Intersteno2026オンライン大会:レポート(2026.3.13-4.27)



Interstenoとは
筆者の結果
プロローグ
戦略
戦術
各言語の対策(主要なもののみ)
感想(というよりも反省)
参考文献・謝辞
各種資料


●Interstenoとは

Intersteno(国際情報処理連盟)とは、1887年に設立された、速記者やタイピストを中心とする団体である。オフラインの速記およびタイピングの大会を2年に1回(2007年以降)、オンラインのタイピング大会を1年に1回(2003年以降)実施している。以下の記述は、2026年3〜4月に開催されたオンライン大会に関するものである。

公式ランキングはこちら

日本人ランキングはこちら

オンライン大会には、最大18言語で参加可能である。練習サイトであるTAKIソフトウェアの順番に並べると、イタリア語、英語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、スペイン語、トルコ語、ポルトガル語、ルーマニア語、日本語、フィンランド語、チェコ語、スロバキア語、ハンガリー語、ロシア語、ポーランド語、ルクセンブルク語、クロアチア語/セルビア語である。

各言語で初見の課題を10分間打ち、「総打鍵数−ミス数×50」を得点とする。この得点の合計値で競う。従って、速度を上げることも重要だが、それ以上に正確性を上げることが非常に重要である。但し、毎日パソコン入力コンクール(以下「毎パソ」)とはミスの定義が違う。例えば、1単語内の入れ替えミス(例:that→taht)や、1行すっ飛ばしは、1ミスとカウントされる


●筆者の結果

【表1:本番の結果】

言語得点速度(文字/分)ミス数順位参加者数
英語5678(-115)587.8(+8.5)4(+4)5(-)373(-7)
イタリア語5676(+8)577.6(+0.8)2(-)5(-1)169(-10)
フランス語5597(-183)569.7(-8.3)2(+2)2(-1)111(-25)
ポルトガル語5572(+162)567.2(+16.2)2(-)2(-)91(-17)
オランダ語5553(+119)555.3(+1.9)0(-2)2(-1)178(-24)
スペイン語5459(+30)560.9(+8.0)3(+1)3(-1)159(-14)
トルコ語5356(+85)535.6(-6.5)0(-2)8(+3)351(+92)
ルクセンブルク語5305(+131)550.5(+23.1)4(+2)2(-)98(-27)
クロアチア語/セルビア語5274(-64)537.4(-6.4)2(-)2(+1)316(-25)
ドイツ語5253(+120)530.3(+2.0)1(-2)2(+1)207(-56)
フィンランド語5125(+249)522.5(+24.9)2(-)1(-)129(-14)
ポーランド語5062(-87)536.2(+6.3)6(+3)4(+1)69(-40)
ルーマニア語4984(-283)513.4(-18.3)3(+2)2(-1)70(-18)
チェコ語4937(-68)498.7(-11.8)1(-1)7(-)284(-2)
ハンガリー語4868(+245)496.8(+19.5)2(-1)2(+1)96(-36)
スロバキア語4817(+92)496.7(+14.2)3(+1)2(+2)297(+40)
ロシア語4654(-139)480.4(-13.9)3(-)2(+2)31(-18)
日本語4490(-703)464.0(-75.3)3(-1)4(-1)180(-13)
合計93660(-401) 43(+5)2(-1)1077(+82)

※()内は昨年比。
※得点、速度、ミス数、参加者数は増えた時に+表示。順位は上がった時に+表示。
※英語には米語、オランダ語とフランス語にはベルギー方言、イタリア語にはスイス方言、クロアチア語/セルビア語にはセルビア語(ラテン)、ドイツ語・日本語には本家で参加した。
※順位は4/28 日本時間7:00時点のもの。また、方言(例:本家ドイツ語とスイスドイツ語)はまとめて集計した。
※大きな変化は、日本語の惨敗。

【表2:主な記録】

・フィンランド語で世界第一位
・ルクセンブルク語、ハンガリー語で本番記録を更新
・全18言語で8位以内(18言語になってからの全言語10位以内は初)

【表3:10分間練習の結果】

言語最高記録平均得点平均速度平均ミス数
英語5967(+27)5714(-4)586.1(+3.4)2.95(+0.77)
イタリア語5734(+66)5499(+93)563.8(+6.5)2.78(-0.57)
フランス語5889(+109)5555(+78)571.0(+9.1)3.11(+0.26)
ポルトガル語5572(+133)5295(-51)544.2(+0.8)2.93(+1.18)
オランダ語5574(-51)5363(+80)546.8(+7.3)2.09(-0.13)
スペイン語5800(+136)5501(+34)560.1(+2.7)2.00(-0.14)
トルコ語5521(+164)5333(+75)542.4(+2.3)1.83(-1.02)
ルクセンブルク語5305(-50)4975(-19)517.5(+3.8)4.00(+1.14)
クロアチア語/セルビア語5429(+91)5109(+135)529.1(+9.5)3.63(-0.79)
ドイツ語5396(-19)5202(-15)534.5(+2.1)2.85(+0.72)
フィンランド語5131(-126)4982(+11)509.7(+2.6)2.30(+0.30)
ポーランド語5091(-58)4944(+11)512.3(+0.4)3.57(-0.14)
ルーマニア語5247(-20)5064(+79)522.5(+7.9)3.23(-)
チェコ語4937(-68)4693(-20)485.5(-2.2)3.25(-0.05)
ハンガリー語4868(+82)4588(+51)474.9(+6.2)3.22(+0.22)
スロバキア語4916(+6)4648(+32)488.1(+6.6)4.67(+0.67)
ロシア語4917(-68)4647(+201)481.6(+14.9)3.38(-1.04)
日本語6449(+136)5970(+69)611.4(+7.5)2.89(+0.11)
合計/平均97743(+490)93081(+838)533.9(+10.1)3.09(-0.05)

※()内は昨年比。
※上記の数字には本番も含む。
※TAKIソフトウェアのバグによるミスと、それによる減点も含む。


●プロローグ

2026年オンライン大会では、モチベーションの維持に苦労した。
2023年の17言語90233点は、運と実力が極限まで噛み合って、神降臨まで引き出してようやく叩き出した、己の多言語攻略人生の集大成とも言えるスコアである。これにルクセンブルク語の5000点を加えれば、理論上は95000点を突破できる。しかし、生半可な努力では再現できる気がしなかった。加えて、昨年までと同じ練習を同じように継続するモチベーションもなかなか湧き起こらなかった。

そこで、表4に示す三項目の新たな挑戦を自らに課すことにした。

【表4:新たな挑戦の内容】

(1) 日本語には漢字かな交じり文で参戦し、6000を目指す。
(2) 2025年に追加されたルクセンブルク語で5500突破を目指す。
(3) アラビア語の鍛錬を並行して実施し、monkeytypeのエジプトアラビア語で100wpmを目指す。

(1) に関して、2024年に日本語(漢字かな交じり文)の係数が2.2607→2.95と改善された。2015年の日本語導入以来初の変更である。即ち、2023年以前と比較して約1.3倍のスコアアップを見込める。2022・2023年大会では日本語(transliterated)の方が有利であり、筆者のスコアも約1000改善された。しかし日本語(漢字かな交じり文)では、漢字含有度や変換の難易度にもよるものの、さらなる得点を獲得できると想定される。そこで、transliteratedでも未達成の6000を目指す。ちなみに2024年から同じ目標を掲げて未達成であるため、今年はそのリベンジという側面もある。

(2) に関して、TAKIソフトウェアで練習したところ、2025年に10分間練習で5355まで伸ばした。そこで本番での再現を狙う。あわよくば、世界一を狙う。

(3) に関して、筆者は2025年10月にアラビア語タイピングを開始した。その難易度は高く、2026年3月時点で「monkeytypeで100wpm達成、他方言やTypeRacer、Klavogonkiでは未達成」という中途半端な状況だった。Intersteno期間中にアラビア語タイピングを中断するのもためらわれた。何しろ、1カ月を超えるサヴォリ期間があると、リハビリに多大な労力を必要とするためだ。タイピングをやっていて最も嫌なのは、長期にわたるサヴォリの後、退化しきった結果を数字で見せつけられる瞬間である。確かにリハビリを続ければいずれ元の実力を取り戻すことはできる。だが、モチベーションが続かずそのまま練習をやめることもある。そこで、Interstenoの18言語に悪影響が出る(具体的には、時間が割かれる)のを承知で、アラビア語の練習を継続することにした。


●戦略

2023年のレポート来年に向けてに記載した通り、全18言語で積極的に攻めることによる速度アップを狙う。もちろん、正確性を保ったまま高速化するのが望ましい。だが、大前提として速度を上げないことにはスコアも頭打ちになる。これに関しては、基本的に、2016年大会である程度確立した戦略を踏襲した。同様のアプローチでもう少し伸ばす余地があると考えていたためだ。但し、必要に応じて修正を加えた。

(1) 各言語の配列の再検討 〜頻出特殊文字の1打鍵化〜

2017年と同様。但し、ロシア語配列とポルトガル語配列に修正を加えた。詳細は多言語dq配列の通り。

ロシア語では、[п]を[@]に、[й]を[z]に仕込んでいた。しかし頻出する[про〜][пор〜]でミスタッチが目立つため、昨年9月、MEGAlingua 2025が終了したタイミングで、これらのキーを逆に配置することにした。さらに、[ъ]を[:→z]に仕込んでいた。しかし、この文字の出現率は意外と高いため、2打鍵では非効率だ。そこで、[9]に仕込んで1打鍵化した。代わりに[9]は[半角/全角→9]に移動したため、出現頻度が低いとはいえ他の数字との混同に注意が必要だ。この配列変更により、約0.1%の高速化を実現した。打鍵数の減少よりも、右手の消耗が減ったメリットの方が大きい。

ポルトガル語では、paraphrohnさんが昨年公開した新配列を参考に、新たに[k]をデッドキーに採用した。従来デッドキーとしていた[^]には[à]を仕込む。外来語等で[k]が出た時の対策が課題だが、出現頻度が低いためほぼ問題無いと判断した。

(2) 各言語の配列の再検討 〜デッドキーの活用〜

2017年と同様。

(3) 基礎力強化 〜monkeytypeによる多言語鍛錬〜

2025年5月から2026年2月にかけて、monkeytypeを用いて表5に示す方針で鍛錬を重ねた。多言語への耐性は間違いなく増強されたと思う。なお、プレイ時間は初期設定値の30秒とした。また、ノーミスタッチを前提とした。即ち、一度でもミスタッチをしたらEscである。BSで修正して打ち直すと、結果画面の正確性は100%にならないし、グラフやinput historyにミスの履歴が残る。これでは美しくない。

【表5:monkeytypeのプレイ方針】

言語方針
ヘブライ語、アラビア語100wpmノーミス達成(語彙増加版含む)
新規追加言語
やり込み度の甘い言語130wpm以上ノーミスを目指し再挑戦
キリル文字使用言語継続
高速言語(英語等)

ヘブライ語とアラビア語を打ったのはこちらに示す通り、個人的趣味によるものだ。将来Interstenoでヘブライ語やアラビア語を打つ日が来る可能性はあると思う。だが、この先数年のことではないだろう。よって、Intersteno2026オンライン大会に向けた直接的な対策にはならない。

並行して、新規追加言語も打ってきた。当面の目標は100wpmノーミスだ。バージョン更新情報やGitHubを注視して、新規追加言語を見つけては打ち続けた。その結果、ラテン文字・キリル文字・ギリシャ文字・ひらがな/カタカナ・ハングル・ヘブライ文字・アラビア文字を使用する76言語で100wpmノーミスを達成した(昨年比+6言語)。

いざ100wpmノーミスを達成すると、やり込み度の甘い言語が気になり始めた。1〜数回打って終わりという言語も複数存在した。そこで、特殊文字の少ない言語を中心に、130wpm以上を目指して2周目を開始した。最終的に、40言語で130wpmノーミスを達成した(昨年比+1言語)。

キリル文字使用言語を継続するのは、キリル文字の打ち方を忘れないためだ。何しろ、Interstenoの18言語のうち筆者がラテン文字で参加するのは16〜17言語ある(日本語をtransliteratedで打った場合に17言語となる)のに対して、キリル文字で参加するのは原則としてロシア語のみだからだ。クロアチア語の代わりにセルビア語を選択しても、キリル文字は2言語のみだ。従って、Intersteno対策だけを考慮するとキリル文字の練習が明らかに不足する。この意味で、monkeytypeを用いたキリル文字使用言語の鍛錬には一定の成果があった。

高速言語(英語等)は別の意味で継続が必要だ。打ち方を忘れることはもはや無い。だが、鍛錬を怠ると高速打鍵が少しずつできなくなっていく。特に左手を酷使する単語が明らかに遅くなる。そこで、語彙増加版や英語ベースのcode(各種プログラミング言語)等を用いて鍛錬を継続した。

(4) 基礎力強化 〜Klavogonkiによるロシア語鍛錬〜

ロシア語ではKlavogonkiをメインとした。TAKIの10分間練習の文章は34個しかなく、繰り返し練習すると部分的に覚えてしまうためだ。そこで、2025年9月〜2026年2月にKlavogonkiを継続的に打ち込んだ。その結果、表6に示す成果を得た。一方、特に通常モードで記録を追い求める過程で、ミスしたら即棄権するという悪い癖がついてしまった。

【表6:Klavogonkiの練習結果】

モード記録
通常620cpm
マラソン(5分)465cpm

(5) 練習スケジュール

2月も中旬となり、大会期間が迫ってきたため、満を持して練習を開始した。表7の通り、本番対策と同様に1週間に4言語を練習した。但し、ロシア語とルクセンブルクを継続した。前者はキリル文字に、後者は新たな配列や単語に、充分に習熟する必要があったためだ。また、3/14〜15の本番実施を見据えて、3/2から練習していた4言語を次の週も継続した。以上により、この段階では18言語中8言語しか練習できなかった。ここで練習できなかった10言語には、ほぼ例外なく後で苦戦することとなった。

【表7:練習スケジュール】

期間言語(継続)言語(その他)
2/16-22ロシア語、ルクセンブルク語フィンランド語、ドイツ語
2/23-3/1スロバキア語、チェコ語
3/2-15クロアチア語、ルーマニア語

2020年以来、新型コロナウィルスの影響で在宅勤務となったため、平日は業務終了後に即練習できる。このため、当初は1分間練習によるリハビリを実施しつつも、徐々に本番を想定した10分間練習に切り替えた。単に10分間打つというノルマをこなすだけの無益な練習を徹底して排除した。但しフィンランド語とスロバキア語は1分間練習をメインとした。10分間練習の課題数が限られており、文章を覚えてしまうリスクがあったためだ。

2021年〜2026年大会に向けた練習量の比較は表8の通り。2026年の練習量は計260回で、昨年よりも微増した。2023〜2024年に実施した未打鍵課題潰しの分を差し引いて比較すると、実質的な練習量は2022年以降ほぼ変わらない。とはいえ、大会期間が約7週間あったため、大半の言語で必要十分な調整を実施できた。

【表8:10分間練習の打鍵回数の比較】

言語2021年2022年2023年2024年2025年2026年
英語1733161717(-)20(+3)
イタリア語1382012117(-104)23(+6)
フランス語12121581620(+4)19(-1)
ポルトガル語141410128(-4)14(+6)
オランダ語8109189(-9)11(+2)
スペイン語13910137(-6)10(+3)
トルコ語71113927(-85)12(+5)
ルクセンブルク語----28(-)28(-)
クロアチア語/セルビア語910149512(-83)19(+7)
ドイツ語81411148(-6)13(+5)
フィンランド語45756(+1)10(+4)
ポーランド語46487(-1)7(-)
ルーマニア語914164513(-32)13(-)
チェコ語131691110(-1)8(-2)
ハンガリー語911678(+1)9(+1)
スロバキア語77577(-)6(-1)
ロシア語743344036(-4)29(-7)
日本語93769(+3)9(-)
合計163226349527229(-298)260(+31)

※前年オンライン大会終了翌日から当年オンライン大会終了当日までのすべての10分間練習を含む。
※本番、仕様調査、および未打鍵課題潰しを含む。
※文章が短いために10分未満で打ち切った練習は除く。

(6) 本番実施の順序

全18言語の本番を1〜2日で実施するのは非効率である。本番実施を繰り返すことで、肉体的にも精神的にも著しく疲労するためだ。さらに、練習の質・量が甘いと各言語の特殊文字や頻出シーケンスを混同するリスクがある。

今回の大会実施期間は3/13〜4/27となり、46日間確保できた。期間的には余裕があり、準備不足の言語を翌週に回すという戦略を適用できた。結果的に、1週間に2〜4言語のペースで本番を打ち進めた。

本番に向けたスケジュールは表9に示す通りである。

【表9:2026年大会の本番に向けたスケジュール】

期間低速言語中速言語高速言語
3/3-15ロシア語ルクセンブルク語、クロアチア語、ルーマニア語 
3/16-20スロバキア語、チェコ語ルクセンブルク語、クロアチア語 
3/21スロバキア語、チェコ語 英語、スペイン語
3/22-29ハンガリー語トルコ語英語、スペイン語
3/30-4/4ハンガリー語トルコ語、ポルトガル語英語
4/5ポーランド語ポルトガル語英語、オランダ語
4/6-11ポーランド語ポルトガル語日本語、オランダ語
4/12フィンランド語日本語、オランダ語
4/13-18フィンランド語、ドイツ語フランス語、イタリア語
4/19ドイツ語フランス語、イタリア語
4/20-27フランス語、イタリア語

※ハンガリー語とトルコ語の配列は親和性が高い(öüをwqに配置)。
※フランス語とイタリア語の配列は共通。また、経験値が高い。
※チェコ語とスロバキア語の配列は親和性が高い(特殊文字を34567に配置)。
※スペイン語とチェコ語、スロバキア語、ハンガリー語の配列は親和性が高い(áéíを@[]に配置)。
※ドイツ語とオランダ語は言語として親和性が高い(ゲルマン語派)。
※ドイツ語とフィンランド語の配列は共通。
※ロシア語、ルクセンブルク語の配列は、どの言語とも共通点が少ない。

基本的に、2016年以来のスケジュールを踏襲した。高速に打てる言語(英語、フランス語、イタリア語、日本語、スペイン語、オランダ語)と速度の出ない言語(セルビア語、ロシア語、ハンガリー語、チェコ語、スロバキア語、ポーランド語)を可能な限り分散させた。これは、高速に打つ感覚を維持するとともに、低速言語を底上げするためだ。

また、親和性の高い言語や、共通の配列を使う言語は、同じ週に打つのが効率的だ。逆に、混同する可能性の高い言語(例:フランス語とスペイン語、ハンガリー語とドイツ語、ポーランド語とチェコ語)を同じ週に打たないように注意した。なお、チェコ語とスロバキア語にも混同しやすい部分がある。だが、配列の親和性による相乗効果の方が上回ると判断し、同じ週に実行することとした。

但し、3/16-20ではクロアチア語・チェコ語・スロバキア語の配列に混同が発生した。具体的にはžčšだ。これらの言語は同時に練習すべきでない。

……

最終的な本番実施スケジュールは表10の通りである。平日は仕事があるため、本番実施は土日や祝日がメインとなる。

【表10:2026年大会の本番実施スケジュール】

日付・時間帯言語累計得点コメント
3/15(日)午後ルーマニア語4984指が動かず。打てばミス、打たねば硬直
3/15(日)夕方ロシア語9638惨敗。本番にピークを合わせられず
3/20(祝)午後セルビア語(ラテン)14912速度重視で攻めるも、硬直やミスタッチが多発
3/20(祝)夕方ルクセンブルク語20217練習の成果を発揮し、攻めまくった
3/21(土)午後スロバキア語250345000目指して攻めるも、初見文章は甘くない
3/21(土)夕方チェコ語299715000目指して攻めるも、終盤痛恨の2ミス追加
3/29(日)夕方スペイン語35430不調時に本番を決行せざるを得ず、練習の成果を出せず
4/4(土)午後トルコ語40786びびり過ぎて速度出ず。ノーミスは運
4/4(土)夕方ハンガリー語45654m5bilisimでの対策が功を奏した
4/5(日)夕方英語51332ミス⇔BSの嵐で30秒以上ロス。惨敗
4/11(土)午後ポーランド語56394序盤びびり過ぎ。終盤力尽きて3ミス追加
4/11(土)夕方ポルトガル語61966超速度重視で猛然と突進
4/12(日)午後オランダ語67519緊張感から何度も崩されたが、立て直し続けた
4/12(日)夕方日本語72009変換難易度の非常に高い文章に苦戦
4/18(土)夕方フィンランド語77134m5bilisimでの特訓の成果を発揮
4/19(日)夕方ドイツ語82387終盤のスクロールタイミング揺れで5秒ロス
4/25(土)夕方フランス語87984改行位置ずれが発生し、探索と修正で10秒ロス
4/26(日)夕方イタリア語93660速度重視で攻めるも、最後にミス爆死


●戦術

(1) 練習課題文の収集と入力、再入力

InterstenoのTAKIソフトウェアに出現する1分間練習および10分間練習の課題文を収集した。結果は
こちら目的は、文字の出現頻度の調査の他に、ミスの原因把握と傾向調査である。2015年大会に向けた練習ではここができていなかったため、打鍵終了後に表示される結果画面からミスの原因を推測するしかなかった。ミスした単語をGoogle翻訳やGoogle検索に入力すると、正解らしき単語を見出せることもある。だが、すべてのケースでうまくいくわけではない。これでは練習効率が悪すぎる。

そこで、1分間練習の課題文を計2052個、10分間練習の課題文を計661個収集した(昨年以降の追加分はルクセンブルク語の1分間課題2個、10分間課題4個)。さらに、収集したすべての練習課題を実際に入力してExcelシートに整理し、ミスの原因を正確に把握できるようにした。具体的な方法は2018年と同様である。

さらに、全文再入力を実施した。合計で約960万文字だ(昨年以降の追加分は約12万文字)。その結果を過去の入力結果とEXACT関数で比較し、計2800箇所以上のミスを検出した(昨年からの増加分は約100箇所)。この作業の結果、残存ミス率は約0.05%から0.001%未満に減少したと推測される。

(2) TAKIソフトウェアの問題点、特殊文字への対応

TAKIソフトウェアの練習課題には、こちらに示す問題点が存在する。また、こちらに示す特殊文字・記号が出現する。いずれも2018年までに調査・実装済みだったため、今年もその成果を活用した。

(3) 方言の選択

ドイツ語、フランス語、オランダ語等の方言選択にも、上記の練習課題の収集結果資料が役立った。具体的には、バグや特殊文字の少ない方言を選択することで、練習の効率アップと本番の得点アップを狙った。

ドイツ語には本家ドイツ語の他にスイス方言が存在する。2019年以降は前者を採用している。両者の主な違いは、後者には原則としてß(エスツェット)が存在せず、ssで置き換えられることである。つまり特殊文字が1種類減るため、短期間での攻略が容易になる。但し、長い目で見れば、ssという連打に耐え続けるよりもßの位置を覚えて打つ方が負担が少ない。いずれにせよ出現頻度は低いため、実際には大差無い。なお、2016年と2018年のスイスドイツ語の本番では、ßが複数回出現した。このような場合に備え、ßを含む配列を準備し、かつ位置を把握しておく必要はある。

フランス語には本家フランス語の他にスイス方言、ベルギー方言が存在する。2016年以降、バグが最も少ないベルギー方言を採用している。但し、本質的な違いは調査しても分からなかった。その後、TAKI担当者とのやり取りの中で、本家フランス語やスイス方言では記号(;:!?)の直前にスペースが入る一方、ベルギー方言では入らないとの情報を頂いた。普段打ち慣れた仕様であるベルギー方言を選択して正解だった。

オランダ語には本家オランダ語の他にベルギー方言が存在する。本質的な違いは調査しても分からなかった。一字一句違わない課題文章を両者で使い回している事例も複数存在した。但し、一部の特殊文字は方言により得点が違うことがある。特にオランダ語ではベルギー方言の.が2点なので、スコアにして約1%有利になる。この仕様に気付いた2019年以降、ベルギー方言を採用している。

イタリア語には本家イタリア語の他にスイス方言が存在する。本質的な違いは無い。一部の特殊文字は方言により得点が違うものの、その出現頻度は非常に少ないため、影響は限定的だ。2024年の本番文章にはpiù(もっと)という単語が筆者の打った範囲内だけで9回も出現したため、他の特殊文字と合わせてスイス方言のスコアが約0.7%有利になった。しかしこれは例外だ。なお、2022年以降の本番ではスイス方言を選択している。たまたま練習でスイス方言の未打鍵課題潰しを実施していたためだ。

クロアチア語の代わりにセルビア語(ラテン)、セルビア語(キリル)を選択できる。セルビア語(ラテン)はクロアチア語とほぼ同じだ。セルビア語(キリル)はロシア語と同様キリル文字を使用する。しかしロシア語と違う特殊文字への対応が新たに必要で、難易度が高い。2024年には順位への影響が無いと判断し、敢えてセルビア語(キリル)を選択した。2025年にはクロアチア語に戻した。2026年には、気が向いたのでセルビア語(ラテン)を初めて打った。

日本語には日本語(漢字かな交じり文)の他に、ローマ字で記述された日本語(transliterated)が存在する。従来の漢字かな交じり文には事実上日本人しか参加できなかった。ひらがなやカタカナはともかく漢字は日本人以外にとって習得が非常に困難であるためだ。このデメリットを解消するためにtransliteratedが導入された。日本人にとっても、transliteratedの方が有利になる場合がある。理由は、変換の手間が無くなることだ。なお、2024年には漢字かな交じり文のスコア換算係数が2.2607→2.95と修正され、従来の不利は解消された。筆者は変換を苦手としないため、2024年以降は漢字かな交じり文を選択している。しかし本番文章の漢字含有率と変換難易度が高い状況が続いており、スコアは伸び悩んでいる。

(4) キーボードの選択

2017〜2019年大会では、東プレRealforce106(All30g)を主に使用した。日本語かな入力を除いて、All30gでもミスを抑えつつ高速化できるという確信を得たためだ。実際、2016〜2019年の総ミス数の推移は47→28→35→34、1言語あたりの平均値は2.76→1.65→2.06→2.00であり、2016年と比較して有意に減少している。

All30g適用の実験を開始したのは2016/12/19だった。2003年時点の筆者はこのキーボードを使いこなせなかった。打鍵時に隣のキーに指が軽く触れただけで認識され、ミス判定となる「かすりミス」が目立ったためだ。だが、東プレRealforce89U(45g/30g)で10年以上も正確性重視の鍛錬を継続してきたため、All30gでも次第にミスを抑えて打てるようになった。それならば、速度を出せるAll30gの方が良い。折しも、45g/30gのキーボードのSpaceキーのレスポンスが長年の酷使の影響で悪化し、高速打鍵に悪影響を及ぼすようになってきたため、All30gを久々に採用した。

但し、2019年は日本語のみ45g/30gに戻した。All30gが長年の酷使の末、5/3に至ってついに故障したためだ。

2019年10月、消費税増税前に新たに東プレRealforce(R2TLSA-JP3-IV)を調達した。All30g、かつテンキー無しという基準で選択した。このキーボードはタイプウェル国語Rの更新に役立った一方で、カスリが激増するというデメリットがあった。従ってIntersteno向けには使えないのではないかという危惧を抱いた。だが、APC設定を「よく使うキー2.2mm、使わないキー3.0mm」としたことで、カスリを防ぎ、Interstenoの実戦に投入する目途が立った。

(5) その他環境整備

2018年とほぼ同様。本番準備・実施手順書を作成し、遵守することで、人為ミスをシステム的に根絶することを目指した。但し2019年以降、Windows10機で打鍵中にフォーカスが勝手に外れる事故に悩まされている。2019年のフィンランド語と日本語、2021年のルーマニア語の本番でも発生した。当初は左Alt、右Alt、左Ctrlへの誤爆による何らかのショートカット発動が原因と考えていた。最大の要因である左Altのキートップを外す、あるいはソフトウェアで一時的に無効化するといった対策がまず考えられる。さらに、「セキュリティソフトの割込み」「プリンタドライバの割込み」等、他にも原因がありそうだ。原因究明のためMy Window Loggerを導入したが、まだ原因を見出せず、対策もできていない。

2020/4/7、自宅の電気契約を30Aから40Aに上げた。打鍵中にブレーカーが落ちてもPCはバッテリーで動くため問題無い。だが、ルータの電源も落ちるためネット接続が一時的に遮断される。これが危険すぎる。

(6) 初見課題対策

練習用課題には、特定の単語(例:国際労働機関)が頻出する。これに慣れきってしまい、他の単語の練習が不足すると、初見課題を打つ本番では当然ながら惨敗する。この傾向は、特に日本語とドイツ語、オランダ語、チェコ語で顕著であった。また、練習で出したスコアを過信してはならない。頻出単語に慣れればTAKIのスコアが改善されるのは当然だ。本番ではその分だけ低下する。この事実を忘れて練習を怠ってはならない。

フィンランド語、ポーランド語、スロバキア語等、10分間課題の少ない言語はTypeRacerやmonkeytypeを併用してこの欠点を補った。確かに、TypeRacerには「30秒ほどで終了する短文が多い」「フォントが見辛く、.,やlIやijの判別が至難」といった難点はある。だが、従来圧倒的に不足していた初見文章への対策にはある程度なったと思う。

一方、フランス語、イタリア語、トルコ語で大きく崩れなかったのは、練習用課題が豊富にあり、多くの単語に習熟できたためと考えられる。ドイツ語、オランダ語、チェコ語に関してもこの状態に持っていくため、TypeRacerやmonkeytypeで鍛えるのは有効と考える。

2026年にはm5bilisimon parmak(10本の指)で過去の本番文章を用いて練習した。paraphrohnさんが2025年に見出した、トルコの秀逸なサイトだ。表11に、このサイトの利点と欠点を記す。この対策は、TAKIの練習用文章の数が限られる言語において非常に効果的だ。具体的には、ハンガリー語、ポーランド語、日本語、フィンランド語でその効果を実感できた。他にも、ポルトガル語、ドイツ語、フランス語、イタリア語を練習した。来年以降、TAKIの使用は本番直前の調整のみに留め、m5bilisimに練習の主力を移しても良いと考える。

【表11:m5bilisimの特徴】

●m5bilisimの利点

・好きな文章を設定し、打てる
 →打ちたい文章をピンポイントで指定できる(TAKIと違って、ランダムに出現する文章を待つ必要が無い)
・文章打鍵前のカウントダウン時間が無い(TAKIはここ数年鈍重で、10秒以上待たされることもよくある)
・TAKIの10分間練習の文章数が少ない言語(FI,SK,PL,HU,ES,SR,JP等)の対策として非常に有用
 →過去の本番文章や、オフライン大会の文章を指定して練習すれば良い
・ロシア語、日本語、ヘブライ語等、ラテン文字以外の言語にも対応
・TAKIに似た設定ができる。さらに細かく、フォントや行間設定等を指定できる
・打鍵数とミス数、ミスの内容を把握できる。
・打鍵済みテキストが出力されるため、Intersteno仕様の得点計算もできる(各文字の得点テーブルと計算する仕組みが別途必要)
・10分打った場合、2秒ごとの打鍵数をグラフで確認できる
 →改行位置がずれた場合の探索と修正で10秒ロスしているので無駄、という分析が可能

●m5bilisimの欠点

・残り時間の確認がしづらい。画面右上に残り時間が表示されるが、それを見ると現在位置を見失う
・スクロールタイミングがTAKIと違う。1行すっ飛ばしは明らかに減るが、Interstenoの本番の対策にはならない
・打鍵結果に最後のSpaceが表示されない。打鍵数には反映される。打鍵結果処理時に1文字ずれている場合、この現象が原因
・日本語等、単語間にSpaceが無い言語では全体が1つの単語と認識されるため、画面下の部分に入ると改行のたびに行全体が上下に揺れ動く

(7) 本番の実施

ベストの体調で、ベストの時間帯に実施する。即ち、仕事・育児・家事と重ならず、かつ身体が覚醒しているタイミングで実施する。筆者は休日の夕方に実施することが多かった。朝や午後一はやめておく。脳が働かず、指の動きも鈍く、速度も正確性も低下するためだ。よって朝や午後一にはリハビリに専念し、脳の働きと指の動きを取り戻す。一方、昼間に仕事や登山ランニングをした場合や、リハビリが不充分な場合、眼精疲労や脳・腕・指の疲労が蓄積している場合には本番の実施を避ける。

また、1セット(約1時間)あたりの本番実施数は1言語、1日あたりの本番実施数は2言語に抑えたい。但し、充分な練習を積んだ状態で、体調が良く、指の調子も好調を持続している場合に限り、1セットに2言語、1日に3言語の本番を実施することも過去にはあった。

さらに、本番の直前に10分間練習を実施する。これは、本番で使用する配列に確実にセットすると同時に、他の言語との混同を避けるためだ。また、言語ごとに頻出する文字や単語、シーケンスが異なるため、本番の直前に目と指を充分に慣らしておく必要がある。但し英語や日本語など、ガチで10分間打つと疲労する高速言語についてはほどほどにしておく。疲労を防ぐため本気モードで打たないことが極めて重要だ。前半に速度が出すぎたと感じた場合には、後半にさらに力を抜く。そして気合を入れ直して本番に臨む。このようにして、本番にピークを持っていく


●各言語の対策(主要なもののみ)

2018年2019年2022年2023年とほぼ同様。


●感想(というよりも反省)

結果は合計93660点(昨年比-401)となった。優勝したAndreaには4507点差、即ちほぼ1言語分もの大差をつけられての惨敗となった。

当然ながら、来年もこの得点で同じ順位を獲得できると楽観はしていない。2015年以来の日本人の奮闘ぶりを見た諸国のタイピストたちが、座視しているとも思えない。正確性重視で速度を抑えてばかりでは絶対に勝てない。さらに、新たな強力なライバルたちが続々と出現してくる可能性もある。さらなる境地を目指すためにも、まずは今年の失敗と成功を分析する。

●新たな挑戦の結果

【表4:新たな挑戦の内容(再掲)】

(1) 日本語には漢字かな交じり文で参戦し、6000を目指す。
(2) 2025年に追加されたルクセンブルク語で5500突破を目指す。
(3) アラビア語の鍛錬を並行して実施し、monkeytype 5kで100wpmを目指す。

(1) に関して、日本語(漢字かな交じり文)では4490(ミス3)という屈辱的惨敗を喫した。係数が2.2607→2.95と変更された分が完全に帳消しになった。敗因は、突き詰めれば「初見の漢字かな交じり文の練習不足」だ。直前の10分間練習では、8回打って平均6155(ミス2.88)、最高6449(ミス0)、最低5821(ミス2)だった。全商高等学校ワープロ競技大会やその練習問題という初見文章を含めてもこの結果であり、6000突破は充分に狙えるという目論見だった。

本番の文章の難易度は、筆者にとっては過去最凶レベルに高かった。もはや言い訳にしかならないが。相変わらず、変換が一発で決まらない単語や、一発で決まるか否か瞬時に見切れない単語が多すぎる。加えて、筆者の語彙に無い単語も多すぎた。例えば[濃茶]は最後まで[のうちゃ]と読んでいた。当然ながら一発で変換されないため、毎回[こい→変換2→BS→ちゃ→変換]で強引に突破せざるを得なかった。[のうび→変換→BS→ちゃ→変換]の方がまだマシだったか。いずれにせよ、この単語を[こいちゃ]と読むという発想自体が、一切出てこなかった。

(2) に関して、結果は5305(ミス4)だった。練習を含めても、目標の5500には届かず。また、あわよくば狙っていた世界一にも181点差で届かなかった。むしろ昨年よりもAndreaとの差が拡大した。10分間練習(本番を除く)では27回打って平均4963(ミス4.00)、最高5302(ミス4)、最低4551(ミス6)だった。特殊文字の多彩さに加えて文中の大文字への対策も必要で、そう簡単に5500を狙える言語ではない。

(3) に関して、エジプトアラビア語の練習を継続した。確かに、Interstenoの18言語に割く時間は減った。だが、悪影響はほとんど無かった。また、エジプトアラビア語の成長ペースはやや鈍化したものの、順調に更新を続けて90wpmを突破した。この期間中丸々サヴォリを入れた場合と比較すれば、その差はあまりにも大きい。5月中の100wpm達成に向けて、だいぶ視界が開けてきた。

●改善すべき点

(1) 日本語の鍛え直し
(2) 本番に向けたピーク合わせ
(3) 老化に伴う英文打鍵力の低下
(4) ミスの抑制
(5) 判断の高速化

(1) 日本語の鍛え直し

来年以降も、世界記録に挑むなら漢字かな交じり文を選択する一手だ。確かに日本語(transliterated)では安定して5500前後を叩き出せる。その要因は、母国語であることに加えて、特殊文字が無いことに尽きる。しかし、英語の得点を上回ることは難しい。

一方、漢字かな交じり文では変換係数の見直しに伴い、2024年以前と比較して約1.3倍の得点を期待できる。2016年には旧係数2.2607で4752まで伸ばしているため、単純に1.3倍すれば約6200となる。即ち、transliteratedでは望み得ない高得点が期待できる。

しかしそのような高得点を実現するには、ローマ字入力と変換能力の両面で、鍛え直しが必要だ。TAKIの10分間練習では既に課題文章をある程度覚えてしまっており、初見で実施される本番への対策にはならない。従って、毎パソや社説等の初見文章を継続的に練習し、鍛え直す必要がある。さらに、来年以降も変換の難易度が高い文章が採用されるとすれば、さらなる難関文章を使った訓練が必要だ。特に、語彙を増やすために知識外の分野に手を出す必要があるだろう。

(2) 本番への適応、ピーク合わせ

練習時のスコアは、特に英語等の高速言語では頭打ちに近い。従って、本番に向けたピーク合わせは極めて重要だ。不調の時はよほどの例外を除いて打たないのはもはや当然だ。それに加えて、体調や脳の働き、指の動きを整えてコンディションを最高に持っていく必要がある。

表12に示す通り、2022年にはチェコ語とドイツ語で本番直前の練習にピークが合うという致命的な失敗を犯した。直前の練習と比較して、本番ではそれぞれ292点、372点も落ち込んだ。速度や正確性を必死に上げても、本番に向けた調整を失敗するだけで簡単にそれ以上の大失点を食らう。この問題を解決しないことには、未来が無さすぎる。

【表12:直前の練習と本番の差】

言語202120222023202420252026
ハンガリー語+129+358+217+203-163+409
フィンランド語+230-253+112+120-381+284
チェコ語-40-292+456+66+2+251
ロシア語-+115+281+53-192+213
ドイツ語-604-372+400-165-284+193
イタリア語+157+113+385+138+20+170
ポルトガル語+322+141+63-99-29+151
オランダ語-253-300+206+80-191+129
ルクセンブルク語-----84+88
ポーランド語+266-29-21+158+2+86
クロアチア語/セルビア語-43+75+591-41+85+62
トルコ語+241+40+333-145+98-14
スロバキア語-127+116+169-146-185-99
英語-247+277+187-160-67-116
スペイン語-279+204-169-37-235-225
フランス語+192+239+343+340+64-230
ルーマニア語-194+114+291+35+40-252
日本語-235+113+114-1389-758-1926
合計-485+659+3958-993-2258-826

2026年は、日本語を除けば17言語で直前練習比+1100だった。2023年には風呂という特殊なブースト要因を使用しているため、比較の対象として適切ではない。一方、それ以外の年と比較すれば、2026年は本番に向けたピーク合わせが概ね成功したと言える。裏を返せば、直前の練習で手を抜き過ぎたのかもしれないが。また日本語については、事前練習と本番との単純比較はもはや適切ではない。難所への対応方法や変換回数まである程度覚えている事前練習と比較すれば、初見文章で実施される本番では得点が大幅に低下する。このリスクを念頭に、本番の得点の見積もり方法を見直す必要がある。

(3) 老化に伴う英文打鍵力の低下

2022年以降、最大の改善点は英文打鍵力の低下と認識している。2021年には「戦略ミス」と分析した。しかしその背景には、老化があった。決して認めたくないことだが、老化との闘いが本格的に始まったことをこれでもかと痛感させられた。

まず認識能力が低下した。当然ながら、読めなければ打てない。次に打鍵能力も低下した。認識できても指が思い通りに動かない。特に英語の左手範囲を駆使する単語で顕著だった。挙句の果てには判断能力も低下した。認識あるいは打鍵のプロセスでミスをしても気付かない。2023年以降は風呂効果やmonkeytypeノーミスタッチ練習でこれらの問題の一部を一時的に解決できたかに見える。しかしベース速度は頭打ちであり、根本的な対策にはなっていない。

英文打鍵力の低下がドイツ語、オランダ語、スペイン語に悪影響を及ぼしたのは2021年以降共通だ。2025年以降はそれに加えて、フランス語とイタリア語にまで影響した。未打鍵課題潰しの終了に伴い、練習量が低下したためと考えられる。

(4) ミスの抑制

1ミスの増加は速度を5文字/分上げれば相殺できる。だが、速度の上昇がこの基準に満たない場合は、ミスを抑えるしかない。

2026年大会の総ミス数は38→43と増加した。英語のミス数が0→4、ポーランド語のミス数が3→6と増加した分を、他の言語で相殺しきれなかった。風呂効果不使用、速度重視など、幾つか要因が考えられる。

平均ミス率は0.046%で、昨年比+0.006%。3言語以上受験者の中では1位となった。この水準で満足せず、ミスの抑制(もしくは速度の向上)を目指す必要がある。

本番でノーミスを達成したのはオランダ語とトルコ語だけだった。2023年には8言語でノーミスを達成したのに、その後は高々2言語でしか達成できない年が続いている。練習時にも、英語での3回を筆頭に、8言語で計13回出すに留まった。

また、全260回の10分間練習(本番含む)中、1ミスは37回、2ミスは53回、3ミスは65回、4ミスは45回だった。昨年と比較すると、4ミス以内の確率が約78.6%から約82.7%に、ノーミスは約4.8%から約5.8%に増加した。一方、2ミス以内は約48.0%から約40.4%に減少した。確かに、未打鍵課題潰しの終了により、正確性が上がる要因は減った。とはいえ、全体として練習時の正確性は低下している。

ミスの内容にも着目する必要がある。一番やってはいけないのが「2単語にまたがるミス」だ。例えば英語のhello worldをhell oworldとミスすると、一瞬にして2ミス判定、-100点だ。また、2025年にはスペイン語で「1行すっ飛ばし+戻り」をやらかした。この場合は2ミスに加えて脱字/余字判定分の文字列の得点も差し引かれるため、約-170点のロスになる。これに関しては運もある。スクロールのタイミングが行ごとに揺れまくったり、改行のタイミングと重なったりした場合に、1行すっ飛ばし+戻りを完全に防ぐのは難しい。常に上の行との位置関係をチェックするという対策も考え物だ。その分だけ速度が落ちるためだ。

(5) 判断の高速化

2026年のベルギーフランス語では、7分前後で改行位置ずれが発生した。Spaceが1.5個あるようにしか見えない場所があり、探索と修正で10秒ロス。改行位置がずれたままだとさらなるミスを誘発するため、Spaceを2個にして先に進んだ。そして案の定、ここがミス判定となった。

Intersteno側への申告はしなかった。仮に認められたとしても1ミスが修正されるだけであり、失った10秒は戻らない。これでは50点しか変わらず、順位に影響しない。 教訓としては、探索と修正で10秒もロスするな、ということだ。判断は早めに。せめて5秒に抑えるべきだ。


●参考文献・謝辞

Pocariさん:Interstenoオンライン大会への日本語部門追加を先頭に立って推進し、実現にこぎつけたのみならず、2015年の日本人参加者120名もの参加費までご負担頂きました。2016年以降の日本語部門継続にあたっても紆余曲折があり、各国代表との交渉に奔走されたと聞いております。この方の尽力なくしては、筆者はInterstenoの存在すら知らず、まして参戦など考えもしなかったことでしょう。ありがとうございました。2020年5月以降音信不通となり、その後2021年10月に一度ご連絡を頂いたものの再び音信不通となり、大変心配です。

ジュニアさん:最難関のロシア語を含む全17言語(2015年当時)への参戦を目指し、最も早い段階で練習に着手していました。その過程では、各言語の専用配列を習得し、特殊文字や記号の入力方法を一から調査・導入されるなど、先行者として並々ならぬ苦労があったことと推察します。

かり〜さん:2015年から多言語タイピングWikiで積極的に情報発信し、筆者を含む多くの初心者に多言語参戦への道筋を示して下さいました。さらに2017年大会に向けた新たな取組みとして、初心者向け多言語対戦会や10FastFingers大会を開催されています。

たのんさん:2017〜2020年大会に向けて、TypeRacer多言語対戦会の開催および毎週参戦により、積極的に引っ張って下さいました。2017年10月以降のパワーアップには大いに刺激を受けました。

paraphrohnさん:2016年大会に向けて、早い段階で「総合8万点で世界一」という高い目標を掲げ、それを有言実行することで日本人参加者全体を引っ張って下さいました。また、インテルステノ用paraph配列集の作成・配布に加えて、TypeRacer多言語対戦会を毎週開催して頂いたお陰で、筆者を含め参加者のレベルは前年とは比較にならないほど向上したと言えるでしょう。また、2025年になって、m5bilisimという秀逸な練習用サイトを教えて頂きました。さらに、ポルトガル語のkをデッドキーとして特殊文字を配置するという画期的なアイデアを教えて頂きました。加えて、2026年になって、MSKLCの配列出力時のエラーの原因が(デフォルト設定の)C:\Program Files (x86)\以外へのインストールであることを教えて頂きました。

やださん:TAKIソフトウェアで出現した "This page and application is only for use on computers, not available for mobile devices." というエラーに対して、画面サイズを拡大するか文字サイズを小さくすることで解決できるという情報を頂きました。

どりすとさん:上記の問題につき、www.intersteno.itで打てば問題無いという情報を頂きました。筆者は2016年大会以降、練習も本番もこちらのサイトのみで打っています。

司@dvorakさん:文章内の文字の出現頻度調査に役立つ文字出現頻度分析ツールをご紹介いただきました。ロシア語をはじめとする多言語の解析に、大変役立っています。

三食小籠包さん:2023年にTypeRacer多言語対戦会を3年ぶりに復活させ、積極的に引っ張って下さいました。

Dashaさん:TAKIソフトウェアの練習で、こちらを使用すればこちらこちらと比較して余分なメニュー等が少なく、結果としてブラウザのズーム機能により文字サイズを拡大できるという情報を教えて頂きました。そろそろ老眼が始まった筆者にとって多大なる助けになりました。

コブレイさん全商高等学校ワープロ競技大会をご紹介頂きました。日本語の初見文章の練習に大変役立っています。

Isseyさん:上記大会に向けた練習用文章をご提供頂きました。同じく、日本語の初見文章の練習に大変役立ちました。

愛する家族:3〜4月の土日という、本来は育児・家事・家族サービスに充てるべき貴重な時間の大半をInterstenoの多言語参戦に投入できたのは、間違いなく家族のおかげです。ありがとう! ……というよりも、我ながらろくでもない夫・父親だと思う。来年以降もオンライン大会に参加するなら、ゴールデンウィークの全部または一部を毎年潰すことになるというジレンマがある。


●各種資料

Intersteno2026関連の資料を以下に公開します。必要に応じ、自己責任でご利用下さい。また、著作権等で問題が発生した場合は即削除します。

Intersteno拡張dq配列(基本18言語)
Intersteno拡張dq配列(拡張62言語)
→Intersteno, TypeRacer, monkeytypeで使用した配列。インストーラとともにMSKLC用のファイルもあります。基本18言語はIntersteno攻略用(日本語除く/セルビア語含む18言語)、拡張62言語はそれに加えてTypeRacer, monkeytype, Klavogonki攻略用です。

注:言語によっては慣れるまでに相応の時間が必要であり、短期決戦には不向きです。

Intersteno拡張dq配列:仕様書(ラテン文字)
Intersteno拡張dq配列:仕様書(キリル文字)
Intersteno拡張dq配列:仕様書(その他)
多言語dq配列(Intersteno拡張dq配列)
→上記配列の仕様書と説明資料。説明資料はInterstenoの言語にのみ対応。

Interstenoの各言語ランキングと統計資料
→eighさんの統計資料を参考にしつつ、自分用にVBAで作成していた資料です。本レポートにはこのデータを一部使用しています。ソースコードは非公開。

Interstenoランキング:仕様書
→上記資料の仕様書。

Intersteno課題文の解析資料
→各言語の練習課題(1分間課題計2052個、10分間課題計661個)を自力で収集・入力した資料です。配列作成の際に、特殊文字や記号、qvwxyz等の文字の出現頻度を解析するために使用しました。また、InterstenoのTAKI担当者への問題点の報告は、この資料をベースに実施しています。練習時の最高記録も掲載してあります。

注:入力時の正確性は99%以上あると自負しています。また、再入力によりミスを検出して正確性を高めています。しかし、筆者も人間である以上100%でないことはご了承下さい。

Intersteno練習の各種統計
→Intersteno対策として実施した10分間練習(2015〜26年に計3909回。本番含む)の各種統計として、「言語毎の最高記録、平均得点、平均速度、平均ミス数」「本番の記録との比較」「練習回数」「ミス数別の試行回数」をまとめたものです。

Intersteno練習記録
→Intersteno対策として実施した10分間練習の詳細をデータベース化したものです。上記の統計資料はすべてこのデータから作成しています。

本番準備・実施手順書
→「トルコ語配列のまま英語を打つ」「省電力モードが発動して画面が暗くなる」等の間抜けな事故を防ぐために作成した手順書です。

各言語の各文字の得点一覧表
→ほぼすべての言語で、大半の小文字は1文字1点、大文字は2点です。一方、2打鍵以上を必要とする特殊文字にはそれ以上の点数を割り当てている例があります。2023年の大会直前にこのテーブルの一部が変更されたようです。その結果、ポーランド語、スペイン語、ポルトガル語では総得点が増加し、フィンランド語では減少しました。


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