そこで浮上してきたのが、今回のMt. Ugoだ。ルソン島北部の山岳地帯にある2,000m級の山である。Trail Adventoursの開催ツアー一覧の中から、一泊二日の山行では最もガチ度の高いものを探索した。その結果、難易度設定が5/9とそこそこガチそうなMt. Ugoを見出した。
なお、Mt. Pulagほど高度は無いため、医師の証明書は不要とのことだった。その代わり、持ち物リストに寝袋、マット、タッパー、食器等、Mt. Purgatoryとほぼ同じものが記載されていた。前回の反省を踏まえ、準備を進めた。
それによると、標高は2,150mと低く、アップダウンも比較的少ない。だが、1泊2日で計30km、行動時間は16時間程度とのこと。しかも雨季なので午後の降水確率はほぼ100%! フィリピン滞在の最後を飾るにふさわしいガチ山だ。
登山の準備としては日本の夏山、但し2,000m級(男体山等)を想定した。気温は5度以下に下がることは無いとの予測の元、防寒着は持たなかった。速乾性Tシャツ計4枚、ランニングタイツ上下、雨具上下を組み合わせて対処することとした。
さらに、荷物を最小限とすることにも気を配った。下山時の膝へのダメージを可能な限り軽減するためだ。但し、海外の山を登るにあたり、パスポートと地球の歩き方は携帯せざるを得なかった。このくらいの重量増加は止むを得ない。なお、今回は寝袋とヘッドランプをレンタルした。付近の登山用具店は約4km離れた場所にあり、買いに行くのも面倒だったためだ。
登山口に辿り着くまでのスリ・引ったくり対策にも気を配った。基本的に、余分な物(特に高価そうに見える物)は持たない。現金もほとんど持たない。かつ、財布とそれ以外に分散させて持つ。
最後に、登山関連の概算費用は以下の通り。キリマンジャロと比較すればだいぶ安上がりだ。
Mt. Ugo登山の動機
2カ月のフィリピン滞在も7月中旬で終了する。その最後を飾るに相応しいガチ山として、6/24-26にBakun Trio(難易度の異なる3つの2,000m峰に3日で登る)ツアーに再び申し込んだ。ところが、6/10-12に続いてまたしても、最少挙行人数に満たないため中止となった。
Mt. Ugo登山の準備
Trail Adventoursのサイトによれば、2日で30kmをトレッキングするとある。これはMt. Purgatoryを上回り、難易度もMt. Pulagより一段階高い。だが、筆者はよりガチな登山を何度も経験済みであり、かつ毎朝のランニングで鍛えている。従って、登山としてはそんなにキツくないと考えた。むしろ、登山口に到達するまでの方が危険と判断した。そこで、5日に滞在先付近で開催された事前説明会に参加するなどして、情報収集に努めた。
項目 | 金額 | コメント |
---|---|---|
航空券 | - | 出張のため会社負担 |
宿 | - | 同上 |
登山ツアー | 4640ペソ | 交通費、食費、ガイド費用、入山登録料を含む Bakun Trio中止により、振替 |
レンタル | 400ペソ | 寝袋、ヘッドランプ |
交通費 | 38ペソ | 往路のMRT、最終日夕食時のタクシー |
水 | - | 宿泊先が毎日500ml×4本補充してくれる |
食糧 | 計50ペソ | バナナ4本 |
2日目朝食、夕食 | 250ペソ | 朝食はKayapa、夕食はBaguioで |
合計 | 5378ペソ |
※1ペソ≒2.25円。
Kamuning駅で下車した後、徒歩でCubao方面に少し戻る。相変わらず排ガスと胡散臭さに満ち満ちたエクストリームな高速道路沿いの道だ。既に何度か経験していることもあり、淡々と歩いて10分程度で目的地に到達した。集合時間には5分遅れたものの、バスの出発時間は55分先なので、問題無し。1時間前に集合させるのは、金曜夕方の渋滞で時間が読めない(車で来る参加者がいる)のと、空いている時間で夕飯を食わせる目的もあるのだろう。
Victory Linerのバス乗降場では既にガイドのJericと、数名の参加者が待っていた。先週のMt. Makilingで一緒だったLeoもいた。
バスに乗車し、着席した瞬間に睡眠開始。約30分後に車掌が検札に来た時にはLeoに起こしてもらった。その後もランニングタイツ含め3枚着ているのに微妙に寒く、あまり眠れないままAritaoに到着した。
2017.7.7(Fri)Makati→Kamuning
●夜行バス乗車まで
まずは集合場所のKamuning Victory Linerまで到達しなくてはならない。今までの登山の中では最も遠い集合場所だ。Mt. Purgatoryの時はCubaoだったが、Kamuningはさらに先だ。当然、MRT(電車)を使う。一駅遠いと運賃が20ペソ(約45円)から24ペソ(約54円)に上がるが、差額の4ペソ(約9円)をケチってCubaoから歩くのは合理的でない。また、今回は女性専用車両に注意しつつ乗車位置を前回と変えてみた。目的地から判断するに、最後尾の車両に近い方が良さそうだと思えたためだ。その結果、何とOrtigasで着席することに成功した。登山装備はそれなりに重く、しかも日本の電車と違って網棚も無いため、これは助かった。もちろん日本と違って寝ることはせず、Kamuningまで目をランランと輝かせつつ荷物を両手で抱えていく。
コスパの良すぎる朝食 | スタート地点兼朝食の場所 |
朝食後に行動開始。なぜか誰も準備運動しないため、不思議に思いつつも「I am not so young. So I need preparation.」と宣言して準備運動しておく。
さらに、ガイドのJasperからレンタル品の寝袋とヘッドランプを受け取る。マットもレンタルする予定だったが、今回は無いとのことだった。Jasperは「俺が運ぶ」と言っていたが、少なくとも登山口以降は自分で運ぶべきと考えた。実際、Mt. PurgatoryではBaguio到着時点でKimから渡されていたし。Jasperは「お陰で荷物が超軽くなった」とジョークを飛ばしていた。ちなみに、Jasperは筆者のものよりも二回りは大きいザックを軽々と背負い、他の全員分の寝袋、ヘッドランプを運搬していた。
予定 | 実績 | 高度 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
8:30 | 7:00 | 1100m | Kayapa登山口発 | |
- | 9:15 | 1830m | 三叉路 | 後続待ち+休憩 |
11:30 | 9:55 | 1830m | Indupit Village | 昼食予定だったが通過 |
16:00 | 12:20 | 1680m | Domolpos Village | 宿泊場所 |
※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。デジカメのファイル作成時刻も参考にした。
※高度はGoogle map目視による概算。
行動開始! | 松林の中の道をまったりと |
最初の1時間は準備運動と割り切ってスローハイキングを満喫した。実際、最初の2〜3時間は急登とのことだったため、下手に速度を上げない方が良い。また、この日だけで12kmと比較的長い行程(と言っても大倉〜塔〜丹〜蛭と同程度)のため、最初に飛ばしすぎて後でへばるとみっともない。しかも、毎度のことだが休憩が多い。せっかく体が温まったのに、この休憩でまた冷える。
少しずつ高度を上げる。雲もあり涼しい | 植生は大変豊かだ |
なお、休憩時に最初の500mlミネラルウォーターが空になったため、派手な音を立てて潰しつつザックに放り込もうとしたら、現地ガイドが「そこにゴミ捨て場があるから捨てていいよ」とのこと。だが、登山前の諸注意では「足跡以外残すな」とのことだったし、ゴミはManilaまで持ち帰るつもりだったため、その後も含め山にゴミを捨てることは無かった。代わりに、Manilaの滞在先で、登山中のゴミを特に分別することもなく捨てまくったのだが。
この辺で先頭グループに出ていた | 高山植物かな |
次の2時間は先頭付近に出てみる。ガイド(現地女性)、Leo、ノルウェー女性、筆者で先頭グループを形成した。その後も急登区間ではこの4名が先頭に居ることが多かった。一時的に、ガイドよりも先に出ることもあった。先頭である程度後続に差をつけつつ、気に入った場所で写真を撮りつつ進むのはなかなか良い気分だ。だが、地図を持っていないため、これができたのは次の三叉路までだった。
三叉路で後続を待つ | 食用なのか卵用なのか、鶏が多い |
この三叉路が、昼食を取る予定となっていたIndupit Villageの少し手前だった。11:30の予定よりも2時間以上早い。後続が全員追いついてもまだ1時間以上早い。これは行動開始が予定よりも1時間以上早かったのに加えて、今回のメンバーに恵まれたためでもあるだろう。既にフィリピンでは雨季に入っており、午後にはほぼ確実に雨が降る。早めに宿泊サイトまで到達した方が、あらゆる面で良い。
KayapaからIndupit Villageまで、9km続く緩やかな車道もあるらしい。今回は登山道を歩いたため、3kmで済んだとのこと。
予定よりもだいぶ早いため、昼食はここではなくDomolpos Villageで取ることとなった。長めの休憩の後、行動を再開する。急登は終わり、車も通行可能な道をゆったりと歩く。時間には余裕があるため、急ぐ必要も無い。
見晴らしの良い場所だが、雲が多い | もう急登は無い。ハイキングの趣 |
雲が途切れるとなかなかいい眺め | 牛もよく見かけた。落とし物も! |
雲が多い時間帯・場所もあったが、好天の時間も多かった。進むべき道は遥か遠くまでよく見えた。
道は先まで大変よく見える | 時々ある休憩所 |
そしてしばらく進むと、いよいよMt. Ugoがその威容を現した。しかも意外と近くに見える。しばし写真撮影をするなどして休憩。なお、アキレス腱や太もも等のストレッチを実施していたら、ノルウェー女性が「それはヨガのポーズだ」という。そして実際にヨガのポーズを次々と決めて見せた。ヨガ経験は長いらしく、隙が無く美しい。筆者も基本のポーズだけ試してみたが、片足で立つとバランスを取るのが難しく、面白いようにバランスを崩しまくった。その間、彼女がぴたりと静止し続けているのとは対照的だった。
Mt. Ugoが見えた! | 空模様が怪しい。何か降臨しそう |
その後はLeoとフィリピン女性が先頭を進むのを見つつも敢えて追いかけず、全体の4〜5番手を維持して、写真撮影をしつつまったりと進む。実際、Mt. Ugoが次第に近く見えてくるため、写真撮影ポイントは随所にあった。現地ガイドおよびポーターと一緒に歩いている時間が多かった。このポーターはキリマンジャロのポーターと同様、頭の上に荷物を載せてバランスを取りつつ歩いていく。平地に近い道ならまだ分かるが、急な登りや下りなど、足元が悪い道でも感嘆すべきバランスを保っていた。荷物を落とすところは一度も見なかった。
車道の後半になって、後ろからトラックが迫ってくるのが見えた。できれば追いつかれたくなかった。だが、Domolpos Villageまであと少しというところでついに追いつかれた。しかもそこからは車にとってはやや悪路となったため、スピードを落としやがった! つまり、排ガスを吸わされるわけで。
トラックも走れる道 | 最後に急な下り |
Domolpos Village手前で、急な下りが待っていた。Leo、フィリピン女性、Jasperがスイスイと降りていく。筆者はそうもいかず、彼らからやや遅れつつ、滑らないように速度を完全に殺しながら降りていく。登山靴の底が摩耗しているため、速度を上げると予期しないところで滑り、大変危険だ。
宿泊先の村が見えた | 宿泊先の学校 |
村に入ったところで道を間違えて人家に入ってしまった。だが、さほど大きなロスなく復帰して、12:20頃には宿泊地の小学校に到着した。ノルウェー女性が整理運動の代わりと称して早速ヨガを始めたため、見よう見まねで一部始終をやってみる。相変わらず、片足立ちのところでバランスを保つのが難しい。彼女によると「1点を見つめる」のがコツとのことだった。実践したところ多少は改善されたが、静止することはほとんどできず。一方、腕立て伏せの要素を含むポーズ等、バランスを保つ必要が無いところでは何とかついていけた。
Mt. Ugoはすぐ近くに | 空模様が怪しく |
トイレと手洗いを済ませ、昼飯! pack lunchは購入しなかったため、バナナ3本を食しておく。残り3本は明日の昼飯(場合によっては夕飯)のため残しておく。
ガイドのJericからは「遠くには行くな」「Mt. Ugoには登るな」との指示があった。事前の説明会では、希望者がいればガイドが引率してMt. Ugoに登ることもあるという話だった。だが、空模様を観察した結果、午後に雨が降る確率は相当高いと判断し、休養に充てる。Mt. Ugoに登らないなら、特にやることも無いし。他のメンバーも概ね休息していた。
宿泊する建物は3〜4年生向けの教室だった。中に入ると椅子が壁際に片付けられ、大広間となっていた。ちなみに机は無し。ノートを取る時はどうするのだろう。そもそもノートを取るという発想が無いのだろうか。ガイド含め11人が使うには充分すぎる広さがあった。筆者は入口近くに陣取り、靴と靴下を装備解除し、寝袋を広げる。
しばらくの間はこの日記の元となるメモを書き記していた。だが、そのうち凄まじい眠気に襲われたため寝袋にもぐり込む。雨に降られなかったこともあり、既に汗は乾いていて気分が良い。マットが無いため結構痛いが、睡眠欲の方が余裕で上回り、心地良く爆睡した。
木をふんだんに使った遊具 | 雷雲接近! 10分後に凄まじい雷雨に |
15:45頃に目覚める。暇なので、トイレに行きつつ小学校の中を見て回る。空模様がいよいよ怪しくなり、雲がMt. Ugo周辺の尾根を越えて村の中に向かってきている。実際、のんびりと写真を撮影しているうちに雨が降り始めた。しかもいきなり豪雨となったため、慌てて建物の中に逃げ込む。その後は雷も加わり、外に出る気も失せた。従って再び睡眠。
18:00過ぎに目覚める。既にJericとJasperが夕食を準備していた。日没と雨の影響で暗くなっていたため、ヘッドランプを装備する。それにしても山で食べる食事は毎回うまい。特に伝統料理らしいティノーラ(肉と野菜の煮込みスープ)が非常にうまく、2回はお代わりした。今回もおいしく頂きました!
夕食! うますぎる! | 夜は人狼(撮影:Jeric) |
夜は人狼。この手のゲームは苦手なので日本ではなるべく避けていた。ところが、フィリピンで、しかも英語で初体験することになるとは思わなかった。人狼と言っても最後まで殺し合うのではなく、最初のステージのみだ。トランプ一式とスマホアプリでサクサクと進めていく。役割に従ってカードを操作した後、誰が狼かを投票して暴く。1ターンに負けるのは1人であるため、敷居は低い。「俺は狼だ」と言ったら速攻で殺されるため、最初のうちは人間側であることを証明することを心掛けた。慣れてきたら適宜嘘を交えたり、「俺は当初○○だった。でも誰かがカードを入れ替えたから今は分からない」と煙に巻いてみたりする。結局、負けたことは一度も無かった。20:25頃には就寝。
2017.7.9(Sun)Mt. Ugo登頂後、帰還
●登り:予定と実績
予定 | 実績 | 高度 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
4:00 | 4:35 | 1680m | Domolpos Village発 | |
- | 6:00 | 2100m | Camp site | 写真撮影など |
6:30 | 7:05 | 2150m | Mt. Ugo | 写真撮影など |
※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。デジカメのファイル作成時刻も参考にした。
※高度はGoogle map目視による概算。
2:30に起床。まずは速攻で大を済ませておく。相変わらずやや下っているが、行動を妨げるほどではない。なお、既に雷雨は止んでいて、綺麗な満月と星空が見えた。
そして朝食。ヘッドランプを装備して食べる。相変わらずうまい! 昼飯のpack lunch用の肉じゃが(のような料理)もこの時点で少し賞味してみる。なお、packするための清潔なビニール袋が用意されていたため、飯と肉じゃがをまとめて放り込んでおいた。今回はスプーンと箸を準備しているとはいえ、袋を分けると後で食べるのが面倒になることはMt. Purgatoryで経験済みだ。それに、肉じゃがの煮汁が飯と混ざった方がうまいし食べやすい。
朝食のスープ |
なお、寝袋は食事中もそのままにしておいた。というよりも、出発予定時刻の15分前である3:45までそのままにしておいた。これを片付けると座った時に痛いし、明け方近くということで寒い。
単独行動なら朝食後にさくっと出発するところだ。ところが、ツアーなのでそうもいかない。結局、出発は4:30頃だった。その間45分間、蚊に刺され続けた。奴等はランニングタイツ1枚なら余裕で貫通してきやがるため、タチが悪い。また、虫除けはランニングタイツの上からだと塗りたくない。他の人は半袖短パンで虫除けを塗っていたこともあり、蚊の被害は筆者に集中した。
ようやく行動開始。昨日の最後に通過した急な下りを登り返すのかと思いきや、村の中を通り抜けてなだらかな登りを行く。Mt. Ugoが見えてからはやや急な登りとなった。現地ガイド、Sunny、Leo、筆者で先頭グループを形成する。Jasperも実力的には余裕で先頭に立てるはずだが、グループ前半全体に気を配り、ガイドの役割をしっかり果たしていた。なお、Jericは最後尾につき、グループ後半全体をカバーしていた。
何度目かの休憩で、夜明けが近付いたためヘッドランプを消す。Sunnyはすぐ近くに見えるピークまで一気に登る気満々だった。しかしご来光が近いとのことだったため、後続を待ちつつ写真撮影タイム。よく晴れ渡っており、Mt. Pulagも見えた。
小ピーク手前で夜が明けた | ご来光 |
行動再開後、しばらく急登をこなすとあっさりと小ピーク(Camp site)に辿り着いた。Camp siteというだけあって、幾つかテントが張られていた。ここでもご来光や、少しずつ増えてきた雲海を撮影する。先月登った(雲海で有名な)Mt. Pulagの近くにあるため、天候次第では綺麗な雲海が見えるそうだ。暇になってきたためヨガを試してみたり。
Camp siteに到着 | 雲海もなかなか美しい |
Camp siteから山頂まではごくわずかの道のりだった。山頂を示す標識は少し奥に行ったところに設置されていた。なお、標高は2,220mとの表示だった。事前の説明会では2,150m+とのことだったし、Google mapでも2,150m程度だが。標識前で全員で記念撮影。またしてもSunnyとヨガポーズを取ってみたり。
Mt. Ugoに登頂! | Sunnyとヨガポーズ(撮影:Jeric) |
Yohanが甘い菓子を皆に勧めていた。同じものを3セットくらい持ち込んでおり、休憩のたびに。筆者は8年前に購入したブドウ糖飴を持っていたが、消費期限をとっくに超過しているため、皆に勧めるのは憚られた。ついでにブドウ糖の英語表現も分からなかった。後で調べたところ、glucoseが正解らしい。グルコースという言葉を聞いたことはあったが、ブドウ糖と結びつかなかった。
雲海は相変わらず雄大 | 山頂付近はだだっ広い草原 |
予定 | 実績 | 高度 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
8:30 | 7:40 | 2150m | Mt. Ugo発 | |
11:30 | 11:15 | Old Saw Mill | 昼食予定だったが通過 | |
13:00 | 12:40 | 1250m | Lusod Village | 昼食 |
16:00 | 15:30 | 440m | Kawayan Village | Wash up等 |
※予定時間はツアーによるもの。
※実績時間は手元の時計によるもの(概算)。デジカメのファイル作成時刻も参考にした。
※高度はGoogle map目視による概算。
下山開始。なかなか急だ | こういう道がよく滑る |
この下りがかなり急だ。靴底の摩耗の影響で、いつ滑るか分からない。慎重に下っていったが、尻餅をついたことは少なくとも二度あった。その後も完全な転倒を免れるために悪戦苦闘する。しかも、数回目にバランスを崩した時に草を素手で掴み、左手を3箇所も切ってしまった。うち1箇所からは結構激しく出血したため、次の休憩ポイントでミネラルウォーターで洗い流す。
っとJasperが医療キットを取り出した! 「草で切っただけだ」と言ったが、「手当ての練習をさせてくれ」とのことで、やってもらう。その結果、重傷の方の小指は絆創膏で済んだものの、軽傷のはずの親指付け根をカバーすべく大袈裟な包帯と粘着テープを巻かれる羽目に。相当目立つ格好をすることとなった。良い機会なのでこれもジョークのネタにする。「大怪我をしたのでもう速くは歩けない」「下山したらすぐに病院に行かなければ!」等。
眺望は常に良かった | 右下にある草を掴むと手が切れる |
その後は傾斜も次第に緩くなり、幸いなことに再びバランスを崩すこともなく下山を続行した。高台から見下ろす山並みも、時々振り返ると見えるMt. Ugoの勇姿も、なかなか素晴らしい。この区間だけで50枚以上の写真を撮影した。
時々振り返ればキツそうな登り | 松林のお陰で涼しい |
Mt. Ugoの雄姿もまだ見える | 稜線を進む。道は分かりやすい |
村落の前の構造物。鹿除け? 牛留め? | 構造物その2 |
村落には水田が広がっている | 牛も相変わらずいる |
Lusod Village到着が12:40頃。ここでようやくトイレを済ませ、昼食とする。バナナ3本とpack lunchをおいしく頂いた。既に水も残り1リットルを切っており、ザックが明らかに軽くなった。ちなみに、Leoがコーラ1.5リットルを村内の店で調達してきて皆に振舞っていた。筆者は下痢のリスクを考慮してやめておいたが。
Lusod Campsiteに到着 | あと5.5km。トレイルはまだまだ続く |
登山時と同様、終着点までの距離を示す道標が0.5km毎に設置されている(見落とすことが多かったが)。あと5.0kmのポイントで、たまたま写真を撮影したら現地ガイドがポーズを取ったため一緒に撮影してみる。そうしたら「写真を送ってくれ」とのこと。後でメアドを聞いたら住所を返された。メアドやSNS等とは無縁の生活を送っているらしい。写真を印刷するのに適した紙を調達するのが面倒なので、発送は帰国後かな(結局、帰国した13日に印刷し、14日に発送した)。
左の方が現地ガイドさん | ルソン島北部名物の棚田 |
ここでSabrinaとLeoが猛然とトレイルランニングを開始した。そこそこ急な下りなのに、普通に歩いても追いつけない。明らかに走っている。筆者は棚田/棚畑や急流等の絶景を見出すたびに写真を撮影していたためでもあるだろう。最後は追いつくのを諦めて、まったりとKawayan Villageへ。
突然現れた峡谷 | 棚田を目標に下山を続ける |
Kawayan Village入口には14:00頃に到着した。最後の休憩を入れる。ここから終着点までは約1kmらしい。それにしてもよく晴れて暑い。高度も500m前後まで下がっており、終盤は暑さとの闘いだった。
村を出てしばらく進むと吊り橋があった。Mt. Pulagの前に立ち寄った吊り橋よりも安定感があり、ほぼ全員が手を使わずに渡っていた。実際、ほとんど揺れないし。橋の中央付近で両側と真下の景色を撮影してみたり。
吊り橋。と言っても安定感抜群 | 吊り橋中央付近より |
吊り橋を対岸から見た図 | 棚田ともお別れ |
その後は川沿いの舗装路を辿り、ついに終着点に到着した。0.0kmの標識を見て、達成感が湧いてきた。後続を待ちつつ、しばし休憩。
終着点 | 山頂まで11kmあるらしい |
相変わらず暑く、日本では見かけない種類の猫がにゃ〜んと午睡を開始していた。
フィリピン猫 | 30分後、にゃ〜んと午睡開始 |
なお、現地ガイドのAdelaとはここでお別れ。写真を送るための住所を教えてもらいつつ、「ナイスガイドありがとう!」とお礼を言っておく。Yohanとは言葉の話を。「サクト」(exactlyのくだけた表現)が流行っている言葉らしい。日本語の「すごい」「ヤバイ」も知っていた。何か日本語で面白い言葉はないかと聞かれたが、とっさに出てこない。「ヤバイ」は改まった場でも使えるのかと聞かれたため、使わない方が良いと教えておいた。
Barangay Hall | モンスタージプニー。早くも酒盛りに |
ここでWash up。Sunnyが思いっきり勘違いしていたが、バスタブどころかシャワーすら無い。水が出る蛇口と、手桶があるだけである。一応扉はあるため、素っ裸になって水浴びをすることはできる。但し筆者は軽量化のため石鹸を持参していなかった。それに、扉を閉めると外に置いた荷物が心配だ。そこで、上半身だけ素っ裸になって手・腕・顔を洗った後、手ぬぐいを濡らして一通り拭いておく。これだけでも相当気持ち良い。また、歯も磨いておく。午前中からずっと気になっており、非常にスッキリした。
その後はシンガポールマラソンのTシャツに着替え、登山靴と靴下を装備解除して足を乾燥させる。モンスタージプニーの中では早くも酒盛りが始まっていた。筆者は最後の1本となった500mlミネラルウォーターをちびりちびりとやりつつ、しばらくは乾燥に専念する。
出発前に、登山証明書の授与セレモニーがあった。Trail AdventoursのTシャツも獲得した。但し見たところ綿素材であり、速乾性ではない。山で着用するには不向きなのが残念だ。
登山証明書(撮影は帰還後) |
モンスタージプニーでは運転手のすぐ後ろの席になった。ここからだと前方の窓を通じて景色がそこそこ見える。一方、座席上方にある手すりを掴むには後ろに手を伸ばさなくてはならない。すると筆者の脇の下がすぐ後ろの席に座る女性の鼻の近くに来るわけで、いくら先程Wash upしたとはいえ憚られた。その結果、両足と腹筋を駆使してBaguioまで耐えることに。ちなみに、Mt. PulagやMt. Purgatoryの時は中央付近の座席に座ったため、手すりを掴んで寝ることもできた。
手元の「地球の歩き方」には、Baguioは天空都市だと記載されている。なぜなのか良く分からなかったが、今回の旅でようやく理解できた。山と街が一体化しており、山の表面を覆う森の中に幾多の建物が見える。Barangay HallからBaguioに至る道はほぼすべて曲がりくねった山道で、傾斜もあった。Baguioに近付いてもカーブや傾斜は続いた。
18:15頃、Baguio着。Manila方面へのバスは21:00頃出発するらしい。明日の仕事への影響を考えると、ゴネて早めのバスに乗車しても良かった。だが、今回のメンバーは皆でDinnerを食べることで合意したため、筆者も引っ付いていく。
充実のディナー | 充実のディナー2 |
人数が多いのと、リーズナブルな店を選択するのとで、総勢12名(Trail Adventoursのガイドが1人加わった)でタクシー3台に便乗する。1km程度走り、Good Tasteなる店へ。タクシー代はここまで14ペソ×4(計130円程度)と格安だ。Good Tasteの中の中華の店に入り、野菜、鶏肉、ライス、酸味の強いスープをたらふく食べて一人あたり134ペソ(約300円)だった。日本ではあり得ない格安さだ。会計のJasperが律儀にも1ペソ単位でお釣りを返していた。筆者は140ペソ渡したらなぜか20ペソ返されたため、思わず「お釣りはいらないよ」と言ってしまった。
Victory Linerのバス乗り場に戻る。前回と同様、Pasay行きのバスに乗ってAyalaで降りるため、時刻表をチェックする。すると、21:00発のバスはCubao行き、21:30発のバスはPasay行きとなっている。Jasperに確認したところ、やはり「21:30発のバスに乗る」という。結局、Leo、Jasper、筆者の3人がAyalaで降りることが判明したため、行動を共にすることとする。
Baguioからのバスの車内は、今までで一番寒かった。推定気温15度、体感気温5〜10度。乗車した瞬間にヤバさを感じ、先程獲得したTrail AdventoursのTシャツを追加で装備する。さらに、途中であろうことか冷房を強化しやがったため、予備で持っておいたランニング用のタンクトップに加えて雨具上、軍手まで装備した。但し座席が狭いため雨具下は装備できず、寒さに耐えつつ可能な限り睡眠を試みるという、冬山ビバーク並みの経験をすることとなった。隣に座ったSabrinaも、途中で休憩した時にバスの荷物庫を開けてもらって雨具を持ち出していた。次回フィリピンの山(Mt. Apo等)に登るなら、防寒具が必須だろう。
2:15、予定よりも1時間以上早くAyalaに到着した。ちなみにCubaoからAyalaまでノンストップかつ凄まじい速度で走り抜けていた(Ortigasで降りる人が居なかったためか)。Jasperが教えてくれなければAyalaとは分からなかっただろう。
Leoは駅の反対側に行くためここでお別れ。Jasperは方向が同じだったため、Ayala Museumまで一緒に歩いた。2:30には滞在先に帰還した。速攻で洗濯機を回し、シャワー!
Manilaの宿泊先と職場を往復しているだけでは決して味わえない体験を積み重ねたのも収穫だった。今回のパーティメンバーと知り合えたのも収穫だ。
登山としては約30kmの道のりを存分に堪能できた。但し、ツアーなのでペースがゆっくりで、特に登りの後半と下りの後半は余裕がありすぎた。この辺はむしろハイキングという趣だった。行動中は一切雨に降られなかったのも幸いだった。急な登りや下りの時に降られると苦戦は免れない。
一方、基本的にゆっくり行動したこともあり、脚のトラブルはほぼ無かった(両すねに軽い擦り傷を負ったのと、虫刺されのみ)。古傷の右膝の痛みも再発しなかったし、筋肉痛も無かった。全体的に負荷が低かったためだろう。また、毎日実行している膝トレーニングの効果であろう。但し、次回に向けて一層の膝トレーニングを積むとともに、登山・下山自体のトレーニングを継続する必要があるだろう。
日焼けとそれによる消耗は、日焼け止めでほぼ防ぎ通した。もっとも、2日目の朝は油断してしまい、山頂到達まで日焼け止めを塗り忘れた。
次に怪我。原因の一つは、登山靴の摩耗だ。靴底は明らかに擦り減り、しかもかかとの部分がはがれつつある。そろそろ登山靴を買い替えるべきか。
そして今回もガイド付きのツアー登山であり、自分でルートファインディングして登りきるという体験はできなかった。もっとも、フィリピンのほとんどの山では自然保護等を理由としてガイド雇用と登山者登録を必須としており、この制約は常について回る。
但し、Google mapでの地図の読み込みが甘かった点は反省すべきだ。事前説明会での資料に記載されていてもGoogle map上で確認できない地名があった。Mt. Ugoは表示されるものの、他の地名は表示されず、ルートは全く分からない。逆もまた然りだ。従って、事前に地図上で演習を行うことができなかった。本来、事前説明会に地図を持参して不明点を質問すべきだろう。だが、帰国が迫っていて業務も多忙であり、充分な時間を確保できなかった。
Mt. Ugo登山の感想
最後に今回の収穫と反省をまとめて記しておく。●今回の収穫
結果的に、無事に登頂し、下山した。帰国後、ルソン島の山々に登るチャンスはなかなか来ないと思うので、今回モノにできて本当に良かった。●今回の反省
最大の反省点は、虫刺されへの防御を怠ったことだ。痒みは日毎に増してきた上、膿まで出てきた。帰国後に虫刺され向けの市販薬を塗布したが、効果は無かった。結局、帰国後に病院に行って専用の薬を処方してもらうこととなった。●総括と今後
筆者にとって、海外の登山はこれで八度目だ。フィリピンへの滞在がそろそろ終わるため、次回登るのはいつになるか分からない。とはいえ、機会があれば積極的に登りたい。
登山ページに戻る
トップページに戻る