Mt. Kékes(ハンガリー最高峰)登山



●概要

・登り:Markaz posta→Diszno-kő→Mt. Kékes
・下り:バスでショートカット
・3人パーティ(ウェルコネ、さとみん、筆者)
・最高点であるMt. Kékes(1014m)に登頂
・以上を日帰りで敢行

●動機、準備、感想

Mt. Kékes登山の動機
Mt. Kékes登山の準備
Markaz posta→Diszno-kő→Mt. Kékes
Mt. Kékes登山の感想


Mt. Kékes登山の動機

2015年7月に、
Interstenoブダペスト大会に遠征することに決定した。だが、はるばるハンガリーまで出向いてタイピングだけして帰ってくるのはいかにももったいない。今後ハンガリーを訪れる機会は滅多に無いであろう。それならば是非ともハンガリー最高峰に登りたい! という強烈な思いを抱いたのは筆者にとってごく自然なことだった。

ハンガリーという国について詳しく調べたのは今回が初めてであった。その結果、最高峰はMt. Kékes(ケーケシュ山)であると判明した。但し、山頂までバスで行けるということもあり、麓から徒歩で登る人は限られている。実際、日本語で登山情報を検索しても目ぼしい情報は皆無であった。そこで英語での情報収集に切り替え、Mátra and Kékesという先人のサイトを見出した。そして、ここに記述されていた5通りのコースのうち、唯一登山口まで公共交通機関でアクセスできそうだったのが、Markazから登る往復23kmのルートであった。

事前調査では、1049番のバスを利用し、登山口のMarkaz postaに8:21に到着する予定だった。帰りのバスはこちらで、Markaz postaを15:49に出発する。従って、7時間28分で登って下りてくることを想定していた。行程は往復で23kmあるため、道のりだけを見れば日本国内では大倉発着の蛭ヶ岳日帰りに相当する。筆者は蛭ヶ岳往復に8時間43分を要している。Mt. Kékesは高低差こそ蛭ヶ岳よりも少ないものの、時間制限が重くのしかかり、相当厳しい登山になることが想定された。当初、タイパー登山部を含むBudapest遠征メンバーに敢えて積極的に声を掛けなかったのはこのためだ。


Mt. Kékes登山の準備

Budapest到着後、登山決行の直前になってさらにGoogleで英語検索をしまくり、幾つかのリンク先を辿って
ハンガリー語のバス検索サイトを発見した。ここに出発点のBudapest Stadionと目的地のMarkaz postaを入力して検索すると、直通バスでは事前調査の通り2時間半かかる。ところが、Gyöngyös(ギュンギュス)を経由すれば、何と1時間半に短縮できる。前者は路線バスで後者は高速バスなのだろうか。重要なのは、後者のバスを利用することで、単純に登山に使える時間が増えるということだ。さらに、使えるバスの本数も増える。始発に乗るのは変わらないが、終バスは何と20:47(Budapest Stadion着が22:30)だ。これにより、時間制限は7時間28分から13時間20分へと、大幅に緩和された。

この時点で、今回の登山の成功を確信した。同時に、Interstenoブダペスト大会参加者の中で、これは!と思った人に声をかけた。その結果、ウェルコネ(野球、サッカー、テニス経験あり)、さとみん(フルマラソン完走経験あり)という当初想定を上回るスペックを持つメンバーを引き込むことに成功。はっきり言って、筆者なんぞよりも基礎体力・運動能力とも遥かに上だ。一方、タイパー登山部の古参メンバーは誰一人として乗ってこなかった。

また、Budapestに到着して直観したのは、暑さ対策の重要性だ。最高気温は37度に達する。山頂が1014mあると言っても、1000mにつき気温低下は-6度なので、昼間は31度だ。従って、日本の夏山と同様の熱中症対策が必要と判断した。即ち、水2リットル以上(筆者は2.5リットル)と行動食(筆者はウィダー3個)を持参するとともに、直射日光対策として日焼け止めやほっかむり等を効果的に使用することとした。

さらに、荷物を最小限とすることにも気を配った。下山時の膝へのダメージを可能な限り軽減するためだ。そこで、膝対策としては右膝サポーターのみを持参し、着用した。ストックは不要と判断し、持参しなかった。なお、海外の山を登るにあたり、パスポートと地球の歩き方は携帯せざるを得なかった。このくらいの重量増加は止むを得ない。

そして、当日朝のバスの乗車券は事前に購入する予定だった。このため、19日にIntersteno大会の空き時間(TPとTCの合間)を縫ってStadionバスターミナルに出向いた。結局、乗車券は当日に運転手から買ってくれと言われて事前購入はできなかった。だが、この事前偵察により当日朝に迷う時間をゼロにできたため、時間的・精神的余裕につながった。何しろ、地下鉄のStadion駅からバスターミナルまでの案内は無いに等しく(あったとしてもハンガリー語で記述されていたため理解できず)、反対側の出口から出てしまい猛暑の中を5分くらいさまようことになったためだ。

最後に、登山関連の概算費用は以下の通り。キリマンジャロと比較すればだいぶ安上がりだ。

項目金額コメント
航空券129200円往路はパリ経由、復路はアムス経由。3月中に確保
宿17500円6泊分の値段なので、登山目的のみの2泊ならもっと安い。
但し今回は13人で1つの家を借りたという特殊要因もある
バス1700円トータルで約4000HUF
水と食糧1000円筆者は日本から持参。他のメンバーは当日朝に購入。
合計149400円 

※Intersteno参加費や観光費、登山以外の食費、土産等は別。


2015.7.22(Thu)

Markaz posta→Diszno-kő→Mt. Kékes

●登山口到着まで

朝4:50に宿を出発し、まずはAstoria駅まで準備運動を兼ねて約2駅分、約1.5km歩く。最寄駅からでも乗り換えを1回やればStadion駅に到達できる。だが、この時間帯では電車の本数が少ないため、乗り換えを回避した方がタイムロスが少ないと判断した。そしてStadionバスターミナルへ。運転手にGyöngyös行きであることを確認し、切符を購入する。相手の英語も片言だが、要点が伝われば良い。経由地のGyöngyösでは、次のバスの最終行先と出発時間を頼りに、電光掲示板、時刻表(両方ともハンガリー語)の地名と時刻を見て次に乗るバスを決定する。7:27に予定通りにMarkaz postaに到着した時点で、今日の登山の成功を確信した。

ハンガリー語の時刻表行き先と出発時刻が分かればOK! 

……だが、この時点では想像もつかなかったロスがこの後に生じる

●登り:予定と実績

予定実績高度場所備考
7:277:34190mMarkaz posta発 
9:00610mMarkaz城跡到達できず
8:38480m登山道分岐小休憩
9:34480m登山道分岐迷って戻った
10:06480m登山道分岐迷って戻った
?700mMarkazi kapu見落とした
10:3011:21720mDiszno-kő小休憩
12:0012:211014mMt. Kékes山頂写真撮影など

※予定時間は緩めに組んだ。筆者単独の想定時間の約3割増し。
※時間は手元の時計によるもの。高度は地図から概算。

●登り

腕や顔、首、耳の後ろ等に日焼け止めを塗り、軽く準備運動をして、さくさくっと出発。天候は快晴であるため、上は速乾性Tシャツ1枚のみである。下は一応長ズボンを装備した。

出発点のMarkaz posta標識はあっても地名が不明

最初のロスは、出発直後に発生した。理由は、入手していた地図に予め引いてあった緑色の線が正解ルートという思い込みである。このルートはMarkazから西方向に進むこととなっていたため、常に意識が西方向に向いていた。実際には、北方向に見えるHegyes-tető(610mピークにある城跡)を左手に見ながら、北方向へ進むのが正解らしい。

幸いなことに、2分後に同じ道を登っていく老婦人と、果樹園で農作業中の老紳士に出会ったため、Mt. Kékesに登る道はこれですかと尋ねてみる。ところが通じねえ! こちらの喋る英語は伝わらず、相手の話すハンガリー語も伝わらず。ま、日本の田舎の山を登ろうとする外国人が英語でその辺のおじいちゃん・おばあちゃんに道を尋ねるようなものだからな。それでも、相手の反応から、行こうとしている道が違うことを推察し、その場は戻る。

最初に道を間違えた理由は緑色の線こちらが正解(地図上では北方向)

そして別の道をしばらく進むと、今度は登山道というよりも車が走行できる道に出た。他に目の前の610mピークに通じそうな道は見出せないため、何となくこれで良さそうだと推測して先に進む。

天気予報によると、この日のBudapestの最高気温は37度、天気は快晴だ。Budapestから約100kmしか離れていないMarkaz地方も似たようなものだ。まだ8時にもなっていないというのに、凄まじい直射日光が照りつける。日焼け止めとほっかむりで防御し、手に持った地図で扇ぎながら進む。

なお、車道だけを進んだわけではない。サイクリング道や登山道と思われる表示を発見した場合には基本的にそこに入り、進めそうなら強引に進んでショートカットを目指す。地図上で、登った先に車道が見えているからこれが成立する。もっとも、サイクリング道も登山道も日本のように整備が行き届いているわけではない。例外なく、先に進むと道が怪しくなった。上に車道の気配が見えなかったら、戻るしかない。

見晴らしの良い場所に建つ墓サイクリング道を示す記号

何度か疑心暗鬼になりかけつつ、8:38にようやく地図上でここだと確信の持てる場所に到着し、一息つく。地図によると、ここまでは車道が東南方向に逆V字形に伸びており(登ってきたのは南南東からの道)、その突端から北北西に伸びる登山道らしき道が記載されている。実際にこの道を見ても、登山道らしく見える。木の幹には目印がついており、これを見ながら進めば問題無さそうだ。この判断は、結果的には正しかった。

ところが、この目印は日本の山のように懇切丁寧についているわけではない。次の目印まで50mほど離れていることもあるし、木の葉に覆われて見えないところもある。登山道を外れないようにロープが張ってあるなんてことはもちろんない。案の定、少し登ったところであっさりと目印を見失った。この時点では、想定ルートを外れた認識はあったものの、登り方向に進んで尾根に出れば復帰できるという見通しだった。地図上で目標とする尾根を確認し、地形を見ながら進むことにした。

地図上の赤い位置が目印いよいよ登山道へ!

ところが、そのまま進み続けたところ、今度は地図上で確認できない道が現れた。そして、この道に沿って進むうちに方向がずれ、尾根を外してしまった。この時点で、地図上での位置が完全に分からなくなった。さらにその道を突き進んだ結果、道が失われた。恐らく、作業用の道だったのだろう。進軍を停止して現在地の確認を試みたところ、Mt. KékesもしくはDiszno-kőと思われる峰は前方に見えている。だが、そこに至るまでには沢に下る必要がある。これは明らかにマズいパターンだ。道無き道を進むのは、尾根に向かう場合はまだしも、沢に向かう場合はほぼ確実に危険箇所や進めない箇所にブチ当たる。それに、本来なら一貫して緩やかな登りが続くはずなのに、一旦沢に下るというのでは明らかに道が間違っている。

木の幹の目印を辿って快調に進む約20分後、道を見失う

必然の選択として、来た道を戻る。ところが、道無き道を進んできたものだから、今度は復帰ルートが分からなくなった。何たる失態! もはやまともな判断力も失せていると直観し、メンバー2人に相談する。回答は「時間がかかってもいいから安全に行きたい」という至極真っ当なものであり、これで落ち着いた。

地形から判断するに、丸印で迷った南東方向に進み、車道に復帰

幸いなことに、太陽が出ているため方角は分かる。そして、南東方向に緩やかに下りる道を見出した。結局この道も最後は獣道レベルに怪しくなった。だが、方角が合っていたのと、進行方向左手下に車道が見え始めたのとで、再び現在地を把握できた。地図を見ながらそのまま下っていき、車道に合流する。さらに車道を西に少し戻り、8:38に到達した地点に復帰した。この時点で9:34。目印の見落としという小さなロスが原因で、1時間近いロスになった。

なお、結果論だが、南東方向に進む道を見出した時に逆に(北西方向に)進んでいれば、本道に復帰できた可能性もある。だが、この時点ではこの道が正解であると確信できるだけの材料が無かった。そのような状況で猪突猛進すれば、さらなる道迷いにつながりかねない。迷ったら確実に分かる所まで戻るのが基本だ。

今度は安全策として車道を進む地図上、赤丸から南方向へ

メンバー2人の水の残量を確認したところ、まだ問題なし。最悪のエスケープルートとして、来た道を戻ることも可能と判断した。そこで次の選択肢として、時間のかかりそうな車道を進んでみる。ところが、結論から言うとこの道も誤りだったらしい。地図上では、この道はいずれ尾根道と合流することになっている。だが、途中で出会った林業従事者と思われる4人組の男性に道を尋ねたところ、今度は来た道を戻れと言っているらしい。いや正確には、英語とハンガリー語のやり取りになって全然通じなかった。結局、男性のうち1人の車で戻り、正解ルートを案内して頂いた。

この目印を見失わないように!こういう標識を待っていた!

その正解ルートというのが! なんと! 8:38に到達した地点から、全く同じ登山道を進めというもの。そして強調されたのが、木の幹についた目印を見失わずに進めということだった。言葉は通じなかったが、目印をレシートの裏に書いて渡してくれたため意思は伝わった。この時点で10:06であり、ロスが1時間半に拡大した。自分のミスで1時間半も無駄にメンバーを迷わせ、消耗させてしまったという罪悪感MAX。

そして、筆者が先頭で進むとまた同じ間違いを犯す可能性が高いと判断し、ウェルコネ隊長に先導してもらう。裸眼視力0.9とのことだったが、矯正視力1.5の筆者よりも目印を見つける能力が遥かに高い。もちろん筆者も最後尾から目を皿のようにして目印を探す。ウェルコネ隊長がミスをした時に正解ルートに誘導するという、極めて重大な任務だ。

稜線に出ると気持ちいい!木の葉に隠れる目印。見えますか?

ウェルコネ隊長は張り切って進み始める。あまりの速度に、後ろの2人はすぐに息が上がってしまう。しばらく登って休憩したタイミングで、少しペースを落とすよう指示する。その後も、小さなロス(目印見落とし)は時々あったものの、3人で協力して次の目印を発見しながら進んでいく。ルートを間違えた場合、100mくらい進んでも目印が無い状況に陥る。そういう時は、さらに50mくらい念のため進んでみて目印が無いことを確認した後、最後の目印まで戻り、改めて正解ルートを探す。分岐があったり、車道やサイクリング道、作業用の道、獣道と交差していたりで、そう簡単には正解ルートを見出せないところもあった。

ルートミスに気付いて戻り、目印を発見Mt. Kékesまであと3.3km!

筆者の地図読み能力はまだまだ甘い。正解ルートを地図上のルートと一致させることがなかなかできなかった。仮に筆者が単独で挑んだ場合、途中で戻る決断を下さざるを得なかっただろう。地図上での現在地確認は、今回のような目印の少ない山に挑む場合、今の筆者にとってはそれほど難しい。その認識は充分にあったため、体力と水・食料に余裕のあるうちに撤退の決断を下す可能性は常に念頭に置いていた。

それでもウェルコネ隊長がほぼ確実に正解ルートを選択し続けたため、快調に進んでいく。途中のチェックポイントであるDiszno-kőと思われる場所には11:21に到着した。なんと、迷わずに進めば先ほどの登山道分岐からわずか1時間強の距離だった。ここからは進行方向が西向きに変わり、尾根の北側に出るため一時的に日陰になる。同時に北方向の眺望が開けるポイントが幾つか現れる。ブナ林の一面の緑は大変美しい。

Diszno-kő(崖)を上から見た図北方向の眺望が開けた

余談だが、後日になってこの日記を書く際に地名を調べていたら、ハンガリー語の登山日記らしきものを発見した。現地の人は、山頂までバスで行き、そこを起点としてトレッキングを楽しむらしい。当日もそういう人達を数組見かけた。大抵の人はこちらの東洋人っぽい風貌を見て英語で挨拶してくる。こちらがハンガリー語で「ヨー レンゲ!」「ヨー ナポト!」と返したら、皆さん驚きつつも喜んでくれたようだった。海外の山に登る時は現地語の「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」だけでも覚えていった方が良い。万能語だ。

山頂まであと30分。隊長はまだまだ元気基本的に尾根を進む。途中には謎のモニュメントも

なお、登頂少し前の時点で水の残量を確認したところ、予想通り不足していた。1時間半も迷わせてしまったため、特にウェルコネ隊長が深刻だ。また、仮に山頂で飲み物を買えた場合に歩いて下山するか確認したところ、体力的に厳しいのでバスで下山したいとの回答だった。筆者はもちろん徒歩で下山希望だったが、それを押し付けるわけにはいかない。

一方、筆者も登り分のスタミナが切れてきており、先行する若者2人についていくのがやっとという体たらくだった。ウェルコネ隊長の足取りはいよいよ軽快になり、さとみんは斜面を駆け上がる。対して筆者は、GWに丹沢主脈縦走を日帰りで敢行して以来、全く山に登っていなかったツケが現れた。特に、山頂のテレビ塔が見えてからの約100mの緩やかな登りが無茶苦茶キツかった。だが、ここで遅れるわけにはいかない。ここでへばったら今度こそタイパー登山部失格だ。ブドウ糖飴で補給しつつ気力を振り絞って進み、12:21、ようやく山頂に辿り着いた。

山頂のテレビ塔が見えた!山頂の広場に到着

山頂にはハンガリー国旗の赤白緑をあしらったMt.Kékes山頂の表示があり、そこで記念撮影。良いタイミングで欧米人2人組(英語をしゃべっていたためハンガリー人ではなさそう)に写真を撮ってくれと頼まれたため、便乗してこちらも3人で写真を撮ってもらう。その後、1人ずつ記念撮影しておいた。

山頂のハンガリー国旗がいい感じ記念撮影!

●帰還まで

山頂の売店でハンガリー名物、オレンジジュースを購入。ついでに、12:45発のBudapest行きの下山バスの停留所の場所を尋ねてみたところ、なんと最新の時刻表では12:35発に変わっていることが判明した。この時点で12:33! さとみんの先導でトレイルランニングを行い、バス停に辿り着く。今にも出発しようとしているバスの運転手に確認したところ、実はGyöngyös行きのバスだった。どうやら、Budapest行きのバスには僅差で乗り損なったらしい。

この際、Gyöngyösに行ければ構わない。次のBudapest行きのバスは16時台だ。このバスを待ちつつ山頂で4時間近く過ごすのも、気が変わったとばかり徒歩での下山を開始するのも、もはやあり得ない。ほぼ一瞬で、Gyöngyös経由でBudapestに帰還する決断を下す。

山下りのバスの中で、ハンガリー人の小さい男の子と母親が声をかけてきた。東洋人を見るのが珍しく、お子さんが興味を示したらしい。ちなみに当初はとある理由により中国人だと思われていた。幸いなことに英語が通じたので、しばし会話する。未知の地名が出てきたため、さとみんに地球の歩き方を出してもらってハンガリー全国地図を見ながら。ハンガリーの南方の地域(Szegedだったかな)から数日かけてバスを乗り継いで、途中幾つかの場所で宿泊・観光しながらMt. Kékesまでやってきたのだという。日本で言えば名古屋あたりから少しずつ富士山を目指す感じだろうか。そして、我々も日本からこの山に登るために来たんですと伝えると、驚き喜んでいたようだった。そういえば、今回の山行でハンガリー人とまともに会話したのはこの時だけだった。少しの間だったが、こういう機会を持てて良かった。

帰りもGyöngyös経由でBudapestへGyöngyösの公衆トイレは有料(100フォリント)

Gyöngyösでは有料トイレに出くわした。そういえばヨーロッパの公衆トイレは有料だったような。ハンガリー語の掲示が読めず、途方に暮れていたら現地の人が100フォリント必要だと教えてくれた。但し、一度開けたら続けて入れるため、一人一人払う必要は無い(本来のルールはどうなのか知らないが)。後はバスと地下鉄を乗り継いで無事にBudapestの宿に戻ってきた。予定よりもだいぶ早い、15時台の帰還だった。


Mt. Kékes登山の感想

最後に今回の収穫と反省をまとめて記しておく。

●今回の収穫

結果的に登頂を果たした点は収穫と言える。この先、ハンガリー最高峰に登るチャンスはなかなか来ないと思うので、今回モノにできて本当に良かった。今回の個人的な感想は、「戦略的に成功、戦術的に失敗」である。情報が極めて限定される中、調査と行動を積み重ねて当日7:27に登山を開始できたのは、戦略上の勝利だ。

また、タイパー登山部としては、ウェルコネ、さとみんという強力な新人を獲得できた点が大きな収穫だ。両名とも基礎体力・運動能力はタイパー登山部の中でも間違いなく上位に位置するし、道に迷った時も冷静に判断を下す。特にウェルコネ隊長! 次回も是非先頭でお願いします!

●今回の反省

一方で、登山技術の不足を露呈して失態を積み重ねた点は、明らかに戦術面での失敗である。これを今後の成長につなげていかなくては、未来は無い。

まずは地図読みの甘さ。そもそも、入手した地図に記載されていた先人のルートに引きずられすぎた。そして、それを差し引いても、現在地の把握があまりにもできていなかった。これは、普段から地図を読んで山を歩く経験が充分に積めていないためだろう。次に海外の山に登る前に、日本国内で地図読みが必要な難山を幾つか経験しておくべきだ。そのためには百名山にこだわらず、標識の無さそうな山を選定すべきだ。また、百名山に登る場合でも、あまり一般的でない登山ルートを選択するのも一つの方法だ。

次に目印探索能力の低さ。確かに目印は見つけづらかった。だが、ハンガリアンの教えを忠実に守り、3人で協力して探索しながら進めば問題無く登頂できた。つまり、厳然たる事実として、筆者の目印探索能力が甘かったということだ。対策としては上記と同様、練習によって鍛えるしかない。地図読みと目印探索はセットで必要な能力なので、今後も地道に鍛えていきたい。

……上記2点の問題さえ解決できれば、7時間28分という当初想定の制限時間内に下山まで含め完了できる可能性は十分にあった。Markaz posta到着後、山頂までに要した時間は4時間54分。うち1時間28分は迷ったことによるタイムロスだから、迷わなければ3時間26分で登頂できた。下山も、登山よりも時間がかかることはまずあり得ないため、3時間26分以内で可能だったと思う。つまり、結果論だが、合計7時間以内にMarkaz postaに戻ってくることが可能だった。メンバーの消耗もより少なくなったことだろう。さらに、山頂のテレビ塔に登る余裕も生じただろう。悔しくてならない。

●総括と今後

筆者にとって、海外の登山はこれで四度目だ。うち
漢拏山では登山道と道標が整備されており、迷う要素が無かった。キリマンジャロ山キナバル山ではガイド雇用が必須であり、定められた登山道以外にはそもそも立ち入れなかった。四度目にしてそう簡単には登れない山にブチ当たったことで、やや山をナメ始めていた筆者にとっては貴重な教訓になった。

次の海外登山(というよりも下山)は、来年のグランドキャニオン谷底アタックを予定している。さらに、再来年のInterstenoドイツ大会に合わせてドイツ最高峰であるツークシュピッツェ山(2962m)への登頂を検討している。今回の教訓を活かし、登山・下山ともに確実に成功させたい。


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