタイピング大会を1年に1回(2003年以降)実施している。以下の記述は、2019年4〜5月に開催されたオンライン大会に関するものである。

公式ランキングはこちら

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オンライン大会には、17言語で参加可能である。練習サイトであるTakiソフトウェアの順番に並べると、イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、トルコ語、ポルトガル語、ルーマニア語、日本語、フィンランド語、クロアチア語、チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語、ポーランド語である。

各言語で初見の課題を10分間打ち、「総打鍵数−ミス数×50」を得点とする。この得点の合計値で競う。従って、速度を上げることも重要だが、それ以上に正確性を上げることが非常に重要である。但し、毎日パソコン入力コンクール(以下「毎パソ」)とはミスの定義が違う。例えば、1単語内の入れ替えミス(例:that→taht)や、1行すっ飛ばしは、1ミスとカウントされる

筆者は、昨年に続いて全17言語に参戦した。


●筆者の結果

【表1:本番の結果】

言語得点速度(文字/分)ミス数順位参加者数
英語5850(+301)605.0(+25.1)4(-1)3(+7)383(+38)
イタリア語5564(+227)561.4(+22.7)1(-)4(-)272(+17)
スペイン語5482(+2)558.2(+10.2)2(+2)4(-)154(+28)
フランス語5449(+215)549.9(+21.5)1(-)4(-)141(-4)
ポルトガル語5420(+345)552.0(+34.5)2(-)3(+1)87(+9)
ルーマニア語5406(+945)540.6(+79.5)0(-3)1(-)56(-3)
クロアチア語5302(+432)530.2(+33.2)0(-2)1(+3)214(-)
トルコ語5275(+502)537.5(+40.2)2(-2)9(+12)433(-47)
オランダ語5265(-50)531.5(-5.0)1(-)1(+1)199(+19)
フィンランド語5091(+269)514.1(+21.9)1(-1)1(-)126(+8)
ポーランド語4779(+336)482.9(+33.6)1(-)3(+2)70(-2)
ハンガリー語4679(+269)467.9(+21.9)0(-1)3(-1)96(+2)
チェコ語4653(+207)485.3(+25.7)4(+1)4(-)231(+2)
ドイツ語4603(-532)485.3(-28.2)5(+5)7(-4)266(+57)
スロバキア語4582(-79)468.2(-2.9)2(+1)3(-)264(+7)
ロシア語4226(-23)437.6(-2.3)3(-)8(-2)34(-)
日本語3987(+9)423.7(+0.9)5(-)4(-2)26(-1)
合計85613(+3375) 34(-1)1(-)1243(-3)

※()内は昨年比。
※得点、速度、順位、参加者数は上がった時に+表示。ミス数は増えた時に+表示。
※オランダ語とフランス語にはベルギー方言、ドイツ語には本家で参加した。
※順位は5/7昼時点のもの。また、方言(例:本家ドイツ語とスイスドイツ語)はまとめて集計した。

【表2:10分間練習の結果】

言語最高記録平均得点平均速度平均ミス数
英語6218(-67)5926(+135)605.4(+15.8)2.57(+0.47)
イタリア語5564(+62)5423(+166)547.3(+11.6)1.00(-1.00)
スペイン語5686(+92)5321(+128)543.1(+11.6)2.20(-0.23)
フランス語5615(+79)5445(+100)547.9(+4.5)0.67(-1.11)
ポルトガル語5420(+322)5254(+367)535.4(+27.7)2.00(-1.80)
ルーマニア語5406(+178)5064(+237)515.0(+17.7)1.71(-1.21)
クロアチア語5302(+167)4951(+78)509.2(+10.3)2.83(+0.50)
トルコ語5527(+23)5260(+232)533.5(+16.7)1.50(-1.31)
オランダ語5291(-206)5198(+115)531.5(+11.3)2.33(-0.03)
フィンランド語5160(+49)5021(+193)508.1(+13.5)1.20(-1.18)
ポーランド語4779(+118)4500(+44)457.5(+2.3)1.50(-0.42)
ハンガリー語4712(+141)4541(+140)465.8(+12.9)2.33(-0.22)
チェコ語4753(+22)4543(+132)468.0(+11.8)2.73(-0.27)
ドイツ語5140(+5)4945(+5)513.6(+3.0)3.83(+0.50)
スロバキア語4897(-73)4658(+132)479.8(+19.3)2.80(+1.23)
ロシア語4301(+27)4037(-29)419.1(+2.3)3.07(+1.05)
日本語4724(-289)4383(-71)449.4(-17.6)2.22(-2.11)
合計88495(+650)84471(+2103)  

※()内は昨年比。
※上記の数字には本番も含む。
※Takiソフトウェアのバグによるミスと、それによる減点も含む。


●プロローグ

2019年オンライン大会にも、ディフェンディングチャンピオンとして臨むこととなった。とはいえ、2017・2018年大会での世界第一位は、2016年の覇者であるparaphrohnさんの不在によるところが大きい。それに、かつて15〜16言語で8万点を超えたSean、Danielといった偉大なタイピストたちも本来の実力を発揮していないか、もしくは不在だった。昨年と同等の実力で彼らとガチ勝負をした場合、敗北する可能性は高いと考えた。このため、2019年の目標は昨年の記録を更新して三連覇と決定した。

ところが、練習に必要なモチベーションが上がらなかった。原因は主に次の三つだ。

・9月の異動により通勤時間が倍になり、帰宅時間が遅くなった。
ランニングに注力するあまり、平日帰宅後には力尽きてタイピングをやる気力が失せた。
TW英単語でまよまよを抜くという目標に注力するあまり、萌え燃え尽き症候群に陥った。

通勤時間はタイピングの上達に寄与しない、極めて無駄な時間である。異動先の部署の定時が始業・終業とも15分遅くなったのも響いて、帰宅時間は以前よりも1時間近く遅くなった。その結果、帰宅後には常に眠く、特に11月以降はタイピングをやる気力すら湧き起こらなくなった。

ランニングについては、更新したければ走れ! に記述した通り、当初は平日帰宅後の己を覚醒させる効果をもたらした。ところが、ハーフマラソン1時間35分切りという目標に向けて練習の負荷を高めた結果、今度は走り終えたら疲れきっていて打つ気になれないという全く逆の事態が発生した。

結局、タイピングに注力できるのは休日のみとなった。ところが、休日に打つのはInterstenoでなくTW英単語という状況が2月まで続いた。その結果、TW英単語の記録は11年前と比較して1万ポイント近く伸びた。だが、1/6に基本ZHを叩き出してまよまよを抜き返した時点で筆者の伸びも限界点に達した。もう少し伸ばしておこうと悪あがきを続けるうちに2月も終わろうとしていた。


●戦略

2019年のテーマは、準備期間の短縮だ。闇雲に打ちまくるだけで伸びる時期は終わった。モチベーションを長期間保つのも至難だ。そこで、従来のノウハウを駆使して準備期間を短縮し、負担を減らす。一方、本番を想定した練習をしない時期であっても、基礎力強化は継続する。打たなければ退化するのみだからだ。

基本的に、2016年大会である程度確立した戦略を踏襲した。同様のアプローチでもう少し伸ばす余地があると考えていたためだ。但し、必要に応じて修正を加えた。

(1) 各言語の配列の再検討 〜頻出特殊文字の1打鍵化〜

2017年と同様。

(2) 各言語の配列の再検討 〜デッドキーの活用〜

2017年とほぼ同様。変更点は表3の通り。本番もしくは練習課題で新規に確認した特殊文字への対応および、TypeRacerへの対応のみである。なお、昨年まで伸び悩んでいたポルトガル語の配列変更案もあった。だが、すべての特殊文字を打ちやすく覚えやすい配置にできなかったため、結局従来の配列を踏襲した。

【表3:配列の変更点】

言語特殊文字打鍵方法備考
フランス語¬半角/全角→]新規に収集した課題に出現
トルコ語¬半角/全角→]2018年本番課題に出現
フィンランド語en-dash:→n練習課題の記録の伸びに伴い発見
スロバキア語ě半角/全角→eTypeRacer対策
ř半角/全角→r
ů半角/全角→u

※スロバキア語のěřůはInterstenoには出現しない。だがTypeRacerには出現する。

(3) 基礎力強化

5月から2月に至るまで、TW英単語の攻略を継続していた。3月に久々に打ったポルトガル語が突然開眼したり、難関言語(チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ポーランド語)が特に重点強化をしていないのに少しずつ伸びたりした背景には、TW英単語によるベース速度と正確性の強化があったと考えられる。

さらに、5〜7月にTypeRacerで多言語に挑戦した。Interstenoと同様にMSKLCを駆使して配列を検討し、100wpmを目指した。その結果、計42言語で100wpmを突破した。特に、ラテン文字のラスボスであるベトナム語、キリル文字のラスボスであるベラルーシ語に加えて、そのいずれでもない文字を用いるギリシャ語でも100wpmに到達できたのはささやかな自信になった。残ったのはテストが文字化けして合格不可能な日本語、そしてInterstenoに出現しない文字を使用する言語(ヘブライ語、イディッシュ語、アラビア語、ペルシャ語、ヒンディー語、朝鮮語、中国語、台湾語、タイ語)であり、短期間での攻略は至難だ。Interstenoに採用されたら取り組むかもしれないが。

Takiの練習課題の全文再入力とミスの検出も、平日の日課として進めていた。その結果、約300万文字の課題に対して約1400ものミスを検出し、精度を向上させた。詳細は後述する。

一方、10月から始まったTypeRacer対戦会では苦戦を強いられた。たのんさんの実力は昨年からさらにパワーアップしており、特にトップスピードでは勝ち目が無かった。そこで、苦手言語や練習不足の言語に限り、TypeRacerでの事前練習を解禁した。だが、その程度では太刀打ちできなかった。

(4) 練習スケジュール

2月下旬になり、大会期間が迫ってきたため、重い腰を上げて練習を開始した。本番実施を見据えて、本番対策と同様に1週間に4言語を練習した。特に3月下旬には、対戦会のスケジュールに合わせて、チェコ語、スロバキア語を集中的に打ち込んだ。具体的な練習計画は表4の通り。日本語を除く16言語を一通り練習できた。

【表4:練習スケジュール】

期間対戦会その他
2019/2/25-3/3ルーマニア語イタリア語、フランス語、クロアチア語
2019/3/4-10ハンガリー語ロシア語、トルコ語、英語
2019/3/11-17ポーランド語フィンランド語、ドイツ語、オランダ語
2019/3/18-24スロバキア語チェコ語、ポルトガル語、スペイン語
2019/3/25-31チェコ語スロバキア語、ポルトガル語、スペイン語

平日帰宅後は眠すぎるため、1分間練習によるリハビリを中心とした。疲労が蓄積している金曜日は原則として休養日に充てた。単に10分間打つというノルマをこなすだけの無益な練習を徹底して排除した。そして、本番を想定した10分間練習のほとんどは休日に実施した。10分間練習の平均得点が昨年よりも向上しているのは、このためでもある。但しスペイン語とロシア語の1分間練習の課題数は限られており、課題を覚えてしまうリスクがあった。このため、平日帰宅後に10分間練習を打つこともあった。

2015年〜2019年大会に向けた練習量の比較は表5の通り。2019年の練習量は2015年を下回り、過去最低となった。特にフランス語3回、イタリア語5回(いずれも本番含む)という数字は、昨年までの自分から見ればもはやナメているとしか思えない。一方で、必要最小限の練習に絞り込んだという見方もできる。

【表5:10分間練習の打鍵回数の比較】

言語2015年2016年2017年2018年2019年
英語11245(+234)86(-159)151(+65)7(-144)
イタリア語611(+5)16(+5)11(-5)5(-6)
スペイン語1214(+2)9(-5)14(+5)20(+6)
フランス語744(+37)14(-30)9(-5)3(-6)
ポルトガル語621(+15)14(-7)15(+1)14(-1)
ルーマニア語811(+2)18(+7)40(+22)7(-33)
クロアチア語725(+18)16(-9)15(-1)12(-3)
トルコ語617(+11)9(-8)155(+146)6(-149)
オランダ語1612(-4)16(+4)11(-5)6(-5)
フィンランド語178(-9)6(-2)8(+2)5(-3)
ポーランド語911(+2)10(-1)13(+3)6(-7)
ハンガリー語633(+27)13(-20)18(+5)6(-12)
チェコ語1213(+1)16(+3)35(+19)11(-24)
ドイツ語1620(+4)16(-4)9(-7)6(-3)
スロバキア語128(-4)12(+4)14(+2)10(-4)
ロシア語035(+35)94(+59)44(-50)14(-30)
日本語924(+15)10(-14)36(+26)9(-27)
合計160552(+392)375(-177)598(+223)147(-451)

※上記の数字には本番および仕様調査を含む。
※各年の打鍵回数には、前年オンライン大会終了翌日から当年オンライン大会終了当日までのすべての10分間練習を含む。

(5) 本番実施の順序

全17言語の本番を1〜2日で実施するのは非効率である。本番実施を繰り返すことで、肉体的にも精神的にも著しく疲労するためだ。さらに、練習の質・量が甘いと各言語の特殊文字や頻出シーケンスを混同するリスクがある。

今回も一昨年と同様、公式の大会期間と実際の本番実施期間は異なると予測していた。今回の大会実施期間は4/1〜5/6であり、36日間に拡大された。2017年までの例から、本番参加用のIDを入手できるのは早くて4/8朝と想定した。ところが、実際には何と4/1朝に入手したため、表6に示す通り昨年までと比較しても余裕を持ったスケジュールを組むことができた。

【表6:2019年大会の本番に向けたスケジュール】

期間低速言語中速言語高速言語
2019/4/1-7チェコ語、スロバキア語ポルトガル語スペイン語
2019/4/8-14ロシア語、ハンガリー語トルコ語英語
2019/4/15-21ポーランド語フィンランド語、ドイツ語オランダ語
2019/4/22-28 クロアチア語、ルーマニア語、フランス語イタリア語
2019/4/29-5/6 日本語 

※TypeRacer対戦会に向けて練習していたチェコ語とスロバキア語を最初に実施する。
※チェコ語とスロバキア語の配列は親和性が高い(特殊文字を34567に配置)。
※スペイン語とチェコ語、スロバキア語の配列は親和性が高い(áéíを@[]に配置)。
※ハンガリー語とトルコ語の配列は親和性が高い(öüをwqに配置)。
※ドイツ語とオランダ語は言語として親和性が高い(ゲルマン語派)。
※ドイツ語とフィンランド語の配列は共通。
※フランス語とイタリア語の配列は共通。

基本的に、2016年以来のスケジュールを踏襲した。高速に打てる言語(英語、オランダ語、スペイン語、イタリア語)と速度の出ない言語(ロシア語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語)を可能な限り分散させた。これは、高速に打つ感覚を維持するとともに、低速言語を底上げするためだ。

また、親和性の高い言語や、共通の配列を使う言語は、同じ週に打つのが効率的だ。逆に、混同する可能性の高い言語(例:フランス語とスペイン語、ハンガリー語とドイツ語、ポーランド語とチェコ語)を同じ週に打たないように注意した。なお、チェコ語とスロバキア語にも混同しやすい部分がある。だが、配列の親和性による相乗効果の方が上回ると判断し、同じ週に実行することとした。

……

今年はスケジュールに余裕があるため、1週間に4言語ずつ悠々と片付けた。日本語および、難関言語や準備不足の言語はGWに回しても良いと考えると気楽だった。最終的な本番実施スケジュールは表7の通りである。平日は仕事があるため、本番実施は土日や祝日がメインとなる。

【表7:2019年大会の本番実施スケジュール】

日付・時間帯言語累計得点コメント
4/4(木)夜チェコ語4653びびり過ぎて前半で3ミスするも速度は自己ベスト
4/4(木)夜スペイン語10135指冷え冷えの逆境下で攻めまくった
4/6(土)午後ポルトガル語15555本番で自己ベスト。しかも初の110wpm維持
4/6(土)午後スロバキア語20137前半で消耗し、終盤失速。2ミスでよく耐えた
4/7(日)夜英語25987本番初の120wpm10分間維持
4/13(土)夕方ハンガリー語30666終盤の改行位置ずれを修正し、執念のノーミス!
4/13(土)夜トルコ語35941中盤いい感じにぶっ飛ばした!
4/14(日)夜ロシア語40167練習不足だったが、死力を尽くして粘り抜いた
4/21(日)夕方フィンランド語45258幾多のトラブルをしのぎ、1ミスにまとめた
4/21(日)夕方ドイツ語49861打つべきでない時に本番を打った。調整ミス
4/21(日)夜ポーランド語54640速度重視で攻めまくり、本番で自己ベスト!
4/21(日)夜オランダ語59905改行位置ずれの修正で10秒ロス。他は攻めた
4/22(月)夜フランス語65354中盤はノーミス無敵モード。終盤は正確性重視
4/28(日)夕方イタリア語70918後半ノーミス無敵モード。本番で自己ベスト!
4/28(日)夜ルーマニア語76324打ちやすい文章に恵まれ、ノーミス大爆発!!
4/29(日)夜クロアチア語81626本番での調整が成功し、ノーミス爆発再び!
5/4(土)午後日本語85613調整ミスその2。燃え尽き症候群から回復せず

※4/4,22には休暇を取得。


●戦術

(1) 練習課題文の収集と入力、再入力

InterstenoのTakiソフトウェアに出現する1分間練習および10分間練習の課題文を収集した。結果は
こちら目的は、文字の出現頻度の調査の他に、ミスの原因把握と傾向調査である。2015年大会に向けた練習ではここができていなかったため、打鍵終了後に表示される結果画面からミスの原因を推測するしかなかった。ミスした単語をGoogle翻訳やGoogle検索に入力すると、正解らしき単語を見出せることもある。だが、すべてのケースでうまくいくわけではない。これでは練習効率が悪すぎる。

そこで、1分間練習の課題文を計1273個、10分間練習の課題文を計513個収集した(昨年以降の追加分は1分間課題86個、10分間課題18個)。さらに、収集したすべての練習課題を実際に入力してExcelシートに整理し、ミスの原因を正確に把握できるようにした。具体的な方法は昨年と同様である。

さらに、難関言語を中心に再入力を実施した。1分間練習の課題文のうち751個、10分間練習の課題文のうち225個、合計で約300万文字を再入力した。その結果を過去の入力結果とEXACT関数で比較し、計1400箇所を超えるミスを検出した。この作業の結果、残存ミス率は約0.05%から0.001%未満に減少したと推測される。

(2) Takiソフトウェアの問題点、特殊文字への対応

Takiソフトウェアの練習課題には、こちらに示す問題点が存在する。また、こちらに示す特殊文字・記号が出現する。いずれも2018年までに調査・実装済みだったため、今年もその成果を活用した。

(3) 方言の選択

ドイツ語、フランス語、オランダ語の方言選択にも、上記の練習課題の収集結果資料が役立った。具体的には、バグや特殊文字の少ない方言を選択することで、練習の効率アップと本番の得点アップを狙った。

ドイツ語には本家ドイツ語の他にスイス方言が存在する。今回は初めて前者を採用した。両者の主な違いは、後者には原則としてß(エスツェット)が存在せず、ssで置き換えられることである。つまり特殊文字が1種類減るため、短期間での攻略が容易になる。但し、長い目で見れば、ssという連打に耐え続けるよりもßの位置を覚えて打つ方が負担が少ないという考え方もある。いずれにせよ出現頻度は低いため、実際には大差無い。なお、2016年と2018年のスイスドイツ語の本番では、ßが複数回出現した。このような場合に備え、ßを含む配列を準備し、かつ位置を把握しておく必要はある。

フランス語には本家フランス語の他にスイス方言、ベルギー方言が存在する。今回はバグが最も少ないベルギー方言を採用した。但し、本質的な違いは調査しても分からなかった。その後、Taki担当者とのやり取りの中で、本家フランス語やスイス方言では記号(;:!?)の直前にスペースが入る一方、ベルギー方言では入らないとの情報を頂いた。普段打ち慣れた仕様であるベルギー方言を選択して正解だった。

オランダ語には本家オランダ語の他にベルギー方言が存在する。本質的な違いは調査しても分からなかった。一字一句違わない課題文章を両者で使い回している事例も複数存在した。但し、一部の特殊文字は方言により得点が違うことがある。特にオランダ語ではベルギー方言の.が2点なので、スコアにして約1%有利になる。

(4) キーボードの選択

2017年大会以降、全17言語を東プレRealforce106(All30g)で打鍵している。日本語かな入力を除いて、All30gでもミスを抑えつつ高速化できるという確信を得たためだ。実際、ここ4年の総ミス数の推移は47→28→35→34、1言語あたりの平均値は2.76→1.65→2.06→2.00であり、2016年と比較して有意に減少している。

All30g適用の実験を開始したのは2016/12/19だった。2003年時点の筆者はこのキーボードを使いこなせなかった。打鍵時に隣のキーに指が軽く触れただけで認識され、ミス判定となる「かすりミス」が目立ったためだ。だが、東プレRealforce89U(45g/30g)で10年以上も正確性重視の鍛錬を継続してきたため、All30gでも次第にミスを抑えて打てるようになった。それならば、速度を出せるAll30gの方が良い。折しも、45g/30gのキーボードのSpaceキーのレスポンスが長年の酷使の影響で悪化し、高速打鍵に悪影響を及ぼすようになってきたため、All30gを久々に採用した。

但し、2019年は日本語のみ45g/30gに戻した。All30gが長年の酷使の末、5/3に至ってついに故障したためだ。

(5) その他環境整備

2018年とほぼ同様。本番準備・実施手順書を作成し、遵守することで、人為ミスをシステム的に根絶することを目指した。但し2019年は、Windows10機で打鍵中にフォーカスが勝手に外れる事故に悩まされている。フィンランド語と日本語の本番でも発生した。当初は左Altもしくは左Ctrlへの誤爆による何らかのショートカット発動が原因と考えていた。だが、他にも原因がありそうだ。原因究明のためMy Window Loggerを導入したが、まだ原因を見出せず、対策もできていない。

(6) 本番の実施

ベストの体調で、ベストの時間帯に実施するのは言うまでもない。今年の筆者の場合、休日の夕方と、夕食後21時までの時間が最善だった。仕事・育児・家事と重ならず、かつ身体が覚醒しているためだ。また、平日帰宅後や登山直後のように疲労している場合や、リハビリが不充分な場合、眼精疲労や脳・腕・指の疲労が蓄積している場合も、本番実施を避けるべきだろう。

また、1日あたりの本番実施数は2言語に抑えたい。但し、充分な練習を積んだ状態で、体調が良く、指の調子も好調を持続している場合に限り、1日に3〜4言語の本番を実施することもあった。

さらに、本番の直前に10分間練習を実施する。これは、本番で使用する配列に確実にセットすると同時に、他の言語との混同を避けるためだ。また、言語ごとに頻出する単語やシーケンスが存在するため、本番の直前に目と指を充分に慣らしておく必要がある。但し英語や日本語など、ガチで10分間打つと疲労する高速言語についてはほどほどにしておく。5分で止めても良いし、1分間練習×5で代用しても良いだろう。2018〜2019年は「前半は速度重視、後半は速度を落として正確性重視」「前半で体が覚醒しなかった場合は後半も速度重視」のように、その日の調子に合わせて使い分けた。要は、本番にピークを持っていくため、本番を想定してある程度本気を出しつつも、準備と割り切って力を抜くということだ。


●各言語の対策(主要なもののみ)

2018年とほぼ同様。変更点は以下の通り。

(6) フィンランド語

この言語の対策の難しさは、「Takiの10分間課題の数の少なさ」にある。何と、わずか2種類しか用意されていないのだ。従って、10分間課題を打ちまくって対策すると、そのうち頻出単語や間違いやすい箇所を中心に文章を脳や指が暗記してしまう。これでは初見文章の対策にならない。

そこで、22種類用意されている1分間課題を中心に初見文章への対策を進めた。1分間(約550文字)打って終わりではない。一つ一つの課題は約1000文字用意されているのだから、全文を再入力し、初見文章への耐性を培った。さらに、自ら収集した2017〜2018年の本番課題を活用した。他には、TypeRacerでフィンランド語を打つのも対策になる。それでも不足なら、ほぼ同じ配列で対応可能なスウェーデン語を打つ手もある。

なお、2019年に入ってから、TW国語R漢字のローマ字読みのミス制限練習がこの言語に役立つことに気付いた。連打か単打かの見切り、頻発するktミスへの対応といった攻略は似通っていると思う。基礎力強化の一環として採用しても良いかもしれない。

(10) オランダ語、ドイツ語

方言の選択の通り。加えて、他言語と混同しやすい単語があるため要注意だ。一例を表8に示す。

【表8:他言語と混同しやすい単語】

オランダ語ドイツ語英語フランス語
ArbeidsArbeits(labor)(travail)
hebbenhabenhave(avoir)
organisatieorganisationorganizationorganisation
marktmarktmarketmarché
economieökonomieeconomyéconomie
ParlementParlamentparliamentparlament
transparanttransparenttransparenttransparent


●感想(というよりも反省)

限られた本番実施期間で、複数の難関言語を含む17言語に参戦した。その結果、昨年の歴代最高スコアを3000点以上も更新して三連覇を達成した。また、日本語を除く16言語では81626点(昨年比+3366)となり、目標としていた8万点を達成した。いやそれどころか、16言語での過去の記録(2011年のSeanによる15言語81505点、2009年のDanielによる16言語81394点)をも上回り、歴代第一位に立った。

だが、来年もこの得点で同じ順位を獲得できると楽観はしていない。2015年以来の日本人の奮闘ぶりを見た諸国のタイピストたちが、座視しているとも思えない。特に、本気モードのSeanとの死闘が予想される。正確性重視で速度を抑えてばかりでは絶対に勝てない。さらに、新たな強力なライバルたちが続々と出現してくる可能性もある。さらなる境地を目指すためにも、まずは今年の失敗と成功を分析する。

(1) 失敗から学べ!

最大の失敗は、ドイツ語と日本語の本番に向けた調整不足だ。共通しているのは、両言語とも練習不足だったことだ。過去の実績にあぐらをかき、練習を怠り、多少崩れても何とかなるだろうと根拠の無い甘い見通しを持って本番を迎えた結果、当然のように屈辱的惨敗を喫した。

さらに突き詰めると、まずドイツ語の本番では脳が疲弊していた。これは2週間前に打ったスロバキア語の終盤でも見られた現象だ。脳が死ぬと読めないし打てない。この苦い経験をしていたのにドイツ語で同じ失敗を繰り返したのは痛恨の極みだ。対策としては前記の通り、1日の本番実施を2言語以内に抑えるべきだ。さらに言えば、1セット内の本番実施は1言語に抑えるべきだ。

次に日本語の本番では、燃え尽き症候群から回復していなかった。16言語で歴代世界記録を更新するという望外の結果を得たことで、緊張の糸が切れてしまった。その後育児旅行に出かけて、丸3日も打鍵から(そしてPCから)離れたことで、戦意が完全にリセットされた。翌日リハビリに専念した程度で回復できるほど甘くなかった。来年は日本語の練習方法および本番実施時期を再考する必要がある。

日本語を含む幾つかの言語では、指が冷えていたのも失敗の要因だ。但し滴り落ちる脇汗で気が散ったことからも分かるように、室温が低かったわけではない。昨年もトルコ語と英語で同様の原因から失敗した。今年は昨年と違って脳は覚醒していたし、事前に10分間練習を打つなどウォーミングアップも充分だった。となると、残る要因は練習不足から来る緊張感か。

(2) 本番への適応、ピーク合わせ

例年と比較して練習量は圧倒的に少なかった。このため、本番にピークを合わせて結果を出すことが不可欠となった。まず、本番を無理に打たないことを(ドイツ語と日本語を除き)徹底した。例えば調整時の1分間練習の結果が安定しない場合や、直前の10分間練習で不調を自覚した場合だ。これは、昨年と違って本番のスケジュールに余裕があったためだ。

本番では正確性と速度を同時に重視した。昨年と同様、精密射撃を心掛けつつも、隙を見て攻めることを10分間続けた。また、この言語を今年打つのもこれで最後なのかと感慨に浸りながら、打つ過程を楽しむようにした。緊張感に襲われた言語も幾つかあったが、むしろミス低減に役立てることができた。

その結果、ポルトガル語、ポーランド語、イタリア語、ルーマニア語、クロアチア語では本番で自己ベストを叩き出した。チェコ語、ハンガリー語、ロシア語、フィンランド語でも本番で自己ベストに100以内と迫るスコアを叩き出した。このように本番での調整は概ね成功した。

体調管理もほぼ完璧だった。風邪、そして致命傷となる扁桃炎を防ぐため、睡眠時のマスク着用を徹底した。また、4月以降はランニングの負荷を落とし、怪我をしないように留意した。そして朝型の生活リズムを維持し、睡眠と休養を充分に取ることにより、練習および本番への悪影響をほぼゼロに抑えた。

(3) 基礎力強化の結果

TW英単語による速度の強化は、日本語、ロシア語を除く15言語のベース速度の向上に大きく寄与した。17言語中11言語で昨年比200以上アップをもぎ取り、総得点でも昨年の記録を大幅に更新した最大の要因であろう。

一方、日本語に関してはTW国語R/KやWeatherTypingTODを含め、ここ1年全くと言っていいほど打たなかった。昨年に続いて屈辱的惨敗を喫した一因は、ベース速度の強化ができていなかったことと考えられる。

(4) 初見文章への対策

昨年は、日本語や英語をはじめとする幾つかの言語で、初見文章への対策への甘さという弱点が露呈された。今年は、逆説的だが、練習量を落としたことが初見文章への対策となったと考えている。特に10分間練習の課題の数が少ない言語(フィンランド語、ポーランド語、スロバキア語、ハンガリー語、スペイン語)については、課題文章を覚えないように戦略的に準備した。

とはいえ、英語やフランス語、イタリア語では練習量を落としすぎたという反省もある。最適な練習量や調整方法にはまだ改善の余地がある。

(5) ミスの抑制

総ミス数は昨年よりも1減少した。全言語で積極的に攻めたにもかかわらずだ。来年以降の死闘を見据えると、昨年の速度で満足しているわけにはいかなかった。これだけ速度を上げてもミスを平均2.00に抑えた点は評価して良いだろう。

ハンガリー語、ルーマニア語、クロアチア語では本番でノーミスを達成した。3言語でのノーミス達成は初の快挙だ。練習時には、スペイン語での4回を筆頭に、9言語で計16回ノーミスを出した。全147回の10分間練習(本番含む)中、1ミスは43回、2ミスは29回、3ミスは26回、4ミスは16回だった。昨年と比較すると、4ミス以内の確率が約86.0%から約88.4%に増えた。2ミス以内は約54.8%から約59.9%に増えた。一方、ノーミスは約12.7%から約10.9%に減った。10分間練習の大半を休日に打ったことで、ミスが減少した。一方、練習しすぎて文章を覚えることが大幅に減少したため、ノーミス率は減少したと考えられる。

ミス抑制の一端を担ったのは、改行位置がずれた場合の対応である。昨年以来、改行位置がずれた場合は1行以上消してでも修正している(今年の日本語を除く)。この戦術が得点アップに寄与したか否かは微妙なところだ。確かにその後50文字以上ノーミスで打てば得点は伸びる。だが、改行位置がずれたままだとその後の改行位置チェックができず、さらなるミスを誘発するリスクが高い。まして今年は改行位置がずれた時の練習を一切していない。1分間練習で改行位置がずれた場合はその時点で打ち切っても無駄と判断し、中止した。10分間練習では本番を想定し、1行以上消してでも修正した。

……

スコアの伸びがすべて実力によるものではない。特にルーマニア語で945アップ、トルコ語で502アップ、クロアチア語で432アップという爆発的な伸びは、本番の文章運による部分も大きい。特にルーマニア語の文章は、昨年と比較して段違いに打ちやすかった。加えて、トルコ語では昨年のような緊張感に襲われることもなく、昨年の重点強化の成果を1年遅れで存分に発揮できた。ルーマニア語とクロアチア語では運良くノーミスを達成できた。大会の性質上、運に左右される要素はどうしても出てくる。幸運が毎回訪れるとは限らない以上、ベースとなる実力(速度、正確性、言語習熟度、配列習熟度)を地道に向上させる必要がある。


●来年に向けて

目標に掲げた「昨年の記録を更新して三連覇」および、「日本語を除く16言語で80000点、全17言語で85000点」は達成した。「日本語を除く16言語でSean、Danielの過去の記録を上回る」という目標も達成した。そこで、来年に向けて日本語を除く16言語で85000点、全17言語で90000点という目標を新たに設定する。

筆者の今後数年を見据えた戦略がいつ実を結ぶかはまだ分からない。筆者が90000点以上を狙うには、もはや低速言語の底上げだけでは不充分だ。高速言語では6000点を目指して鍛錬を積み重ねる必要がある。

しかし幸いなことに、戦略と戦術の進化により、総得点を伸ばす余地は残されている。限界はかつて考えていた地点よりも遥かに先にある。カギは、攻めることだ。ミスを抑えて打てるギリギリの速度に、まだまだ伸ばす余地がある。それでは、来年に向けてさらに伸ばすには具体的にどうするか。

(1) 各言語の習得

究極的には、極めて有効と考えられる。実際、英語では言語習熟度がタイピングに好影響を及ぼしている。打ちながら読解し、先の流れを推測できるメリットは計り知れない。単語の羅列ではなく文章として認識できるため、速度は落ちないしミスも減る。タイプウェル英単語やTypeRacer、10FastFingers等の短距離種目では日本人タイピストの中でも決して速くない筆者が、Interstenoや毎パソ等の中長距離種目で上位に居座っていられるのはこのためだ。また、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語に関しても、英語に似たスペルの単語が多数出現するため、英語習熟度がある程度影響を及ぼしている。

さらに、第二外国語としてある程度習得したドイツ語に関しては、長い単語を見た時にどこで区切るかが概ね分かるというメリットを体感できた。同じゲルマン語派のオランダ語に関しても、習得はしていないものの、同様のメリットを享受した。

一方、第三外国語として選択しつつも習熟が甘かったフランス語では、タイピングに好影響を及ぼす段階に至っていない。2017年以降のフランス語のスコアアップの要因は、特殊文字や一部の単語に慣れたことであって、フランス語の習熟とは無関係である。まして、第四外国語以降を新規に習得するとなると、タイピングに好影響を及ぼすレベルまで引き上げるには数年かかりそうだ。長期的視野で取り組むべき課題と言えるだろう。

(2) 各言語の頻出単語・頻出シーケンスの習得

短期的にできる対策は、これに尽きる。これだけなら、10分間練習を100回繰り返せばある程度の成果を期待できるだろう。例えばハンガリー語に関しては、2016年大会に向けて重点強化する過程で幾つかの頻出単語を覚えたことで、明らかに高速化された。azonban(しかし)、napjainkban(今日)といった打ちやすい単語に加えて、egészség(健康)のような打ち辛い単語も高速化できたのは収穫だ。

2017年大会に向けて重点強化したロシア語でも、本格的な高速化には至らなかったものの、頻出単語は幾つか覚えることができた。Takiの練習課題では、жизни(生活)、подход(アプローチ)、Москве(モスクワ)、экономических(経済の)、воспроизводство(再生)、распределения(配布)、производство(生産)といった単語が頻出する。今年はようやく4300の壁を破った。さらに練習を積めば4500に到達できると確信している。キリル文字、頻出単語、頻出シーケンスにはまだまだ慣れる余地がある。

他の難関言語も例外ではない。スロバキア語で昨年4970まで伸ばしたのは、大いに自信になった。チェコ語、ポーランド語、ハンガリー語も4700台まで伸ばしてきた。ここに安住せず、5000を目指すべきだ。

そして高速言語。スペイン語とフランス語では練習で5600台を叩き出した。トルコ語、イタリア語、オランダ語も5500前後まで伸ばしてきた。当然、ここが限界ではない。英語では6200台を連発しているのだ。確かに英語以外の言語ではダイアクリティカルマークで減速を強いられる。だが、特殊文字の出現頻度を考慮すると、これだけで1割以上も遅くなることはないはずだ。言語に、単語に、シーケンスに、慣れていないだけだ。特殊文字の多いフランス語で他の高速言語とほぼ互角のスコアが出ているのは、英語に似たスペルの単語が多く、脳と指が慣れているからだ。

(3) 来年の重点強化言語

表9に示す通り、全17言語にまだ伸ばす余地がある。但し、課題収集と全文入力はほぼ終了したため、今年までのような顕著な伸びはもはや期待できない。地道な練習により少しずつ実力を積み上げていくしかない。日本語については、KR混在入力を引き続き試行錯誤したい。例えば前半はRで打ち、頻出ワードに目が慣れてからKに切り替えるのはどうか。この他、本番で自己ベストに近い得点を叩き出した言語についても、さらに伸ばす余地がある。

一方、練習量が低下した場合は伸びが鈍ることも考えられる。練習が疎かになった今年のドイツ語と日本語が好例だ。どの言語を重点的に伸ばすか、そして実力の低下を最小限に抑えるにはどの程度の練習をこなすべきか、全体最適の視点から戦略的に練習を進めていきたい

【表9:各言語の成長余地という観点での分類】

カテゴリ言語
びびりすぎスペイン語、フランス語、英語
本番向け調整失敗スロバキア語、ドイツ語
高速化未完成オランダ語、トルコ語
配列検討不足日本語
本番自己ベストポルトガル語、ポーランド語、イタリア語、ルーマニア語、クロアチア語
本番自己ベスト付近チェコ語、ハンガリー語、ロシア語、フィンランド語

(4) Interstenoへの働きかけ

これは個人として総得点を伸ばすというよりも、将来を見据えて公平かつ公正な競争環境を維持し、裾野を広げるのが目的だ。

まず各言語の練習問題に残る問題点について。筆者が指摘済みだがまだ修正されていないものもあるし、その後新たに見出したバグも存在する。ある程度まとまった段階で、再び粘り強くInterstenoのTaki担当者に働きかけて、修正を促していく。同時に、€や£等、欧米人には常識であっても日本人には馴染みが薄い記号については、打鍵方法を啓蒙するという手段もある。

次に日本語の仕様について。日本人以外の参戦が著しく困難な現状はどうかと思う。今年も日本語を除く16言語で筆者が総合1位となった。さらに来年以降、Seanをはじめとする強豪の伸びによっては「16言語で勝てないのに17言語で勝ちました」となる可能性がある。「方言の一つとしてローマ字入力種目を設定する」「現状の中国語部門と同様、別枠での開催とする」等、既に幾つか案はあるものの、デメリットも多い。日本語の係数の問題と合わせて、試行錯誤が必要だ。現在の不平等感が少しでも解消されるよう提言していきたい。ここでの試行錯誤は、将来の韓国語等への展開の際にも役立つことだろう。


●参考文献・謝辞

Pocariさん:Interstenoオンライン大会への日本語部門追加を先頭に立って推進し、実現にこぎつけたのみならず、2015年の日本人参加者120名もの参加費までご負担頂きました。2016年以降の日本語部門継続にあたっても紆余曲折があり、各国代表との交渉に奔走されたと聞いております。この方の尽力なくしては、筆者はInterstenoの存在すら知らず、まして参戦など考えもしなかったことでしょう。ありがとうございました。

ジュニアさん:最難関のロシア語を含む全17言語への参戦を目指し、最も早い段階で練習に着手していました。その過程では、各言語の専用配列を習得し、特殊文字や記号の入力方法を一から調査・導入されるなど、先行者として並々ならぬ苦労があったことと推察します。

かり〜さん:2015年から多言語タイピングWikiで積極的に情報発信し、筆者を含む多くの初心者に多言語参戦への道筋を示して下さいました。さらに2017年大会に向けた新たな取組みとして、初心者向け多言語対戦会や10FastFingers大会を開催されています。

たのんさん:2017〜2019年大会に向けて、TypeRacer多言語対戦会の開催および毎週参戦により、積極的に引っ張って下さいました。2017年10月以降のパワーアップには大いに刺激を受けました。

paraphrohnさん:2016年大会に向けて、早い段階で「総合8万点で世界一」という高い目標を掲げ、それを有言実行することで日本人参加者全体を引っ張って下さいました。また、インテルステノ用paraph配列集の作成・配布に加えて、TypeRacer多言語対戦会を毎週開催して頂いたお陰で、筆者を含め参加者のレベルは前年とは比較にならないほど向上したと言えるでしょう。

やださん:Takiソフトウェアで出現した "This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーに対して、画面サイズを拡大するか文字サイズを小さくすることで解決できるという情報を頂きました。

どりすとさん:上記の問題につき、www.intersteno.itで打てば問題無いという情報を頂きました。筆者は2016年大会以降、練習も本番もこちらのサイトのみで打っています。

司@dvorakさん:文章内の文字の出現頻度調査に役立つWebサイトをご紹介いただきました。筆者は主にロシア語の文章で活用させていただきました。

愛する家族:4月の土日およびゴールデンウィークの一部という、本来は育児・家事・家族サービスに充てるべき貴重な時間の大半をInterstenoの多言語参戦に投入できたのは、間違いなく家族のおかげです。ありがとう! ……というよりも、我ながらろくでもない夫・父親だと思う。来年以降もオンライン大会に参加するなら、ゴールデンウィークの全部または一部を毎年潰すことになるというジレンマがある。


●各種資料

Intersteno2019関連の資料を以下に公開します。必要に応じ、自己責任でご利用下さい。また、著作権等で問題が発生した場合は即削除します。

Intersteno拡張dq配列
→InterstenoおよびTypeRacerで使用した配列。インストーラとともにMSKLC用のファイルもあります。

注1:言語によっては慣れるまでに相応の時間が必要であり、短期決戦には不向きです。
注2:このMSKLCファイルはWindows10環境でBuildできません(エラー対処を実施していないため)。必要ならばWindows7, Vista, XPのいずれかでBuildしてコピーして下さい。

Intersteno拡張dq配列:仕様書
→上記配列の仕様書。

Interstenoの各言語ランキングと統計資料
→eighさんの統計資料を参考にしつつ、自分用にVBAで作成していた資料です。本レポートにはこのデータを一部使用しています。ソースコードは非公開。

Interstenoランキング:仕様書
→上記資料の仕様書。

Intersteno課題文の解析資料
→各言語の練習課題(1分間課題計1273個、10分間課題計513個)を自力で収集・入力した資料です。配列作成の際に、特殊文字や記号、qvwxyz等の文字の出現頻度を解析するために使用しました。また、InterstenoのTaki担当者への問題点の報告は、この資料をベースに実施しています。練習時の最高記録も掲載してあります。

注:入力時の正確性は99%以上あると自負しています。また、一部の難関言語では再入力によりミスを検出して正確性を高めています。しかし、筆者も人間である以上100%でないことはご了承下さい。

Intersteno練習の各種統計
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015年160回、2016年552回、2017年375回、2018年598回、2019年147回。本番含む)の各種統計として、「言語毎の最高記録、平均得点、平均速度、平均ミス数」「本番の記録との比較」「練習回数」「ミス数別の試行回数」をまとめたものです。特に昨年からの伸びが非常に励みになりました。

Intersteno練習記録
→Intersteno対策として実施した10分間練習の詳細をデータベース化したものです。上記の統計資料はすべてこのデータから作成しています。

本番準備・実施手順書
→「トルコ語配列のまま英語を打つ」「省電力モードが発動して画面が暗くなる」等の間抜けな事故を防ぐために作成した手順書です。


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