※本稿は、たのんさんの主催するタイパー Advent Calendar 2019に登録しています。
※昨日の記事は、tamamixnさんの株式会社ただ打つだけの人です。
※明日の記事はありません。明後日の記事は、白狐(びゃっこ)さんのタイピングゲームの実装の話です。
筆者は2015年8月からランニングを再開し、2019年12月現在に至るまで継続している。フルマラソンではまだまだ初心者の域を出ない(完歩はできたが完走はできていない)一方で、ハーフマラソンでは95分を切り、次の目標である90分切りを目指している。
ランニングを継続する一つの重要な理由は、タイピングに好影響を及ぼすことである。実際、Interstenoオンライン大会では2017年、2018年、2019年と三連覇した。TWオリジナルやTW英単語、TW国語Rでも更新を継続している。
2019年にはまずTW英単語に取り組み、拡張Q-Z以外の3モードの記録を更新した。特に基本はZHに到達し、総合ポイントは1144871→1147176と伸びた。CPM(1分間あたりの打鍵数)に換算すると773.5→785.2であり、約1.5%伸びた。
Intersteno2019で三連覇を達成後、TW国語Rに取り組み、各モードの記録を12年ぶりに更新した。特に基本はZJに到達し、総合ポイントは1121719→1126339と伸びた。CPMに換算すると758.3→778.2であり、約2.6%伸びた。また、ミス1%制限下でも総合レベルXXを達成している。来るべきIntersteno2020に向けて、充分な基礎力強化ができたと言って良いだろう。
本稿では、ランニングがタイピングの快進撃の要因の一つであることを示し、今後のタイパーランニング部の隆盛に向けた足掛かりとする。
モード | 更新回数 | 走った | 走らず | 実施率 |
---|---|---|---|---|
基本常用語 | 6 | 3 | 3 | 50.0% |
カタカナ語 | 6 | 5 | 1 | 83.3% |
漢字 | 5 | 2 | 3 | 40.0% |
慣用句・ことわざ | 2 | 1 | 1 | 50.0% |
合計 | 19 | 11 | 8 | 57.9% |
結果は驚くべきものだった。全体の半分以上の日にランニングを実施していた。特にカタカナ語では、大半の更新日にランニングを実施していたのだ。一方、漢字では走らない日の方が多かった。
筆者は原則として週3日走っている。但し天候や体調が悪い時には走らない。また、10月以降はしつこすぎる気管支炎に悩まされて走れない期間があった。結果的に、5月5日〜12月1日の期間では211日中78日走った。つまり、ある日にランニングを実施する確率は約37.0%であった。TW国語Rの記録更新時のランニング実施率は、全4モードともこの数字を上回っている。
……
このデータだけでは標本数が少ないという批判は当然あるだろう。標本数が少ない原因は、筆者にとってTW国語Rの記録が一定水準を超えており、容易には更新できないことだ。
では、更新日に限らず、期間中の各日のベスト記録の平均を題材にしてみるとどうか。
TW国語RでF7押下時に表示される練習実績には、各日の各モードのベスト記録が記載されている。上記期間中には合計90日分、延べ360モード分のデータが格納されている。これをExcelに転記し、走った日と走らなかった日の各モードの最高記録の平均を求める。結果を表2に示す。なお、[JR全履歴]フォルダ内のファイルから機械的に処理しても良い。だが、アルゴリズムを考えてマクロを組むよりも手入力+AVERAGEIFの方が速かった。
モード | 走った | 走らず | 差 |
---|---|---|---|
基本常用語 | 32.021秒 | 32.397秒 | 0.376秒 |
カタカナ語 | 33.383秒 | 33.528秒 | 0.145秒 |
漢字 | 32.222秒 | 32.332秒 | 0.110秒 |
慣用句・ことわざ | 33.665秒 | 33.832秒 | 0.167秒 |
何と、全モードでランニング実施後の方が平均タイムが速いという結果が出た。しかも、平均して約0.2秒速くなる。総合ポイントにして1174点差! 昨年のTW英単語ほど顕著な差ではないものの、有意な差であると言って良いだろう。特に、主力となる基本常用語で最大の差がついている点が興味深い。
ちなみに筆者は、休日は朝、平日は帰宅後に走ることが多い。いずれの場合も、タイピングをやるのは走った後である。
……
最後に、12月1日時点の各モードのTOP15およびTOP99の記録数を比較してみる。TOP15はF5押下で表示される。TOP99はCtrl+F5でテキストファイルに出力される。結果は表3の通り。なお、TOP15に残っているのは慣用句3個を除いてすべて2019年7月以降に出した記録である。TOP99にも2016年以前の記録は1割未満しか残っていない。
モード | 走った | 走らず | 差 |
---|---|---|---|
基本常用語 | 10個/56個 | 5個/43個 | 5個/13個 |
カタカナ語 | 12個/64個 | 3個/35個 | 9個/29個 |
漢字 | 10個/73個 | 5個/26個 | 5個/47個 |
慣用句・ことわざ | 8個/63個 | 7個/36個 | 1個/27個 |
カタカナ語では、TOP15のうち8割以上が走った後に出した記録である。最も少ない慣用句・ことわざでも、TOP15のうち過半数が走った後の記録だ。TOP99を見ると、全モードで6割前後の記録を走った後に出している。記録を更新するにはTOP99、そしてTOP15に入る記録をどんどん出していく必要がある。そのためにも、ランニングは有力な解決策と言って良いだろう。
●背景
2019年6月1日、GANGASが約20年にわたる歴史に終止符を打った。ランキングの更新が停止され、サイト自体も2020年春には閉鎖されるとのこと。これを機に、タイプウェルをやり込む人が明らかに減った。しかし!
筆者にとっては、殿堂で最上位グループであるGroup ωに到達し、さらにたにごんを抜くという人生を賭けた目標がある。ここで挑戦をやめるなどという選択肢はあり得ない。GANGASの更新が停止されようが、サイトが閉鎖されようが、俺は俺の道を往き、目標を達成するのみ!
さて、上記の大目標を達成する近道としてまず考えられるのは、殿堂ポイント計算上で費用対効果が最も高いTWオリジナルで総合レベルZDに、あわよくばさらに上に到達することだ。だが、そのためには難易度の高い「小文字のみ」を最低2秒は更新する必要がある。もはや実力などとっくに超えた世界に足を踏み入れているため、何らかのブレイクスルーを見出さない限り、運に任せた絶望的な挑戦を数百回、数千回と繰り返すことになる。これではモチベーションが続かず、総合レベルZDの遥か手前で伸びが止まる可能性も充分に考えられる。また、他の種目や他のソフトへの波及効果も限定的だ。
そこで今回は、タイピング成長の王道であるベース速度の底上げを選択した。具体的には、TW英単語とTW国語Rで平均30秒切り、即ち800打/分を目指す。2018年5月〜2019年2月にはTW英単語で萌え萌え姫まよまよと競いながら総合レベルZI後半、平均785.2打/分まで伸ばした。TW国語Rでも同程度の速度までは伸びると思われる。それに、TW国語Rではまよまよに大きく遅れをとっている(12月8日現在、総合ポイント4539差。基本は1.726秒差)。そもそも2007年に総合レベルXXに到達して以来ほとんど打っていないため、更新の余地がある。加えて、ベース速度を底上げすれば、TW英単語やオリジナルに波及するのみならず、来たるべきIntersteno2020におけるSean、Andreaら世界の強豪たちとの死闘にも寄与することだろう。
……
2016年9月の第8回タイピングサミット終了後、Zタイパーへの道:番外編のZタイパーになれる人となれない人の違いで、筆者が国語Rで総合レベルZJに到達していない要因として以下二点を挙げた。
(1) 練習していない。量が不足。 (2) 打鍵速度の限界を突破していない。質が不足。 |
2019年の練習の結果、かつては不可能としか思えなかった基本常用語ZJに到達し、その後も総合レベルZJに向けて少しずつだが確実に歩みを進めている。その過程で練習の量と質をどの程度改善できたのか、振り返る。また、質の改善にランニングが有効であることを示す。
●TW国語R:練習の量の向上
【打ち切り回数】
2010年にTW国語Kで総合レベルZHを目指した時には、練習の質だけでなく量も必要だった。今回、TW国語Rで総合レベルZJを目指す際にも同じ感想を抱いている。実際、基本常用語でZJを出したのは、通算936回目の打ち切りだった。うち442回は、総合レベルXX到達後の数字である。表4に、他のモードも含めた練習回数を示す。
カテゴリ | 基本 | カタ | 漢字 | 慣用 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
Dvorak | 80 | 80 | 77 | 79 | 316 |
QWERTY(総合レベルXX到達まで) | 414 | 237 | 196 | 225 | 1072 |
QWERTY(総合レベルXX到達後) | 442 | 461 | 433 | 314 | 1650 |
合計 | 936 | 778 | 706 | 618 | 3038 |
なお、筆者の練習回数が他の多くのタイパー/タイピストと比較してまだまだ少ないのは、Escを多用するためだ。失敗トライアルを40秒かけて毎回打ち切れば、練習回数は現状の10倍以上になると見込まれる。だが、そのようにして練習回数を水増しする意味を感じない。
日付 | 2007.9.23 | 2019.12.1 |
---|---|---|
1位のタイム | 30.593秒 | 30.060秒 |
15位のタイム | 31.674秒 | 30.593秒 |
99位のタイム | 33.485秒 | 31.670秒 |
XX(30〜31秒台)の数 | 25個 | 129個 |
30秒台の数 | 2個 | 40個 |
●TW国語R:練習の質の向上
【認識の遅れが最大のボトルネック、但し改善は困難】
TW国語RでZJに到達するには、平均800打/分を30秒間持続する必要がある。TW英単語の基本英単語1500では既にZHを出しており、817.7打/分に達している。従って、TW国語Rでも同等の速度に到達できる見通しがあった。他のソフトでは、Weather TypingのQWERTYでLevel8.2まで伸ばしており、846打/分に到達している。確かに溜め打ちを駆使した結果であり、30秒間持続できるわけではない。だが、平均800打/分を目標とする時にそれを上回るトップスピードを確保する必要はある。
2007年当時の筆者の基本常用語の速度は758.3打/分であり、800には遠く届いていなかった。ボトルネックを分析した結果、認識の遅れが最大の要因と考えられた。硬直やミスが出るのも、多くは認識が間に合わないためだ。実際、わずか4種類のワードから構成されており、認識がほぼ不要な(そして改行後の予測も可能な)たじさくそうまごウェルではZIに到達し、913.3打/分まで出ている。一方、TW国語Rでは「まともに読めればZJは出そうなのに、読めないからロスが蓄積してXX以下に留まる」という事態に陥る。
では、TW国語Rで認識を改善するにはどうするか。最も単純かつ効果的な方法は、「文字・画面サイズ設定」を最大にすることだ。これは2015年にTWオリジナルで総合レベルZGに到達した時点で気付いており、その後のTW英単語、国語Rの練習にももちろん採用した。ところが、次に問題点として浮上してきたのは動体視力の弱さだった。筆者は動体視力がタイパー/タイピストの中でも弱い。このため、特に改行時にはロスが大きい。「流れる文字」も認識が追いつかないため読めない。そして動体視力の改善は一朝一夕には困難だ。少なくとも、TW国語Rの認識の改善につながる効果的な練習方法を見出すことはできなかった。
ちなみに、一般に動体視力が必要となる(と誤解されている)TODを筆者が打てるのは、ほぼすべてのシーンでワードの出現位置やタイミングを体で覚えているためだ。筆者にとってTODのワードはすべて静止しているに等しい。仮に打鍵が遅れるなどしてワードが動いた場合でも、TODワードが脳と指に染み込んでいるため、打ち損なうことはほぼ無い。TW国語Rでもやり込み度を上げていくとこの域に到達できるのかもしれない。
第二段階の具体的な実行方法として、TW国語Rのローマ字設定を「フ/ン=fu/xn」に変更した。漢字ではローマ字を読んでいるため、強制的に[fu/xn]に慣れることができる。ある程度習熟したら他の3モードにも少しずつ適用していく。例えば、基本常用語の「こんにちは」「筋肉」「女」等には[xn]を適用しやすい。カタカナ語の「フリーマーケット」「フリーハンド」「フリーズ」等には[fu]を適用しやすい。
一方、「カ/ク/コ=ca/cu/co」は個別に設定できない。このため、「カ」を含むワード、例えば「柏崎」が[casiwazaki]と表示され、左殺しが凶悪化するというデメリットがある。このため、ローマ字設定は[ka/ku/ko]のままにしておき、[kou]を見たら[cou]と打つという訓練をした。また、日本語を読んでいる他3モードについては、特に先頭が「ク/コ」となる場合に[cu/co]と打つよう訓練した(「心」「クーポン」等)。これにより、右殺しのワードの負荷が分散され、力尽きてEscすることが少なくなったし、右腕がパンプアップするまでの時間も長くなった。その代わり、c打ちの際に脳を使う(無意識に打てる域には達していない)し、そもそもホームポジションで[e]の位置にある左手中指を無理矢理[c]に持っていくため、ワード冒頭で0.1〜0.2秒硬直する。これについてはまだまだ慣れが必要だ。
また、[-]を中指から薬指に矯正することにより、特にカタカナ語の[i-/u-]が段違いに楽になった。[o-]はまだ試行錯誤の余地がある。
休日の練習は1セット概ね1時間で、間に休憩を挟みつつ2〜3セット実施する。第一セットは(特に土曜日は)指慣らし、第三セットは(特に日曜日は)クールダウンを兼ねる。つまり第二セットが本命だ。事前に家事(水仕事を除く)やシャワー、風呂で体を温めておく。各セットの内容は、基本的に「指慣らし→基本→カタカナ語→漢字→慣用句」だ。指慣らしの目的は、ランニングにおけるウォーミングアップと同様、指を温めつつ、高速打鍵に向けた準備をすることだ。例えば、RTCの全ワード(但しJISかな)を正確性95%目標で打つ。いきなり基本常用語を全力で打っても指が思い通りに動かず詰まることが多いし、下手すれば怪我につながって長期間打てなくなる。また、更新できそうなモードを重点的に打つ一方、他のモードは手を抜く。例えば慣用句を重視する場合、カタカナ語や漢字の打ち切りにはこだわらず、不調と見切ったらさっさと次のモードに移る。こうして、慣用句打鍵時に脳の疲労や腕のパンプアップを回避し、ピークを持っていく。
・TW国語Rで総合レベルZJに到達するには、練習の質だけでなく量も必要。 ・もちろん練習の質も必要。 ・ランニングはTW国語Rの練習の質の改善に効果的。 |
最後に、改めて強調しておこう。
具体的なイメージは、基本を2.5秒詰めるのではなく、全4モードを1秒ずつ詰めることだ。即ち、基本28秒台、漢字ZJ(29秒台)、カタカナ語・慣用句30秒台が目標となる。もちろん、いずれかのモードで爆運が到来して2秒更新できれば、他のモードへの負担が軽減される。とはいえ、このような爆運はそう簡単に到来するものではない。従って、基本的なアプローチは変わらない。即ち、最適化への習熟を進めつつ、TOP15やTOP99を地道に煮詰めていく。特にTOP15を0.5秒圏内に詰めると100%更新に結びつく。この目安は、国語Kやオリジナル、英単語でより高いレベルを目指す時にも機能した。このようにして小刻みに更新を繰り返せば、いずれ1秒詰めることは充分に可能と考えている。また、例えば漢字でZJを目指すなら、TOP15をすべて30.5秒以内にするのが目安という考え方もできる。
総合レベルZJ到達以降は、カタカナ語と慣用句も含めた全モードZJが目標となる。オリジナル、国語K、英単語では全モードZJを達成済みであり、後は国語Rを残すだけだ。これを達成するには、総合レベルZJ中盤程度の実力が必要と考えている。並行して、英単語の総合レベルZHとオリジナルの総合レベルZDも老化が本格的に進行する前に達成したい。その過程で、TWの最終目標である殿堂Group ω、そして殿堂でのたにごん抜きが少しずつ見えてくるだろう。何年先になるかまだ分からないが。