Intersteno2023オンライン大会:レポート(2023.3.27-4.28)



Interstenoとは
筆者の結果
プロローグ
戦略
戦術
各言語の対策(主要なもののみ)
感想(というよりも反省)
来年に向けて
参考文献・謝辞
各種資料


●Interstenoとは

Intersteno(国際情報処理連盟)とは、1887年に設立された、速記者やタイピストを中心とする団体である。オフラインの速記およびタイピングの大会を2年に1回(2007年以降)、オンラインのタイピング大会を1年に1回(2003年以降)実施している。以下の記述は、2023年3〜4月に開催されたオンライン大会に関するものである。

公式ランキングはこちら

日本人ランキングはこちら

オンライン大会には、最大17言語で参加可能である。練習サイトであるTakiソフトウェアの順番に並べると、イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、トルコ語、ポルトガル語、ルーマニア語、日本語、フィンランド語、チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語、ポーランド語、クロアチア語/セルビア語である。

各言語で初見の課題を10分間打ち、「総打鍵数−ミス数×50」を得点とする。この得点の合計値で競う。従って、速度を上げることも重要だが、それ以上に正確性を上げることが非常に重要である。但し、毎日パソコン入力コンクール(以下「毎パソ」)とはミスの定義が違う。例えば、1単語内の入れ替えミス(例:that→taht)や、1行すっ飛ばしは、1ミスとカウントされる


●筆者の結果

【表1:本番の結果】

言語得点速度(文字/分)ミス数順位参加者数
フランス語5878(+275)597.8(+32.5)2(+1)2(+1)131(-22)
英語5830(+33)583.0(-6.7)0(-2)3(+1)375(+37)
イタリア語5783(+111)578.3(+6.1)0(-1)5(-1)199(-6)
スペイン語5638(+273)568.8(+32.3)1(+1)2(+2)169(+16)
オランダ語5558(+471)555.8(+17.1)0(-6)2(+4)200(+7)
日本語5548(+79)559.8(+7.9)1(-)2(+2)190(+40)
クロアチア語5492(+192)549.2(+19.2)0(-)3(-1)308(+25)
ポルトガル語5487(-15)553.7(-11.5)1(-2)2(+1)96(-4)
ルーマニア語5483(+256)548.3(+20.6)0(-1)2(+1)78(-2)
トルコ語5467(+97)546.7(+4.7)0(-1)6(+5)214(-9)
ドイツ語5282(+407)528.2(+0.7)0(-8)2(+7)341(+14)
フィンランド語4964(+47)521.4(-10.3)5(-3)1(+1)168(+12)
チェコ語4943(+429)494.3(+7.9)0(-7)4(+3)401(+90)
ポーランド語4881(+249)498.1(+34.9)2(+2)2(+3)81(-18)
ロシア語4805(+327)485.5(+32.7)1(-)6(+3)43(-)
スロバキア語4684(+101)473.4(+5.1)1(-1)2(+4)327(+87)
ハンガリー語4510(-188)461.0(-13.8)2(+1)2(-)86(-12)
合計90233(+3144) 16(-27)2(-)1117(+121)

※()内は昨年比。
※得点、速度、順位、参加者数は上がった時に+表示。ミス数は増えた時に+表示。
※オランダ語とフランス語にはベルギー方言、イタリア語にはスイス方言、ドイツ語・クロアチア語には本家、日本語にはtransliteratedで参加した。
※順位は4/29 日本時間7:00時点のもの。また、方言(例:本家ドイツ語とスイスドイツ語)はまとめて集計した。

【表2:主な記録】

・合計90000突破
・合計16ミス、1言語平均0.94ミス(昨年までは合計28ミス、1言語平均1.65ミスが最少)
・8言語でノーミス達成(昨年までは3言語が最高)
・ロシア語・チェコ語・クロアチア語・ルーマニア語の4言語で、本番で(練習含め)自己ベスト
・他にポーランド語・オランダ語・ドイツ語・トルコ語・スペイン語・日本語の6言語で本番記録を更新
・全17言語で6位以内(全17言語10位以内は2019年以来二度目。2019年は全17言語で9位以内)

【表3:10分間練習の結果】

言語最高記録平均得点平均速度平均ミス数
フランス語5925(+105)5494(-26)558.1(-5.5)1.75(-0.58)
英語5876(-108)5642(+4)574.8(-0.8)2.13(-0.23)
イタリア語5783(+111)5491(-117)560.6(-4.0)2.30(+1.55)
スペイン語5807(+246)5437(+127)554.7(+9.8)2.20(-0.58)
オランダ語5558(+171)5304(+266)542.1(+19.8)2.33(-1.37)
日本語5924(+455)5539(+121)569.6(+12.8)3.14(+0.14)
クロアチア語5492(+192)5038(-46)517.4(-3.0)2.71(+0.31)
ポルトガル語5487(-15)5276(+98)536.1(+5.4)1.70(-0.87)
ルーマニア語5483(+256)5098(+55)520.7(+4.7)2.19(-0.17)
トルコ語5467(-97)5228(-157)532.4(-16.6)1.92(-0.17)
ドイツ語5338(+83)5045(+57)519.9(+1.5)3.09(-0.84)
フィンランド語5241(+1)4923(-89)506.6(-19.6)2.86(-2.14)
チェコ語4943(+99)4687(+88)483.2(+2.6)2.89(-1.24)
ポーランド語4948(+287)4848(+326)492.3(+23.4)1.50(-1.83)
ロシア語4805(+274)4417(+190)455.9(+13.5)2.85(-1.10)
スロバキア語4997(+131)4760(+166)485.0(+8.4)1.80(-1.63)
ハンガリー語4657(-125)4446(-50)459.6(-4.1)3.00(+0.18)
合計/平均91731(+2066)86673(+1012)536.2(+23.7)2.14(-0.91)

※()内は昨年比。
※上記の数字には本番も含む。
※Takiソフトウェアのバグによるミスと、それによる減点も含む。


●プロローグ

2023年オンライン大会の目標は、2022年の世界記録(17言語で87206)を更新して世界第一位奪回と決定した。また、「日本語以外の16言語で85000、全17言語で90000」という昨年未達成の目標も残っていた。しかし90000は想像以上に凄まじく高い壁だった。英語やフランス語をはじめとする高速言語が頭打ちとなったため、精度向上と中〜低速言語の底上げに頼るしかなかった。

昨年の筆者の記録は、17言語で87089だった。9万点には2911も足りない。この差を埋めるために、まず「ロシア語で+500、他16言語で+150として+2900」というプランを検討した。頑張れば届きそうな数字にも見える。だが、「ロシア語で+500」を目指す時点で壁に当たった。そこで、より実現性のあるプランとして、昨年にミス数が6以上だった言語をまず改善しようと考えた。具体的には、ドイツ語、オランダ語、フィンランド語、チェコ語で5ミスずつ、計20ミス減らす。すると減点が50×20=1000減る(つまり得点が1000増える)。残り1911は、「ロシア語で+300、他16言語で+100として+1900」でほぼ届く。

一方、2020年まで日本人の参加を取りまとめて下さったPocariさんが不在となり、筆者が3年続けて取りまとめを代行することとなった。3月中に動いたため、昨年と同様に大会初日から参加できた。但し、Interstenoの開催期間自体が昨年の6週間から今年は5週間に短縮された。


●戦略

昨年のレポート来年に向けてに記載した通り、全17言語で積極的に攻めることによる速度アップを狙う。もちろん、正確性を保ったまま高速化するのが望ましい。だが、大前提として速度を上げないことにはスコアも頭打ちになる。これに関しては、基本的に、2016年大会である程度確立した戦略を踏襲した。同様のアプローチでもう少し伸ばす余地があると考えていたためだ。但し、必要に応じて修正を加えた。

(1) 各言語の配列の再検討 〜頻出特殊文字の1打鍵化〜

2017年と同様。

(2) 各言語の配列の再検討 〜デッドキーの活用〜

2017年と同様。

(3) 基礎力強化 〜monkeytypeによる多言語鍛錬〜

2022年4月から2023年2月にかけて、monkeytypeを用いて表4に示す方針で鍛錬を重ねた。多言語への耐性は間違いなくついたと思う。なお、プレイ時間は初期設定値の30秒とした。また、ノーミスタッチを前提とした。即ち、一度でもミスタッチをしたらEscである。BSで修正して打ち直すと、結果画面の正確性は100%にならないし、グラフやinput historyにミスの履歴が残る。これは美しくない。

【表4:monkeytypeのプレイ方針】

言語方針
ギリシャ語100wpmノーミス達成(語彙増加版含む)
100wpm未達成言語、新規追加言語同上
やり込み度の甘い言語やり直し
ロシア語、英語継続

ギリシャ語を打ったのはこちらに示す通り、個人的趣味によるものだ。将来Interstenoでギリシャ語を打つ日が来る可能性はあると思う。だが、ここ数年のことではないだろう。よって、Intersteno2023オンライン大会に向けた直接的な対策にはならない。

並行して、100wpm未達成言語と新規追加言語も打ってきた。当面の目標は100wpmノーミスだ。バージョン更新情報やGitHubを注視して、新規追加言語を見つけては打ち続けた。その結果、ラテン文字・キリル文字・ギリシャ文字を使用する59言語で100wpmノーミスを達成した。

いざ100wpmノーミスを達成すると、やり込み度の甘い言語が気になり始めた。1〜数回打って終わりという言語も複数存在した。そこで、特殊文字の少ない言語を中心に、130wpm以上を目指して2周目を開始した。最終的に、31言語で130wpmノーミスを達成した。また、スペイン語、フランス語、イタリア語等はこの過程で140wpmを突破した。

ロシア語は継続的に打たないとキリル文字の打ち方を忘れる。何しろ、Interstenoの17言語のうち筆者がラテン文字で参加するのは16言語あるのに対して、キリル文字で参加するのはロシア語のみだからだ。そして、この鍛錬には一定の成果があった。昨年のようにTypeRacerを4000レース以上こなすということをしなかったのに、2月にTypeRacerの最高記録を二度にわたり更新した。

英語は事情が異なる。打ち方を忘れるということはもはや無い。だが、鍛錬を怠ると高速打鍵が少しずつできなくなっていく。特に左手を酷使する単語が明らかに遅くなる。そこで、8月に162.00wpmノーミスを達成した後も、語彙増加版等を用いて鍛錬を継続した。

……

2月27日、Interstenoが近づいたところで、日本語を除く16言語に絞って60秒ノーミスタッチ練習を再開した。30秒では短すぎて、Interstenoに直結する実践的な練習にならないためだ。一方、120秒ノーミスタッチ練習はまだ筆者にとって荷が重い。どの言語でも、一度も成功したことが無い。60秒経過以降は集中力を持続できないためだ。よって、筆者の現在のレベルでは60秒が適切だと判断した。また、語彙増加版がある言語は10k前後を主に打つ。1k以下では簡単な単語しか出てこない。目安として25k以上になると、語彙がマニアックすぎて対策にならない(ランダム文字列を打つ練習と変わらない)。

(4) 基礎力強化 〜フランス語の未打鍵課題潰し〜

10月から1月にかけて、「未打鍵課題潰し」と称して、各種フランス語の10分間練習をほぼ毎日打ち続けた。計200個近い10分間課題を収集したのに、ろくに練習していないことに気付いたためだ。結局、本家フランス語とスイスフランス語は全部、ベルギーフランス語は1個を除いてすべての課題を打鍵した。これにより、フランス語および、同じ配列を用いるイタリア語は早期に10分間練習に移行できた。フランス語とイタリア語の劣化を最小限に抑制できたのは、このためと考えられる。

(5) 練習スケジュール

2月も下旬となり、大会期間が迫ってきたため、満を持して練習を開始した。表5の通り、本番対策と同様に1週間に4言語を練習した。日本語を除く16言語を一通り練習できた。

【表5:練習スケジュール】

期間言語
2/27-3/5ロシア語、ハンガリー語、トルコ語、英語
3/6-12チェコ語、スロバキア語、ポルトガル語、スペイン語
3/13-19クロアチア語、ルーマニア語、イタリア語、フランス語
3/20-26ポーランド語、フィンランド語、ドイツ語、オランダ語

2020年以来、新型コロナウィルスの影響で在宅勤務となったため、平日は業務終了後に即練習できる。このため、当初は1分間練習によるリハビリを実施しつつも、徐々に本番を想定した10分間練習に切り替えた。単に10分間打つというノルマをこなすだけの無益な練習を徹底して排除した。但しスペイン語、日本語、フィンランド語、スロバキア語、ポーランド語、ハンガリー語の1分間練習または10分間練習の課題数は限られており、文章を覚えてしまうリスクがあった。このため、並行してmonkeytypeの60秒ノーミス練習を効果的に実施した。

2015年〜2023年大会に向けた練習量の比較は表6の通り。2023年の練習量は計349回で、ここ5年間で最高となった。但し、うち149回は先述のフランス語の未打鍵潰しであるため、その分を差し引くと200回である。実質的な練習量は昨年並みであり、2018年以前とは比較にならない。とはいえ、大会期間が5週間あったため、大半の言語で必要十分な調整を実施できた。

【表6:10分間練習の打鍵回数の比較】

言語2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年
フランス語744149391212(-)158(+146)
英語11245861517511733(+16)16(-17)
イタリア語6111611510138(-5)20(+12)
スペイン語12149142013139(-4)10(+1)
オランダ語16121611611810(+2)9(-1)
日本語92410369593(-6)7(+4)
クロアチア語72516151215910(+1)14(+4)
ポルトガル語621141514131414(-)10(-4)
ルーマニア語811184079914(+5)16(+2)
トルコ語6179155657711(+4)13(+2)
ドイツ語162016969814(+6)11(-3)
フィンランド語178685545(+1)7(+2)
チェコ語1213163511101316(+3)9(-7)
ポーランド語91110136746(+2)4(-2)
ロシア語03594441467743(+36)34(-9)
スロバキア語128121410677(-)5(-2)
ハンガリー語6331318626911(+2)6(-5)
合計160552375598147323163226(+63)349(+123)

※上記の数字には本番、仕様調査、および未打鍵課題潰しを含む。
※各年の打鍵回数には、前年オンライン大会終了翌日から当年オンライン大会終了当日までのすべての10分間練習を含む。

(6) 本番実施の順序

全17言語の本番を1〜2日で実施するのは非効率である。本番実施を繰り返すことで、肉体的にも精神的にも著しく疲労するためだ。さらに、練習の質・量が甘いと各言語の特殊文字や頻出シーケンスを混同するリスクがある。

今回の大会実施期間は3/27〜4/28となり、33日間確保できた。準備不足の言語を第5週に回すという戦略を適用できた。

本番に向けたスケジュールは表7に示す通りである。

【表7:2023年大会の本番に向けたスケジュール】

期間低速言語中速言語高速言語
3/27ロシア語  
3/28-4/2ポーランド語フィンランド語、ドイツ語オランダ語
4/3-9ハンガリー語フィンランド語、トルコ語英語
4/10-16チェコ語、スロバキア語ポルトガル語スペイン語
4/17-23 クロアチア語、ルーマニア語フランス語、イタリア語
4/24-27  日本語

※ハンガリー語とトルコ語の配列は親和性が高い(öüをwqに配置)。
※フランス語とイタリア語の配列は共通。また、経験値が高い。
※チェコ語とスロバキア語の配列は親和性が高い(特殊文字を34567に配置)。
※スペイン語とチェコ語、スロバキア語、ハンガリー語の配列は親和性が高い(áéíを@[]に配置)。
※ドイツ語とオランダ語は言語として親和性が高い(ゲルマン語派)。
※ドイツ語とフィンランド語の配列は共通。
※ポーランド語とクロアチア語は言語として親和性が高い(スラヴ語派)。

基本的に、2016年以来のスケジュールを踏襲した。高速に打てる言語(英語、フランス語、イタリア語、日本語、オランダ語、スペイン語)と速度の出ない言語(ロシア語、ハンガリー語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語)を可能な限り分散させた。これは、高速に打つ感覚を維持するとともに、低速言語を底上げするためだ。

また、親和性の高い言語や、共通の配列を使う言語は、同じ週に打つのが効率的だ。逆に、混同する可能性の高い言語(例:フランス語とスペイン語、ハンガリー語とドイツ語、ポーランド語とチェコ語)を同じ週に打たないように注意した。なお、チェコ語とスロバキア語にも混同しやすい部分がある。だが、配列の親和性による相乗効果の方が上回ると判断し、同じ週に実行することとした。

……

最終的な本番実施スケジュールは表8の通りである。平日は仕事があるため、本番実施は土日や祝日がメインとなる。なお、3/27(月)と4/27(木)には休暇を取得した。

【表8:2023年大会の本番実施スケジュール】

日付・時間帯言語累計得点コメント
3/27(月)夜ロシア語4805風呂後に想定外の大爆発! 自己ベスト!
4/1(土)夕方ポーランド語9686monkeytypeの練習の効果を発揮し加速
4/1(土)夜オランダ語15244風呂後に爆発! ノーミスは運
4/2(日)夜ドイツ語20526風呂後に爆発! ノーミスは運
4/8(土)夕方フィンランド語25490速度も正確性も不充分。対策が甘い
4/8(土)夜トルコ語30957風呂効果を有効活用。速度は甘いが正確性が冴えた
4/9(日)夕方ハンガリー語35467疲労が回復せず惨敗
4/9(日)夜英語41297風呂効果で辛うじて救われた。ノーミスは運
4/15(土)夕方チェコ語46240本番にピークを合わせた。速度も正確性も冴えて自己ベスト!
4/15(土)夜スペイン語51878直前の練習にピークが合うも、感触を維持
4/16(日)夕方スロバキア語56562びびり過ぎて指が冷えまくり
4/16(日)夜ポルトガル語62049風呂効果を活用するも、終盤のミス検出で大きくロス
4/22(土)夕方クロアチア語67541凄まじい心拍数上昇を10分間耐えきって自己ベスト!
4/22(土)夜フランス語73419風呂後に猛然と攻めまくった。2ミスするも速度を維持
4/23(日)夕方ルーマニア語78902完璧な調整の結果、ゾーンに入った! 自己ベスト!
4/23(日)夜イタリア語84685風呂後に爆発! びびって速度は伸び悩むもノーミス!
4/27(木)夕方日本語90233凄まじい緊張感に耐え、1ミスに抑えた! 9万点達成!


●戦術

(1) 練習課題文の収集と入力、再入力

InterstenoのTakiソフトウェアに出現する1分間練習および10分間練習の課題文を収集した。結果は
こちら目的は、文字の出現頻度の調査の他に、ミスの原因把握と傾向調査である。2015年大会に向けた練習ではここができていなかったため、打鍵終了後に表示される結果画面からミスの原因を推測するしかなかった。ミスした単語をGoogle翻訳やGoogle検索に入力すると、正解らしき単語を見出せることもある。だが、すべてのケースでうまくいくわけではない。これでは練習効率が悪すぎる。

そこで、1分間練習の課題文を計2024個、10分間練習の課題文を計626個収集した(昨年以降の追加分は1分間課題9個、10分間課題12個)。さらに、収集したすべての練習課題を実際に入力してExcelシートに整理し、ミスの原因を正確に把握できるようにした。具体的な方法は2018年と同様である。

さらに、難関言語に限らず全文再入力を実施した。1分間練習の課題文のうち1795個、10分間練習の課題文のうち619個、合計で約800万文字を再入力した(昨年以降の追加分は1分間課題25個、10分間課題4個、合計で約6.5万文字)。その結果を過去の入力結果とEXACT関数で比較し、計2500箇所に迫るミスを検出した(昨年からの増加分は約100箇所)。この作業の結果、残存ミス率は約0.05%から0.001%未満に減少したと推測される。

(2) Takiソフトウェアの問題点、特殊文字への対応

Takiソフトウェアの練習課題には、こちらに示す問題点が存在する。また、こちらに示す特殊文字・記号が出現する。いずれも2018年までに調査・実装済みだったため、今年もその成果を活用した。

(3) 方言の選択

ドイツ語、フランス語、オランダ語等の方言選択にも、上記の練習課題の収集結果資料が役立った。具体的には、バグや特殊文字の少ない方言を選択することで、練習の効率アップと本番の得点アップを狙った。

ドイツ語には本家ドイツ語の他にスイス方言が存在する。2019年以降は前者を採用している。両者の主な違いは、後者には原則としてß(エスツェット)が存在せず、ssで置き換えられることである。つまり特殊文字が1種類減るため、短期間での攻略が容易になる。但し、長い目で見れば、ssという連打に耐え続けるよりもßの位置を覚えて打つ方が負担が少ない。いずれにせよ出現頻度は低いため、実際には大差無い。なお、2016年と2018年のスイスドイツ語の本番では、ßが複数回出現した。このような場合に備え、ßを含む配列を準備し、かつ位置を把握しておく必要はある。

フランス語には本家フランス語の他にスイス方言、ベルギー方言が存在する。2016年以降、バグが最も少ないベルギー方言を採用している。但し、本質的な違いは調査しても分からなかった。その後、Taki担当者とのやり取りの中で、本家フランス語やスイス方言では記号(;:!?)の直前にスペースが入る一方、ベルギー方言では入らないとの情報を頂いた。普段打ち慣れた仕様であるベルギー方言を選択して正解だった。

オランダ語には本家オランダ語の他にベルギー方言が存在する。本質的な違いは調査しても分からなかった。一字一句違わない課題文章を両者で使い回している事例も複数存在した。但し、一部の特殊文字は方言により得点が違うことがある。特にオランダ語ではベルギー方言の.が2点なので、スコアにして約1%有利になる。この仕様に気付いた2019年以降、ベルギー方言を採用している。

イタリア語には本家イタリア語の他にスイス方言が存在する。本質的な違いは無い。一部の特殊文字は方言により得点が違うものの、その出現頻度は非常に少ないため、影響は限定的だ。なお、2022年以降の本番ではスイス方言を選択した。たまたま練習でスイス方言の未打鍵課題潰しを実施していたためだ。

クロアチア語の代わりにセルビア語(ラテン)、セルビア語(キリル)を選択できる。セルビア語(ラテン)はクロアチア語とほぼ同じだ。セルビア語(キリル)はロシア語と同様キリル文字を使用する。しかしロシア語と違う特殊文字への対応が新たに必要で、難易度が高い。

日本語には日本語(漢字かな交じり文)の他に、ローマ字で記述された日本語(transliterated)が存在する。従来の漢字かな交じり文には事実上日本人しか参加できなかった。ひらがなやカタカナはともかく漢字は日本人以外にとって習得が非常に困難であるためだ。このデメリットを解消するためにtransliteratedが導入された。日本人にとっても、一般的にtransliteratedの方が有利になる。理由は、変換の手間が無くなることと、実態よりも低めに設定された2.2607というスコア換算係数の影響を受けなくなることだ。筆者の場合も、Takiを用いた1分間練習において、transliteratedが漢字かな交じり文と比較して100文字/分近く有利になった。このため、本番でも迷うことなくtransliteratedを選択した。

(4) キーボードの選択

2017〜2019年大会では、東プレRealforce106(All30g)を主に使用した。日本語かな入力を除いて、All30gでもミスを抑えつつ高速化できるという確信を得たためだ。実際、2016〜2019年の総ミス数の推移は47→28→35→34、1言語あたりの平均値は2.76→1.65→2.06→2.00であり、2016年と比較して有意に減少している。

All30g適用の実験を開始したのは2016/12/19だった。2003年時点の筆者はこのキーボードを使いこなせなかった。打鍵時に隣のキーに指が軽く触れただけで認識され、ミス判定となる「かすりミス」が目立ったためだ。だが、東プレRealforce89U(45g/30g)で10年以上も正確性重視の鍛錬を継続してきたため、All30gでも次第にミスを抑えて打てるようになった。それならば、速度を出せるAll30gの方が良い。折しも、45g/30gのキーボードのSpaceキーのレスポンスが長年の酷使の影響で悪化し、高速打鍵に悪影響を及ぼすようになってきたため、All30gを久々に採用した。

但し、2019年は日本語のみ45g/30gに戻した。All30gが長年の酷使の末、5/3に至ってついに故障したためだ。

2019年10月、消費税増税前に新たに東プレRealforce(R2TLSA-JP3-IV)を調達した。All30g、かつテンキー無しという基準で選択した。このキーボードはタイプウェル国語Rの更新には役立ったが、カスリが激増するというデメリットがあった。従ってIntersteno向けには使えないのではないかという危惧を抱いた。だが、APC設定を「よく使うキー2.2mm、使わないキー3.0mm」としたことで、カスリを防ぎ、Interstenoの実戦に投入する目途が立った。

(5) その他環境整備

2018年とほぼ同様。本番準備・実施手順書を作成し、遵守することで、人為ミスをシステム的に根絶することを目指した。但し2019年以降、Windows10機で打鍵中にフォーカスが勝手に外れる事故に悩まされている。2019年のフィンランド語と日本語、2021年のルーマニア語の本番でも発生した。当初は左Alt、右Alt、左Ctrlへの誤爆による何らかのショートカット発動が原因と考えていた。最大の要因である左Altのキートップを外す、あるいはソフトウェアで一時的に無効化するといった対策がまず考えられる。さらに、「セキュリティソフトの割込み」「プリンタドライバの割込み」等、他にも原因がありそうだ。原因究明のためMy Window Loggerを導入したが、まだ原因を見出せず、対策もできていない。

2020/4/7、自宅の電気契約を30Aから40Aに上げた。打鍵中にブレーカーが落ちてもPCはバッテリーで動くため問題無い。だが、ルータの電源も落ちるためネット接続が一時的に遮断される。これが危険すぎる。

(6) 初見課題対策

練習用課題には、特定の単語(例:国際労働機関)が頻出する。これに慣れきってしまい、それ以外の単語の練習が不足すると、初見課題を打つ本番では当然ながら惨敗する。この傾向は、特にドイツ語とオランダ語、チェコ語で顕著であった。また、練習で出したスコアを過信してはならない。頻出単語に慣れればTakiのスコアが改善されるのは当然だ。本番ではその分だけ落ちる。この事実を忘れて練習を怠ってはならない。

フィンランド語、ポーランド語、スロバキア語等、10分間課題の少ない言語はTypeRacerやmonkeytypeを併用してこの欠点を補った。確かに、TypeRacerには「30秒ほどで終了する短文が多い」「フォントが見辛く、.,やlIやijの判別が至難」といった難点はある。だが、従来圧倒的に不足していた初見文章への対策にはある程度なったと思う。

一方、フランス語、イタリア語、トルコ語で大きく崩れなかったのは、練習用課題が豊富にあり、多くの単語に習熟できたためと考えられる。ドイツ語、オランダ語、チェコ語に関してもこの状態に持っていくため、TypeRacerやmonkeytypeで鍛えるのは有効と考える。

(7) 本番の実施

ベストの体調で、ベストの時間帯に実施するのは言うまでもない。今年は、17言語中8言語の本番を休日風呂後の2回目に実施した。ちなみに1回目は10分間練習だ。風呂の直後は指も動くがミスタッチも増える。3回目以降はかえって眠くなり、集中力が落ちる。また、昼間に仕事や登山ランニングをした場合など、疲労が蓄積している場合も風呂後に眠くなる。次善の策として休日夕方だ。朝や午後一はやめておく。脳が働かず、指の動きも鈍く、速度も正確性も低下するためだ。よって朝や午後一にはリハビリに専念し、脳の働きと指の動きを取り戻す。

基本的に、仕事・育児・家事と重ならず、かつ身体が覚醒しているタイミングで実施する。平日帰宅後のように疲労している場合や、リハビリが不充分な場合、眼精疲労や脳・腕・指の疲労が蓄積している場合には、本番実施を避けるべきだ。

また、1セット(約1時間)あたりの本番実施数は1言語、1日あたりの本番実施数は2言語に抑えたい。但し、充分な練習を積んだ状態で、体調が良く、指の調子も好調を持続している場合に限り、1セットに2言語、1日に3言語の本番を実施することも過去にはあった。

さらに、本番の直前に10分間練習を実施する。これは、本番で使用する配列に確実にセットすると同時に、他の言語との混同を避けるためだ。また、言語ごとに頻出する単語やシーケンスが存在するため、本番の直前に目と指を充分に慣らしておく必要がある。但し英語や日本語など、ガチで10分間打つと疲労する高速言語についてはほどほどにしておく。5分で止めても良いし、1分間練習×5で代用しても良いだろう。2018年以降は「前半は速度重視、後半は速度を落として正確性重視」「前半で体が覚醒しなかった場合は後半も速度重視」のように、その日の調子に合わせて使い分けた。要は、本番にピークを持っていくため、本番を想定してある程度本気を出しつつも、準備と割り切って力を抜くということだ。


●各言語の対策(主要なもののみ)

2018年2019年2022年とほぼ同様。

(12) 日本語(transliterated)

Roadさん制作のPractical Typeで練習できるように設定した。具体的な設定は表9の通りである。普段打っている設定(Firefox、フォントサイズ133%)に合わせて、TakiのUIを真似た環境を作成する。これでいろいろな文章を準備し、10分間練習を実施する。Practical Typeは日本語・英語に限れば極めて有用だ。特殊文字に対応して頂けると、日英以外にも対応可能となるため、最強の多言語対策になると思う。

練習用テキストとして、2022年の本番課題を用いる。全部で約9000文字あるため、最初から始まる文章と、後半から始まる文章に分ける。後者は終了したら最初に戻る。なお、2021年の本番課題は既にTakiに練習用文章として展開済みだ。

採点基準はInterstenoに合わせる。即ち、大文字を2点に換算する。1単語内のミスは1ミスと数える。1ミスにつき-50点とする。この辺は自動化できればなお良い。

【表9:Practical Typeの設定】

項目設定値
練習モード英文和文
練習環境設定フォントCourier NewMS ゴシック
サイズ16
フォント装飾太字
エリア幅760740
秒読み3
制限時間10(分)

※エリア幅は、Takiの1行57文字/31文字に合わせる。英文は16×57÷1.2=760、和文は16×31×2÷1.33≒746という計算で良いのだろうか。


●感想(というよりも反省)

結果は合計90233点(昨年比+3144)となり、17言語での世界記録を一時的に更新するとともに、前人未到の9万点突破を果たした。わずか1日後にAndreaに抜かれてしまったが。いやむしろ、過去の世界記録を2人が更新するというレベルの高い競争ができたことを喜ぶべきだろう。

今年の筆者は(自分で言うのもなんだが)神っていた。もちろん実力を高めるための準備、本番のスコアを最大化するための準備ともに過去最高水準で実施したつもりだ。だが、それ以上に凄まじい勢いで神降臨が続いた。来年以降、同等以上のスコアを出すのは相当難しいと思う。

ここまで筆者を覚醒させた要因は幾つかある。特筆すべきは、極めて強力で有能なライバルであるAndreaの存在だ。昨年以降の成長は明らかに筆者を上回っており、来年以降も10万点に接近していくだろう。

当然ながら、来年もこの得点で同じ順位を獲得できると楽観はしていない。2015年以来の日本人の奮闘ぶりを見た諸国のタイピストたちが、座視しているとも思えない。特に、Andreaに加えて、成長著しいロシア勢との死闘が予想される。正確性重視で速度を抑えてばかりでは絶対に勝てない。さらに、新たな強力なライバルたちが続々と出現してくる可能性もある。さらなる境地を目指すためにも、まずは今年の失敗と成功を分析する。

●スコアアップの要因

(1) 本番に向けたピーク合わせ
(2) 速度重視の姿勢
(3) ミスの減少
(4) monkeytypeでノーミスタッチを追求
(5) 行末チェックの廃止
(6) デッドキー;への慣れ

(1) 本番への適応、ピーク合わせ

練習時のスコアは、特に英語等の高速言語では頭打ちに近い。従って、今年は本番に向けたピーク合わせに留意した。不調の時はよほどの例外を除いて打たないのはもはや当然だ。今年はそれに加えて、体調や脳の働き、指の動きを整えてコンディションを最高に持っていくことに気を配った。

表10に示す通り、昨年はチェコ語とドイツ語で本番直前の練習にピークが合うという致命的な失敗を犯した。直前の練習と比較して、本番ではそれぞれ292点、372点も落ち込んだ。速度や正確性を必死に上げても、本番に向けた調整を失敗するだけで簡単にそれ以上の大失点を食らう。この問題を解決しないことには、未来が無さすぎる。

【表10:直前の練習と本番の差】

言語202120222023備考
クロアチア語-43+75+591 
チェコ語-40-292+456 
ドイツ語-604-372+400風呂後
イタリア語+157+113+385風呂後
フランス語+192+239+343風呂後
トルコ語+241+40+333風呂後
ルーマニア語-194+114+291 
ロシア語-+115+281風呂後
ハンガリー語+129+358+217 
オランダ語-253-300+206風呂後
英語-247+277+187シャワー後
スロバキア語-127+116+169 
日本語-235+113+114 
フィンランド語+230-253+112 
ポルトガル語+322+141+63風呂後
ポーランド語+266-29-21 
スペイン語-279+204-169風呂後
合計-485+659+3958 

今年は17言語で昨年比+3144という結果を得た。その大部分が、本番に向けた調整の効果によるものと言っても過言ではない。直前の練習と比較して本番の点数が下がったのは、スペイン語とポーランド語のみだった。一方、直前の練習のスコアを合計すると昨年は86430、今年は86275で大差無い。即ち、今年は手を抜いて打っても昨年並みのスコアを確保できる状態を確保した上で、本番でさらに稼いだという見方もできる。

本番に向けたピーキングに役立ったのが風呂である。昨年は複数の言語で指先の冷えに悩まされた。この問題をほぼ解決できるのがあまりにも大きい。一般的に、風呂の直後には指も動くがミスタッチも増える。風呂後の2回目では、指の動きはやや沈静化する一方で、ミスを抑えることもできる。3回目以降は眠くなり、速度も正確性も低下する。この経験則を最大限に活用した。即ち、風呂後の1回目には力を抜いて打ち、配列や特殊文字、頻出シーケンスの確認に専念する。疲労を防ぐため本気モードで打たないことが極めて重要だ。前半に速度が出すぎたと感じた場合には、後半にさらに力を抜く。幾つかの言語では力を抜きすぎて集中力も著しく欠き、5ミス以上を叩いたくらいだ。そして風呂後の2回目にピークを持っていく

1日に2言語の本番を実施する場合、高速に打つ必要のある言語を優先的に風呂後に割り当てた。指の動きが活性化される効果は高速言語ほど高いと考えたためだ。もう一方の言語は、脳と肉体が覚醒している休日夕方に打つ。風呂によるブーストは期待できないとしても、直前の10分間練習を力を抜いて打ち、その後に気合を入れ直して本番を打つ点は同様だ。

(2) 速度重視の姿勢

Takiを用いた10分間練習では、速度を重視する。正確性重視だけでは勝てないためだ。練習でできないことは本番でもできない。本番でいきなり速度を出すと、ミス爆死するリスクも上がる。monkeytypeの60秒練習と違って、ノーミスタッチを制御できる速度を上げるのではない。ミスした時に即座に気付いて修正できる速度を高めるのでもない。まずはベース速度を上げる。

練習でも、そして特に本番では、打鍵時の姿勢に注意する。背筋が弱いと徐々に猫背になってきて、無駄に疲労が蓄積する。その結果、速度も正確性も低下する。少しでも猫背になっていると意識したら、常に背筋を伸ばす。この動作により一時的にそれまでの打鍵の質がリセットされて、特に正確性が向上するという副次効果もある。

本番でも、正確性に留意しつつも基本的に攻める。特に、10分間練習において平均ミス数が低めで安定している言語は狙い目だ。今年の例ではフランス語、イタリア語、スペイン語等が該当する。ここ数年と同様、高速に打てると見切った部分では積極的に飛ばすことを10分間続けた。また、この言語を今年打つのもこれで最後なのかと感慨に浸りながら、打つ過程を楽しむようにした。緊張感に襲われた言語も幾つかあったが、むしろミス低減に役立てることができた。

(3) ミスの減少

総ミス数は昨年より27減少した。2017年の記録をも12下回り、過去最少となった。これにより総合得点は昨年比50×27=1350も上昇し、9万点到達の原動力の一つとなった。

本番では過去の記録(3言語)を大幅に更新する8言語でノーミスを達成した。一方、練習時には、フランス語での42回を筆頭に、13言語で計64回出した。但し、うち41回は、フランス語の未打鍵課題潰しの際に出したものである。この分を除けば、13言語で計23回となる。

また、全349回の10分間練習(本番含む)中、1ミスは84回、2ミスは81回、3ミスは50回、4ミスは19回だった。昨年と比較すると、4ミス以内の確率が約79.2%から約87.7%に、2ミス以内は約46.5%から約67.9%に、ノーミスは約8.4%から約20.6%に増えた。

(4) monkeytypeでノーミスタッチを追求

ミスの減少に著しく寄与したと考えられるのが、monkeytypeを用いた60秒ノーミスタッチ練習だ。先述の通り、日本語を除く16言語でこの練習を実施した。この練習が特に効果的だったのは、ロシア語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語である。いずれも10kもしくはそれ以上の語彙増加版が存在し、本番に向けて有力な対策となった。

一方、フィンランド語はmonkeytypeをもってしても対策が難しかった。10kでは不足なのか、60秒では不足なのか、それともフィンランド語に特有の連打にまだ脳と目と指が慣れていないのか。Takiの10分間練習の数も少ないため、対策が最も難しい言語である。

また、クロアチア語、ルーマニア語には語彙増加版が無いため、monkeytypeだけでは対策が不十分である。しかしこの2言語ではTakiの10分間練習の数が20以上と比較的多いため、早々にTakiを使用した対策に移行した。フランス語、トルコ語、イタリア語はTakiの10分間練習の課題がさらに多いため、やはりTakiを中心に打ち込んだ。

なお、そもそも2022年にノーミスタッチ練習を実施する直接の原因となった「打鍵から表示までの間のラグ」は、今年は発生しなかった。Interstenoのサーバーが増強されたのだろうか。なお、PCやネット回線、本番実施時刻は昨年から変えていない。

(5) 行末チェックの廃止

ミスを抑制した他の要因として考えられるのは、改行位置がずれた場合の対応の改善だ。2018年以来、改行位置がずれた場合は1行以上消してでも修正している。2021年以降はマウスや上下左右キー、Home/Endキー等による修正が可能となったため、修正時のスコア低下をさらに抑制できた。2022年以降は幸いなことに、本番で改行位置ずれにより大きくロスしたことはなかった。

2022年以降はこれに加えて、行末チェックを原則として廃止した。2021年以前は、ほぼすべての行末で前の行との対応関係を確認していた。しかし2022年以降は、よほど変な手応えがない限り、そして実際に1行すっ飛ばしが発生しない限り、これを廃止した。行末チェックに頼ってミスを減らすよりも、そのチェックによる減速を防ぐことを重視した。行末チェックにより、今打っているところから視点が一時的に離れる。再び視点を戻す際に別の場所を見てしまい、ミスにつながるリスクがある。例えば英語では、頻出するtheが1行先や1行前の似たような位置にあることも珍しくない。これらを見誤ると、1行飛ばしや1行戻りを誘発する。このリスクを解消し、かつ確認のタイムロスを減らす効果は意外と大きい。もちろん、正確性の維持が大前提だ。ノーミスタッチかそれに近いハイレベルの正確性を獲得して初めて、この対策は可能となる。

(6) デッドキー;への慣れ

2021年5月以降、大文字をShiftでなくデッドキー;で打つように訓練してきた。もともとはドイツ語対策であり、実際に今年のドイツ語では一定の成果を得た。しかし、現状ではまだまだ改善の余地がある。特に英語など高速言語で遅くなる。右手範囲の大文字はShiftを使った方が速度・正確性の両面で良い。また、固有名詞が続く場合や特殊文字と組み合わさっている場合など、脳を使う場合にはShiftの方がロスが少ない。だが、左手範囲の大文字は今更Shiftには戻せない。基本的には練習を重ねて慣れるしかない。

また、;をデッドキーに設定したため、文章中の;を打つには[;→Space]の2打鍵が必要となった。;の出現頻度はトータルでは低いとはいえ、一部の練習文章では出現頻度が高いため、苦戦の要因となった。

なお、大文字対策としてはSeanが採用しているCaps Lockも検討した。だが、打鍵数が増えすぎるため断念した。将来的に、美佳テキストのORANGE MARMALADEのように大文字が10文字以上続く場合に限定的に採用する手はあると思う。

●改善すべき点

(1) 老化に伴う英文打鍵力の低下
(2) タイムマネジメント
(3) 練習用文章の少なさ
(4) その他

(1) 老化に伴う英文打鍵力の低下

昨年に続いて今年も、最大の改善点は英文打鍵力の低下と認識している。2021年には「戦略ミス」と分析した。しかしその背景には、老化があった。決して認めたくないことだが、老化との闘いが本格的に始まったことをこれでもかと痛感させられた。

まず認識能力が低下した。当然ながら、読めなければ打てない。次に打鍵能力も低下した。認識できても指が思い通りに動かない。特に英語の左手範囲を駆使する単語で顕著だった。挙句の果てには判断能力も低下した。認識あるいは打鍵のプロセスでミスをしても気付かない。今年は風呂効果とmonkeytypeノーミスタッチ練習でこれらの問題の一部を一時的に解決できたかに見える。しかしベース速度は頭打ちであり、根本的な対策にはなっていない。

英文打鍵力の低下がドイツ語、オランダ語、スペイン語に悪影響を及ぼしたのは2021年以降共通だ。一方、フランス語とイタリア語にはあまり影響しなかった。前記の未打鍵課題潰しにより、退化を最小限に食い止めたためと考えられる。このように、老化は練習の質と量によってある程度は補える。

(2) タイムマネジメント

社会人である以上、タイピングの練習時間には制約がある。このため、必要な練習を取捨選択し、最小限の時間で最大限の効果を得る必要がある。しかし練習の質を高めることでスコアを伸ばせる段階は過ぎ去りつつあり、練習の量が必要になる場面も多くなってきた。

その結果、己を成長させ得る練習方法は考案済みなのに、それを実際に試す時間が取れないという事態が発生した。例えばCUBEによる日本語と英語の速度強化は結局できず。Takiやmonkeytypeと並行して練習するには時間が不足過ぎた。monkeytypeでも、すべての語彙増加版で60秒ノーミスタッチ練習をできたわけではないし、120秒ノーミスタッチ練習の時間も確保できなかった。

(3) 練習用文章の少なさ

幾つかの言語では、Takiの10分間練習の課題文章の数が圧倒的に不足である。例えばフィンランド語と日本語(transliterated)では課題文章がわずか2個しかない。他にも、スロバキア語、ポーランド語は3個、ハンガリー語は4個、スペイン語は5個のみである。そして、TypeRacerやmonkeytypeでは本番を想定した10分間練習の再現が難しい。

この問題に関しては過去に本番で用いられた文章を練習用課題とするという有力な解決策があり、Intersteno側に要望を挙げ続けている。実際、トルコ語では2021年に大規模な課題文章の入れ替えが実施された。その際、過去のオフライン大会で用いられた文章が採用された。しかし他の16言語ではなかなか採用されない。手間の問題なのかスキルの問題なのか組織の問題なのか、判然としない。

ならば自力で開発してしまおうという案もあるものの、手間もスキルも組織も不足している。

(4) その他

2021年以降、不正行為の誘惑には毎年苦しめられている。管理者と選手を兼ねると不正行為がやりたい放題だ。例えば、ダミーの参加者を登録して事前に課題文章を確認し、練習を重ねてから本番を打つことも可能となる。特に日本語では、この作業を実行すれば1000点は違ってくる。また、初期段階で惨敗した場合は、一旦登録を削除して再登録する手もある。さらに研究者視点でも、全言語の本番課題を収集し、解析したいという誘惑がある。これに関しては、来年以降の管理体制を改善するとともに、個人としては今年を上回るスコアを出し続けて実力を証明していくしかない。というかそろそろ真面目に管理者を募集したい。成長を続けていられる限りは、純粋に選手として参加したい。


●来年に向けて

目標に掲げた「2022年の世界記録(17言語で87206)を更新して世界第一位奪回」のうち、前半部分は達成したが、後半部分は達成できなかった。また、「日本語を除く16言語で85000点、全17言語で90000点」というここ数年掲げていた目標に対しては、後半部分は達成したが、前半部分は達成できなかった。そこで、来年に向けて「日本語を除く16言語で85000点」という目標を再び掲げるとともに、全17言語ではさらなる境地を目指す。

筆者の今後数年を見据えた戦略がいつ実を結ぶかはまだ分からない。筆者が今年以上の総合得点を狙うには、もはや低速言語の底上げだけでは不充分だ。高速言語では6000点の安定化を目指して鍛錬を積み重ねる必要がある。

しかし幸いなことに、戦略と戦術の進化により、総得点を伸ばす余地は残されている。限界はかつて考えていた地点よりも遥かに先にある。カギは、攻めることだ。ミスを抑えて打てるギリギリの速度に、まだまだ伸ばす余地がある。それでは、来年に向けてさらに伸ばすには具体的にどうするか。

(1) 各言語の習得

究極的には、極めて有効と考えられる。実際、日本語や英語では言語習熟度がタイピングに好影響を及ぼしている。打ちながら読解し、先の流れを推測できるメリットは計り知れない。単語の羅列ではなく文章として認識できるため、速度は落ちないしミスも減る。タイプウェルやTypeRacer、monkeytype、10FastFingers等の短距離種目では日本人タイピストの中でも決して速くない筆者が、Interstenoや毎パソ等の中長距離種目で上位に居座っていられるのはこのためだ。また、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語に関しても、英語に似たスペルの単語が多数出現するため、英語習熟度がある程度影響を及ぼしている。

さらに、第二外国語としてある程度習得したドイツ語に関しては、長い単語を見た時にどこで区切るかが概ね分かるというメリットを体感できた。同じゲルマン語派のオランダ語に関しても、習得はしていないものの、同様のメリットを享受した。

一方、第三外国語として選択しつつも習熟が甘かったフランス語では、タイピングに好影響を及ぼす段階に至っていない。2017年以降のフランス語のスコアアップの要因は、特殊文字や一部の単語に慣れたことであって、フランス語の習熟とは無関係である。まして、第四外国語以降を新規に習得するとなると、タイピングに好影響を及ぼすレベルまで引き上げるには数年かかりそうだ。長期的視野で取り組むべき課題と言えるだろう。

(2) 各言語の頻出単語・頻出シーケンスの習得

短期的にできる対策は、これに尽きる。例えば、10分間練習を100回繰り返せばある程度の成果を期待できる。例えばハンガリー語に関しては、2016年大会に向けて重点強化する過程で幾つかの頻出単語を覚えたことで、明らかに高速化された。azonban(しかし)、napjainkban(今日)といった打ちやすい単語に加えて、egészség(健康)のような打ち辛い単語も高速化できたのは収穫だ。その甲斐あって、2020年の練習では5039まで伸ばし、ようやく5000の壁を破った。2021年の本番ではegészségが頻出したため、懐かしさを覚えつつ高速に打ち抜けた。

2017年大会に向けて重点強化したロシア語でも、本格的な高速化には至らなかったものの、頻出単語は幾つか覚えることができた。Takiの練習課題では、жизни(生活)、подход(アプローチ)、Москве(モスクワ)、экономических(経済の)、воспроизводство(再生)、распределения(配布)、производство(生産)といった単語が頻出する。2023年には本番で4800台まで伸ばした。さらに練習を積めば5000に到達できると確信している。キリル文字、頻出単語、頻出シーケンスにはまだまだ慣れる余地がある。

他の難関言語も例外ではない。2018年にスロバキア語で4970まで伸ばしたのは、大いに自信になった。2020年以降、ポーランド語、チェコ語も以前の記録を更新し、5000が視野に入ってきた。

中速言語の底上げも順調だ。2019年に開眼したポルトガル語では、2021年の本番で5700を突破した。加えて、ドイツ語とフィンランド語も壁を破った。クロアチア語、ルーマニア語も最高記録・平均得点ともに伸びており、数年後の5500到達が有望だ。

そして高速言語。フランス語では2021年の本番でついに6000を突破した。イタリア語、トルコ語も次のステップに向けて歩みを進めている。当然、ここが限界ではない。英語では6200台を連発していたのだ。確かに英語以外の言語では特殊文字で減速を強いられる。だが、特殊文字の出現頻度を考慮すると、これだけで1割以上も遅くなることはないはずだ。言語に、単語に、シーケンスに、慣れていないだけだ。特殊文字の多いフランス語で他の高速言語と互角以上のスコアが出ているのは、英語に似たスペルの単語が多く、脳と指が慣れているからだ。

(3) 来年の重点強化言語

表11に示す通り、全17言語にまだ伸ばす余地がある。但し、課題収集と全文入力はほぼ終了したため、2019年までのような顕著な伸びはもはや期待できない。地道な練習により少しずつ実力を積み上げていくしかない。日本語については、transliteratedの仕様を考慮すると、ローマ字入力を引き続き底上げしたい。この他、本番で自己ベストかそれに近い得点を叩き出した言語についても、さらに伸ばす余地がある。

一方、練習量が低下した場合は伸びが鈍ることも考えられる。練習が疎かになった2020年のルーマニア語が好例だ。どの言語を重点的に伸ばすか、そして実力の低下を最小限に抑えるにはどの程度の練習をこなすべきか、全体最適の視点から戦略的に練習を進めていきたい

【表11:各言語の成長余地という観点での分類】

カテゴリ言語
高速化未完成ハンガリー語、英語、スロバキア語、ポルトガル語
正確性未完成フィンランド語
本番自己ベストロシア語、チェコ語、クロアチア語、ルーマニア語
本番記録更新ポーランド語、オランダ語、ドイツ語、トルコ語、スペイン語、日本語
本番自己ベスト付近フランス語、イタリア語

(4) Interstenoへの働きかけ

これは個人として総得点を伸ばすというよりも、将来を見据えて公平かつ公正な競争環境を維持し、裾野を広げるのが目的だ。

まず各言語の練習問題に残る問題点について。筆者が指摘済みだがまだ修正されていないものもあるし、その後新たに見出したバグも存在する。ある程度まとまった段階で、再び粘り強くInterstenoのTaki担当者に働きかけて、修正を促していく。同時に、€(ユーロ)や£(ポンド)等、欧米人には常識であっても日本人には馴染みが薄い記号については、打鍵方法を啓蒙するという手段もある。

次に日本語の仕様について。2022年には方言の一つとしてローマ字入力種目(transliterated)が導入された。一参加者としては歓迎だ。筆者のスコアは、従来の漢字かな交じり文と比較して1000点近く改善された。また、日本人以外のタイピストたちも日本語を打てるようになり、2015年の日本語(漢字かな交じり文)導入以来続いていた日本人の優位性は消滅した。これにより、コンテストとしての公平性は明らかに向上した。

一方、日本語(漢字かな交じり文)に設定されている係数2.2607の引き上げという課題がまだ残っている。これはひらがなから漢字への変換のコストを考慮に入れず、実態より低く設定された係数である。ほとんどの日本人タイピストにとって、日本語(transliterated)の方が日本語(漢字かな交じり文)よりもスコアを稼げる。その結果、日本人タイピストも皆transliteratedを選択するようになる恐れがある。

この係数を2.95に引き上げるための提案を、Intersteno Japanとして実施した。10名のタイピストたちにご協力頂き、漢字かな交じり文とtransliteratedの比較を実施し、基礎データとした。そして2022年8月にInterstenoのScience Committeeでは承認された。だが、その後Boardでの承認に手間取り、結局Intersteno2023オンライン大会には間に合わなかった。引き続き検証と提案を実施し、2024年大会に間に合わせたい。


●参考文献・謝辞

Pocariさん:Interstenoオンライン大会への日本語部門追加を先頭に立って推進し、実現にこぎつけたのみならず、2015年の日本人参加者120名もの参加費までご負担頂きました。2016年以降の日本語部門継続にあたっても紆余曲折があり、各国代表との交渉に奔走されたと聞いております。この方の尽力なくしては、筆者はInterstenoの存在すら知らず、まして参戦など考えもしなかったことでしょう。ありがとうございました。2020年5月以降音信不通となり、その後2021年10月に一度ご連絡を頂いたものの再び音信不通となり、大変心配です。

ジュニアさん:最難関のロシア語を含む全17言語への参戦を目指し、最も早い段階で練習に着手していました。その過程では、各言語の専用配列を習得し、特殊文字や記号の入力方法を一から調査・導入されるなど、先行者として並々ならぬ苦労があったことと推察します。

かり〜さん:2015年から多言語タイピングWikiで積極的に情報発信し、筆者を含む多くの初心者に多言語参戦への道筋を示して下さいました。さらに2017年大会に向けた新たな取組みとして、初心者向け多言語対戦会や10FastFingers大会を開催されています。

たのんさん:2017〜2020年大会に向けて、TypeRacer多言語対戦会の開催および毎週参戦により、積極的に引っ張って下さいました。2017年10月以降のパワーアップには大いに刺激を受けました。

paraphrohnさん:2016年大会に向けて、早い段階で「総合8万点で世界一」という高い目標を掲げ、それを有言実行することで日本人参加者全体を引っ張って下さいました。また、インテルステノ用paraph配列集の作成・配布に加えて、TypeRacer多言語対戦会を毎週開催して頂いたお陰で、筆者を含め参加者のレベルは前年とは比較にならないほど向上したと言えるでしょう。

やださん:Takiソフトウェアで出現した "This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーに対して、画面サイズを拡大するか文字サイズを小さくすることで解決できるという情報を頂きました。

どりすとさん:上記の問題につき、www.intersteno.itで打てば問題無いという情報を頂きました。筆者は2016年大会以降、練習も本番もこちらのサイトのみで打っています。

司@dvorakさん:文章内の文字の出現頻度調査に役立つ文字出現頻度分析ツールをご紹介いただきました。筆者は主にロシア語の文章で活用させていただきました。

三食小籠包さん:2023年にTypeRacer多言語対戦会を3年ぶりに復活させ、積極的に引っ張って下さいました。

愛する家族:3〜4月の土日という、本来は育児・家事・家族サービスに充てるべき貴重な時間の大半をInterstenoの多言語参戦に投入できたのは、間違いなく家族のおかげです。ありがとう! ……というよりも、我ながらろくでもない夫・父親だと思う。来年以降もオンライン大会に参加するなら、ゴールデンウィークの全部または一部を毎年潰すことになるというジレンマがある。


●各種資料

Intersteno2023関連の資料を以下に公開します。必要に応じ、自己責任でご利用下さい。また、著作権等で問題が発生した場合は即削除します。

Intersteno拡張dq配列(基本16言語)
Intersteno拡張dq配列(拡張60言語)
→Intersteno, TypeRacer, monkeytypeで使用した配列。インストーラとともにMSKLC用のファイルもあります。基本16言語はIntersteno攻略用(日本語除く16言語)、拡張60言語はそれに加えてTypeRacer, monkeytype攻略用です。

注1:言語によっては慣れるまでに相応の時間が必要であり、短期決戦には不向きです。
注2:このMSKLCファイルはWindows10環境でBuildできないことがあります(エラー対処を実施していないため)。必要ならばWindows7, Vista, XPのいずれかでBuildし、結果ファイルをコピーして下さい。

Intersteno拡張dq配列:仕様書
→上記配列の仕様書。

Interstenoの各言語ランキングと統計資料
→eighさんの統計資料を参考にしつつ、自分用にVBAで作成していた資料です。本レポートにはこのデータを一部使用しています。ソースコードは非公開。

Interstenoランキング:仕様書
→上記資料の仕様書。

Intersteno課題文の解析資料
→各言語の練習課題(1分間課題計2024個、10分間課題計626個)を自力で収集・入力した資料です。配列作成の際に、特殊文字や記号、qvwxyz等の文字の出現頻度を解析するために使用しました。また、InterstenoのTaki担当者への問題点の報告は、この資料をベースに実施しています。練習時の最高記録も掲載してあります。

注:入力時の正確性は99%以上あると自負しています。また、2023年に追加された新課題を除き、再入力によりミスを検出して正確性を高めています。しかし、筆者も人間である以上100%でないことはご了承下さい。

Intersteno練習の各種統計
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015〜23年に計2893回。本番含む)の各種統計として、「言語毎の最高記録、平均得点、平均速度、平均ミス数」「本番の記録との比較」「練習回数」「ミス数別の試行回数」をまとめたものです。

Intersteno練習記録
→Intersteno対策として実施した10分間練習の詳細をデータベース化したものです。上記の統計資料はすべてこのデータから作成しています。

本番準備・実施手順書
→「トルコ語配列のまま英語を打つ」「省電力モードが発動して画面が暗くなる」等の間抜けな事故を防ぐために作成した手順書です。

各言語の各文字の得点一覧表
→ほぼすべての言語で、大半の小文字は1文字1点、大文字は2点です。一方、2打鍵以上を必要とする特殊文字にはそれ以上の点数を割り当てている例があります。2023年の大会直前にこのテーブルの一部が変更されたようです。その結果、ポーランド語、スペイン語、ポルトガル語では総得点が増加し、フィンランド語では減少しました。


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