富士登山3回目



●概要

【一合目組】

・4人パーティ(Yuzo、れえる、ワイルド、筆者)
・吉田口浅間神社発、東洋館(七合目最上部)に宿泊
・下山は馬返しまで。馬返し−浅間神社間は馬返しバスでショートカット
・Yuzoは7日21時に五合目から登り始め、宿泊せずに登頂し、馬返しまで下山
・悪天候のため、吉田口山頂まで。御来光鑑賞や日本最高点到達は断念

【五合目組】

・7人パーティ(ぽかたん、yasm、まっど、珠、ゆかり、よす、Tak)
・Jinさんが名古屋発の別ツアーで参加。つまり八合目から上では総勢12名に
・河口湖口五合目発着の吉田口ルート
・一合目組とは五合目で合流し、登頂後八合目まで一緒に下山

●動機、感想

富士登山の動機
富士登山の準備
富士登山の感想

●登山日記:目次

日付概要
2012.7.7(Sat)富士登山1日目 〜吉田口七合目(2900m)まで〜
2012.7.8(Sun)富士登山2日目 〜山頂(3720m)到達、そして帰還〜


富士登山の動機

富士山は、日本最高の3776mを誇る高峰であり、日本人ならば一度は登っておきたい山である。そこで、タイパー登山部の新入部員の目標として、2012年夏の富士山登頂を掲げた。訓練としては5月に
丹沢塔ノ岳に登頂した。6月には甲武信ヶ岳で二度目の訓練を予定していたが、悪天候のため中止せざるを得なかった。

筆者にとって、富士登山は三度目である。2008年には須走口から、2009年には富士宮口から登頂した。そこで今回は未経験ルートの一つである吉田口(河口湖口)を選定した。だが、これだけでは負荷が低そうで、物足りないと感じた。そこで、通常は五合目まで車やバスで行ってそこから登るところを、敢えて昔の人と同様に浅間神社(零合目)から登ることとした。


富士登山の準備

今回はメンバーが増えたため日程調整が難しく、よりによって「土曜日に山小屋泊、日曜日に登頂」という最も混雑する日程を選択せざるを得なかった。さらに、吉田口はツアーが集中する最混雑ルートだ。そこで、山頂で御来光を全員で見ることを前提に、可能な限り混雑を回避する計画を立案した。即ち、七合目東洋館を23時、八合目トモエ館を1時に出発する。また、日本最高点での写真撮影待ち行列を回避するため、御来光を日本最高点で迎えることとした。実際には悪天候のため御来光を拝むことはできず、日本最高点も断念することになったのだが。

登山装備は2008年の登頂時(須走口)と基本的に同様とするつもりだった。ところが、前日に天気予報を確認したところ、雨天が予想された。そこで、キナバルに持っていったダウンを追加した。また、五合目より下で雨に降られた場合に備えて、軽量の折り畳み傘を持参した。

一方、水は1.5リットルにとどめた。吉田口には山小屋が多いため、不足分は(高額だが)買えば良い。実際、下山中に五合目佐藤小屋で0.5リットルを買い足しただけで済んだ。1日目の昼食と夕食で水分を大量に補給したのも良かったと思う。また、今回はストックも持参しなかった。ここ数回ストックを使ったことは無いし、必要になったら五合目で金剛杖を購入すれば良い。

交通機関に関して、当日はワイルド(義弟)の車で移動した。今回は事前に妻の実家(富士宮。ワイルドの実家でもある)に帰省していたためだ。


2012.7.7(Sat)

富士登山1日目 〜吉田口七合目(2900m)まで〜

●登り1(山小屋到着まで):予定と実績

場所高度予定実績
浅間神社800m5:005:50
中の茶屋1100m6:506:52
一合目(馬返し)1450m7:507:48
二合目1700m8:34
三合目1840m9:208:58
四合目2000m?9:15
五合目佐藤小屋2230m11:0010:15
五合目(河口湖口)2300m11:3010:45
五合目発2300m12:3012:40
六合目2400m13:5013:18
七合目花小屋2700m14:41
七合目東洋館2900m15:3016:22

※高度はビミョウに違うかも。以下同様

●浅間神社(800m)〜馬返し(1450m)

スタート地点は富士山駅(昔の富士吉田駅)の近くの浅間神社だ。ワイルドの車で5:00少し前に到着し、付近の宿に前泊していたれえるを拾う。続いて駐車場を探すが、意外なことに見つからない。そこで中の茶屋まで車で移動して駐車場をチェックするが、丸一日以上駐車するとなると心配そうなところだ。既に駐車していた車は許可証らしきものをダッシュボードに掲示しており、そんなものを持ち合わせていない我々がここに駐車するのはヤバそうな気がした。仕方なく馬返しに向かうが、今度は道に迷った。結局、浅間神社まで引き返し、付近にあった「9:00-16:00 無料駐車場」なる場所に駐車することに。思いっきり時間外だが、とがめられる雰囲気は無さそうだった。

浅間神社手前から見る富士山はかなり遠い出発フォト

この時点で50分の遅れとなったが、特に問題ないと楽観していた。れえると筆者は登りに強く、ワイルドも並外れた体力の持ち主であるためだ。浅間神社の鳥居の前で犬を連れて散歩していた方に写真を撮ってもらいつつ、行軍を開始した。早朝とはいえ高度が低く、行動中はそこそこ暑い。出発時に装備していたキナバルTシャツはすぐにザックの中に放り込まれた。以後は七合目までほとんどの区間を速乾性Tシャツのみで通していた。

中の茶屋までは、先程往復した車道を歩く他に、林の中の遊歩道を歩くこともできる。排ガスを吸わされながら歩くよりは森林浴しながら歩く方が遥かにマシなので、当然後者を選択した。この区間は傾斜がほとんど無く、準備運動にはもってこいだ。中の茶屋以降は傾斜が少しキツくなる。やや速度を落としたものの、標準コースタイムを大幅に上回る速度でどんどん進む。途中で微妙に雨に降られたが、基本的に曇りで、快適な行程だった。結局、浅間神社から一合目(馬返し)まで、標準コースタイム3時間のところを2時間弱で突破! スタート時点の50分の遅れを帳消しにした。ちなみに、今回の登りで体力的に一番キツかったのは、馬返しの直前の30分だった。

吉田口遊歩道を行く中の茶屋で休憩

●馬返し(1450m)〜五合目(2300m)

馬返しにはその名の通り、馬止め用と思われる柵が設けられていた。練達した馬術の持ち主なら柵を飛び越えたり横をすり抜けたりできそうな気もするが、この先も登り続けるとどこかで馬がへばってしまうだろう。

馬返し。トレイルランナーもちらほらとこんな説明文が要所にある

一合目の時点で高度は1450mであり、既に丹沢塔ノ岳の山頂に近い。だが、富士山ではこれからが本番だ。以後は一貫して緩やかな登りが続く。と言っても一合目以前と比較すれば傾斜は増すわけだから、さらにペースを落とした。一合目到達時点で予定に追いついたこともあり、そんなに急ぐつもりも無かった。ところが、実際には知らず知らずのうちにかなりのハイペースに陥っていた。というのは、計50人くらいのトレイルランナーたちに次々と抜かれていったためだ。この吉田口一合目〜五合目の区間は、トレイルランナーの練習コースになっているらしい。彼(女)らは我々と違って強靭な脚力を備え、かつ軽装だ。靴もゴツい軽登山靴ではなく、トレイルランニングに特化した超軽量のものを使っている。従って、スピードがまるで違う。一方、山頂まで行く登山者には結局ほとんど出会わなかった。その結果、まるで我々が(この辺を歩いている登山者の中でも)一番遅いかのような錯覚に陥った。

馬返しっぽい柵は要所にある三合目の廃屋

二合目、三合目、四合目で適度な休憩を取りつつ、五合目(佐藤小屋)に到着した。ここまで標準コースタイム3時間のところ、やはり2時間半で突破してしまった。れえるやワイルドにとってもかなりキツかったようだ。筆者にとってもややオーバーペースだった。だが、ここから先は新人に合わせてゆっくり登るため、全く心配していなかった。そういえば、ワイルドは五合目までジーパンで登っていた。彼の基礎体力は図抜けているため、このくらいハンディがあっても良いだろう。

車道と交差したら五合目は近い佐藤小屋には大量のキャベツが!

メンバーのうち一人でもへばっていたら六合目まで直接登り、そこで五合目組を待つつもりだった。だが、今日のメインタスクをやり終えたことで体力的にも精神的にも余裕がありまくりだったため、河口湖口五合目(スバルライン五合目)まで平行移動した。既に高度は2000mを超え、ところどころで雲海も見える。これが富士山の楽しみの一つだ。30分後に到着し、五合目組と合流した。

河口湖口五合目の観光地化の凄まじさには驚愕した。こんなの山じゃねえ! 高尾山の山頂と同様、3歳児でも到達可能だ。ついでに言えば、金さえ出せば七合目まで馬で連れて行ってくれる。

河口湖口五合目はもはや観光地この馬で七合目まで行ける。14000円だったかな。

五合目組はここまでツアーバスで登ってきたため、出発前に体を高度に慣らす必要がある。一合目組は高度慣らしは不要だが、ここまでの登りで大量のカロリーを消費したため、腹が減っていた。そこでまずは昼飯とした。筆者は2008年の教訓から、脂っこくない麺類が良いと学んでいたため、ほうとうにしておいた。なお、今回も高山病が想定されたため、秘薬「ダイアモックス」をこの時点で投与した。一方、ワイルドはビールを豪快に飲んでいた。ただ、ジーパンのままこの先も登るのはナメすぎだろうということで、結局モンベルのパンツを購入していた。一合目組は既に今日のメインタスクを終了しており、筆者も含め正直余裕ぶっこいていた。

麺も具も少ないこのほうとうが1200円五合目出発フォト(撮影:ぽかたん)

●五合目(2300m)〜七合目東洋館(2900m)

12:30になり、いよいよ河口湖口を出発した。この頃に限り一時的に晴天となり、猛烈な日差しが照りつけてきた。筆者は曇り時々雨という天気予報を見たため、帽子を持ってきていない。そこで、付近の店内でこれぞ富士山!という帽子を探したが、見つからない。結局、日焼け止めとタオルで妥協することにした。幸いなことに、出発してしばらく経過したら再び雲に追いつかれたため、帽子は不要だった。

河口湖口から吉田口に戻りつつ、途中の分岐を上に行って六合目に向かう。この時点で混雑しすぎ。ツアーで来る団体客が多すぎるためだ。しばらく歩くと背丈の高い木が少なくなり、見通しが良くなっていく。須走口と同様、吉田口でも六合目付近で森林限界を迎えた。

六合目手前で早くも大渋滞六合目。まだまだ元気いっぱい(撮影:ぽかたん)

六合目を過ぎたあたりからは背の低い潅木も消えた。また、落石避けのためと思われる強固な壁が至る所に設置してあった。

雨についてはあまり心配していなかった。台風と熱帯低気圧が付近にいないことは事前に確認済み。低層の雲から降る雨については、とっとと登って雲の上に出れば問題なし。唯一やばいのが突発性の積乱雲による雷雨やひょう・あられだが、これは注意してどうにかなるものではない。遭遇したら全力で付近の山小屋に逃げ込むしかない。今回は幸いなことに、歩いている間に積乱雲と遭遇することはなかった。

六合目過ぎ。まだ晴れている振り返れば雄大な雲海

吉田口の七合目では、少し歩くと次の山小屋に到着するため、休憩箇所が多い。基本的に、すべての山小屋で休憩していた。このようにスローペースで登ったこともあり、七合目でTakが追いついてきた。Takは寝坊のため、新宿発のツアーバスに乗車できなかった。しかし電車とバスを乗り継いで五合目に到達し、その後怒涛の追い上げを見せた。ちなみに、Yuzoは後でさらに凄まじい追い上げを見せることになる。

七合目過ぎ。まだ晴れている七合目トモエ館で休憩

眼下に広がる雲海は非常に雄大だ。一方で、雲の上に出ると凄まじい直射日光が襲いかかってくる。既に高度は2500mに達しており、下界よりも15度ほど低いはずだが、初夏のことゆえそれでも15度近くある。西の方には「竜の巣」のような積乱雲っぽい雲が盛り上がっていた。恐らくこれが夜に降り注いだ雷雨の原因だが、この時は切迫感など全く無かった。

西方向には竜の巣のような雲が!さらに接近する竜の巣

筆者は七合目から休憩のたびに微頭痛が出てきた。七合目中盤からは微妙な吐き気も加わった。明らかに高山病だ。行動に支障を来たすほどではないため、夕食後に頭痛薬「ロキソニン」を投与することとする。一方、ワイルドは余裕たっぷりだった。休憩のたびに一服したり、ポケットウイスキーをあおったり。食欲も旺盛で、大量に持参したパン類を喰いまくっていた。

●山小屋到着、そして高山病封じ込め

今回の宿泊所は七合目最上部にある東洋館だ。八合目の山小屋が6月中旬時点ではいずれも満室で予約できなかったため、ここにした。山頂までの距離は長いが、高山病を軽くできるというメリットもある。到着したのは16:22で、五合目出発から3時間42分かかっている。標準コースタイムの約1.2倍であり、一合目組にとっては余裕ありまくりだった。

東洋館の夕食はハンバーグだった。富士山の山小屋は大抵カレーを夕食に出す。実際、前回と前々回の富士登山ではカレーだった。このハンバーグはカレーに比べればかなりマシな味で、高山病でも何とか完食した。なお、朝食(弁当)は夕食時に同時に配布された。ザックの中に格納すると外気温の低下の影響で猛烈に冷えるため、とても喰えたものではない。結局、下山後まで持ち帰り、肥料となってしまった。

この空間に8人寝ます夕食はハンバーグ

18:30には横になった。覚悟していたことだが、山小屋の就寝スペースは狭すぎた。布団3つを8人に使わせるという極悪非道っぷりだ。寝返りを打つことすらままならない。一度横を向いたら二度と姿勢を変えられない。従って睡眠はほとんど取れないが、横になって体を休め、体力を回復しておく。幸い、脚に微妙な筋肉痛がある程度で、膝の痛みは全く無い。

これでも昔よりはだいぶマシになったらしいが。昔は頭と足を交互に配置する形でさらに詰め込まれたらしい。あり得ねえ。

トイレはなかなか清潔東洋館から先。頂上はまだ見えない

21時過ぎには激しい雷雨が降り注ぎ始めた。そして22時頃、18時新宿発のYuzoが追いついたとの知らせが。河口湖口五合目からここまで1時間で登ったらしい。夜間・雷雨という悪条件の中でだ。凄すぎる!

天候が良ければ23時出発の予定だったが、雷雨の中の登山はあり得ないので、天候の推移を見つつしばらく待ち。その間、Yuzoは外で待ち。ロビーに入っただけで宿泊扱いとなり、9500Gが飛んでいくためだ。なめんな殿様商売。いや、需給バランスが狂っているだけか。22:30頃になり、雨が小康状態になったところで出発しようとしたら、山小屋の人に止められる。山頂付近はまだ雷雨が続いているとのこと。いかんともしがたいのでYuzoに9500G払ってもらって中で待機しかないかなーと思ったその時。先ほどの山小屋の人が「山頂付近でも雷が止んだらしいですよ」。行くなら今しかねえ!


2012.7.8(Sun)

富士登山2日目 〜吉田口山頂(3720m)到達、そして帰還〜

●登り2(山頂まで):予定と実績

場所高度予定実績
七合目東洋館2900m23:0023:00
本八合目トモエ館3400m1:000:54
八合五勺3500m1:401:41
九合目3600m2:302:33
吉田口山頂3720m3:303:15

●七合目(2900m)〜本八合目(3400m)

23:00という出発時刻は、「山頂で御来光(4:30頃)を全員で見る」ことを想定して計算したギリギリの時刻だ。出発が30分遅れると、団体客の大渋滞に巻き込まれて進めなくなる。今回は新人も入っているため、行軍速度は基本的に他の団体客と同じか、それよりも遅い。さらに、今回は悪天候も重なっている。

まずは五合目組およびJinさん(名古屋から別ツアーで参加)との合流を目指す。八合目トモエ館に1:00という待ち合わせ時刻も、同様の想定の下に決定した。実際にはYuzoを含めた一合目組は体力的に余裕があるため、余裕で間に合うはずだったが……予想通り混雑が激しく、八合目トモエ館到着は0:54。下江戸屋に宿泊した五合目組は既に到着しており、ギリギリのタイミングだった。さらに少し遅れてJinさん(白雲荘に宿泊)も到着した。ところが、高山病の症状が激しく、結局八合目に残って様子を見ることに。

八合目で待っている間も、非常に寒かった。上江戸屋の外にあった温度計は、-3度を指していた。風も強いため、体感気温はもっと下がる。これではまるでキリマンジャロだ。従って、ここでダウンを装備した。持参するか否か迷った一着だが、持ってきて本当に良かった。「速乾シャツ、防風長袖、ダウン、レインウェア」の4層レイヤリングで防寒対策は完璧! という目論見だったが、実際にはこれでも寒さに震えることとなった。なお、軍手はここでは装備しなかった。氷雨の影響で、濡れて手がかじかむ事態が想定されたためだ。また、ここでヘッドランプの電池が切れた。前回使ったのは昨年9月の剱岳であり、使用した時間はさほど長くない。保管期間が長すぎて放電したのが原因だろうか。もちろん予備電池をポケットに入れておいたため、即座に交換して事無きを得た。

本八合目上江戸屋前で全員集合(撮影:ぽかたん)

●本八合目(3400m)〜山頂(3720m)

1:27に出発。結局、2008年と大して変わらない時刻にここを出発することとなってしまった。今回は日の出が約30分早いのに加えて、悪天候でもあり、もう少し余裕を持っておきたかった。もっとも、2008年は3:05に山頂に到達し、寒さに震えながら山小屋の営業開始を待った記憶がある。この待ち時間を減らすという意味では、このくらいの出発時間でも良いだろう。

相変わらず小雨が降ったり止んだりだったが、霧は常に出ていた。高度を上げるとともに、気温もガンガン下がったように感じられた。八合五勺到達が1:49。やはり混雑に巻き込まれて思うように進めない。

この辺で新たな問題が発生した。霧の影響で眼鏡が頻繁に曇り、視界が利かない。指先も冷えてきたため軍手を装備し、時々眼鏡を拭いながら進む。特にヤバかったのが、「足元が見えない」「先が見えない」ことだ。そうこうしているうちに、タイパー登山部のメンバーともはぐれてしまった。集団の後ろについていれば複数のヘッドランプで足元と先が見えるため、結局これを頼りに登った。前の人たちが休憩に入り、筆者が先に行ったことは3回くらいあったが、いずれも派手に転倒する結果になった。

九合目到達が2:33。この辺になるとようやく集団がバラけてきた。また、雪の壁も登場した。山開き直後だからか、それとも今年の夏はそんなに暑くないということか。山頂付近は岩が多く、転倒するとマジでヤバいので、多少スローペースでも我慢して他の人にひっついて登った。酸素が薄くなり、足が上がらなくなってきたため、前の人の休憩はむしろ好都合と化していた。3:15、本格的にへばる前に吉田口山頂に到達した。予定より15分早い。タイパー登山部のメンバーはまだ到着していないようだった。

●山頂での1時間30分

この時点では、山頂の山小屋が4:30頃に営業開始すると思い込んでいた。山小屋が開けば(高額だが)暖かい飲み物を投与できると考え、それを楽しみに、というよりも励みにひたすら待ち。なお、2008年や2009年には存在したはずの、高額な飲み物を販売する自動販売機が今回はなぜか営業していなかった。従って、寒さに震えながら他のメンバーを待ち続けることとなった。

推定気温は-5度。体感気温は-15度。動かずにいると、ダウンを含めた4層レイヤリング状態でも凍える。基本的な対策は、可能な限り風を避けることだ。山小屋と狛犬がちょうどいい風除けだった。さらに時々足踏みし、寒さに耐え続ける。3:45頃、タイパー登山部のメンバーがまとまって登頂してきた。さらに少し遅れて、ドーピングにより高山病から立ち直ったJinさんも登頂を果たした。これで今回も全員登頂を達成した。

4:00過ぎから時々雲が切れて、夜明け前の明るい空がチラッと見えるようになった。しかーし基本的に厚い雲に覆われており、御来光は諦めざるを得なかった。ついでに、山小屋も開かない。しばらくして判明した情報は、山頂の山小屋は7月上旬には営業していないということだった。さらに、トイレも自販機も営業していないことが明らかに。これはあまりにも想定外すぎた。事前に分かっていたら、全員登頂した時点で記念撮影だけして即下山したのに!

お鉢巡りや日本最高点アタックは、即座に諦めた。悪天候(雨+風)に加えて、残雪も多い。冬山装備どころか防寒対策さえも不十分な我々には危険すぎると判断した。実際、筆者も含めて防寒対策が甘く、半数以上のメンバーが寒さに震えていた。従って、山頂の石碑の前で記念撮影のみ行い、即座に下山を開始した。

山頂の石碑の前で(撮影:ぽかたん)

さらに、下山道にも大量の残雪があり、通行禁止になっていた。ではどうするか。アイゼンも冬山技術も無い我々は、登山道を下るしかない。道理で登山中に下山者とすれ違うことが多かったわけだ。登山中には下山してくる人を見て「何でこいつらは登山道を下山してやがるんだ? 道を間違えたのか?」などと見当違いな考えをしていた。恥ずかしい限り。

●下り1(吉田口五合目まで):予定と実績

場所高度予定実績
吉田口山頂3720m6:004:42
九合目3600m5:24
八合五勺3500m5:50
本八合目3400m6:506:16
七合目公衆トイレ2550m7:307:16
六合目2400m8:107:48
五合目佐藤小屋2230m8:508:23

※時間はデジカメのファイル作成時間。ビミョウにずれているかも。以下同様

●下山開始(3720m)〜本八合目(3400m)

4:42に下山開始。既に登山者と下山者が入り乱れて大渋滞となっていた。結果的に、登りは早め早めに行動して大正解。下りも早めに行動する決断ができていれば! 八合五勺まで1時間08分を要した。下山道を雪のない状態で下山すれば30分かからないのに。

この大渋滞の原因の一つとなっていたのが、渋滞中のわずかな隙間を見つけて割り込んでいく輩だ。外国人が中心だが、日本人も彼らにつられて割り込みまくっていた。なるべく前の人との間を詰め、かつ割り込みを図る輩に対しては体を張り、足場を塞いでブロックしてやった。あれでよく事故が起きないものだと思う。落石とか落雷とか殴り合いとかがあったら死者が出てもおかしくないかと。6:00過ぎになってようやく下山道に抜けることができた。上を見渡してみると確かに大量の雪が! 一合目組は五合目組よりも素早く下山する必要があるため、ここでお別れ。

吉田口下山道には大量の残雪雪の壁

●本八合目(3400m)〜五合目(2000m)

六合目までは、微妙に砂走りっぽいつづら折れの道をひたすら下っていく。ワイルドとYuzoの競争が凄まじい。Yuzoはタイパー登山部では間違いなく最速だが、この区間に限ってはワイルドの方がさらに速かった。筆者は膝が弱く、下山が苦手なため全くついていけなかった。それでも2008年に経験した須走口の砂走りに比べればまだ何とかなった。吉田口下山道のレベルなら、うまく砂をつかむことで膝に負担をかけず、スイスイと下山できる。ただ、スパッツ類を持参しなかったため、登山靴に小石が入りまくって閉口した。なお、砂埃に関しては、前夜の雷雨の影響でほとんど気にならないレベルだった。

須走口下山道との分岐。吉田口は黄色こんな道をひたすら下っていく

本八合目と八合目には須走口下山道との分岐があった。赤と黄色で色分けされているので分かりやすい標識だ。ところが、ワイルドとYuzoがあろうことか須走口に向かってダッシュを始めたため、慌てて止める。そのまま下ってしまったら、分岐まで登り返すか、須走口五合目からタクシー等で移動するしかなくなる。

六合目には7:48に到着。本八合目から休憩込みで1時間半くらいだった。合間に、七合目の公衆トイレで朝食代わりにウィダーを2パック流し込んでおいた。朝食として渡された弁当はこの時点でもまだ冷え切っており、とても喰う気になれなかった。なお、ここから河口湖口五合目に下ってバスで帰る案もあった。だが、Yuzoと筆者が当初予定通り一合目まで下る案を押し通してそのまま下山を続行した。

六合目〜五合目(佐藤小屋)の区間で、合唱の発声練習らしき音声が聞こえた。当初は自衛隊が演習場で歌っていると勘違いしていたが、実際には山伏らしき人たちが歌いながら登山していた。これも修行の一環なのだろうか。また、これとは別に、三合目あたりでも単独の山伏さんが歌を披露していた。

六合目から河口湖だか山中湖だかを望む植生が復活してきた

●下り2(一合目まで):予定と実績

場所高度予定実績
五合目佐藤小屋2230m8:508:36
四合目2000m?9:06
三合目1840m10:009:19
二合目1700m9:39
一合目(馬返し)1450m11:2010:12

●五合目(2000m)〜馬返し(1450m)

Yuzoとワイルドの競争による高速下山は五合目以降も続いた。れえるもよくついていく。筆者はもはや限界で、四合目付近では丸太で滑って転倒した。以後二合目までは筆者が先頭に立ち、まったりと下山した。

二合目で休憩した時にYuzoが「1986年5月20日は火曜日」という計算をさくさくっとやっていてびっくり。電卓を使った手早い計算法があるらしい。4年単位で時を遡る方法で地道に検算してみたが、頭が回らず3分くらいかかった。

二合目〜一合目の区間ではワイルドの進軍速度が鈍り、代わりにれえるがYuzoと並んで競争を開始した。筆者は全くついていけず、最終的に10分くらい離されてひーこらひーこらと下山した。この最後の区間で両足の親指の爪が悲鳴を上げ、ますますペースダウンしたのが痛かった。ちなみに、膝に関しては違和感を覚えるくらいで済んだ。

なお、一合目付近で地元の中学生たちの数百人規模の遠足に遭遇した。三合目付近でトレイルランナー向けと思われる給水所を見掛けたが、実際にはこの遠足向けだったのだろうか。彼(女)らが道の大半を塞いでいるのは仕方ないとしても、約半数から「こんにちは!」と挨拶され続けたのには閉口した。無視するわけにもいかず、返答し続けるのはマジで苦行だった。トレイルランナーたちはもっと困ったことだろう。せっかくのトレーニングが10分以上は中断されただろうから。

馬返しには、予定より1時間以上早く帰還した。もともと下山のスケジュールはかなり早めに組んであったはずなのに! 日本最高点到達を断念した分の余裕時間は、八合目までの大渋滞でほぼ相殺されている。つまり、それ以降の高速下山が常軌を逸していたということだ。

馬返しまで戻ってきたこれが馬返しバス

●下山完了後

下山が速かったお蔭で、予定より1本早い10:30発の馬返しバスに乗車できた。なお、帰りも浅間神社まで歩くプランは即座に却下された。時間的には余裕があったが、体力的・精神的にキツかったためだ。そして馬返しバスが快適すぎ。わずか15分で浅間神社まで戻ってきた。また、浅間神社到着の直後に土砂降りの雨が降り注いだため、結果的にバスでショートカットして正解だった。最後の最後で、用意していた折り畳み傘が役立った。

下山完了!

この時点で五合目組はまだ五合目で下山バス待ちという状況だったため、一合目組は一足先に温泉に行って汗を流すことに。今回は富士急ハイランド付近にあるふじやま温泉を選択した。2000円という土日割増・観光地価格の温泉で、贅沢に汗を流してきた。登山後の温泉の爽快感は麻薬的だ。何物にも代え難い。今回の登山というか下山で最もダメージを受けたのは両足親指だ。次が八合五勺付近で転倒した時にできた右すねの軽い擦り傷。その次が、日焼け止めの塗り方が甘かった場所(主に顔)の日焼け。足の親指は後で内出血して黒くなったが、他の部分は軽微な症状であり、温泉から出た後はほとんど気にならない程度だった。

昼食は付近にあったステーキガストで、ヒレステーキセットをガッツリと食す。何しろ登山中はろくなものを食べていない。高度を下げたため、高山病からも完全に回復した。従って、食欲は極めて旺盛だった。今回も、登山・下山で消耗した分を上回るカロリーを摂取した気がする。

Yuzoとれえるを帰りの高速バス乗り場に送っていく途中、妻の実家に寄り道した。30分ほど時間があったため、さくさくっと高速カタン! 結局時間切れで最後までできなかったため、中断時点で暫定順位を判定した。初心者のれえるがトップに。


富士登山の感想

●今回の収穫

零合目から五合目までの登りと、五合目から一合目までの下りには今までの富士登山に無い達成感があった。事前にぽかたんから「苦しい道のり」との情報を得ていたが、今回は曇天で気温が上がらなかったこともあり、そこまで苦しくなかった。

高山病対策はほぼ完璧に機能した。五合目の昼食の時に投与したダイアモックスと、七合目の夕食後に投与したロキソニンのお蔭で、最も辛い症状である頭痛をほぼ完全に封じ込めた。また、水を多めに飲み、小便を多く出すという対策も有効だった。これは、キリマンジャロ登山で身をもって体験したことだ。もっとも、今回高山病が比較的軽かったのは、宿泊した山小屋が前回までより低い位置(2900m)にあったという要因も大きいと思う。なお、山小屋出発後山頂到達までの間はさらに高度を上げることとなるが、高山病の症状は全く出なかった。

膝の痛みに関しては、今回はほとんど出なかった。五合目までの登りでやや違和感を覚えたが、それ以上悪化することは無かった。また、下りではそれなりの速度を出していたが、やはり違和感を覚えるくらいで済んだ。毎日の膝トレーニングに加えて、右膝に着用しているサポーターの効果が出ていると言えるだろう。

●今回の反省

一方、五合目から上は今まで経験した中でも最悪に近い登山だった。理由は、土日、吉田口(河口湖口)という混雑要因を揃えてしまったため、ありとあらゆる所が混雑していたことだ。山小屋といい登山道といい山頂といい。おまけに山頂の山小屋は開いていないし(←これは単純なリサーチ不足、今年の営業期間は7/13〜8/31)、悪天候に祟られて御来光は見えないし、山頂では極寒の中で1時間半待った挙句に日本最高点到達を断念するし。

今回参加したタイパー登山部の新人たちに伝えたいことは、もっと快適で楽しめる登山はいくらでもあるよということだ。今回の苦行にめげず、今後も登山を楽しんで欲しいと思う。

また、防寒対策は明らかに不十分だったと思う。行動中は鼻水に悩まされ、休憩中は全身の震えに悩まされた。前者はマスクである程度しのげるとしても、後者はいかんともしがたい。キリマンジャロに持参した冬山用ゴアカッパは大袈裟すぎると判断して今回は持参しなかった。だが、悪天候が予想される時はここまで必要だろうか。

●総括と今後

これで、富士山の主要な登山ルートのうち3つを登った。最後に残ったのは、最難関と言われている御殿場口だ。筆者にとっては、1400mという低い位置からの登りはさほど苦にならないが、下りの大砂走りの方がキツいと思われる。また、最短ルートの富士宮口を利用した日帰りも是非やってみたい。富士山の噴火が近いという噂もあるため、できればその前にやりたい。


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