更新したければ走れ!

2018.12.16(Sun)
文責:dqmaniac

※本稿は、たのんさんの主催するタイパー Advent Calendar 2018に登録しています。
※昨日の記事は、たのんさんのタイピング力が向上する音ゲーについて考えてみた!です。
※明日の記事は、w_hさんのAtoZタイピングの布教です。



はじめに
裏付けデータ
定性的な話
ランニングのメリット
結論
おまけ1:走り始めたきっかけ
おまけ2:ランニング以外の要因


●はじめに

筆者は2015年8月から
ランニングを再開し、2018年12月現在に至るまで継続している。フルマラソンではまだまだ初心者の域を出ない(完歩はできたが完走はできていない)一方で、ハーフマラソンでは100分を切り、次の目標である95分切りを目指している。

ランニングを継続する一つの重要な理由は、タイピングに好影響を及ぼすことである。実際、Interstenoオンライン大会では2017年2018年と連続で世界第一位を獲得した。TWオリジナルTW英単語でも更新を継続している。

2018年にはTW英単語に取り組み、各モードの記録を11年ぶりに更新した。総合ポイントは1137230→1144221と伸びて総合ZIに到達した。CPM(1分間あたりの打鍵数)に換算すると737.2→770.3であり、約4.5%伸びた。また、ノーミス制限下でも総合ZIを達成している。来るべきIntersteno2019に向けて、充分な基礎力強化ができたと言って良いだろう。

本稿では、ランニングがタイピングの快進撃の要因の一つであることを示し、今後のタイパーランニング部の隆盛に向けた足掛かりとする。


●裏付けデータ

まず、TW英単語に取り組んだ5月7日〜12月2日の期間で、何らかのモードで新記録を出した日にランニングを実施していたか確認した。結果を表1に示す。なお、12月3日以降もTW英単語・ランニングとも継続しているが、データに含めていない。これは、本稿の執筆開始に伴い打鍵にバイアスがかかると判断したためだ。例えば、以下のデータをよりもっともらしくするため、走った日には全力で更新を狙おう! などと考え始めると、データの信憑性に疑義が発生する。

【表1:TW英単語の記録更新とランニング実施の関係】

モード更新回数走った走らず実施率
基本150073442.9%
拡張A-F85362.5%
拡張G-P72528.6%
拡張Q-Z440100.0%
合計26141253.8%

結果は驚くべきものだった。特に拡張A-F、Q-Zという左手殺しの種目では、大半の更新日にランニングを実施していたのだ。一方、基本とG-Pでは走らない日の方が多かった。とはいえ、これらのモードを合わせても、全体の半分以上の日にランニングを実施していた

筆者は原則として週3日走っている。但し天候や体調が悪い時には走らない。また、5月には股関節や右アキレス腱を痛めていて走れない期間があった。結果的に、5/7-12/2の期間では210日中78日走った。つまり、ある日にランニングを実施する確率は約37.1%であった。TW英単語の記録更新時のランニング実施率は、拡張G-Pを除く3モードにおいてこの数字を上回っている。

……

このデータだけでは標本数が少ないという批判は当然あるだろう。標本数が少ない原因は、筆者にとってTW英単語の記録が一定水準を超えており、容易には更新できないことだ。

では、更新日に限らず、期間中の各日のベスト記録の平均を題材にしてみるとどうか。

TW英単語でF7押下時に表示される練習実績には、各日の各モードのベスト記録が記載されている。上記期間中には合計124日分、延べ448モード分のデータが格納されている。これをExcelに転記し、走った日と走らなかった日の各モードの最高記録の平均を求める。結果を表2に示す。なお、[EW全履歴]フォルダ内のファイルから機械的に処理しても良い。だが、アルゴリズムを考えてマクロを組むよりも手入力+AVERAGEIFの方が速かった。

【表2:TW英単語の各日の最高記録の平均とランニング実施の関係】

モード走った走らず
基本150032.220秒32.690秒0.470秒
拡張A-F34.287秒34.936秒0.649秒
拡張G-P32.713秒33.250秒0.537秒
拡張Q-Z33.743秒34.277秒0.534秒

何と、全モードでランニング実施後の方が平均タイムが速いという結果が出た。しかも、平均して0.5秒以上も速くなる。総合ポイントにして2660点差! ここまで差がつけば、ランニングの効果は明らかだ。

ちなみに筆者は、休日は朝、平日は帰宅後に走ることが多い。いずれの場合も、タイピングをやるのは走った後である。

……

最後に、12月2日時点の各モードのTOP15およびTOP99の記録数を比較してみる。TOP15はF5押下で表示される。TOP99はCtrl+F5でテキストファイルに出力される。結果は表3の通り。なお、TOP15に残っているのはすべて2018年6月以降に出した記録である。TOP99にも昔の記録はほとんど残っていない

【表3:TW英単語のTOP15/TOP99の記録数とランニング実施の関係】

モード走った走らず
基本150013個/70個2個/29個11個/41個
拡張A-F12個/66個3個/33個9個/33個
拡張G-P10個/67個5個/32個5個/35個
拡張Q-Z8個/71個7個/28個1個/43個

基本と拡張A-Fでは、TOP15のうち8割以上が走った後に出した記録である。最も少ない拡張Q-Zでも、TOP15のうち過半数が走った後の記録だ。TOP99を見ると、全モードで7割前後の記録を走った後に出している。記録を更新するにはTOP99、そしてTOP15に入る記録をどんどん出していく必要がある。そのためにも、ランニングは有力な解決策と言って良いだろう。


●定性的な話

以上は定量的な話。では定性的に見るとどうなるか。

そもそも平日帰宅後は走らないと眠くてタイピングができない。特に9月の異動で業務内容が激変し、かつ通勤時間が倍になってからは、この傾向が顕著に現れた。平日のうち走らない日には、帰宅後にシャワーを浴び夜食を平らげた時点で猛烈に眠くなる。ガキの相手をした後でPC作業を多少こなすと、20時台に力尽きて意識を失うこともしばしばである。こうなるともはやタイピングどころではない。コーヒーを摂取すれば多少は改善されるが、タイミングを誤ると逆に眠れなくなって翌日に響く。

走る日には、これらの状況が一変する。特にポイント練習(インターバルやビルドアップ等、強度の高い練習)を実施する場合、睡眠率は顕著に低下する。軽めのジョギングに留める日であっても、帰宅後にタイピングをやる気力が復活するのが実に大きい。加えて、肉体的には心地良い疲労が来るため、コーヒーを摂取しても睡眠に悪影響を及ぼすことはまず無い。つまり、夜食後、タイピング前にコーヒーを摂取することで、タイピング時の睡眠率がさらに下がる。

では休日はどうか。朝ランを実施すると脳も肉体も完全に覚醒するため、夕方まではタイピングの調子も良い。但し夕食後、20時を過ぎるとどうしても眠くなる。朝ランを実施するからには平日と同様5時台に起床するため、15時間も経過すれば眠くなるのは当たり前だ。このため、タイピングは可能な限り夕方までに実施する。22:00に始まるたのんさん主催のTypeRacer多言語対戦会の前に仮眠を取る(そして20:30に始まるまよまよ主催の英語対戦会に参加できない)のはこのためだ。なお、朝起きられなかった場合や天候が悪かった場合は、昼食前に走ることもある。

体調不良や疲労が原因で走れなかった場合は、タイピングの調子も悪い。このような時に無理矢理打っても結果が出ずブチ切れるだけなので、潔く休養した方が良い。


●ランニングのメリット

・簡単に始められる

最低限必要なのは、ランニングシューズだけだ。他に必要と感じる物があれば、少しずつ揃えていけば良い。
登山と違って登山口まで移動する必要も無いし、ジム通いと違って契約や入会金、利用料が必要なわけでもない。リレーマラソンや駅伝に参加するのでもない限り、仲間を集める必要も無い。外に一歩踏み出せば、後は何も考えずただ走るだけだ。

時間的負担も少ない。筆者は週3回、約7kmを30分程度で走る。準備運動や整理運動を含めても約1時間である。余談だが、筆者はタイピングも1セット1時間前後で実施する。これ以上打ち続けると疲労のため効率が悪くなる。つまり、時間と練習効率の両面で、走るのも打つのも大して変わらない感覚だ。

※例外として、運動不足な人、メタボの人はいきなり走ると膝や腰を痛めるリスクがあるため、ウォーキング→ジョギング→ランニング、のステップを踏んだ方が良いらしい。

・体が温まる/体調が良くなる

晩秋から早春にかけて、寒い日が続く。指というよりも全身が冷えきっていて、タイピングをやる気にもならない季節である。だが、30分も外を走ってくると体が芯から温まる。真冬でもランニングタイツ上下+手袋があれば怖くない。寒いと感じるのは最初の5分だけだ。走り終えてからシャワーを浴び(たまには湯船に浸かり)、飯を喰えば、指は既に臨戦態勢にある

さらに、体調も格段に改善される。飯がうまい。胃腸の調子も良い。メタボとも無縁だ。特に飯に関してはマジで、何を喰ってもうまくなることを保証する。肉体年齢が10歳は若くなり、人生が10倍楽しくなる。タイピングに関しても、引きこもって打ちまくるよりも、ランニングと組み合わせた方が、結果的にパフォーマンスが上がる。

・脳の疲労が取れる

何も考えず無心に走っていると、現代社会に蔓延するクソのようなストレスも、タイピングの記録をなかなか更新できないイライラも、スーッと抜けていく。ランニングのレベル(距離、速度)が現状よりさらに上がると、少しずつ脳を使うようになっていくのだろう。だが、7kmを30分で走る程度なら、何も考える必要は無い。その結果、走り終えると脳の疲労が激減している。

速く走れば、可能な限り速くゴールすること以外に何も考えなくなるから、ストレッサー(仕事、家事、育児、……)から強制的に離れることができる。逆に、ゆっくり走れば新たなアイデアが出てくることもある。実際、ギリシャ語の配列の改善案が朝ラン中に浮かんだこともある。

タイピングは少なくとも筆者にとっては脳を酷使する競技であるため、脳の疲労を取り除いておくと調子が良くなる。具体的には、改行を含む先読みの能力が明らかに改善される。単語を読み間違うリスクや指が勝手にミスするリスクも激減する。


●結論

ポイントは以下3点だ。

・走ればタイピングの記録も伸びる。
・平日帰宅後に走ればタイピングをやる気力が復活する。
・ランニングは簡単に始められるし、心身の健康にも良い。

最後に、改めて強調しておこう。

更 新 し た け れ ば 走 れ !


●おまけ1:走り始めたきっかけ

中学生の頃、学校行事としてマラソン大会が年1回開催されていた。大会で走る距離は3km程度だった。小学生の頃に走った約1.5kmでも死ぬほどキツかったため、この3kmという距離は恐怖以外の何物でもなかった。もちろん学校でも事前に練習を実施する(朝の10分間走とか体育の時間の1500m走とか)。だが、これだけではヤバイと本能的に感じた。そこで、中2の秋頃から大会が近づくと自主練習をするようになった。自宅周辺に約2.6kmのコースを設定し、ほぼ毎朝走り込んだ。なお、当時は
キョリ測のような便利なサイトが無かった(というよりもインターネット自体が身近に無かった)ため、距離は把握していなかった。自宅周辺を12分ほど走って満足していた。当時のコースが2.6kmだったのを知ったのはつい先日である。

高1で何を血迷ったか陸上部に入部するも、周囲とのレベルの違いに愕然とした。そして6月末の蒸し暑い日に10km走をしている途中に熱中症でぶっ倒れて救急搬送され、以後は幽霊部員に。学校行事のマラソン大会(14km)の準備期間にのみ自主練習を実施した。高3のマラソン大会終了後、20年以上にわたりランニングから離れることとなった。

2015年7月のInterstenoオフライン大会@Budapestで登山靴を装備したまま約5km走った時に、忘れていた感触を久々に思い出した。また、一生に一度はフルマラソンを走ろうと思い立ち、かつぽかたんの勧誘によりシンガポールマラソンを走ることにした。42.195kmという距離に恐怖を覚え、練習を再開したのは昔と同じだ。短距離走の延長のようながむしゃらな走りはもはやできないし、そもそも10km以上走る時にそのような走り方をすべきではない。このため、長い距離を怪我せず安定して走るべく練習を積み重ねている。


●おまけ2:ランニング以外の要因

paraphrohnさんが
タイピング中級者の陥りやすい交互打鍵という「罠」で触れていた通り、データは「自分の思惑通りに収集」できるし、「いくらでも自分の主張を補強」できる。今回の例では「ランニングがタイピングに好影響を及ぼす」という主張を補強するためのデータを選択した。一方、逆のデータを集めて逆の主張をすることも恐らく可能である。例えば、厳しいトレーニングを積んでいるガチランナーにとっては、走った日には疲れきっていてタイピングどころではないかもしれない。

一方、筆者のTW英単語の更新にはランニング以外の要因も絡んでいるし、むしろそちらの方が大きな影響を及ぼしているかもしれない。キーワードだけ挙げておこう。

・「走れば速く打てる」というプラシーボ効果
・休日効果。休日によく走りよく打つのは当然
・コーヒーによる覚醒効果
・良きライバルまよまよとの競争
・Intersteno用英語配列の使用による[']の1打鍵化


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