剱岳登山



●概要

・早月尾根を往復
・5人パーティ(ぽかたん、ゆぞ、どらぐ、れえる、筆者)
・剱岳に登頂
・カニのヨコバイ、カニのタテバイも通過
・以上を、1泊2日(+後泊)で実行

●動機、戦略、準備、感想

剱岳登山の動機
剱岳登山の戦略
剱岳登山の準備
剱岳登山の感想

●登山日記:目次

日付概要
2011.9.9(Fri)剱岳登山 〜早月山荘(2200m)まで〜
2011.9.10(Sat)剱岳登山 〜山頂アタックとヨコタテバイ、下山〜
2011.9.11(Sun)東京へ帰還


剱岳登山の動機

剱岳とは、その峻厳さから「岩と氷の殿堂」と呼ばれ、日本百名山の中で最も登頂が困難と言われる山である。「カニのタテバイ」「カニのヨコバイ」「カニのハサミ」等の有名な難所が存在し、登頂の難易度は高い。標高こそ3000mにわずかに及ばないものの、登りがいのある山と言えるだろう。

筆者は2008年、2009年と続けて富士山に登頂した。その過程で次の目標として挙がってきたのは「日本国内のさらなる難山に登る」「日本百名山に登る」「海外の高山に登る」の三点であった。ここで日本国内のさらなる難山とは槍ヶ岳(3180m)、剱岳(2999m)、奥穂高岳(3190m)等を、海外の高山とは玉山(台湾最高峰、3952m)やキナバル山(マレーシア最高峰、4095m)等を意図していた。

今回は剱岳を選定した。背景には、2010年に二度敗退していたことがある。一度目は直前に急性扁桃炎に罹患し、一人だけ断念を余儀なくされた(筆者以外の六人は無事登頂)。二度目は単独で挑戦し、立山経由で剣山荘まで到達したものの、暴風雨のため断念した。これは筆者にとって極めて残念な結果であり、今年こそはどうしても剱岳に登っておきたかった。

一方で、2010年に別山尾根から登頂を果たしたメンバーから「今度は北アルプス三大急登の一つである早月尾根を登ってみたい」という計画が立案された。さらに、本来このルートにカニのタテバイとヨコバイは含まれないが、筆者の希望によりこの難所にも行くこととした。


剱岳登山の戦略

今回もキリマンジャロやキナバル登頂時と同様、100%に近い確率で山頂まで登頂することを第一目的とした。

また、早月尾根と言えば日帰りに挑むイメージが強いが、これにカニのヨコバイとタテバイを加えると早月小屋への宿泊を前提とした方が安全確実だ。そこで、1日目は電車とタクシーを乗り継いで昼頃に登山口に到達し、午後5時までに早月小屋まで登る計画を立案した。2日目は早朝からアタックを開始し、山頂に到達した後、カニのヨコバイとタテバイを経由して午後3時に下山を完了する。

加えて、今回は金曜日に休暇を確保できたため、ゆとりを持ったスケジュールが可能となったのも大きい。これにより、2日目に無理に東京に帰ることを考える必要がなくなり、ゆとりを持った下山が可能となる。また、登山後の汗を流し、旅館でくつろぐという贅沢な旅も可能となる。


剱岳登山の準備

早月尾根には水場がない。そこで、水2リットルを持参した。また、登山前に昼食用としてお茶500mlを買い足した。結局、これらはすべて消費したため、早月小屋でさらに水500mlを買い足した。

登山装備は富士山後方羊蹄山と同様だ。即ち、夏山用フリースは持つが、キナバルに持っていったダウンは持たない。また、後方羊蹄山の反省を踏まえてデジカメの電池および予備電池、携帯電話の充電を事前に済ませておいた。それから、膝回りの痛みが出た場合の対策として、ストックとアイシング用具を念のため持参した。結局使わなかったが、これは結果論だ。万一膝を痛めたら、下山は困難だったと思う。

往復の交通機関の切符は、買えるものはすべて事前に購入しておいた。これにより、当日朝の忙しい時間帯にバタバタする事態を回避した。また、みどりの窓口で購入すればクレジットカードを使えるため、現金を持ち歩く必要もないしポイントも溜まる。

今回はJRの窓口で北陸フリーきっぷ(東京からの往復21500円)を勧められて購入してみた。確かに新幹線(東京〜越後湯沢)と特急はくたか(越後湯沢〜富山)をすべて自由席で購入した場合は計21480円となって20円だけ安い。しかし、後で追加負担なしで指定席に変更できるのが最大のメリットだ。結果的に、帰りでは座席を確保するためにすべて指定席に変更したので、この選択は正解だった。


2011.9.9(Fri)

剱岳登山 〜早月山荘(2200m)まで〜

●馬場島まで

東京駅を7:00の新幹線で出発した。平日なので混雑することはないだろうと軽く考え、15分前に自由席に並んだが、実際にはほぼ満席で出発した。さらに混雑したのが特急はくたかで、越後湯沢から直江津までの約1時間は座席を確保できなかった。何で平日、しかも有料特急なのにこんなに混みやがるんだ。ちなみに、指定席はすべて事前に埋まっていた。直江津で座席が空くと同時に座席を確保し、残りの時間は体力温存のため睡眠に充てた。

富山で名物ますのすしを昼食用に購入し、今度は上市へ向かう。ここの路線は2両編成で、しかも事前の想定通りガラ空きだった。上市からは事前に予約しておいたジャンボタクシーで優雅に登山口へ。

ますのすし!「試練と憧れ」の前で(撮影:ぽかたん)

馬場島を出発する前に「ますのすし」で昼食とした。なかなかの味だったが、醤油の存在に気付いたのは食べ終えた後だった。「剱岳論」の碑文を読み、「試練と憧れ」の石碑の前で記念撮影しつつ、登山を開始した。

●早月小屋まで:予定と実績

予定実績場所
12:0012:23馬場島
12:3012:521000m地点
13:1513:281200m地点
14:0014:031400m地点
14:4514:281600m地点
15:3015:141800m地点
16:1516:032000m地点
17:0016:45早月小屋

●早月小屋まで

出発直後、いきなり道を間違えた。「剱岳登山路」の看板の右手に崖と言っていいほどの険しい山道、左手になだらかな山道があった。看板の向きから言って左手の道が正解であるように思われたため、全員でそちらに向かった。だが、1分も歩かないうちに道が丈の高い草で覆われ、獣道に近くなってきた。槍ヶ岳から下山した時の夏山近道の記憶が蘇り、これはないだろうと判断した。次に右の険しい山道を登ってみたところ、見た目ほどに大変ではなく、ごく普通の急登だった。そして結局こちらが正解だった。このように、剱岳の試練は登山開始直後から始まっている。

紛らわしい山道(撮影は下山後)急登が続く

しばらく急登が続いた後、1000m地点の休憩所に到着した。以後しばらくの間はなだらかな道が続く。束の間の休息だ。昨日は雨が降ったらしく、所々ぬかるんでいたが、基本的に快適な行程だった。

いい感じの休憩所見事な杉

1200m付近は杉林を延々と登る感じ。屋久島ほどではないが見事な杉が至る所に生えていた。木の根を足場として進む場所も多かった。

木の根を足場として進む周囲は杉林

1400m付近で岩の上を進もうとした時に、滑って転倒し、岩ですねを打った。さらにバランスを崩し、ザックの重さに引きずられて背中からさらに落下した。これにより、左手に切り傷、左すねに擦り傷を負った。左手の傷からはそこそこ出血したため、水で傷口を洗い流した後、れえるが持っていた消毒薬で消毒しておいた。左すねの傷の痛みは左手の傷よりはマシだったが、後でよく見ると数箇所から出血していた。しかしこれで気が引き締まり、以後転倒することはなかった。2600mより上の岩場で転倒したら命取りであり、考えようによっては下の方で転倒しておいて良かった。

この岩で滑って転倒した1800m付近。ガスってきた

馬場島出発時には予定から23分遅れていた。だが、1400mまでの区間をややハイペースで登ったため、この遅れはほぼ帳消しとなった。これに加えて、1400m〜1600mの区間は非常に短かった。200mではなく100mしか登っていないのではなかろうか。このボーナスのおかげで、予定に対して15分程度の余裕が生まれた。以後早月小屋到着までの間、この15分のリードを保ちつつ進んだ。

1800m付近で雲に近づき、周辺の山々がガスに覆われてきた。だが、幸いなことに雨には降られなかった。なお、翌日も下山後に小雨に降られた。山では午前中に晴れて、午後の遅い時間になると天候が悪化することが多いらしいが、今回はそのセオリー通りの展開となった。

2000m付近の池。なんか神秘的ロープ登場!

2000m付近になって初のロープが登場した。まだこの辺ではロープに頼らず登る余裕があった。神秘的な雰囲気の池もあり、何となく皆で記念撮影しておいた。

早月小屋が見えた!早月小屋に到着(撮影:ぽかたん)

早月小屋には17時少し前に到着した。宿泊していたのは計15人ほどで、我々は早月という名前の16畳の部屋を先着していた2名と相部屋で使用できた。つまり1人あたり2畳以上あるわけで、かなりゆったりと使うことができた……はずだが、実際には部屋を2等分し、我々5名で半分を使用していた。

充実の夕食部屋はこの広さ!

夕食前に少し時間があったため、外に出て眺望を楽しんだ。相変わらず雲が多く、明日登るべき剱岳は見えなかったが、その雲の様子を眺めるのもまた楽しいものだ。

今回は高山病が全く出なかった。逆に、登山前にあった微頭痛が治ったくらいだ。今回は高気圧に覆われており、気圧の低下が少なかったためか。おかげで夕食もおいしくいただくことができた。豚汁は悶絶するほど美味かったため、2杯平らげた。山小屋でお代わりをするのはこれが初めてではなかろうか。

夕食後、ブロッケン現象を見た。噂には聞いていたが実際に見るのはこれが初めてだ。

しばらくして部屋に戻り、どらぐのSFCDQ3RTAを鑑賞した。このプレイはロマリア到着前に、アルミラージに眠らされて終了だったが、3時間切りプレイヤーの実力は十分に堪能できた。登山の心地良い疲労もあり、翌日の準備を済ませた後に20時過ぎには睡眠。


2011.9.10(Sat)

剱岳登山 〜山頂アタックとヨコタテバイ、下山〜

●山頂まで:予定と実績

予定実績場所
4:004:20早月小屋
4:304:492400m地点
5:105:332600m地点
6:006:332800m地点
7:107:24剱岳山頂

※2800m地点で朝食20分を想定、実際には6:03に約2700m地点で。
※山頂で写真等20分を想定、実際には16分

●山頂まで

3:20に問題なく起床。トイレを済ませ、外に出て天気を確認する。綺麗な星空と富山の夜景がはっきり見え、絶好のアタック日和だ。部屋に戻ってみるとまだ全員寝ていたため、3:50になって皆を起こした。4:00には早月小屋の電気が点灯した。ほぼ同時に弁当を受け取り、出発した。なお、他のメンバーはアタックザックやポシェットを持参し、荷物を極力軽くしていた。一方、筆者は26Lのザックをそのまま持参した。槍ヶ岳の穂先アタックとは違い、山頂アタック+ヨコバイ+タテバイで計6〜7時間程度の行動時間が想定されたため、雨具、フリース、水など基本装備を外すわけにはいかないと判断したためだ。仮にこのザックで乗り越えられない箇所が出てきたら、そこにデポジットして行けば良い。そして結局、このザックを背負ったまま山頂に到達し、ヨコバイ、タテバイも問題なく完了した。

2400m付近までは夜明け前であり、ヘッドランプを点灯して進軍した。今回の行程で一番怖かったのがこの区間だ。なぜなら、足を踏み外して谷側に転落したらいとも簡単に死ねると思われたためだ。木の根が張り出していてその上を進む場所がいくつかあり、そこでは細心の注意を払いつつ進んだ。

その後、2500m程度で森林限界に達し、同時に夜明けが近づいた。危険な岩場は増えてきたが、ルート概要と足元がまともに見えていれば怖くない。展望が開けてきたため絶景を堪能しつつ、順調に登り続けた。ちなみに、今回出発を当初予定の3:30から4:00に延伸したのは、夜明け前の一番暗い時間帯の岩場登りを避けたかったためだ。

2600m付近。まったりとした場所汁が出ないよう工夫された弁当

2600m地点は朝食に適した場所だったが、虫が多かったため、さらにしばらく進んだところで朝食とした。早月小屋の弁当は汁が出ないように、そして塩分を適度に補給できるように工夫されていた。山の弁当に稲荷寿司を採用するセンスが良く、登山者のことをよく分かっていると感心した。

だんだんヤバい岩山になってくるこれがヤマビルというやつか?

朝食後は頂上に向けてアタックを続行した。この辺から鎖場が登場し、足を踏み外したりバランスを崩したりしたら即死確定という場所もいくつか存在した。こういう困難そうな場所を乗り越えて進むのはなかなかの充実感だった。

一方、ヤマビルらしい生き物にも遭遇した。そういえば昨日同じ部屋に泊まった人がヤマビルの怖さを盛んに強調していた。登山靴の隙間から入り込んでくるとか、ある程度接近したらジャンプして飛び込んでくるとか、一旦皮膚に張り付かれるとはがす際に壮絶な痛みを伴うとか。今回遭遇したのがヤマビルかどうかは不明だが、幸いなことに誰も被害を受けなかった。

この岩山を登る!(撮影:ゆぞ)鎖場。足を踏み外さないように

岩場を無理矢理よじ登るひたすら続く岩場と鎖場

途中、カニのハサミと呼ばれる難所があるはずだったが、それらしい場所を確認できないまま山頂に到達した。三度目の挑戦でようやく辿り着いた剱岳の山頂である。幸いなことに天気はほぼ晴れであり、絶景を堪能できた。まずは山頂の社で「剱岳 2999m」の札を持って記念撮影後、今度は「源次郎尾根」のプレートをバックに1人ずつ撮影。将来は一般登山者立入禁止と明記してあるこの恐ろしげなルートにも挑むことになるのだろうか。

山頂に到達!(撮影:ぽかたん)絶景かな!

●早月小屋まで:予定と実績

予定実績場所
7:107:40剱岳山頂
8:308:40ヨコ・タテバイ完了
9:309:242800m地点
10:0010:162600m地点
-10:422400m地点
10:5011:11早月小屋着

●早月小屋まで

その後、次の目的であるカニのヨコバイ・タテバイに向かった。ヨコバイはよく言われている通り、1歩目の足場に取り付くまでが難しい。鎖を両手で持ち、右足と合わせて三点確保しつつ左足をそろりそろりと下ろしていく感じだ。が、この1歩目さえ確保できれば後は問題なし。ラストのハシゴも、
槍の穂先で風雨の中上り下りしたあのハシゴに比べればどうということはなかった。ゆぞは山に背を向けて降りていたくらいだ。

カニのヨコバイに挑む(撮影:ぽかたん)垂直ハシゴも、ゆぞにとっては余裕たっぷり

カニのタテバイは、ヨコバイに入る直前に上から見下ろした時にはなかなかのスリルを感じた。また、我々の前に登っていたグループは持参したロープを駆使して確保しつつ登っていた。筆者にとっても、鎖に頼らず登ることはできなかった。だが、鎖を両手で持って無理矢理登れば、これまたどうということはなかった。鎖のないところは三点確保で登れば問題ない。ザックに引っ張られてバランスを崩すことを心配していたが、そのようなこともなかった。今回は天候が良かったため、そして事前に得ていた情報が恐怖感を煽りまくる内容だったため、結果的に楽勝と感じたのかもしれない。風雨の中では難しかっただろう。

カニのタテバイを下から見た図カニのタテバイを上から見た図

タテバイ終了後は山頂に戻らず、早月尾根をさくさくっと下山した。登りでは写真を撮る余裕があまりなかったが、この下りではその分を取り戻すかのように撮りまくった。特に岩場では、怖さと臨場感の伝わる写真を撮るのが意外と難しいため、質より量でどんどん撮影した。

怖そうに見えないけど実際には危険な場所怖そうに見えないけど実際には危険な場所2

2800m付近で休憩2600m付近。この辺はまったり

2600m付近から、早月尾根日帰りに挑戦している人に抜かれることが多くなった。彼らに共通しているのは下山のスピードで、一歩間違えば大怪我につながりそうなところも軽々と突破していく。それに刺激されたゆぞがいつものごとく飛び出し、あっという間に姿が見えなくなった。筆者はどらぐと一緒の二番手グループで、ぽかたんとれえるが最後尾で進んだ。

早月小屋には11時過ぎに帰還し、ぽかたんとれえるの到着を待って昼食とした。登山中のカップラーメンは異常にうまい。スープを含めて完食したのは言うまでもない。

早月小屋に戻ってきた昼飯のカップラーメン

この時点で、下山想定時刻が予定よりも大幅にずれ込むことが想定された。そこで、15:30に迎えにきてもらうことになっていたジャンボタクシーに連絡を取り、1時間遅らせることとした。今日東京まで帰るわけではないし、焦って下山して怪我をするよりは時間を遅らせた方が良いと判断した。なお、タクシー会社の電話番号をスマフォで調べようとしていたがうまくつながらなかった。そこで早月小屋のご主人に尋ねたらすぐに分かった。山でも携帯電話やスマフォが次第に重要な役割を担うようになってきているが、いざという時に頼りになるのは人であると改めて感じた。

●馬場島まで:予定と実績

予定実績場所
11:3012:18早月小屋発
-12:402000m地点
12:3013:091800m地点
13:0013:311600m地点
13:3013:421400m地点
14:0014:031200m地点
14:3014:321000m地点
15:0014:55馬場島着

●馬場島まで

下山では、ゆぞとどらぐが先行し、ぽかたんとれえるがまったり組、筆者がその中間という状況だった。ゆぞペースにはとても追いつけないと思っていたため、膝に負担をかけない程度に下山を続けた。次第に岩が少なくなり、傾斜が緩くなり、膝への負担も減っていくのがよく分かった。途中で数名を追い抜いたが、抜かれたことはなかったと思う。それどころか、先行組に追いついたことも数回あった。大抵は休憩場所で追いつき、そのタイミングで彼らが出発し、筆者が休憩に入るという感じだったが。

有名な(?)手作りハシゴ土嚢のおかげで歩きやすい

下山での苦労を激減させてくれたのが、要所に積まれている土嚢だ。膝に負担のかからない歩幅に置かれており、山をよく知る職人の仕事を感じさせた。この土嚢がなかったら、数箇所で転倒を余儀なくされたと思う。

また、1600m地点〜1400m地点の区間はやはり短いと感じた。この区間の所要時間は11分であり、他の区間の半分程度だ。このボーナスのおかげで、早月小屋出発時点で48分あった遅れをほぼ帳消しにした。

1000m地点が近づくと傾斜がいよいよ緩くなり、ほとんど平地に近くなった。筆者にとってこの道は非常に楽であり、一気にペースを上げた。これで先行組にも追いつき、最終的には3人揃って登山口に戻ってきた。

1000m付近。この辺は一気にペースアップ全員無事に下山完了!(撮影:ぽかたん)

●旅館だんごや

馬場島にはキャンプ場があり、それに伴いトイレと水場があった。特に水場はありがたく、顔と腕を洗ってかなりスッキリした。ただ、ここでのタイムロスが響き、付近にあったレストランの営業時間にギリギリで間に合わなかった。その後数名の登山者が下山してきたが、ぽかたんとれえるはなかなか到着しない。結局16:25まで待つこととなった。その間は登山靴と靴下を装備解除し、休息に充てていた。途中で霧雨や小雨に降られたり、1.5cmくらいあるアリが靴の中に入ってきたり、3cmくらいある蜂がザックの周囲を飛び回ったり、1cmくらいあるヤブ蚊がブンブン飛び回ったりといろいろあった。

この水場は大変ありがたいレストランは営業終了

ぽかたんとれえるが到着後、「試練と憧れ」の石碑の前で下山完了撮影。ちょうどジャンボタクシーが迎えに来たため、いいタイミングだった。なお、タクシーの運転手からは翌日の計画に関して、「上市までではなく富山まで行くことも可能、但し1人あたり600円増し」とのオファーをもらったが、上市→富山が580円であることを考慮するとこれはない。

宿泊先は旅館だんごや。これが神宿だった。たまたま他に宿泊者がいないとのことで、8畳6間を我々5人で占有というなんとも贅沢な状況になった。登山後の風呂は最高だし、食事はことごとくうまいし。特に、クーポン券のおかげでありつくことのできた大盛ざるそばが異様にうまかった!

旅館だんごやのお菓子とお茶この広さはまさに神宿

食事後に1時間ほど仮眠。その後はぽかたん持参の剱岳トランプで、どらぐに教えてもらって皆でナポレオン三昧。他のトランプゲームと同様、カード運に左右されすぎる点はあるが、副官あぶり出しやセイムツー等の駆け引きは面白いと思う。

夕食その1夕食その2。このざるそばがうますぎた


2011.9.11(Sun)

東京へ帰還

翌日の朝食も非常にうまかった。予定通り9時過ぎにチェックアウトし、上市、魚津を経由して越後湯沢まで。途中で土産として「ますのすし」と「金つば」を購入した。特にますのすしは家族にも好評だった。越後湯沢では昼食として
中野屋のへぎそばと天ぷらを食した。へぎそばは4人前セット×2を注文し、5人で悠々完食した。

充実の朝食昼食のへぎそば計8人前!


剱岳登山の感想

最後に今回の収穫をまとめて記しておく。

●今回の収穫

三度目の挑戦にしてついに剱岳に登頂した。難所と呼ばれているカニのヨコバイ、カニのタテバイも問題なくクリアした。なお、早月尾根にはカニのハサミという難所もあるらしいが、その存在に気付かないまま何となくクリアしたらしい。

また、キリマンジャロの下山で散々悩まされた膝の痛みに関しては、今回は登山・下山を通して全く出なかった。杖とアイシング用具は念のため持参したが、使う機会は無かった。1400m付近で転倒した際の擦り傷と切り傷も、今思えばその後の戒めとなった。結局、下山翌日に太ももとすねに筋肉痛が出ただけで済んだ。毎日欠かさず継続した膝トレーニングの効果が出ていると言えるだろう。

高山病に関しては、全く出なかった。宿泊したのが標高2200mの早月山荘であり、しかも時間をかけて高度を上げている。また、高気圧に覆われて天候が良かった点もプラスに働いた。

次に食料について。今回もウィダーインゼリーとカップヌードルが非常に役立った。筆者は高山病が出ると食欲が失せるため、固形物を受け付けなくなる。このため、ウィダーを計3個持参した。これはミネラル補給としても極めて有効だった。また、早月小屋で注文したカップヌードルは素晴らしい効能を発揮した。塩分補給しつつ温まるのは大きい。粉末Pocariも有効に活用した。急登で消耗した時に、水とPocariを交互に補給するといい感じだ。

登山計画に関しては、かなり余裕があったと思う。2泊3日の日程としたことで、夜間行軍の時間を最小限に抑えることができた。

以前から苦手意識のあった岩場、ガレ場の下山に関しても、今回はさほど苦しむことがなかった。岩場に関しては危険な場所が多く、ゆっくり通過することが多かったため、ほとんど疲労が蓄積しなかった。また、要所に配置された土嚢の存在も大きかった。

●総括と今後

念願の剱岳にようやく登ることができた。今後は残った目標である奥穂高岳をはじめとして、日本百名山を少しずつ登っていきたい。また、海外の山としては玉山、ウィルヘルム山への挑戦を考えている。


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