多言語タイピングにおけるヘブライ語の強化

2024.12.15(Sun)
文責:dqmaniac

※本稿は、たのんさんが主催するタイパー(タイピング部門) Advent Calendar 2024に登録しています。フリー部門はこちら
※昨日の記事は、てつさんの結婚式でキーボードケーキを発注したりタイピング対戦をするとどうなるのかです。
※明日の記事は、はかたの味噌さんのタイピングにおけるノーパソとキーボードのメリット・デメリットです。



ヘブライ語のタイピングとは
用語の定義
なぜヘブライ語か
monkeytypeのヘブライ語で100wpmを目指せ!(2024/7/8〜8/18)
monkeytypeのヘブライ語1kで100wpmを目指せ!(2024/8/19〜11/4)
monkeytypeのヘブライ語5kで100wpmを目指せ!(2024/11/5〜12/XX)
参考文献
各種資料
おまけ1:Interstenoにヘブライ語が採用されるには?
おまけ2:過去のタイパー Advent Calendar向け記事へのリンク


●ヘブライ語のタイピングとは

ヘブライ語のタイピングを始めるには、まず固有の文字であるヘブライ文字(א,ב,ג,...)に習熟する必要がある。ヘブライ文字は、英語や日本語ローマ字で用いられるラテン文字(a,b,c,...)や、日本語で用いられるひらがな・カタカナ・漢字とは異質な文字である。基本27文字ある(
Unicode一覧表では第0面の05D0〜05EAに割り振られている)。

次に、ヘブライ語のキーボード配列に習熟する必要がある。ヘブライ語の一般的なキーボード配列は、Windows10/11の標準機能に含まれている。[設定]→[時刻と言語]→[言語]→[言語の追加]でヘブライ語を選択すれば良い。しかし筆者は独自の配列を作成した。他の言語への影響を抑えつつ、しかも短期間で、一般的な配列を習得するのが困難と判断したためだ。

ヘブライ語タイピングの技能を発揮する場として、TypeRacermonkeytypeがある。Interstenoではまだ採用されていない。英語をはじめとするラテン文字に慣れきっていると、ヘブライ文字およびヘブライ語キーボードの壁は高い。例えば、Interstenoの合格条件である「240文字/分以上、かつミス率0.50%以内」を突破するのが意外と難しい。また、約30秒という短期決戦であっても、外国人がTypeRacerやmonkeytypeで100wpmに到達するのは極めて困難である。


●用語の定義

※ヘブライ文字: ヘブライ語で使用されている固有の文字の名称。日本語の「ひらがな」「カタカナ」、英語等の「ラテン文字」に相当する。

※通常版/語彙増加版/1k/5k/10k: 本稿ではmonkeytypeのhebrewを「通常版」、hebrew 1kを「1k」、hebrew 5kを「5k」、hebrew 10kを「10k」と呼称することがある。特にhebrew 1k攻略開始後はその傾向が強い。また、1k,5k,10kをまとめて、通常版と対比する意味で「語彙増加版」と呼称することがある。

※英字表記: 本稿で「英字表記」とは、筆者の独自配列でヘブライ文字を打鍵した時の文字列をQWERTY配列の英字に置換した文字列を指す。例えば[ביותר](ほとんど)の英字表記は[aeimf]となる。なおヘブライ文字は右から左に読む。英字表記とは逆になるので要注意。

※wpm: words per minute、即ちワード/分。打鍵速度を表現する一般的な指標の一つ。英字タイピングでは一般的に1ワードを5文字と数えるため、1wpm=5文字/分、100wpm=500文字/分となる。ヘブライ語も同様である。


●なぜヘブライ語か

筆者がヘブライ語に触れるのは今回が初めてだし、ヘブライ語を使用する文化圏についてもよく知らない。「旧約聖書に用いられた言語」という漠然としたイメージがあるだけだ。これとても遥か昔に世界史でさらっと勉強した程度であり、実物を見たわけではない。ちなみに先程
Wikipediaを参照し、現在もイスラエルで日常的に話されていることを初めて知った。

但し、2018.7.4時点で、即ちTypeRacerでギリシャ語とベトナム語の100wpm達成がほぼ見えた段階で、次に取り組むべき言語の筆頭に挙がっていた。当時残っていた他の難関言語と比較すれば、主にヘブライ文字の図形認識という観点でまだとっつきやすいと考えた。また、ヘブライ文字を習得すれば、イディッシュ語への横展開も期待できる。

◆偉大な先駆者と有用な練習サイトの存在

2024年に入り、X(旧Twitter)上で、q_d_2さん(Intersteno2024オンライン大会の銀メダリスト)がmonkeytypeのヘブライ語とヘブライ語1kで100wpmの達成を報告されていた。そもそも筆者がヘブライ語でノーミス100wpmを目指す絶望的な練習を数カ月にわたり継続できたのは、q_d_2さんという偉大な先達がその可能性と道筋を示して下さったお陰であり、大変感謝している。

筆者は2024年にまずmonkeytypeで100wpm達成を目標とした。monkeytypeではランダムに並んだ単語を打つ。1回あたりの時間は細かく設定可能であり、筆者は初期値の30秒のままにしている。また、ヘブライ語(198語)の他に語彙増加版としてヘブライ語1k(1,000語)、ヘブライ語5k(5,000語)、ヘブライ語10k(10,000語)という難易度の高いバージョンが用意されている。筆者は全種目で順次100wpmを目指している。

一方で、TypeRacerでも100wpm達成を目標とした。TypeRacerでは文章を打つ。1回あたりの時間は概ね30秒〜1分である。monkeytypeとTypeRacerの両方に存在するというのは、練習効率の意味で大きい。

◆難関言語の工数見積もり

さらなる難関言語(ここではアラビア語、タイ語、ヒンディー語等を指す)に将来挑戦する際の工数を見積もっておきたかった。これらの言語に使われる文字には、筆者は全く馴染みが無い。少し調べた限りでは、図形認識すら困難だ。この意味で、ヘブライ語と比較しても難関言語の習得は極めて困難である。とはいえ、図形認識の段階さえクリアすれば、その先の成長過程はあまり変わらないと予想される(実はこの見通しがまだまだ甘いのかもしれないが)。従って、ヘブライ語で100wpmを達成する工数を知っておけば、難関言語で100wpmを達成する工数がそれ以上であると想定できる。

具体的には、100wpm到達までには表1に示す幾つかの段階がある。このうち「図形認識の成長」は、ラテン文字のタイピング習得過程にはほぼ無かった。英語のタイピングを始めたのが英語習得の後だったためだ。2015年のInterstenoの多言語対応においても、ロシア語を除けば一部の特殊文字(ドイツ語のß等)や文字装飾に対応するだけで済んだ。ロシア語のタイピング習得時にのみ、図形認識の壁が存在した。だが、気付いた時にはその壁を通り過ぎており、「配列の試行錯誤」の段階に入っていた。ギリシャ語朝鮮語/韓国語、ヘブライ語タイピング習得の過程で「図形認識の成長」の段階を改めて実感できた。具体的には、配列作成の際に図形認識を活用した。但し[ח][ת][מ][ה]の区別は難しく、100wpmに接近してからも苦労した。

【表1: 多言語タイピングの成長過程】

・図形認識の成長
・文字装飾の区別
・配列の試行錯誤
・打鍵高速化過程のプラトー現象
・最後に100wpmを目指して集中練習

もちろん難関言語にはさらなる難関要因が含まれる可能性もある。例えばアラビア語の場合、「右から左に読む」ことが難関要因となり得る。しかし上記の各段階の工数を概ね把握しておくことで、ある程度の見積もりが可能となる。

ヘブライ語も「右から左に読む」言語である。しかし、monkeytypeの通常版や1kで100wpmを目指す際にそれを難関と感じたことは無かった。最初からそういう言語だと割り切って訓練したためかもしれない。一方、5kでは、[סו]と[וס]を互いに逆に打つ癖に苦しめられた。これは図形認識配列の影響もある。英語のoi,ioと混同し、左から右に読むのが一因と考えられる。

……

以上、ロシア語と違って趣味に走った理由しかない。Interstenoではヘブライ語が2024年現在採用されていないし、今後採用されるか否かも分からない。ヘブライ語タイピングで競い合うライバルがいるわけでもない。要するに、ヘブライ語タイピングはあくまでも自己満足である。とはいえ、己が成長する実感を味わうのは類稀なる快感を伴うものである。


●monkeytypeのヘブライ語で100wpmを目指せ!(2024/7/8〜8/18)

◆図形認識配列の使用を決定

まずmonkeytypeの単語リストを入手し、出現する文字を分析する。結果は表2の通り。出現する文字は通常版で26種類、1k以降は[ץ]を加えた27種類だ。筆者にとって、[א](アレフ、数学の集合論に使われる)以外は未知の文字だ。ラテン文字やキリル文字との類似性も感じられない。

【表2: ヘブライ語各種目の単語数と文字種類数】

種目単語数文字種類数
hebrew19826
hebrew 1k100027
hebrew 5k500027
hebrew 10k1000027

次に、配列を検討する。一瞬で、USインターナショナル配列をベースとした図形認識配列の採用を決定した。理由はロシア語ギリシャ語の時と同様だ。第一に、標準的なヘブライ語配列の習得は、短期間では困難である。第二に、多言語を同時並行で打つため、他言語との混同を回避する必要がある。MSKLCでヘブライ語の配列を参照すると、記号の位置がUSインターナショナル配列と異なる。例えば[']がQWERTY配列の[w]に配置されている。これでは言語間の混同が発生する。そこで筆者が作成した配列は図1の通り。

図1:図形認識を利用したヘブライ語の独自配列

※通常版攻略時は26文字が対象だったため、QWERTY配列のa〜zの位置に配置した。この時点で右手小指範囲や最上段、デッドキーは使用していない。
※1k攻略開始後、[ץ]を[7]および[:→y]に配置した。
※概ね、似ていると直感したラテン文字に対応させている。
※但し、一部はキリル文字やギリシャ文字で培った知見も採用した。例えば[ר]はキリル文字の[г]の左右逆、[ג]はギリシャ文字の[λ]をイメージした。
※[י]は似ている文字が無かった。しかし頻度を考慮し、[e]に配置した。
※[ן]はラテン文字の[l]に似ている。しかし[l]には[ג]を配置済みであるため、余っていた[x]に配置した。
※[ב][מ][ה][ת]の区別は困難だ。直感に従って[a][b][h][m]に配置したが、これが最善とは限らない。

◆出現単語の分析

monkeytypeのヘブライ語の攻略に際して、表3に示す情報をExcelシートに整理した。もちろん、最初からすべての情報を整理できたわけではない。例えば「意味」は、ある程度タイピングを習得してからまとめて調査した。

単語の分析の目的は、単語の暗記だ。例えば、幾つかの苦戦した単語(主に長い単語)は、結局英字表記で覚えた。ヘブライ語に限らず、ある程度の暗記は必須だ。100wpmを達成するには、指の動き云々以前に、100wpmという速度にいかに脳を適応させるかが勝負だ。脳細胞がつながっていないうちはまず打てない。

【表3: Excelシートに整理した情報の一覧】

大項目中項目タイミング
文字の一覧
(26文字)
出現回数/出現割合/打鍵数初期
HTML表記初期
単語の一覧
(198単語)
打鍵数/文字数初期
意味(英語。Google翻訳レベル)後でまとめて

◆単語の練習

上記のExcelシートを見ながら、ヘブライ語に出現する198語を1つずつ入力した。まずはヘブライ文字とキーボード上の配置を把握するのが目的だ。朝鮮語/韓国語と違って、1文字1打鍵対応なので、文字の練習は不要と判断し、最初から単語を練習した。入力結果はお手本とEXACT関数で比較する。FALSEが出力された場合にはミスの原因を把握した上で修正する。当初は、198語打つだけで約15分を要した。

速度が上がるにつれて、単語の練習は198単語通し練習という名のタイムアタックに変化した。7/18に5分を、7/29に4分を切り、最終的に2分51秒まで詰めた。1語あたり1秒切りを達成した後も順調に記録を縮めた。だが、8/18にヘブライ語で100wpmを達成してヘブライ語1kに移行したため、ヘブライ語の198語通し練習は一旦終了とした。

また、ミスタッチは最終的にほぼ根絶した。7/31に初めてノーミスで打ち抜けた。その後も何度かノーミス打ち切りを達成した。198語しかなく、1文字1打鍵対応であり、単語の暗記が比較的順調に進んだためと考えられる。

◆フォントの選択

monkeytypeで30秒練習を開始する前に、フォントを決定する必要があった。初期設定のRoboto Monoでは[ח](ヘット)がラテン文字の[n](エヌ/エン)でなくギリシャ文字の[π](パイ)やキリル文字の[п](ペー)に見えるため却下。調査の結果、monkeytypeで選択できる大半のフォントは同様の理由で却下となった。残ったのはわずかに二つ。Cascadia MonoとComing soonだ。しかし前者では[כ](カフ)が[ב](ベート)に見えるし、[ו](ヴァヴ)と[ר](レーシュ)と[ד](ダレット)の区別もつかない。後者では[ע](アイン)が[ט](テット)に見える。以上により、選択可能なフォントはすべて使えない。

しかし、設定画面から[font family]→[Custom]→[Arial]として、Arialを使用することで解決した。Arialを選択したのは、Excelシートに通常版の198文字を打ち込んだ時にたまたま使用されていたフォントだったためだ。また、TypeRacerでもArialを選択可能である。他のフォントではArialとの相違点が多く、文字によっては別の図形に見える。このような理由でフォントを選択すると、朝鮮語/韓国語の時と同様、将来TypeRacerのテストでつまずく気もするが。

◆30秒練習

「出現単語の分析」「単語の練習」と並行して、monkeytypeを用いた30秒練習を7/8から開始した。「指が動かねえ! 脳が働かねえ!」という感覚を久々に味わった。しかし図形認識配列のお陰で、初回に20wpmを、初日に30wpmを超えた。配列習得時のセオリーとして、キーボードを一切見ずに訓練を続けた。その結果、レア文字以外のキー配置は即日中に定着した。なお、右から左に読む仕様にはすぐに慣れた。速度が低いうちに慣らしておいたためか、その後100wpm到達まで、この仕様が原因でつまずくことはほぼ無かった。

初期段階のミスタッチはすべて誤認識によるものだった。少し速度を上げると、[י]を[ו]と打つミスが目立つ。英語等でも[e][i]の混同が発生するのと同様の現象か。また、[ם]を[ב]と打つのはKoreanから引き継がれた認識ミスか(これはヘブライ文字に目が慣れるとなくなった)。さらに、脳が崩壊してくると[ח][ת][מ][ה]の区別がつかなくなる。

その後も他の言語と同様、将来のTypeRacerへの挑戦も視野に入れて、「30秒・ノーミス」という条件下で練習を重ねた。英語で160wpmを出せる筆者にとって、ヘブライ語で100wpmを目指す際に速度の比重は少ない。速度を求めてミス覚悟で限界まで追い込む必要が無いためだ。それよりも、ミスとそれによるロスを抑えることを重視した。そもそもノーミスが条件である以上、1ミスでもした場合には即Escである。終了間際のミス等により、誤って打ち切って出した記録は、集計時に対象外とする。初期段階や不調な日には、1回打ち切るのに苦労することもよくあった。また、速度が上がるにつれて、ノーミス打ち切りは難しくなる。しかし基本方針は変えなかった。

なお、ヘブライ語の制限時間は初期設定の30秒とした。TypeRacerやInterstenoを見据えるなら、60秒などより長い設定にした方が良い。しかし、特に初期段階で60秒ノーミスを保つのは至難である。練習効率を勘案し、30秒のままの方が良いと判断した。後で振り返れば、15秒などより短い設定を補助的に採用する手はあったと思う。

ヘブライ語を含む全体の練習は、1セットを約60分として、平日に1セット、休日に2〜3セット実行した。このうちヘブライ語には、各セットの最後の約25分を充てた。残りの35分は「指慣らし(主に英語ベースのプログラミング言語)」「新規言語(あれば)」「TypeRacerのロシア語」という構成だ。ロシア語以外は、すべてmonkeytypeの30秒もしくは60秒練習である。ヘブライ語を25分に限定したのは、朝鮮語/韓国語と同様、実質ランダム練習に脳が耐えられないと予測したためだ。この25分のうち、最初の5分はロード(読み込み)時間だ。次の15分で記録を狙う。これを終える頃には脳のリソースが慢性的に欠乏し、開幕の数語で確実にミスするようになる。この状態で練習を継続しても、己の肉体と精神を痛めつけて疲労を蓄積させるだけであり、戦略的に何の意味も無い。また、ヘブライ語に限らず他の言語を練習するのは、「Intersteno対策」「ベース速度の維持」「モチベーションの継続」という意味がある。

通常版では198語しかないため、脳と指が早期に単語を覚えていく。するとランダム練習が単語練習に変化し、脳のリソースが尽きる事態が激減する。このため、30分、40分と練習時間を延ばすこともあった。また、練習開始直後に脳が働かない場合でも、20分くらい打ち続けることで文字や単語を強引に思い出し、更新に結び付けたこともあった。

◆単語の暗記(得意単語)

30秒練習開始後2週間ほどで、徐々に単語を脳と指が覚えてきた。通常版には198語しか出現しないため、単語暗記は極めて有効だ。というよりも、数百回も打ち切れば勝手に覚えていく。通常版を単語暗記で乗り切ると、1kで単語が増えた時に再び苦戦する懸念はある。だが、通常版の単語暗記はすべての基本となる。また、1k以降の対策を早期に開始するためにも、通常版で100wpmを早期に達成すべきと考えた。

[קקטוס](サボテン), [דקדוק](文法)はラテン文字の[ppuio], [tptip]と似ていて認識しやすい。従って最初から加速単語であり、一瞬で暗記した。前者は速度が上がると右殺しに変化しそうだったが、その前に100wpmに到達した。次に認識しやすいのは[כוחות](力), [כוסות](カップ)だ。但し両方とも右殺しなので速度の上げすぎに要注意だ。[כללי](一般的な)も認識しやすい。こちらは左殺しだが。また、[אותו](彼), [אותם](彼ら), [אותה](彼女)はスペルも意味も似通っている。まとめて暗記した。但し[אולם](ホール)との混同に要注意だ。

[סוציולוגיה](社会学), [פסיכולוגיה](心理学)には初期段階では大苦戦した。長い単語というだけで、認識に時間を要するためだ。しかし語尾は同じだ。最初の4文字を覚えれば、残りの6文字は練習量が他の単語と比較してほぼ倍になる。最終的には両方とも加速単語に変化した。

◆苦手単語の洗い出しと対策

ミスを誘発する単語や迷いやすい単語のチェックも早期から開始した。目的は、苦手単語で発生するミスやタイムロスを限りなく0に近づけることだ。具体的には、表4に示す単語が苦手単語リストに挙がった。他の単語と関連付けることも難しかったため、個別に暗記した。個別に暗記した。暗記の際には、英字表記を効果的に使った。最終的には冒頭2文字と長さを認識した瞬間に指が勝手に動くようになり、すべて加速単語に変化した。

【表4: 苦手単語リスト】

単語意味英字表記苦戦の原因
באמצעותを通してakbzyim長い
בעקבות続く/後aypaim
מחשבון電卓bnwaix
מיקרופוןマイクロフォンbepfigix
אמריקאי米国人kbfepke
היסטוריה歴史heouifeh
תיאוריה理論mekifeh
כלומרつまりcsibf認識困難+左殺し
מטבח台所buan認識困難
מדהימה素晴らしいbthebh

[מחשבון](電卓)と[מחשב](コンピューター)は、語形も意味も似ているので本来なら覚えやすい。しかし、そのことに気付いたのは100wpmが近づいてからだった。

上記以外で最後までキツかったのが[מלחמה](戦争)と[מלחמת](戦争)だ。[ח][ת][מ][ה]の判別が難しいためだ。100wpmに到達する頃にはだいぶ改善されたが。また、[אל](に)と[לא](いいえ)は大変紛らわしく、先打ちによりミスを誘発しやすい。[אש](火)や[של](の)とも混同が発生する。

◆高速化に伴い新たな課題が発生

70wpmに迫る頃、タイピング画面3行目に突入した。これにより、2回目の改行という超特大のミス爆死要因との死闘が始まった。改行前後は読み辛いし、先読みが途切れることが多いためだ。特に改行前後の単語運が悪いとなすすべなく崩壊する。改行によるロスを帳消しにするだけの加速をするか、改行前後の単語運にすべてを賭けるしかない。この2回目の改行との死闘は、結局100wpmに到達するまで続いた。

◆モチベーション維持策

1カ月を超える長期戦になると、モチベーションの維持が欠かせない。記録だけにこだわると、特に終盤戦では長期にわたり更新できない時期が増えるためだ。そこで、表5に示す指標を設定した。ささやかな成功体験を積み重ねることで、成長の実感を味わうとともに、執念と怨念に変換した。

【表5: 成長の実感を味わうための指標の一覧】

指標具体例
〇〇wpm以上を通算△△回出す 8/8、85wpm以上を通算10回
8/11、90wpm以上を通算10回
8/15、85wpm以上を通算50回
8/17、95wpm以上を通算10回
〇〇wpm以上を1セットに複数回出す 8/10、1セットに90wpm以上を5回
8/16、1セットに95wpm以上を3回
8/17、1セットに98wpm以上を2回
結果表示画面の「やや遅い単語」が100wpm突破8/5に達成
結果表示画面の「遅い単語」が100wpm突破8/11に達成
100wpmを維持できる時間を伸ばす8/11、21秒まで101wpm維持
8/13、25秒まで100wpm維持(ミス爆死)
8/17、28秒まで102wpm維持
Top10から〇〇wpm未満を駆逐する8/16、94wpm未満を駆逐
8/17、96wpm未満を駆逐
Top100から〇〇wpm未満を駆逐する(そもそも85wpm未満を62回しか出していない)
タイピング画面で3行打ち切る8/16に達成
結果表示画面で2行打ち切る8/18に達成
連続5単語以上で平均〇〇wpm以上の加速を決める8/11、連続5単語で158wpm
8/17、連続8単語で平均159wpm
かつての苦手単語を加速単語に変える7/27、中盤[סוציולוגיה](社会学)を122wpm、
終盤[סוציולוגיה]を126wpm、[פסיכולוגיה](心理学)を104wpmで突破

◆100wpm達成

8/18の日記から抜粋する(一部改変)。

ヘブライ語、101.59wpm! 100wpm突破!!!!!

画像はこちら。14日の記録を1.61wpm更新し、66言語目の100wpm突破! タイピング画面4行目、結果表示画面3行目に突入した。

10秒まで100wpmを維持し、18秒時点で105wpmまで上げた。20秒時点で101wpmに低下するも、24秒時点で104wpmまで上げ、28秒時点で103wpmを維持した。序盤[מסגרת כבוד]で103wpm, 118wpm, [בשנת ברית]で99wpm, 118wpm, [מלחמה דירה (改行)]の後者に偶然当てるも88wpm, 53wpm、中盤[נעליים]で117wpm, [מנהל]で98wpm, [דרך]で91wpm, [אמרתי]で77wpm, [שלום]で114wpm、終盤[גולן]で121wpm, [אגם עכשיו]で107wpm, 122wpm, [ענן אחרי]で99wpm, 111wpm, [עם]で89wpmと失速した。一方、序盤[לעתים קניון מים צופה יהודים קטן]で平均149wpm、1語置いて[על דיסק אחרים]で152wpm, 177wpm, 155wpm、中盤[שחור רוח סוף]で194wpm, 176wpm, 172wpm、1語置いて[סוציולוגיה היה חולים את הגנה]で平均144wpm、終盤[היסטוריה פיראט שלו שמש]で148wpm, 145wpm, 146wpm, 137wpmと加速を決めた。タイピング画面4行目冒頭[מאוד כדור]の[כ]まで打った。ここまで32分経過。粘りに粘って、まさに執念と怨念で結果を出した

◆練習結果

2023年5〜10月の練習結果を図2に示す。42日目(実質42日)、356回目の練習で100wpmを突破した。期間中、打たなかった日は無い。即ち、1日あたり約8.48回ノーミスを出した。グラフはほぼ直線になった。即ち、極めて順調に成長したと言える。

100wpm到達前に85wpm以上(ノーミス。以下同様)は62回、90wpm以上は40回、95wpm以上は12回出した。図形認識配列を採用したためか、朝鮮語/韓国語ほど苦戦せずに済んだ。とはいえ、ギリシャ語よりは苦戦した。

【図2: monkeytypeのヘブライ語の練習回数と速度の成長】

常にノーミスを出せたわけではない。その陰には、ミス爆死したトライアルや、大硬直して絶望した挙句Escを叩いたトライアルが、monkeytypeでcsv出力できただけで281回もある(1日あたり約6.69回)。図3の青い点はノーミス、赤い点はミス爆死やEscを含むトライアルを示す。最初の数秒でEscを叩いて無効になった(記録されなかった)トライアルも含めれば、さらに大量にあると思う。

【図3: monkeytypeのヘブライ語の練習回数と速度の成長(ミス爆死等を含む)】

表6に時系列の主な更新履歴を示す。1日あたりの練習回数(即ちノーミス達成回数)は、速度が向上するに伴いむしろ減少した。100wpmを意識してびびりまくり、終盤にミス爆死するケースが激増したためだ。とはいえ、比較的順調に100wpmに到達したと言えるだろう。8/6に91.58wpmを出した後と、8/14に99.98wpmを出した後に、それぞれ3日ほど更新が止まった。この程度は伸び悩みのうちに入らない。

【表6: monkeytypeのヘブライ語の主な更新履歴】

日付回数速度(wpm)
7/8(Mon)121.20
7/8(Mon)532.80
7/11(Wed)3142.39
7/14(Sun)8950.79
7/19(Fri)14160.76
7/25(Thu)19371.18
7/27(Sat)21875.99
8/2(Fri)25381.59

日付回数速度(wpm)
8/3(Sat)26685.97
8/4(Sun)27688.79
8/6(Tue)29489.95
8/6(Tue)29591.58

日付回数速度(wpm)
8/10(Sat)31292.39
8/10(Sat)31794.77
8/11(Sun)32495.57
8/13(Tue)33696.78
8/14(Wed)34099.98
8/18(Sun)356101.59

※回数とは、そのトライアルまでの累計のノーミス達成回数。その日までの練習回数やノーミス達成回数とは必ずしも一致しない。


●monkeytypeのヘブライ語1kで100wpmを目指せ!(2024/8/19〜11/4)

通常版で100wpmを達成した直後に1kの練習を開始した。このため、1kでは最初から40wpm以上打つことができ、初日に50wpmに到達した。一方、通常版では単語慣れ(というよりも単語暗記)により攻略できた部分が多かった。このため、単語が増えると50wpm程度しか打てず、これが実力相応の結果だったという見方もできる。1kでは改めて単語慣れ(というよりも頻出文字/シーケンスへの慣れ)を進めるとともに、ヘブライ文字自体への慣れが不足していた部分を補うことにより、徐々に100wpmに近づいていった。

基本的には、通常版と同様のアプローチで臨んだ。しかしそれだけでは対応できないところも存在した。ここでは1kで新たに採用した、あるいは新たに判明した内容を記載する。

◆出現文字および単語の分析

練習初日に、通常版に出現しない
[ץ](ツァディー)が1kでは出現することに気付いた。配列に仕込んでいないため、まずはそこからだ。図形認識では[Y](ワイの大文字)だ。だが、Shiftを避けたいので[:→y]および[7]に仕込む。出現率は低いので、最上段に配置しても問題ないだろう。ちなみに、[ץ]は1kだけでなく5k,10kにも出現する。なお、デッドキー[:]を潰して配置する案も検討した。その時点で、デッドキーが必要な文字は出現していなかったためだ。だが、今度はTypeRacerで出現が予想される[']が1打鍵でなくなるため断念した。

1kには1000語が出現する。この1000語が通常版の198語とどの程度重複するのか調査した。結果は109語。即ち、朝鮮語/韓国語と違って、1kで通常版の成果を使って少しだけ楽をすることができる。とはいえ、残りの891語はゼロから暗記する必要がある。この時点で、1〜2カ月で100wpmに到達するのは難しいという見通しを立てた。

なお、出現単語も文字も通常版より多いため、調査に時間を要した。例えば、全1000語の意味(英語)の調査を完了したのは9/10だった。

◆1000語通し練習

1kでは単語の数が通常版と比較して約5倍になる。このため、約20分、初期段階ではそれ以上のまとまった時間が必要となった。従って、前半と後半に分けることで、練習の頻度を落とさないようにした。実際には前半も後半も平日には毎日打った。さらに進んで、「ランダムに並べて先頭の500語を打つ」等、工夫が必要だったかもしれない。

初回挑戦では前半に10分44秒、後半に13分59秒を要した。後半の方が難しい。長い単語が多いのに加えて、通常版と重複する単語が激減するためだ。当初は[ח][ת][מ][ה]の区別が難しく、ミスや硬直が目立った。まずはこれらの文字に慣れることで、タイムが目に見えて改善された。

前半に関しては、8/28に10分を、9/5に9分を、9/18に8分を切った。最終的に7分02秒まで詰めた。後半に関しては、9/5に10分を、9/24に9分を、10/29に8分を切った。最終的に7分53秒まで詰めた。前半と後半の合計タイムは、10/30に記録した14分55秒が最短だった。また、1語あたりでは前半が0.844秒、後半が0.946秒であり、前半は通常版(1語あたり約0.864秒)より速くなった。

ミスの原因の大半は誤読だ。特に[י]を[ו]と打つパターンが目立った。次に多いのが、[ך]を[ן]と打つパターンだ。[מדינת](州)と[מדינה](州)を互いに逆に打つミスも出た。これは誤読というよりも、両方の単語が出現するため混同するためだ。他のパターンは分散した。[ל]を[ק]と打つ、通常版に無いパターンも出た。

ある程度練習が進んでからもミスが目立ったのは、表7に示す3単語だ。ほぼ毎回引っ掛かったため、途中から方針を変更した。即ち、セルをピンク色に着色し、事前に確認するようにした。30秒練習と違って正確性100%を狙うテストではないため、正確な打鍵を継続することで、ミスの癖を減らすことを目指した。

【表7: ヘブライ語1kの厳重注意単語】

No.単語意味ミスの内容
328חיצוניים外部のהיצוניים
672מוסדות機関מסודות
855מאחר遅いמאחד

◆出現単語の暗記

当初は、1000語も暗記するのは非現実的と考えていた。従って、実質ランダム練習との死闘を覚悟していた。しかし、結局1000語の大半を暗記した。意味までは覚えきれなくても、単語の冒頭2文字と長さを見た瞬間に即入力できるようになった。また、主なミスの原因を把握し、事前に察知できるようになった。こうなるとランダム練習が単語練習に変わり、速度が明らかに増していく。

8/23、名詞の冒頭に[ה]を付けると、英語の[the]の意味になる単語が幾つかあることに気付いた。多くの場合、日本語では意味が変わらないのだが。Google翻訳で意味を調べるうちに、さらに幾つかの法則を見出した。特に、表8,9に示す通り、接頭辞と接尾辞を把握すれば暗記対象を絞り込めることが分かってきた。これにより、調査および暗記の工数が大幅に削減された。

接頭辞[ה]が付いて[the ...]の意味になる単語は1000語中183語あった。調査方法は、まず1文字目が[ה]となる単語を抽出し(この時点で239個)、次に意味が[the ]で始まる単語の数を調べるというものだ。このような方法を採用したのは、[הם](彼らは)のように、[ה]で始まっても[the ...]の意味にならない単語もあるためだ。なお、この方法だと[יום](日)→[היום](今日)のような例は見抜けない。個別に調査する必要がある。

【表8: 主な接頭辞とその意味】

接頭辞意味具体例
הtheזמן(時間/time)→הזמן(時間/the time)
בin/atאזור(地域/area)→באזור(地域で/in the area)
וandהוא(彼は/he)→והוא(そして彼は/and he)
מof/fromהן(彼らは/they)→מהן(彼らのうちの/of them)
לfor/toמקום(場所/place)→למקום(場所へ/to the place)

【表9: 主な接尾辞とその意味】

接尾辞意味具体例
ים(複数形)תהיל(詩篇/psalm)→תהילים(詩篇/psalms)
ות(複数形)נקודת(点/point)→נקודות(点/points)
ו/הhe/sheאותו(彼/him)、אותה(彼女/her)
ה/ת(同じ意味)מלחמה(戦争/war)、מלחמת(戦争/war)

◆30秒練習

単語数が通常版と比較して倍になるため、練習開始後10分では全単語をロードしきれない。限られた練習時間では、出現単語を思い出すだけで練習の前半が終わる。練習の後半には脳が疲弊していて30秒持たず、99%以上の確率でミス爆死だ。原因は脳の貧弱さにあるため、練習時間を増やせば良いわけでもないし、ゆっくり打っても正確性は上がらない。以上により、ロードが終わらない段階でもノーミスを維持すべく、特にタイピング画面2行目以降では減速が必要となった。

当初は実質ランダム練習に近いため、25分程度で脳がヒートアップして認識能力が極端に低下した。25分どころか20分弱で脳が麻痺し、凡ミスが増加して練習効率が極端に低下することもあった。特に終盤10秒は何も読めなくなり、本能で当てるしかなくなる。そうなる前に効果的な練習を積み重ねる必要がある。これは朝鮮語/韓国語でも発生した現象だ。

練習開始後早々にその日の自己ベストが出るケースが目立った。通常版は粘れば記録が出ることもあった一方で、1kではなかなかそうはならない。実質ランダム練習では脳疲労の蓄積が習熟効果を上回るためだ。脳が死んだ状態で無理に練習を続けるとミスの癖がつくので有害でさえある。実際、[י]と[ו]、[א]と[ל]、[ש]と[ע]を互いに逆に打つ癖がつき、100wpm到達時まで、さらに5k攻略開始後も苦しめられた。このように、ランダム練習には明確な限界がある。その先に進むには、単語を、最低でも頻出文字列を覚えないとどうにもならない。

100wpmを狙う段階では、1セット内のヘブライ語に割く時間を25分から30分、35分と増やすこともあった。但し脳が疲弊していない時に限る。

◆練習の質の低下

9月下旬、急激な気温の低下により、慢性的な風邪に悩まされた。無限に続く鼻水とくしゃみに加えて、ディスプレイを見る気力を失わせる微頭痛まで発生し、止むを得ず練習を中止した日もあった。中止とまでいかなくても、質や量に影響する日が続いた。

10/11より仕事が多忙になり、500語通し練習×2を実施する余裕がなくなる日が増えた。10/23以降はさらに状況が悪化し、平日には短縮メニュー(指慣らし→ヘブライ語1k)のみしか実施できなくなった。ヘブライ語1kへの影響は最小限に抑えたつもりだ。しかし、失敗の原因や対策、成長の方法を深く考察する時間を確保できなくなり、退化防止練習のみを惰性で継続した感は否めない。

それでも、この退化防止練習により徐々に成長していった。練習の質の低下を量で補った。ここで量とは、1日あたりの練習時間ではなく、数週間の練習の蓄積を指す。惰性の練習でもほぼ毎日継続することで徐々に脳と目が慣れ、単語の暗記が進んだと考えられる。

◆モチベーション維持策

3カ月近い長期戦になると、モチベーションの維持が欠かせない。記録だけにこだわると、特に終盤戦では長期にわたり更新できない時期が増えるためだ。そこで、表10に示す指標を設定した。ささやかな成功体験を積み重ねることで、成長の実感を味わうとともに、執念と怨念に変換した。

【表10: 成長の実感を味わうための指標の一覧】

指標具体例
〇〇wpm以上を通算△△回出す10/18、85wpm以上を通算50回
10/28、90wpm以上を通算20回
11/1、95wpm以上を通算5回
11/4、97wpm以上を通算3回
〇〇wpm以上を1セットに複数回出す 9/29、1セットに85wpm以上を2回
10/7、1セットに85wpm以上を3回
10/22、1セットに90wpm以上を2回
11/4、1セットに95wpm以上を2回
結果表示画面の「やや遅い単語」が100wpm突破9/28に達成
結果表示画面の「遅い単語」が100wpm突破11/1に達成
100wpmを維持できる時間を伸ばす10/27、16秒まで100wpm維持
10/31、20秒まで100wpm維持
11/3、27秒まで100wpm維持
Top10から〇〇wpm未満を駆逐する 10/7、85wpm未満を駆逐
10/25、90wpm未満を駆逐
11/4、94wpm未満を駆逐
Top100から〇〇wpm未満を駆逐する10/31、85wpm未満を駆逐
11/4、86wpm未満を駆逐
タイピング画面で3行打ち切る達成できず
結果表示画面で2行打ち切る達成できず
連続5単語以上で平均〇〇wpm以上の加速を決める
かつての苦手単語を加速単語に変える

◆ヘブライ語1kで100wpm達成

11/4の日記から抜粋する(一部改変)。第二セットで20分粘って結果を出した。

ヘブライ語1k、100.79wpm(100%)! 100wpm突破!!!!!

画像はこちら。昨日の記録を2.80wpm更新し、練習開始後78日目にして100wpmを突破した。タイピング画面で3行打ち切り(結果表示画面では約2行打ち切り)を目標に、終盤も加速し続けた。3行打ち切りには1語届かなかったが、無駄な緊張から解放されたのが大きかった!

最遅単語群は[<100]。19秒まで98wpmと伸び悩んだ。そこから加速し、23秒時点で101wpmまで上げた。26秒時点で99wpmと一旦緩むも、最後再び加速した。序盤[ההגנה אז]で106wpm, 93wpm, [השעה]で101wpm, [המועצות]で90wpm, [אף יצא איש]で100wpm, 85wpm, 106wpm, [ערך (改行)]で85wpm、中盤[הסרט]で80wpm, [במידה]で107wpm、終盤[אוכל (改行)]で100wpm, [הדין שלך]で95wpm, 101wpm, [גבי]で113wpm、最後[באמת]で85wpmと失速するも、執念で叩き込んだ。あと1語、[נהגה]を打てば3行目打ち切りだった。

一方、開幕[ברחוב יחד אותי]で183wpm, 121wpm, 124wpm, [הדין ואני שנים]で121wpm, 137wpm, 135wpm、中盤[(改行)חוסר דיוויזיות ועד יודע מתחת]で平均134wpm、1語置いて[נגד מספר אכן לראות]で120wpm, 144wpm, 118wpm, 137wpm、1語置いて[גדולים חיצוניים גדול חיל]で161wpm, 116wpm, 178wpm, 133wpm、終盤[באמצעות מסוימים האחרים ברוב סביב פעולות]で平均143wpmと加速を決めた。

◆練習結果

2024年8〜11月にmonkeytypeを用いて練習した結果を図4に示す。78日(実質74日)、407回目の練習で100wpmを突破した。期間中、打たなかったのは9/15, 24, 27, 30の四日である。即ち、1日あたり5.50回ノーミスを出した。グラフはそこそこ綺麗な成長曲線を描いた。

100wpm到達前に85wpm以上(ノーミス。以下同様)は122回、90wpm以上は46回、95wpm以上は8回出した。通常版より苦戦したものの、最後は外れ値を出して一気に100wpmを突破するという運に恵まれた。その分、5k以降に苦労が持ち越されるかもしれない。

【図4: monkeytypeのヘブライ語1kの練習回数と速度の成長】

常にノーミスを出せたわけではない。その陰には、ミス爆死したトライアルや、大硬直して絶望した挙句Escを叩いたトライアルが、monkeytypeでcsv出力できただけで473回もある(1日あたり約6.39回)。図5の青い点はノーミス、赤い点はミス爆死やEscを含むトライアルを示す。最初の数秒でEscを叩いて無効になった(記録されなかった)トライアルも含めれば、さらに大量にあると思う。

【図5: monkeytypeのヘブライ語1kの練習回数と速度の成長(ミス爆死等を含む)】

表11に時系列の主な更新履歴を示す。1日あたりの練習回数(というよりもノーミス達成数)は、速度が向上するに伴いむしろ減少した。100wpmを意識してびびりまくり、終盤にミス爆死するケースが激増したためだ。

【表11: monkeytype 1kの主な更新履歴】

日付回数速度(wpm)
8/19(Mon)254.79
8/21(Wed)1460.39
8/31(Sat)8570.36
9/3(Tue)11775.99
9/7(Sat)14177.58
9/9(Mon)15079.57
9/17(Tue)19982.39

日付回数速度(wpm)
9/19(Thu)20683.17
9/23(Mon)23183.18
9/26(Thu)23585.97
9/29(Sun)25386.77
9/29(Sun)25586.78
10/3(Thu)26189.16
10/13(Sun)30791.19

日付回数速度(wpm)
10/14(Mon)31294.39
10/26(Sat)36595.17
10/27(Sun)37195.19
10/30(Wed)38395.96
11/1(Fri)39197.17
11/3(Sun)40097.99
11/4(Mon)407100.79


●monkeytypeのヘブライ語5kで100wpmを目指せ!(2024/11/5〜12/XX)

【表15: monkeytype 5kの主な更新履歴】

日付回数速度(wpm)
11/5(Tue)275.59
11/8(Fri)1479.98
11/15(Fri)5280.00
11/17(Sun)6581.18
11/17(Sun)6683.20
11/29(Fri)13984.35
12/1(Sun)15186.38
12/9(Mon)18989.99


●参考文献

ヘブライ語 (Wikipedia)
ヘブライ文字 (Wikipedia)
→ヘブライ語およびヘブライ文字に関する一般的な知識を得るため、最初に参照しました。

Unicode and HTML for the Hebrew alphabet (Wikipedia)
→ヘブライ文字のHTML表記を調査する際に参照しました。

Home - instant tools
→出現文字別の分類と集計に文字出現頻度分析ツールを使用しました。このツールは、ヘブライ語のみならず多言語の解析に、以前から大変役立っています。


●各種資料

monkeytype:出現文字・単語の分析資料
 →monkeytypeのhebrew, hebrew 1k, hebrew 5k, hebrew 10kに出現する単語の各種情報を調査・分析した資料。(2024/12/15現在、5k以降は未完)

monkeytype:練習実績とグラフ
 →monkeytypeのhebrew, hebrew 1kの練習実績を集計し、グラフを描画した資料。


●おまけ1:Interstenoにヘブライ語が採用されるには?

大前提として、ヘブライ語を母国語とする人たちで構成される継続的な組織が必要だ。なぜなら、オンライン大会のみを考慮した場合でも、毎年の本番用文章や、TakiやZAV向けの練習用文章を提供する必要があるからだ。課題文章は日本語の文章を参照すれば分かる通り、政治的・宗教的に中立で、著作権の問題が無く、それなりの語彙を含むある程度知的な内容で、かつ指定された量(10分間練習は約1万字、1分間練習は約1000字)を満たす必要がある。また練習/本番ソフトへの反映に際しては、特殊文字の取り扱い(どんな文字があるか、どの文字を何点にするか)を決定する必要がある。

その上で、Interstenoの組織への働きかけが必要だ。参考までに、2022〜2023年に日本語の係数を2.2607から2.95に変更する際に要した手続きの概要を記載する。ヘブライ語やその他の言語を新規に採用する際にも、以下に類する手続きが必要になると考えられる。

・日本側の組織(Intersteno Japan。全日本タイピスト連合とは別組織)からの提案
・Intersteno側のScience Committeeでの説明と承認
・Intersteno側のBoardでの説明と承認
・Intersteno側の各種作業(練習/本番ソフトへの反映、公式サイト等での周知)

この係数に関しても考慮が必要だ。1文字打つのに必要な打鍵数は概ね判明しているため、それがベースになるだろうか。

以上、ヘブライ語をほんの少しかじりかけた程度の外国人が代行するのは無理がある。まずはイスラエル人の協力者を見出すことから始める必要がある。


●おまけ2:過去のタイパー Advent Calendar向け記事へのリンク

筆者が執筆した文章が数年分蓄積してきたため、備忘録を兼ねて以下にまとめておく。その後の状況も記載する。

多言語タイピングにおける朝鮮語/韓国語の強化(2023.12.17)
→朝鮮語/韓国語の強化は、最難関種目である5kでの100wpm達成、およびTypeRacerでの100wpm(英語換算値)達成をもって一旦終了した。将来さらなる境地を目指す意思はある。また、Interstenoで採用されるなら本格的な練習を再開する。

多言語タイピングにおけるギリシャ語の強化(2022.12.18)
→ギリシャ語の強化は、最難関種目である25kでの100wpm達成をもって一旦終了した。将来TypeRacerでさらなる境地を目指す意思はある。また、Interstenoで採用されるなら本格的な練習を再開する。

多言語部門におけるロシア語の強化(2021.12.12)
→ロシア語の強化は継続している。但し2022〜2023年はmonkeytypeが中心だった。通常版や1kでは語彙が少なくIntersteno対策には力不足であるため、2022年には10kでの練習を中心とした。2023年にはさらに踏み込んで、25kや50kでの練習を採り入れた。375kでは語彙がマニアックすぎてランダム練習に近くなり、かえって対策にならないと判断した。2024年には、TypeRacerやTakiを用いて文章を打つ訓練に戻り、継続している。

老化とタイピング(2020.12.6)
→老化は恐ろしいことに着々と進行している。特に平日の在宅勤務終了後には、眠すぎてタイピングをやる気にすらなれない日が多くなった。しかし特にスピード練習は継続的に実施しないと速度がどんどん衰えていく。Interstenoで言えば英語や日本語(QWERTY)等、速度を要求される言語を打つ練習を採用していく。

更新したければ走れ! 2019年版(2019.12.15)
更新したければ走れ!(2018.12.16)
→ランニングは継続している。2024年の年間走行距離は2023年に続いて1000kmを超えそうだ。但し速度は明らかに低下した。2020年4月の在宅勤務開始に伴い、日々の通勤の高速ウォーキングが丸々なくなったのが地味に響いている。また、老化に伴い、スピード練習をやらないとすぐに落ちるし、そもそもスピード練習の負荷に耐えるのが困難になりつつある。
→タイプウェル国語Rは2022年1月30日、タイプウェル英単語は2019年3月3日を最後に打っていない。約30秒で800文字/分(160wpm)かそれ以上を目指す(≒800文字/分を約30秒維持する)打鍵は、monkeytypeの高速言語の攻略とある意味似ている。スピード練習として効果的であることは間違いないため、いずれ再開する予定はある。


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